週刊映画鑑賞記(2018.2/26~2018.3/4)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
2/26(月)
『スリービルボード』🈠
(劇場:ユナイテッドシネマ金沢)

今年のアカデミー作品賞にもノミネートされている映画ですが、どういうわけかこの肝心な時に福井県内では上映している劇場が一軒もありません。
当初はテアトルサンクさんで上映予定のはずでしたが、「諸般の事情で4月中旬に延期する」とのこと。
どういう事情かは知りませんが、映画ファンにしてみれば「オスカー候補作品を今上映せずして一体何のための映画館か!?」という話です。
到底我慢など出来るはずありません。
この日は仕事が休みだったこともあり、お隣石川県のユナイテッドシネマ金沢までわざわざ遠征して観に行きました。
確かに脚本がよく出来ていて「通好みの映画」だと感じました。
登場する人物のほぼ全てが当初の印象を心地よく裏切る別の一面を見せていて、それらが巧妙に絡み合うことで先のストーリー展開を読ませません。
娘を惨殺された母親というのが実はとんだ女偉丈夫であったり、なんだかヘラヘラしてやる気の無い今どきの若造に思えた広告屋が後半で物語の方向性を変えてしまうほどの泣けるシーンを見せてくれたり、等々・・・。
ただし、主要人物以外については異様にカリカチュアナイズされた描写のキャラクターも見受けられて困惑していました。
それは例えば、広告屋の若い女性スタッフであったり、別れた夫の若い愛人であったりとかです。
特に、殺された主人公の娘というのがまるで絵にかいたような不良娘でまるで可愛げが無かったのが気になりました。
この監督さん、実は若い女性に興味が無いんじゃないかとさえ思ってしまいました。
娘が可愛くない、つまり可哀そうに思えないというこの一点が私にとってこの映画を愉しむうえでのブレーキになってしまいました。
もちろんいい加減なストーリーは論外ですが、逆にどんなによく出来たお話でも登場人物に思い入れが出来なければ最後まで傍観者のまま終わってしまうものです。
この違和感は以前にも感じたことがあるなあ・・・と考えていら、昨年のアカデミー賞で作品賞と間違えられた『ラ・ラ・ランド』がそうだったことを思い出しました。
『ラ・ラ・ランド』は男女二人の主人公がお互いの夢に向かって右翼曲折していき惹かれあうという内容の映画でしたが、私には冒頭の高速道路でのミュージカルシーン以外は全く乗れないまま終わってしまいました。
なぜならば、二人とも自分の夢の実現に夢中なのは良いとしても、食べていくためにやっている現在の仕事(雇われピアニストやウェイトレス)に対しては真面目に取り組んでいないことが気になってしまったからです。
結果として彼らに対しては「好きにすれば?」的な傍観者気分になってしまい、技巧をこらしたあのラストシーンも醒めた目で眺めていただけでした。
昨年の『ラ・ラ・ランド』は結果として作品賞を逃したわけですが、似たような難点を抱えた『スリービルボード』が今年どう評価されるのかにも注目です。
2/27(火)
『ぼくの名前はズッキーニ』🈠
(劇場:福井コロナシネマワールド)

昨年の『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』と同様、子供が主人公の人形アニメーションです。
実は先週妻と一緒に『マンハント』を観た時のもう一本の候補作品でした。
内容に関して全く知識が無かったため、妻はあのギョロリとした目の人形たちから不幸の臭いを嗅ぎ取ってしまったようです。
私たちには子供がいない(できない)のですが、そのことが分かってからというもの妻は子供が出てくる映画には過敏に反応するようになってしまいました。
私はもう割り切ることが出来ましたが、それでも子供が死ぬシーンは見ていて嫌ですね。
・・・と、暗い話はこのくらいにして。
この日は福井コロナシネマワールドのサービスデーだったこともあり、仕事帰りに私一人で観てきましたがとても素晴らしい作品でした。
9歳の男の子たちの性への興味と想像力は自分の子供時代そのままで可笑しいやら照れ臭いやら(笑)。
確かに不幸な子供たちの物語でありましたが、最後にはホロリとさせられるとても素晴らしい映画でした。
特にいい味出していたのがいじめっ子のシモン。
粗暴な言動とは裏腹に本当は心の優しい”いい奴”です。
主人公イカール(ズッキーニ)の最初の友達であり、カミーユとの仲を取り持ってくれるキューピットでもあり、「俺たちのために行けよ」とズッキーニを送り出すシーンでは涙がポロポロこぼれてきて困ってしまうほどでした。
シモンに関して言えば、『スリービルボード』も色褪せて見えるほどの人物描写ぶりでありました(笑)。
私の2018年映画ベスト10が一本決まりました。
私も原語(字幕)版で観ましたが、これから観る人は(小さいお子さん連れは別として)出来るだけ字幕版でオリジナルの子役の演技に触れることをお薦めします。
子供の声はやはり子供が演じるのが一番です。
どういうつもりでキャスティングしたのかは知りませんが、峯田和伸と麻生久美子が9歳の子供の声を演じるのって無理がありすぎでしょう!。
3/1(木)
『シェイプ・オブ・ウォーター』🈠
(劇場:テアトルサンク)

無性にゆでたまごが食べたくなる映画でした(笑)。
それは置いといて・・・。
私は観ていて井上ひさし先生の『新釈・遠野物語』の中の一遍「冷し馬」を思い出しておりました。
「冷し馬」は美少女と飼い馬が心身ともに愛し合って駆け落ちしようとするお話です。
それと映画では『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年:本多猪四郎監督)。
フランケンが等身大のままで、自分に理解と愛情を向けてくれた水野久美と駆け落ちしたらこの映画になるんじゃないかな?・・・と。
単なるこじつけかも知れませんが、『パシフィック・リム』で日本の怪獣映画やロボットアニメにリスペクトを示してくれたデル・トロ監督の作品ということで、私はこの映画の中にどこか日本的なものを探しながら観ていたのかも知れません。
人種差別やLGBT蔑視が横行する1962年のアメリカ南部が舞台になっています。
映画の中で、半魚人を痛めつける軍人が読んでいたのが『ポジティブ・シンキング』という本でしたが、作中の本の題名にわざわざ字幕が付けられていたのが気になって調べてみました。
この『ポジティブ・シンキング』はトランプ大統領の愛読書として一時期有名になった本でした。
なるほど。
ギレルモ・デル・トロ監督がメキシコ人であることを考えれるとそこに込められた寓意は明白です。
モンスター映画がアカデミー作品賞にノミネートされたというだけでも歴史的大事件なのですが、明日のアカデミー賞でこの『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を獲ったりなんかしたらこれはもう二重三重の意味で痛快な話であります。
そのことでアメリカ映画界がトランプ政権をどう捉えているかがハッキリするわけですから。
ちょっとエグいシーン(指とか猫とか)があるのが気になりますが、それでも近いうちにもう一度観に行きたい映画でありました。
3/2(木)
『GODZILLA 怪獣惑星』
(ホームシアター:NETFLIX)

前日に正式契約したNETFLIXをシアタールームのBDプレーヤー経由でプロジェクター映写で見てみることにしました。
今回はあくまでも画質と音質のチェックです。
夜十時からのスタートになるため上映時間が1時間半以下のもので、ブロックノイズやマッハバンドが判別しやすいアニメが良かろうとこの『GODZILLA 怪獣惑星』をチョイスしました。
子供の頃に『ゴジラ』の原体験を持たない世代のスタッフが作るゴジラ映画で、全三部作のパート1に当たる作品です。
内容については公開当時に書いた記事がありますのでそちらをご覧ください。
激しい銃撃や爆発シーンではさすがにブロックノイズが散見されるものの、輪郭のボケや諧調不足を感じることはありません。
今回の視聴では、本作品のゴジラが戦闘中であるにも関わらずとても優しい目をしていることがよく分かりました。
5.1チャンネル音声(ドルビーデジタルプラス)の音質は、お世辞にもブルーレイ並みとは言えませんがWOWOW等衛星放送くらいの音質は確保出来ているようです。
まだブルーレイが未発売なので比較は出来ませんが、月額観放題950円のHD動画としては十分すぎる品質だと思います。
あと、今回初めて知ったのですがNETFLIXってBDやDVDと同様、一つの動画内で音声と字幕を切り替えが可能なのですね。
すみません。
私、今までNETFLIXを完全に舐めてました。
本当にすみません。
今週は新作映画ばかりを3本も観られたうえに、その全部が見応え充分な良作揃いで大満足でした。
しかし、このところ仕事が忙しくなってきたのと確定申告の準備に追われて、せっかく入会したNETFLIXを本腰入れて見ることが出来ていないのが残念です。
週末には独占配信の『オクジャ』と湯浅政明湯監督の『デビルマン』を観ようと思っていたのですがね。
『デビルマン』の終盤には美樹とタレちゃんが××されるシーンがあるはずなので妻には絶対内緒ですが・・・
ところで・・・。
湯浅監督といえば、私も2017年ベスト10に選出した『夜は短し歩けよ乙女』が第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞しましたね。
まるで自分の選択眼が認められたみたいで嬉しいです(笑)。
でも最優秀作品賞の『三度目の殺人』はまだ観ていなかったりしますが(恥)

湯浅監督、本当におめでとうございます!。
さて、明日の本家アカデミー賞はどうなりますことやら?。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。