4Kリマスター版『ゴジラ』と『キングコング対ゴジラ』
CATEGORY『ゴジラ』シリーズ
トガジンです。
今回は市販のブルーレイとBSで放映されたリマスター版との画質差についてのお話です。
ブルーレイと放送とではブルーレイのほうが綺麗であるというのが通説ですが、両者の品質逆転現象が起こる場合もあります。
それは、ブルーレイ発売後に新しくマスタリングされた場合であり『ゴジラ』もまたその一つです。
『ゴジラ』(昭和29年版)

2014年6月。
ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』公開に先立ち、初公開から60周年を記念してつくられた初代『ゴジラ』のデジタルリマスター版が劇場公開されました。
劇場の大スクリーンで『ゴジラ』を観られるというだけで歓喜したものですが、丹念なリマスター作業によってこれまで観た中で最も鮮明で最も安定感のある映像を楽しむことが出来ました。
「このクォリティでブルーレイを再発売してもらいたいッ」と思っていた矢先、公開からわずか1ヶ月後にNHKのBSプレミアムでこのリマスター版が放送されることになります。
我が家のホームシアターで鑑賞したところ、同一環境によるその画質差は誰の目にも明らかでした。
これによって、過去に購入した2種類のブルーレイを再生する機会は完全に失われました。

東宝版ブルーレイ

クライテリオン版ブルーレイ
今回、ブログにてその比較をしてみることにしました。
これは現在発売中の2種類の『ゴジラ』ブルーレイに引導を渡すような行為です。
もし当ブログがアマゾンや楽天とアフィリエイト契約でもしていたら絶対出来なかった企画です。
「東宝版ブルーレイ」、「クライテリオン版ブルーレイ」、そして「ゴジラ60周年記念デジタルリマスター版(WOWOWシネマ)」の三者からそれぞれ同じフレームをキャプチャして比較してみます。
使用するデジタルリマスター版素材がBSプレミアム放映版でないのは、単に右肩のウォーターマークがWOWOWのほうが気にならないというだけの理由でありデータ容量・ビットレートは同じです。
また、キャプチャ・アップロードの過程で明るさやシャープネスなどの補正作業は一切行っていません。
【栄光丸通信室】
映画の冒頭部分で判りやすい要素が多い場面です。

↑東宝版ブルーレイ
画面が暗く輪郭もボケ気味で、まるでDVDのアップコンバートのようです。

↑クライテリオン版ブルーレイ
東宝版に比べると輪郭ははっきりしています。
やはり画面が暗いため、奥側の通信士の顔や正面の機械が判別できません。

↑デジタルリマスター版
暗部諧調が豊富で奥の人物の顔も正面の機械や部屋の様子もよく見えて、それでいて窓の外も飛んでいません。
必要な情報が全てバランスよく収められています。
拡大するまでもなくサムネイルだけでも違いがよく判ります。
ちなみに、手前の通信士役は若い頃の藤木悠さんです。
クレジットには記載されていませんが、研修生時代のお仕事だったそうです。
【実験直後】
芹沢が恵美子にオキシジェン・デストロイヤーを見せた直後の重要なシーンです。
窓の外の樹木は飛ばすことなく見えていますが、レンガのテクスチャーや恵美子の表情の見え方が全く違います。

↑東宝版ブルーレイ
やはり暗くてボケ気味で、もはや比較対象にはなりません。

↑クライテリオン版ブルーレイ
輪郭ははっきりしているものの、レンガのテクスチャーはつぶれ気味でこの空間が掴みにくいです。

↑デジタルリマスター版
レンガの一個一個が良く見えて、恵美子や芹沢の表情変化も手に取るように分かります。
ただ、デジタルの影響か若干ノイズが浮いている印象も無きにしもあらずです。
【ゴジラ遠景】
ここからはクライテリオンとリマスター版の一騎打ちです。
実はこのカットはデジタルリマスターの弊害が出ている箇所でもあります。

↑クライテリオン版ブルーレイ
ただでさえ暗い夜のシーンの中で、ゴジラも黒くつぶれているため闇夜のカラス状態になっています。
手前に逃げてくる人間の服のテクスチャーは判別可能です。

↑デジタルリマスター版
闇夜の中でも迫りくるゴジラがはっきり見えます。
奥行感も表現出来ていることからゴジラの巨大さと恐ろしさが伝わってきます。
気になるのは、手前の人物の白い服がおかしな強調のされ方をされていて幽霊のアニメキャラみたいになっていることです。
輝度調整の失敗か、コンピューターによるデジタル補正ミスかは分かりませんが残念なところです。
ただし、動画として見る分にはほとんど気になりません。
【ゴジラ バストショット】
クライテリオン版とデジタルリマスター版は明るさの違いだけかも知れないと思い、イメージが近づくようにクライテリオン版を輝度補正してみました。

↑クライテリオン版ブルーレイ(無修正)

↑クライテリオン版ブルーレイ(補正後)
明るさを上げてみましたが、やはりそれだけでは駄目でした。
リマスター版にはうっすらとゴジラの右手が見えているのですが、クライテリオン版の明るさを上げても暗部情報がつぶれてしまっているため復元出来ません。

↑デジタルリマスター版
補正したクライテリオン版と比べるとフィルムの傷や汚れが綺麗に消されていることがわかります。
しかしフィルムグレイン(粒子感)まで消えてしまったようにも見えてのっぺりした印象もあります。
明るさや暗部の諧調表現、解像度の高さなどほぼ全ての点でリマスター版の優秀さが証明されました。
ただし、デジタル処理によるノイズの浮きや細部の不自然さが残るのも事実ではあります。
写真ではお伝え出来ませんでしたが、デジタルリマスター版の動画として再生した時の画面の安定感は盤石そのものです。
おそらくひとコマひとコマブレを修正してくれたものと思われます。
『キングコング対ゴジラ』
ファンには有名な話ですが、『キングコング対ゴジラ』のフィルムは長い間完全な状態で観ることが叶いませんでした。
1970年に「東宝チャンピオンまつり」の一本として再上映するにあたって、「再上映では封切版と同じ尺で上映しない」という意味不明な取り決めに従いオリジナルネガをカットして再編集版が制作されました。
ところが、カットした約23分のネガが行方不明になってしまい、以後長い間この作品は不完全な状態のままだったのです。

現在東宝から発売されているブルーレイは、フィルム原版の欠落箇所をビデオ素材のアップコンバートで補完したものです。
仕方がないとはいえ、到底満足できる代物ではありませんでした。

しかし、昨年ついにすべてのネガフィルムが発見され、これによりネガが完全に揃ったことから4Kデジタルリマスター版が作られました。
残念ながら観に行くことは出来ませんでしたが、イベント上映も行われています。
会場にはチキロ(原住民の子供)役だった平野治男さんも参加されるなどして大盛り上がりだったようでした。
昨年、日本映画専門チャンネルでこのバージョンが放送されましたが、実はこの4kリマスター制作には同局が深く関与しているとのことです。
今後の映画コンテンツ管理は、制作会社ではなくBS放送局や配信会社によって行われるのが通例となり、むしろその方が良い結果をもたらすかも知れません。

↑東宝版ブルーレイ
SD解像度素材で補完された部分です。
当然ながらボケボケで、アスペクト比も狂ってしまっています。

↑デジタルリマスター版
見事に復活しています。
生きてる間に完全版が拝めたことを関係者の皆様に感謝します。

↑東宝版ブルーレイ
ここは元々ネガが無事存在していた部分です。
東宝版は全体に色が濃くて赤みが強い傾向です。

↑デジタルリマスター版
リマスター版は女性の肌色が自然で観ていて疲れません。
濃度も適切です。

↑東宝版ブルーレイ
やはり赤いです。
数年前に『千と千尋の神隠し』のDVDが「赤い」と問題になったことを思い出しました。
「あれは仕様である」とメーカーが発表したと記憶していますが、このブルーレイ用マスターもその時の基準で作られたものでしょうか?。

↑デジタルリマスター版
少なくとも、我が家のプロジェクターで見る限りはこちらの色合いの方が好ましいです。
これらのリマスター素材による『ゴジラ』『キングコング対ゴジラ』のブルーレイやULTRA-HDディスクを熱望しています。
放送版は1080/60iなので、いちいち24P化しなければならず面倒なのです。<24pのススメ
いや、シリーズ全作品を高画質化して出し直していただきたい。
東宝のブルーレイは画質が悪すぎます。
また、先日「午前十時の映画祭」で上映された『七人の侍』も4Kリマスター版でしたから、そちらも是非ソフト化してもらいたいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回は市販のブルーレイとBSで放映されたリマスター版との画質差についてのお話です。
ブルーレイと放送とではブルーレイのほうが綺麗であるというのが通説ですが、両者の品質逆転現象が起こる場合もあります。
それは、ブルーレイ発売後に新しくマスタリングされた場合であり『ゴジラ』もまたその一つです。
『ゴジラ』(昭和29年版)

2014年6月。
ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』公開に先立ち、初公開から60周年を記念してつくられた初代『ゴジラ』のデジタルリマスター版が劇場公開されました。
劇場の大スクリーンで『ゴジラ』を観られるというだけで歓喜したものですが、丹念なリマスター作業によってこれまで観た中で最も鮮明で最も安定感のある映像を楽しむことが出来ました。
「このクォリティでブルーレイを再発売してもらいたいッ」と思っていた矢先、公開からわずか1ヶ月後にNHKのBSプレミアムでこのリマスター版が放送されることになります。
我が家のホームシアターで鑑賞したところ、同一環境によるその画質差は誰の目にも明らかでした。
これによって、過去に購入した2種類のブルーレイを再生する機会は完全に失われました。

東宝版ブルーレイ

クライテリオン版ブルーレイ
今回、ブログにてその比較をしてみることにしました。
これは現在発売中の2種類の『ゴジラ』ブルーレイに引導を渡すような行為です。
もし当ブログがアマゾンや楽天とアフィリエイト契約でもしていたら絶対出来なかった企画です。
「東宝版ブルーレイ」、「クライテリオン版ブルーレイ」、そして「ゴジラ60周年記念デジタルリマスター版(WOWOWシネマ)」の三者からそれぞれ同じフレームをキャプチャして比較してみます。
使用するデジタルリマスター版素材がBSプレミアム放映版でないのは、単に右肩のウォーターマークがWOWOWのほうが気にならないというだけの理由でありデータ容量・ビットレートは同じです。
また、キャプチャ・アップロードの過程で明るさやシャープネスなどの補正作業は一切行っていません。
【栄光丸通信室】
映画の冒頭部分で判りやすい要素が多い場面です。

↑東宝版ブルーレイ
画面が暗く輪郭もボケ気味で、まるでDVDのアップコンバートのようです。

↑クライテリオン版ブルーレイ
東宝版に比べると輪郭ははっきりしています。
やはり画面が暗いため、奥側の通信士の顔や正面の機械が判別できません。

↑デジタルリマスター版
暗部諧調が豊富で奥の人物の顔も正面の機械や部屋の様子もよく見えて、それでいて窓の外も飛んでいません。
必要な情報が全てバランスよく収められています。
拡大するまでもなくサムネイルだけでも違いがよく判ります。
ちなみに、手前の通信士役は若い頃の藤木悠さんです。
クレジットには記載されていませんが、研修生時代のお仕事だったそうです。
【実験直後】
芹沢が恵美子にオキシジェン・デストロイヤーを見せた直後の重要なシーンです。
窓の外の樹木は飛ばすことなく見えていますが、レンガのテクスチャーや恵美子の表情の見え方が全く違います。

↑東宝版ブルーレイ
やはり暗くてボケ気味で、もはや比較対象にはなりません。

↑クライテリオン版ブルーレイ
輪郭ははっきりしているものの、レンガのテクスチャーはつぶれ気味でこの空間が掴みにくいです。

↑デジタルリマスター版
レンガの一個一個が良く見えて、恵美子や芹沢の表情変化も手に取るように分かります。
ただ、デジタルの影響か若干ノイズが浮いている印象も無きにしもあらずです。
【ゴジラ遠景】
ここからはクライテリオンとリマスター版の一騎打ちです。
実はこのカットはデジタルリマスターの弊害が出ている箇所でもあります。

↑クライテリオン版ブルーレイ
ただでさえ暗い夜のシーンの中で、ゴジラも黒くつぶれているため闇夜のカラス状態になっています。
手前に逃げてくる人間の服のテクスチャーは判別可能です。

↑デジタルリマスター版
闇夜の中でも迫りくるゴジラがはっきり見えます。
奥行感も表現出来ていることからゴジラの巨大さと恐ろしさが伝わってきます。
気になるのは、手前の人物の白い服がおかしな強調のされ方をされていて幽霊のアニメキャラみたいになっていることです。
輝度調整の失敗か、コンピューターによるデジタル補正ミスかは分かりませんが残念なところです。
ただし、動画として見る分にはほとんど気になりません。
【ゴジラ バストショット】
クライテリオン版とデジタルリマスター版は明るさの違いだけかも知れないと思い、イメージが近づくようにクライテリオン版を輝度補正してみました。

↑クライテリオン版ブルーレイ(無修正)

↑クライテリオン版ブルーレイ(補正後)
明るさを上げてみましたが、やはりそれだけでは駄目でした。
リマスター版にはうっすらとゴジラの右手が見えているのですが、クライテリオン版の明るさを上げても暗部情報がつぶれてしまっているため復元出来ません。

↑デジタルリマスター版
補正したクライテリオン版と比べるとフィルムの傷や汚れが綺麗に消されていることがわかります。
しかしフィルムグレイン(粒子感)まで消えてしまったようにも見えてのっぺりした印象もあります。
明るさや暗部の諧調表現、解像度の高さなどほぼ全ての点でリマスター版の優秀さが証明されました。
ただし、デジタル処理によるノイズの浮きや細部の不自然さが残るのも事実ではあります。
写真ではお伝え出来ませんでしたが、デジタルリマスター版の動画として再生した時の画面の安定感は盤石そのものです。
おそらくひとコマひとコマブレを修正してくれたものと思われます。
『キングコング対ゴジラ』
ファンには有名な話ですが、『キングコング対ゴジラ』のフィルムは長い間完全な状態で観ることが叶いませんでした。
1970年に「東宝チャンピオンまつり」の一本として再上映するにあたって、「再上映では封切版と同じ尺で上映しない」という意味不明な取り決めに従いオリジナルネガをカットして再編集版が制作されました。
ところが、カットした約23分のネガが行方不明になってしまい、以後長い間この作品は不完全な状態のままだったのです。

現在東宝から発売されているブルーレイは、フィルム原版の欠落箇所をビデオ素材のアップコンバートで補完したものです。
仕方がないとはいえ、到底満足できる代物ではありませんでした。

しかし、昨年ついにすべてのネガフィルムが発見され、これによりネガが完全に揃ったことから4Kデジタルリマスター版が作られました。
残念ながら観に行くことは出来ませんでしたが、イベント上映も行われています。
会場にはチキロ(原住民の子供)役だった平野治男さんも参加されるなどして大盛り上がりだったようでした。
昨年、日本映画専門チャンネルでこのバージョンが放送されましたが、実はこの4kリマスター制作には同局が深く関与しているとのことです。
今後の映画コンテンツ管理は、制作会社ではなくBS放送局や配信会社によって行われるのが通例となり、むしろその方が良い結果をもたらすかも知れません。

↑東宝版ブルーレイ
SD解像度素材で補完された部分です。
当然ながらボケボケで、アスペクト比も狂ってしまっています。

↑デジタルリマスター版
見事に復活しています。
生きてる間に完全版が拝めたことを関係者の皆様に感謝します。

↑東宝版ブルーレイ
ここは元々ネガが無事存在していた部分です。
東宝版は全体に色が濃くて赤みが強い傾向です。

↑デジタルリマスター版
リマスター版は女性の肌色が自然で観ていて疲れません。
濃度も適切です。

↑東宝版ブルーレイ
やはり赤いです。
数年前に『千と千尋の神隠し』のDVDが「赤い」と問題になったことを思い出しました。
「あれは仕様である」とメーカーが発表したと記憶していますが、このブルーレイ用マスターもその時の基準で作られたものでしょうか?。

↑デジタルリマスター版
少なくとも、我が家のプロジェクターで見る限りはこちらの色合いの方が好ましいです。
これらのリマスター素材による『ゴジラ』『キングコング対ゴジラ』のブルーレイやULTRA-HDディスクを熱望しています。
放送版は1080/60iなので、いちいち24P化しなければならず面倒なのです。<24pのススメ
いや、シリーズ全作品を高画質化して出し直していただきたい。
東宝のブルーレイは画質が悪すぎます。
また、先日「午前十時の映画祭」で上映された『七人の侍』も4Kリマスター版でしたから、そちらも是非ソフト化してもらいたいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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