週刊映画鑑賞記(2018.4/2~2018.4/8) 『空の大怪獣ラドン』
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
実は私、先月19日(京都みなみ会館オールナイト参戦の翌日)から今日まで丸3週連続で働きっぱなしであります。
この状況はとりあえず来週いっぱいまで続くことが確定していて、休み(来週月曜)までの日数を指折り数えながら闘い続けることになるでしょう。
いやいや、これは断じて愚痴ではございません(笑)。
クライアントの皆様、本当にありがとうございます。
トガジン53歳、連日連夜モリモリ働かせていただいております。
この時期は毎年こんな感じではあるのですが、今年は発注先のTV局やその子会社さんが軒並み人事異動やらなんやらで体制が大きく変わったためか発注量が例年の3~4割増しになっている印象です。
ここ数年は外注費をケチってインソーシング(内製)中心に動いていたのが、昨今は「働き方改革」とやらで社員をコキ使うことが難しくなったために再び我々外注スタッフの出番が増えたようです。
・・・というワケで、今週観た映画はこれまで何度も観返してきたこの作品一本のみ。
趣味の面ではいささか寂しく見えますが、私としてはこれだけでも十分満足出来るだけの作品でありました。
4/4(水)
『空の大怪獣ラドン』<HDリマスター版>
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル)

日本映画専門チャンネル「東宝特撮王国」の復活と、『ラドン』の高画質リマスター版ということでずっと楽しみにしていました。
この日は20時頃に帰宅することが出来たので、珍しくリアルタイムで視聴していました。
(正確には録画しながら約2分遅れで追いかけ再生)
というより、この日のうちに見なければ今週中観る時間はもう確保出来ないというのが本当のところだったのですが・・・。

私は昭和31年制作のこの作品で、(単体怪獣ものとしての)東宝特撮怪獣映画はすでに完成したと見ています。
次の『モスラ』(昭和35年)が南海の孤島や海外を舞台としたのは、(海外セールスが前提としてあったのも事実ですが)日本の風景に怪獣が出現するというシチュエーションは『ラドン』でもう頭打ちだったせいかも知れません。
加えて原子熱線砲(後のメーサー殺獣光線)といった架空の超兵器が登場したのも、既存の兵器だけで怪獣に立ち向かう描写ではもう『ラドン』以上の映画的スペクタクルを作り出すことが難しかったからではないでしょうか?。
『キングコング対ゴジラ』以降の怪獣映画が全て2匹以上の対決ものになったのも、単体怪獣作品で『ラドン』『モスラ』を超えることは不可能と判断してのことだったかも知れません。
単体怪獣作品としては他に『大怪獣バラン』や『宇宙怪獣ドゴラ』があったものの、『バラン』は元々TV用企画でしたし『ドゴラ』は怪獣というより災害のような扱いで人間サイドのストーリーがほとんどだったように思います。

そういえば、本多猪四郎x円谷英二コンビによる特撮怪獣映画を観たのは久し振りのような気がします。
そのイマジネーションの豊かさと芸の細かさに約80分間圧倒されっぱなしでした。
特に福岡襲撃シーンのミニチュアワークの見事さは何度見返しても溜息が出てしまいますね。

『空の大怪獣ラドン』の舞台は九州(熊本・長崎・福岡)ですが、大ヒット映画の中で怪獣に襲われた場所だということで西海橋や阿蘇山の観光客数が大幅に増えたのだそうです。
怪獣映画で地方都市が襲われることで、ご当地での興行収益が上がり現地にも観光特需で潤うという黄金律はこの作品から始まったと言われています。
もちろんそれは、円谷特撮の緻密なミニチュアワークと映像センス、そして映画そのものの面白さがあって初めて成り立つものだったと思います。
■HDリマスター版
今回の放送で最も気になっていたのは、<HDリマスター版>という誇らしげな表記です。
「ほお?、どんなもんか見せてもらおうじゃないか!」と画面比較してみることにしました。

比較対象は私が所有しているブルーレイ・ディスク(発売:東宝)です。
解像度の違い(日専CHは1440x1080、BDは1920x1080)やビットレートの差(実測で日専CHは平均14,200Kbps、BDは平均35,000Mbps)、そしてフレームレートの違い(日専CHは60i、BDは24p)等はあるものの、発色や尖鋭感などといったマスターの差そのものは画面に確実に現れるはずです。
『キングコング対ゴジラ』の時がそうだったように、今回もまた日本映画専門チャンネル版の圧勝になってしまうのでしょうか・・・。
【東宝マーク】

『ゴジラ』や『キングコング対ゴジラ』4Kリマスター版と同じく、ほとんど揺れを感じません。
フィルム自体の黄ばんだ色合いはそのままですが、発色もシャープネスも良好です。
【キヨ(白川由美さん)】
画質を比較するなら美女に限ります。

こちらは東宝発売のブルーレイ版のおキヨちゃん。
(サムネイルをクリックすると高解像度画像ファイルが見られます)
背景の炭鉱住宅セットと合わせて、いかにも古き良き日本映画の一場面という感じです。
単独で見るだけならこれで十分ですが・・・

こちらが今回のHDリマスター版のおキヨちゃん。
お肌の木目・艶、そして瞳に浮かぶ恐怖心。
はっきりくっきりしていてデティールが掘り起こされてる印象ですが、単にシャープネスを上げた時のようなザラつき感はありません。

分かり易くするため両者を横に並べてみました。
画面に向かって左がBD、右がリマスター版です。
サムネイルをクリックすると2880x1080の超横長画像ファイルをお楽しみいただけます。
【若い女(中田康子さん)】

もうお一人、美女で画質比較(笑)。
こちらも連結画像をご用意させていただきました。
リマスター版は女性のお肌と洋服のテクスチャーがくっきりしてて、BD版より立体感があることが分かりますね。
【巨大ヤゴ(メガヌロン)襲撃】

映画の中の役どころとしてはラドンの餌にすぎない巨大ヤゴですが、こいつが家屋に浸入して人を襲うシーンの怖さは鳥肌モノです。
ここは夜間シーンであるため、暗部階調がしっかり表現されていないと「闇夜のカラス」状態になってしまいます。
かと言ってあまり明るすぎると今度は着ぐるみがいかにも作り物に見えてしまって臨場感が台無しです。
BD版もリマスター版もその中間を狙ったウェルバランスな画調になっていますが、それに加えてリマスター版はデティールが立っている分だけ生物っぽさが増している気がします。
あと、キュキュキュキュキュという不気味な音も重要です。
リマスター版は音声もクリアになっていて、河村(演:佐原健二)とキヨ(演:白川由美)の会話中にかすかに近づいてくるこの音が聞き取れます。
日常生活を侵食してくる異形のモノの不気味さを引き立ててくれています。
【ラドン】
両バージョンの最大の違いがここです。

BD版は元々あったピアノ線をデジタル処理で消去していました。
まるで旧『スター・ウォーズ』の<特別編>状態です。

今回のHDリマスター版には、ピアノ線もその固定用フックもオリジナルのまま映っています。
私としてはオリジナルを大切にして欲しいと思っているので今回の原点回帰は大歓迎ですが、今回再生してみて画質が良くなっている分このピアノ線もやたら目立って見えたようにも感じました。
少々悩ましいところではあります。
さて・・・。

次回(4/11)の「東宝特撮王国」は『宇宙大怪獣ドゴラ』。
リマスター版の見所としては金星人・・・じゃなくて、若林映子さんの艶姿が楽しみです(笑)。
そういえば、『ドゴラ』って『地球最大の決戦』や『モスラ対ゴジラ』と同じ年(昭和39年)の作品で、それすなわち私の生まれた年でもあるんですよね~。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。