『ほんとにあった!呪いのビデオ 75』
おととい(16日)の朝、突然その日の仕事が消えて無くなりました。
取材先の都合で急遽日程が変更になってしまったのです。
私はフリーランスの身ですから、この場合「休みになった」ではなく「仕事が無くなった」が正しい言い方になります。
あまりにも急に身体が空いてしまったせいか外へ出かけようという気も起らず、この日はまだ見ていなかったレンタルDVDを見て過ごすことにしました。
『ほんとにあった!呪いのビデオ 75』🈠
(自室32インチ液晶テレビ:レンタルDVD)

平日の真っ昼間にこんなビデオを見てるというのも成人男性としていかがなものかとは思いますが(笑)、私はこういう怖いビデオを夜中に見ていられる度胸を持ち合わせていないのであります。
別に霊感とかいったものは無いのですが、こういうのを見ていると「背後に誰かいるんじゃないか・・・?」と不安になってしまうという小学生レベルのビビり屋なのです。
そのくせ、何故だか子供の頃からこういうオカルトものは大好きなんですよね~。

『ほん呪75』のスタッフ(演出補)の面々。
監督の指示のもと、投稿映像の検証や投稿者への取材に当たる現場ディレクターたちです。
向かって右側・手前の女性は、先々代の岩澤監督時代から活躍している川居尚美さん。
他の三人は『ほん呪73』から登場した新しいメンバーです。
今回、奥の二人はほとんど出番が無かったですが左側手前の大塚君はかなり悪目立ちしていました(笑)。
【『ほん呪』の変化:その1】
『ほん呪71』から寺内康太郎監督に交代して以来、前とは印象が大きく変わった気がします。
その一つは「監督の存在感が抹消されている」ことです。
以前の岩澤監督や菊池監督は、演出補佐出身ということもあってか自ら積極的に取材に関与していたものでした。
そのため、こうした部下の会議風景を撮っていてもカメラを回しながら意見や指示を出していることが多く、そのため見ている側としてはどちらかというと監督に感情移入して見ていた感がありました。
前任の菊池監督が不評だったのは、彼には取材相手や部下に対する配慮に欠けている部分が多々あってそれが不快感に繋がったのが原因だったと見ています。
その反省を受けてなのかは分かりませんが、現在の体制では監督が表に出てくることがほとんどありません。
この会議場面を撮っているのもおそらく寺内監督だと思うのですが、監督はこの会話に入ろうとは一切せずにあくまで傍観者の立場を貫いているようです。
それはそれで良いのですが、「このカメラを回している第三者」である無言の監督の存在が逆に視聴するうえでの感覚的ノイズになってしまいます。
【『ほん呪』の変化:その2】
今の『ほん呪』シリーズにおけるこの違和感をどう表現したらいいのか難しいのですが、「伏線回収が完璧過ぎる」「登場人物も無駄なくストーリーにはまり過ぎている」といった感じがします。
見も蓋も無い言い方をするなら「出来過ぎ」「作り物っぽい」ということです。
これは現在の寺内康太郎監督が『ほん呪』演出補出身者ではなく、本職の映画監督/脚本家であることとも無関係ではないと思います。

そうした違和感が端的に表れていたのがこのシーン。
ある投稿映像の取材過程で、関係者の一人が「自分の個人情報を勝手に漏らされた」と事務所に怒鳴り込んできます。
これは大塚君が勝手な判断でやった事が原因で事情が分からない他のスタッフたちはただ狼狽するばかりでしたが、寺内監督のカメラはその様子を客観的に撮り続けているのです。
事態の収拾に直接対応していたのは川居さんでしたが、責任者であるはずの監督はカメラを手放そうとはせず決して話に割って入ろうとしません。
でもそれはおかしいのですよ。
取材相手が激怒するほどの不手際があったのなら、この中の最高責任者である寺内監督自らが対応しなければならないはずです。
カメラを他のスタッフに預けてでも自ら相手をする姿を見せるべきです。
怒鳴り込んでくる人(フェイク・ドキュメント用の俳優さん?)にしても、この中の責任者(監督)に対しても抗議するのが自然です。
『ほん呪』シリーズがどこまで本当でどこからがフェイクなのかは分かりませんが、少なくとも現在の体制になってから「作り物感」の方が強く目に付くようになったのは確かです。
【各エピソード】
※一部ネタバレが含まれます。ご注意願います。

伝統的に『ほん呪』で最初に出るビデオは「掴み」の目的もあるせいか比較的ハッキリと霊体が写っているものが取り上げられるみたいです。
今回も例外ではなく、かなりビビらせていただきました(笑)。
この時点では『ほん呪75』の出だしは順調です。

投稿映像を見終わって中村義洋氏の名調子で「お分かりいただけただろうか?」と言われても、「いや、分かりません。」と即答してしまう投稿映像も多いです(笑)。
この「かいぼり」もその一つでした。
リプレイで見て初めて分かりましたが、なんだか手描きのイラストみたいな顔が不自然なサイズで写っていて(もしも本物だったら申し訳ないのですが)どうしても合成映像に見えて仕方がありません。
この投稿者が映像制作会社の人間であるという情報も、鑑賞時に先入観が働いてしまう要因だった気がします。

こちらの投稿映像には物凄く明瞭に霊体が写っていますが、これも加工映像の疑いが拭えません。
首のない女性の霊が投稿者に近づいてきますが、その首の辺りが編集ソフトか何かで丸く消去したように見えて仕方がありません。

一昨年大流行したスマホゲーム「ポケモンGO!」。
これに熱中する投稿者たちが、あるネット掲示板の情報を元に廃墟となった建物に入り込んで霊を撮影してしまうという内容です。
これも「かいぼり」「無人駅」と同様、加工映像のように見えてしまうのが残念です。
最後に情報提供した掲示板が無くなっていて「何者かがあの場所に誘導したのではないか?。」というオチが付けられていましたが、特に驚愕するほどのインパクトは感じませんでした。

『ほん呪』シリーズ恒例の監視カメラシリーズ。
「カメラが固定だから合成するのも楽だろうな・・・」と思ってしまうのは、ここまでの3本にことごとく本物感が無かったせいだと思いたいです。
これまでの『ほん呪』では、「もしかすると作り物かも知れない・・・」と疑ったとしても「そうだとしてもこのアイデア自体は凄く面白い!」と別の部分に感心することが少なくありませんでした。
「かいぼり」から「厠」までの4本にはそれすら無く、「今回は(も)外れ巻だったか・・・?」と思い始めていました。
でも最後に紹介する「母の願い」は、心霊映像としてではなく(良い意味で)「作り物」としてとても面白いものでした。
【「母の願い」】

3番目と最後に「前後編」として出てきたのがこの「母の願い」です。
最初はフリスビーで戯れるこの投稿者母娘の話かと思いましたがそうではありませんでした。

この近所では見かけない男性が突然彼女たちに歩み寄ってきてバッタリと倒れます。
その時、ビデオには「かすみ・・・」という声が記録されていました。

病院に搬送した時の記録からその男性の身元はすぐに判明します。
快く取材に応じた彼は、最近心臓移植手術を受けたこととその後女の子と遊ぶ夢をよく見るようになったと証言します。


謎の声が呼ぶ「かすみ」とは何者なのか?。
聞き込み調査を続けるうち、数年前に近くで飛び降り自殺があったことが判明したりしてなんとなくキナ臭い感じがしてきました。
スタッフは懸命に調査を続けますが、大塚君は子供に懐かれやすい性格だとかで遊んでいます。
「なんやコイツは?」と思ってしまいますが、これが実はラストの伏線になっていました。
ちょっと演出が周到過ぎる気がしないでもないですが・・・。

調査が行き詰まりかけた頃、大塚君が自分の彼女だと言って鈴木杏似の女性を連れてきます。
なんと、彼女に投稿映像を見せたところ気になるところがあるというので連れてきたと言うのです。
仕事上の資料を、それもプライベート情報も入ってるものを、彼女だからって軽々しく他人に見せるようなスタッフって・・・?。
しかもドヤ顔で、「彼女の勘は当たるんですよ。」と言ってのける彼の神経にはただもう呆れるばかりです。

彼女の指摘は二つありました。
一つは倒れた男性の目線の先には投稿者母娘以外にもう一人女の子がいて、この子が”かすみちゃん”と何か関係があるのでは?というものです。

もう一つは、同時刻にビデオ撮影をしている中学生が写っていることから、彼女たちに聞けば何か分かるのではないか?という的確すぎるアドバイスでした。
あまりにも都合の良い展開に川居さんもタジタジです。

女子中学生はすぐに見つかって話を聞くことが出来ました。
ビデオに写っていた女の子は彼女たちの後輩の”かすみちゃん”ではないかとの証言です。
他の登場人物は全員顔をボカシているのに、未成年のこの子たちが堂々と素顔をさらしているのが気になりました。
それと、内容とは全然関係ない話ですが「白い服の女の子は『舞妓はレディ』や『ちはやふる』の上白石萌音さんに似てるな~。」とか思いながら見ていました(笑)。

スタッフはこの近所に住むかすみちゃん本人と彼女のおばあちゃんに取材します。
おばあちゃんの話では、亡くなったかすみちゃんの母親は生前ドナー登録をしていて、死後には臓器移植に活用されたとのことでした。
もしかするとあの男性に移植されたのはかすみちゃんのお母さんの心臓で、臓器に残ったお母さんの意識が彼の身体を動かしてかすみちゃんに会いに来たのではないか?。
おお~。
まるで手塚治虫の『ブラック・ジャック』みたいな良い話じゃありませんか!。
私、不覚にもホロリとしてしまいましたよ。
仮にフェイクだとしても、このお話なら全然OKです。
・・・が、しかし!

今回はほとんど別行動だった『ほん呪』スタッフの一人にしてプロの音声さんである寒川聖美さん。
彼女の音声分析によって、最後の最後に大ドンデン返しがもたらされます。
これだけネタバレしておいて書くのもなんですが(笑)、ラストは是非『ほんとにあった!呪いのビデオ 75』を借りて見て下さい。
嫌~な気分になること必至です。
メインである「母の願い」はあくまでもフェィク・ドキュメンタリーとしてとても面白いものでした。
しかし、他の投稿映像の質の低下もあって、今までの『ほん呪』シリーズと雰囲気が違い過ぎるのがとても気になります。
このシリーズで見たいものとは、作り込んだドラマの前にまず「実在の心霊ビデオ」なのです。
あまり年寄り臭いことは言いたくないですが、『ほん呪』には今一度原点回帰を考えていただきたいと思っております。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。