『ちはやふる-結び-』~かるたの聖地にて~
『ちはやふる-結び-』の公開からちょうど一か月が過ぎました。
私は昨年の5月から6月にかけてこの作品の一部のシーンにエキストラとして参加しております。
忘れてしまわないうちに、当時の現場体験を該当する場面と絡めながら書き綴っておきたいと思います。
最初に謝っておきます。
今回の記事はメチャクチャ長いです。
しかも自分の事しか書いておりません(笑)。
『ちはやふる』にも映画のエキストラにも興味が無いという方は、スルッと読み飛ばされることをお薦めします。
反対に、私と同じく『ちはやふる』の撮影に参加した方や映画の撮影現場に興味がある方に少しでも楽しんでいただければ幸いです。
『ちはやふる-結び-』
(劇場:テアトルサンク)

<あらすじ>
瑞沢高校競技かるた部員の綾瀬千早(広瀬すず)と若宮詩暢(松岡茉優)が全国大会で激闘を繰り広げてから2年。
真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)らと共に名人・クイーン戦に挑む千早だったが、詩暢との戦いを目前に我妻伊織(清原果耶)に敗れ挑戦権を失ってしまう。
そんな中、千早たちの師匠・原田秀雄(國村隼)を難なく退けた史上最強の名人とされる周防久志(賀来賢人)に新が挑戦状を叩きつける。
やがて3年生になった千早は、高校最後の全国大会に向けて動き始めるが・・・。

■感想
普段、私はこういったアイドル主演のラブコメや青春ものは余程のことがない限り自分から進んで観ることはありません。
映画『ちはやふる』シリーズも私自身がエキストラとして参加していなければ一生縁が無かったはずの作品でした。
前作を観たのも、『-結び-』にエキストラ参加するために内容を確認しておきたかったからに過ぎません。
しかし、映画『ちはやふる』シリーズは全3部作として見事な着地を見せてくれていました。
小泉監督の手による脚本は非常にまとまりが良く、新登場のキャラクターはもちろん前作からの登場人物にも一人一人にしっかり見せ場が用意されていました。
また、クライマックスではクィーン決定戦で千早と詩暢の対決が描かれるものと思っていましたが、この映画は瑞沢高校競技かるた部全員の物語として描くことに特化したようです。
千早たちが創った端沢高校かるた部が波瀾曲折を乗り越えて一つにまとまり、やがては十数年後の後輩たちにも受け継がれていったことを示唆するラストシーン。
前作の冒頭で触れられていた千早vs詩暢の対決(クィーン位戦)の結末も本作のエンドタイトルでさらりと明かされたのみでした。
新や太一との色恋沙汰なども「ご想像にお任せします」といったドライな終わり方でベタベタしません。
この思い切りは粋であり大正解だったと思います。
前2部作を観ていることが絶対条件ですが、なかなか良く出来た青春映画だったと思います。
(自分も参加したことで多少の身贔屓はあるかも知れませんが・・・)
【平成29年5月中旬】

昨年5月、『シン・ゴジラ』や『マンハント』の時と同じく、「東京エキストラNOTES」さんを通してこの『ちはやふる-結び-』エキストラ募集を知りました。
撮影現場として東京以外にも滋賀県や京都が挙げられています。
具体的なロケ場所は伏せられていますが、競技かるたの世界を描く『ちはやふる』で滋賀ロケといえば近江神宮しか考えられません。
私の家からだと4時間近くかかる距離ではありますが、日帰りすることも十分可能な範疇です。
私の仕事はゴールデンウィーク明けから6月っぱいにかけて結構ヒマになりますのでこれは絶好のタイミングでもあります。
早速、募集受付分の中からスケジュールの空いてる日を片っ端からエントリーしていきました。

こちらは実際に参加した最初の3日分の募集内容です。
役柄としては観客役の他、カメラマンを含む報道関係者役や運営スタッフ役となっています。
これが何か重要な試合シーンの撮影であることは明らかでした。

しかも、地元福井のあわら市(私の住む街のお隣・車で10分かかりません)ロケも予定されているではありませんか!。
当然これにもエントリーしましたが、残念ながらこの募集には落選となり地元での参加は叶いませんでした。
10分で行けるのに・・・。

さすがは広瀬すず主演作品とあってなかなか当選通知が来ませんでしたが、5月末になってようやく1件目の当選メールが届きました。

さらに、一度は落選した6月2日の分も「追加募集」で繰り上げ当選となり、なんと3日連続で撮影に参加させてもらえる事になりました!。
これらは全て、滋賀県大津市の近江神宮境内にある近江勧学館での競技かるたの試合関連シーンの撮影です。
この時の私の浮かれようは当日のブログでも書いておりますので合わせてお読みいただければ幸いです。
喜びすぎて、出発前日に福井ロケ地巡りなんかもしています(笑)。
>映画『ちはやふる-結び-』にエキストラ参加決定!
【5月31日】
朝8時に近江神宮へ到着するにはどんなに遅くとも早朝4時には家を出なければなりません。
自宅から大津京駅までが約3時間、そして駅から近江神宮まで徒歩で約20分です。

高速道路も一部利用して、ほぼ予定通り朝7時半に近江神宮に到着しました。
参道を歩きながら後ろを振り返ってみると、私と同じエキストラ参加者の皆さんが続々と集まってきます。

近江神宮は、百人一首の第一首「秋の田の~」を詠んだ天智天皇が祀られていることからかるたの聖地となったようです。
石段の下で立ち止まり、パンパンと柏手を打って拝礼してから現場へ向かいました。

ちなみに、このアングルは映画『ちはやふる-結び-』にも出てきます。
撮影時期がほぼ同じなので樹木の繁り具合が全く同じなのが嬉しかったりします(笑)。

今回参加した一連の撮影は、滋賀県大津市の近江神宮境内にある勤学館で行われました。
実際の「競技かるた全国大会」や「名人位・クィーン位戦」もここで行われる事から「競技かるたの甲子園」と称されている建物です。
撮影当時は前の駐車場に大きなテントが3張建てられていて、そこが我々エキストラの待機場所になっていました。
初夏ということでかなり蒸し暑く、テントの隅には給水器と塩分補給用の飴玉が用意されていました。
やがて助監督さんがエキストラたちの顔や体型や服装を見て配役を決めていきます。
『マンハント』の時と同じく、応募の時に「自分は本職のTVカメラマンである」とアピールしておいたのですが、カメラマン役は早めの段取りが必要だったらしくすでに全員決定済みでした。
う~む、残念!。
無理してでももっと早く行くべきでした。
結局私の役は観客の一人ということになりました。
残念ながら希望通りとはいきませんでしたが、それでも映画作りに参加できるなら何だってやる覚悟です。
【私の居場所】

この日の撮影内容は、千早たちが2年生時の「名人位・クィーン位決定戦」シーンで原作単行本で言えば23巻に相当します。
全部で80畳もある大広間(浦安の間+豊栄の間)の外周部を観客(エキストラ)が取り囲み、窓側には読み手や審判員(俳優さん)が配置されていました。
5月31日から6月2日までの3日間、私が参加したのは怒涛の如くたたみ込まれるこの冒頭アバンタイトルの札だったのです。
一つの試合シーンを2日間かけて撮影するとのことで、私も含めた両日連続参加の者は比較的画面に映りやすい最前列に配置してもらえました。
「前後の繋がりがあるので、自分の座り位置をしっかり覚えておいて欲しい。」とチーフ助監督さんに言われたのですが、割り当てられた私の定位置を見てビックリしてしまいました。

なんと、私の定位置はクィーンの座をかけて戦う若宮詩暢(松岡茉優)と我妻伊織(清原果耶)の真正面だったのです。
絶対忘れようがありません(笑)。
この場所で正座して試合を見ているわけですから、自然と私の目線がクィーン役の松岡さんたちとほぼ同じ高さになります。
カメラが対面側から二人を狙うショットでは、私の姿はほぼ確実に映ると思われます。
これは実に美味しいポジションでした。
でも、こんな美味しい位置に陣取って二人の対戦を真剣に見つめている私って一体何者なんでしょう?。
「これじゃまるでこのどちらかの父親みたいだ」と、”役作り”に悩んだりしてました(笑)。
撮影では(私から見て)真正面にカメラを配置して二人が対面する画も撮っていたので、あのショットが使われた場合には彼女たちの奥に確実に私が映ってると確信していたのですが・・・。

映画はいきなりクィーン:若宮詩暢の試合シーンから始まります。

しかし、このシーンで詩暢が対戦している相手は千早ではありません。
この映画のオリジナルキャラクター、我妻伊織です。
詩暢と伊織の奥にずらりと並ぶギャラリーたち。
全員顔は映っていませんが、服装やその時の動き方でどれが自分かくらいは分かります。
・・・しかし。
このシーンでは、どれも私の姿はフレームのぎりぎり外側に切れてしまっていました。
う~む。
これは単なる不運なのか、私の格好や演技が監督のお気に召さなかったのか?。
こうもギリギリでフレームから切られてばかりだと、悔しいとか怒るとか以前に気を病んでしまいそうです。

主人公の千早は、この試合でなぜか詩暢と伊織の試合の大盤係を務めています。
千早はこの大会でクィーン戦に挑んだものの準決勝で伊織に敗れて詩暢への挑戦権を失ったことになっていました。
一年前「ここでまたかるたしようね!」と言いながらその約束を果たせなかった千早に対し、詩暢は「どちらさんでした?」とことさら冷淡に接します。
原作では、2年生時の千早は修学旅行と日程が被ってしまってこの大会には出られなかったことになっていました。
それでも修学旅行先が京都であったことから時間を見て大津まで観戦しに来た、という設定だったはずです。
また詩暢の対戦相手も原作では全く違うキャラクターになっており、クィーンの座を目指す他の女性たちの物語も展開していて読みごたえがありました。
子供を産んで母になってもまだかるたへの情熱を捨てきれない猪熊遥や、師匠や兄弟弟子に土下座してでも精進を目指す山本由美など、千早にも多大な影響を与えていたキャラクターが多数登場していたのですが映画版では全てカットされていたのがとても残念です。
今回の映画版はあくまでも千早たち高校生の物語、それも端沢高校かるた部チームの話に特化しているようです。
限られた時間の中ではそれも致し方ないところですが、千早を取り巻く親や先輩など”大人たち”の姿を撤廃してしまうのはいかがなものかとも思います。
結局、この試合シーンで私が自分の姿を確認出来たのは1カットだけでした。
座り位置が二人の真正面すぎたためか、私の姿は全てのカットでフレームの外に切れてしまっていました。
唯一映っていたのは、自分の足元に弾き飛ばされてきた札を拾い上げる横顔がシルエット気味に小さく映っていたのみです。
【ご一緒させていただいた皆さんのこと】
我々観客役のエキストラはAからDのグループに分けられていました。
撮影内容やカメラアングルによっては出番が無いグループは外のテントで待機となります。
私はこのうちBグループに属していたのですが、31日は我々Bグループのいた場所にカメラを据えて撮影することが多かったらしく一日のほとんどが待ち時間になりました。
そのおかげで同じBグループに所属する皆さんとも打ち解ける時間が持てたように思います。
まず印象に残っているのが、趣味であちこちの映画撮影に参加して回っているという初老のご夫婦です。
『シン・ゴジラ』にも参加されていたそうで、同じ映画に参加した者同士ということもあって色々面白い話を聞かせてくれました。
中でも面白かったのは、蒲田くん登場シーンで必死に逃げ回る役を演じていた時の話です。
「ふと横を見ると大勢のエキストラに混じって庵野総監督が必死に走っていた」そうです。
いいなあ。
私は『シン・ゴジラ』で怪獣から逃げ惑う役に参加できなかったことが唯一心残りだったのですよ。
このご夫婦は時代劇にも多数参加したとの事で、夫婦で足軽や町人の衣装を着けた写真を見せてもらったりして皆で盛り上がっておりました。
他には、エキストラ参加は初めてだというとても陽気なご婦人がいらっしゃいました。
この方は『ちはやふる』の原作漫画のファンとのことで、私は今自分たちが撮っている分がどんなシーンなのかを彼女に教えてもらっていました。
また、これまでにも数多くの映画やドラマに参加してきたというベテランのエキストラさんや、いかにも広瀬すず目当てのコミュ障気味の青年、こうしたエキストラ出演を重ねて経験を積もうとしているらしい女優志望の学生さんたち等々、色々なタイプの人たちとご一緒させていただきました。
エキストラ参加した作品を劇場で観る楽しみの一つは、こうしてお会いした皆さんと映画の中で再会出来ることです。
初めて観た時も、ストーリーそっちのけで背景に映る”自分”と”ご一緒した皆さん”の姿を目で追い続けておりました。
【ネット漏洩事件】

ちなみに5月31日の昼メシはこんな仕出し弁当でした。
残念ながら、エキストラ参加現場ではこんな写真しか撮ることが出来ませんでした。
なぜならば。
この日の撮影現場において、とある大事件が起こったためです。
実はこの日の参加者の中に、撮影中にロケ現場の状況をツイッターで実況し続けていた不心得者がいたのです。
そのツイッター画面をスタッフさんがネット上で発見したとのことで、現場で犯人捜しが始まりました。
私たちのグループはその時外で待機中だったのですが、そこへ血相変えた数名のスタッフさんがやって来て「この中に▲▲▲君は居ますか?。」と怒気を含んだ声で呼び出しを始めたのです。
そして、撮影現場を自分の顔写真入りで得意げにネット実況していた▲▲▲君はそのまま強制退去させられてしまいました。
私もその実況の一部を見せてもらいましたが、「野村周平に”お前カッコいいな”と言われた」とか「監督が半ケツ状態だ」とかまるで子供の悪戯にしか見えない低俗な書き込みが並んでいました。
あれではスタッフさんが怒って当たり前です。
私は▲▲▲君との面識はありませんでしたが、どうやらカメラアシスタント役の一人だったようです。
最初の名人・クィーン位戦シーンの途中で消えたカメラアシスタントに気付けたとしたら、そいつがツイッター野郎の▲▲▲君です(笑)。
映画関係者の情報管制の確度とスピードは本当に凄いものだと思いました。
現実にこういう光景を見てしまうと、現場で電話を取り出すだけでもスタッフさんの目が気になってしまいます。
【初日は消化不良気味】

ほとんど出番が無いまま、31日の撮影は陽が落ちる前に終了となりました。
この日もらった記念品がこれです。
劇中に登場する参加チーム名が書かれたTシャツで、複数の色とサイズ違いの中から一枚自由に選ばせてもらいました。
私は(当然)XLサイズを選びましたが、実際にこれを着ることはまずないでしょうね(笑)。

この日(と翌日)の宿泊は大津駅前のカプセルホテル「カレンダーホテル」です。
大津京からは電車移動になりますが、他に安いところが無かったので仕方ありません。

ここを利用するのは初めてでしたが、ずいぶん変わったホテルでした。
フロントに行き着くにはこのフロアを通り抜けなければなりません。
私が到着した時は大勢のお客さんがお食事中で、ホテルへはどう行けばよいのか分からずしばらく入り口付近をウロウロしていたものでした。

ようやくたどり着いたカプセルルーム。
なんだか大阪でいつも利用するアムザさんよりカッコいい気がします。
私はカプセルホテルのこんな隠れ家的な雰囲気が好きなのですよ。
でもお風呂はシャワールームしか無く、ゆっくり湯船に浸かれる浴場が無いのが残念でした。
【6月1日(木)】
この日の服装は前日と同じものでなければならないため、用意してきたスーツや着替えは全部車に置いて身体ひとつで現場入りしました。
この2日間の撮影は「冬の設定」とのことで、エキストラ全員冬服で参加しておりました。
この時期の大津はかなり蒸し暑かったと記憶しております。
私もコールテン生地の黒いシャツとジャケットを着て汗だくになりながら観客役を演じておりました。
集合時間ちょうどに到着して前日と同じBグループの皆さんと顔を合わせました。
ところが、この日はエキストラ担当者の顔色がすこぶる悪いご様子です。
聞くところによると、この日のエキストラの集まりが非常に悪く大幅に人数が不足しそうだといおうことでした。
スタッフさん達はかなり焦っている様子で、来ていないエキストラ一人一人に電話して参加の可否を確かめていました。
結局、この日の参加者は前日の7割程度ではなかったかと思います。
前日と同じ役柄で出るべき人も何人か欠けていて、これでは演出にも影響が出るのではないかと心配になりました。
【演技・・・のようなもの】
しかし、欠席者が多かった分「待ち」ばかりだった前日とは打って変わって出番が増えてやり甲斐がありました。
まずは前日の名人&クィーン戦の続きです。
両者が札を飛ばすたびに「ほぉ~っ」と感嘆の声を上げ、隣の人と「いやあ、やっぱりクィーンとなると違いますなあ」「早すぎて、全然見えませんでした。」などと言葉を交わします。
しかし・・・。
普通に声を出しながら演技するだけならいいのですが、難しいのは「今の会話シーンを今度は声を出さずに口パクだけで演技して欲しい」という要求です。
なるほど、俳優さんのセリフを録るのにエキストラの声は邪魔なのでしょう。
でも、「声を出さずに他人と会話してみせろ」と言われても、お互いが同時にしゃべっていたり逆に両方が沈黙してしまったりして非常に間抜けな画になってしまいます。
ヒソヒソと小声で喋っても、同じ部屋に100人近い人数が居るわけですから結構な音量になってしまいます。
近くにいたベテランのエキストラさんが「表情をおおげさにして手振りを交えるとやり易いよ」と教えてくれて、なんとかこの難関を突破することが出来ました。
(いや、出来たような気がしただけ?)。
あと、監督の「スタート!」まで待たずに「よーい」の段階から演技を始めると良いとも教えてもらいました。
ついギリギリまで合図を待ってしまいがちですが、それでは編集上不自然になってしまいます。
私も仕事で一般の方を撮影する際に同じことをお願いしたことがありましたが、いざ自分が演じる側になると出来ないものですね(笑)
【気になります】
私が撮影中に気になって仕方がなかったのは、TVカメラマン役の人たちの変なカメラの持ち方です。
三脚のパン棒やズームレンズの持ち方が妙な持ち方をしてる人ばかりで、「そんなところを握っていたら咄嗟に被写体を追えないですよ」とアドバイスしたい衝動に駆られておりました。
せっかくエントリー時に「自分は本職のTVカメラマン」とアピールしておいたのに、これではフラストレーションが溜まる一方です。
『マンハント』の時には自分の経験・知識を生かして微力がらも映画に貢献出来たのですが、この現場はとにかく歯痒くて仕方が無かったです。
【あんな役とかこんな役とか】
試合シーンが終わると、今度は出口付近で駆け込んでくる新(演:新田真剣佑)とすれ違うシーンの撮影です。
人混みを押し分けて中に入ろうとづる無礼な若者を「なんや?コイツ」と睨みつけながら出口へ進む一般人の役でした。
その後に原作25巻のこのシーンに繋がります。

引退をほのめかす周防名人に新が挑戦状をたたきつけるシーンです。

原田先生を支えて部屋を出ようとしてた千早と太一とすれ違いながらも彼等には目もくれず、試合会場の浦安の間へと駆け込む新。
そして名人に対し、「俺が倒しに行く!」と挑戦状を叩きつけます。

この時の私は、少し離れた出口付近の廊下から「何事か?」と背伸びして見ている客の役でした。

奥からカメラがこちらを向いているのが分かりましたが、パンフレットにあるこの画面のとおり判別することは難しいです。
もう一つ、二階のロビーで千早がクィーンに「来年ここで一緒にかるたしようね」と声をかけるシーンにも呼ばれました。
私の役は階段に向かって歩きながら「何事?」と二人に目をやる通りすがりの客です。
このシーンでは神戸から来ているという若い男性と協力して、巧く映ることが出来るよう彼女のセリフに合わせて歩き始めのタイミングを測りながら演じておりました。
予想では広瀬すずさんの後ろを我々二人が横切るものと思っていましたが、いくら目を凝らして見ても私の姿は映って無かったです。
でも、一瞬だけ彼女の後ろを通り過ぎた男性の服装は確かにあの時一緒に行動したあの青年のものでした。
【僥倖】
この日は参加人数が大幅に少なかったせいで何度も何度も出番が回ってきました。
そんな中、私は図らずも広瀬すずさんに声をかけてもらえるという幸運に恵まれたのです!。
玄関先で原田先生を両脇から支えて歩く千早と太一の横を通って外へ出ようとする男性客の一人を担当したのですが、この時私は広瀬すずさんのすぐ右となりに配置されていたのです。
私が自分の靴を手前に用意しようとした場所と、広瀬さんが自分の履物を置こうとしたところとが被ってしまいました。
次の瞬間、彼女がニッコリ微笑んで「あ、お先にどうぞ」と声をかけてくれたのです。
これには思わずガッツポーズしてしまいました(笑)。
基本的にこちらから出演者に声かけすることは厳禁なのですが、向こうから声をかけてくれるのは不可抗力ですからスタッフさんも何も言いません。
これには他の皆さんから大いに羨ましがられたものでした。
・・・が、映画本編では(試合シーンと同様)私の姿はフレームから綺麗に外されてしまっておりました。
無念!。

こちらはこの日のロケ弁当です。
予定より参加人数が大幅に少なくて余ってしまったとのことで、希望者は2個もらえることになりました。
当然私も2つ平らげましたよ。
弁当2個分くらいはタップリ働かせていただきましたから(笑)。
【雨の夜】

「千早、好きや。」
夜からの撮影は、突然新が千早に告白するシーンです。
あまりの出来事に千早は目を見開いたまま気を失ってしまいます。
原作単行本の23巻の名場面です。
ごく一部を除いて私たちエキストラの出番はありませんでしたが、実はこの重要なシーンの撮影は参加者全員部屋の隅で見学させてもらっていました。
実はこの日の夕方からは大変な土砂降りになってしまい外での待機が不可能になったため、急遽エキストラ全員が勧学館内部で撮影風景を見学させてもらえることになったのです。
私たちは、本番だけでなくリハーサル中も息を殺しながら若い俳優さんたちの演技をじ~っと見つめておりました。
この直後の広瀬さんの目を見開いたまま気絶する演技も大したものでしたが、私としてはそれを目撃してオロオロする奏ちゃん(演:上白石萌音)が可愛くて可愛くて仕方がありませんでした(笑)。
上白石萌音さんはこれがこの日最後の撮影シーンだったので、監督の「OK!」が出た瞬間我々エキストラ全員から萌音さんに対して惜しみない拍手を送らせていただきました。
ちなみにこのシーン、窓の外が真昼のように明るく輝いていますが実は夜の10時頃に撮影されたものです。

全ての窓の外にはこんな風に巨大なライトが設置されていて、常に同じ昼間の状態を作り出していました。
プロの照明さんって本当に凄いです。
(この写真は夕方の空き時間にスタッフさんの目を盗んで撮ったものです(謝))
【夕食】
人手不足もあってか、撮影はその後午後11時過ぎまで続きます。
スタッフさんが緊急で出してくれた夕食がこちら。

吉野家の牛丼弁当です(笑)。
「ショボい晩飯だな~」と思われるかも知れませんが、限られた予算の中から晩御飯を用意してくれるだけでもありがたいものです。
『ちはやふる』のスタッフさんたちは、常に我々エキストラにも気を使ってくれていたように感じています。
【ご褒美】
終電や翌日の仕事の都合などで帰らなければならなくなった人も多く、最後まで残ったのは私を含めて十人ほどだけでした。
その残った者たちには帰り際に大きなご褒美が用意されていました。
撮影終了後、最後まで残った私たちに対して広瀬すずさんと真剣佑さんの二人が直接お礼を言いに来てくれたのです!。
主演女優自らがエキストラに声をかけてくれるなど、滅多に無いことです。
この幸運に感謝しつつ、「すずちゃん、なんていい子や」とひたすらデレデレしてしまいました(笑)。
最後の最後までお手伝いした甲斐がありました。
全てが終わって外に出てみると、雨は降り止むどころか文字通りバケツをひっくり返したような土砂降りと化していました。
これではとても歩いて大津京駅までは行けません。
またもや気を回してくれたスタッフさんが自分たちのホテル行きを遅らせてまで我々をバスで送ってくれました。

この日の景品は前日と色・デザイン違いのTシャツです。
もしかすると登場するチーム数と同じだけの種類が用意されているのかも知れません。
コンプリートするにはそれこそ全日程に参加しないと不可能でしょうね。
前日と同じカプセルホテルに入り、翌日の撮影に向けて身体を休めました。
【6月2日(金)】
前夜の大雨が嘘のように晴れ上がった翌日。
この日の撮影内容は、前日まで撮っていた二階「浦安の間」での試合の模様を、同時刻に一階の大ホールでモニターで見ている観客の役でした。

原作マンガでいうと単行本23巻のこの場面に相当します。
しかし、試合シーンが原作とは異なる展開になっていたためこのシーンも若干の変更が加えられていたようです。
映画では、壇上には解説役(演:志賀廣太郎)と司会の女性が座っていました。
正面右側の大型モニター画面はあとで試合シーンをはめ込み合成するためにグリーンバックが張られていました。
この日の私の役は、客席で観戦しているスーツ姿の客です。
私の座り位置は会場のあちこちを移動させられた挙句の果てに最後列の通路側になりました。
ふと周りを見渡すと、参加者のほとんどが昨日まで一緒に試合シーンを撮った人たちばかりです。
同じBグループで最後まで頑張った人や、色々アドバイスしてくれたベテランさんもいらっしゃいました。
しかし、これでは二階で試合を観戦している人が同じ時間に別室に居ることになってしまいます。
おそらく前方の列にいる新や瑞沢高校かるた部の面々が中心で、我々エキストラはあまり目立たないように撮るのだろうと考えていました。
それならば仕方がない。
目立たないなりにも精一杯それらしい振る舞いをしてみせましょう。
・・・と、思っていたら、助監督さんから「試合の途中に部屋に入って来る男の役」をやってくれと言われました。
トイレかなにかで席を外して部屋に戻った瞬間、モニターを見ている観客からどよめきが起きて「え?何?何があった?」と隣の人に尋ねるという動きです。
おそらく広いサイズで撮るので顔は関係ないのでしょう。
でも、映りは小さくても動きで私を表現することは出来るはずです。
一緒にこの役を演じることになったベテランエキストラの方に色々アドバイスをいただきながら、私なりに演じてみました。
【声録り】

室内のシーンは比較的早く終わりました。
昼食後は「声録り」です。
「声取り」というのは客のワイワイガヤガヤの声だけを録ることです。
実は前日の撮影途中から物凄い土砂降りになってしまったため、雨の音が入ってしまって録音NGになってしまったのだそうです。
これには顔は関係ないので私も参加させてもらいました。
シーンとしては目人の元へ新が駆け込んできたところで、彼を止めようとする報道関係者とその場に居た客たちのセリフです。
「おい、取材中だぞ」
「なんだこの子は?」
「おい、あれ綿谷新じゃないか?」
「あの綿谷名人の孫の?」
「あれって挑戦状やな」
「名人、声ちっさ」
「名人!もう一度お願いします」
「引退は撤回するんですね?」
・・・と、こんなセリフを各自アドリブで口々に叫んでおりました。

この日もらったTシャツはこちら。
しかし「愛」って・・・。
53歳のおっさんには酷なデザインですな(笑)。
【判別不能】

そして、こちらがその場面です。
階下の大ホール(朝日の間)では大勢の観客が集まってモニター観戦が行われています。
同時中継で周防名人の引退宣言を聞いた新は、思いつめた表情で部屋を飛び出し二階の名人のところへと駆け出して行きます。
私は新の奥に座っているスーツ姿の客です。
判別不可能なくらいピントが合っていませんが、この場所にいたことは間違いありません(涙目)。
映画の冒頭シーンでは、内容そっちのけで(笑)自分と当日ご一緒した皆さんの姿を必死に探しながら見ておりました。
しかし・・・。
2カット!?
え?・・・3日間の撮影で2カットですか?。
それも一瞬だけフレームインするシルエット気味の横顔と、顔も判別出来ないほどのピンボケ状態だけとは・・・。
そりゃないっスよ、小泉カントク~!。
まあ、それでも出演場面そのものが丸ごとカットされていた『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』よりははるかにマシだと思うことにいたしましょう。
あの楽しかった三日間がほとんど形に残らなかったのは残念ですが、気を取り直して次の出演場面に望みを繋ぎます。
【6月12日(月)】

数日後、次のロケの当選通知が届きました。
今度も同じかるたの試合シーンのようですが、前回が冬の服装指定だったのに対し今度は夏服で来て欲しいとの事です。
これが映画終盤の全国大会シーンの一部であることは容易に察しがつきました。
参加時間は午前中と午後の班に分かれていて、最終の通知メールで私は午後の部に振り分けられることになりました。
少し早めに到着して受付待ちをしていると、ポンッと突然後ろから肩を叩かれました。
振り向くと、前回の撮影で色々とアドバイスをして下さった先輩エキストラさんのお一人でした。
「あっ、おはようございます!。」
「よう、毎度!」
「●●さん、今日は朝からですか?。」
「うん、でも俺らはもう終わりで君らと入れ替えになるみたいや。」
なるほど。
おそらく同じ部屋を使い、午前と午後でエキストラをごっそり入れ替えて別のシチュエーションを撮るのでしょう。
午後からの同じ班には、やはり前回の撮影でお世話になった別のベテランの方がいらっしゃって、その方ともご挨拶させていただきました。
こうやって何度もお会いしているうちに仲間意識が芽生えていくのでしょうね(笑。)
【よっしゃあああ!】

早めに来た甲斐あって、この日の撮影ではついに念願のムービー(TV)カメラマン役が割り当てられました。

この日の撮影は原作単行本30巻のこの場面に相当します。
新が福井で創部した藤岡東高校と前作のライバル校北央学園の団体戦試合で、敵前視察に来た端沢高校顧問の宮内先生(演:松田美由紀)と一年生の花野菫(演:優希美青)が藤岡東高校の実力に驚くシーンです。
余談ですが、藤岡という校名はおそらく福井県一の名門校:藤島高校をもじった名前だと思われます。
もちろん私には縁もゆかりも無い学校ですけどね(笑)。

これは、スタッフさんの目を盗んで撮った当日の私です(お腹の出具合が気になるなあ・・・)。
映画では顔もしっかり映っていますので、『ちはやふる-結び-』の中でこんな格好をしたTVカメラマンを発見したら「ああ、あれがトガジンか」と笑ってやってください。
ええ、そうなんです。
私、映ってます。
本職のカメラマン役で顔もしっかり映ってます!。
真剣な眼差しで地元・福井県のチームとそのキャプテン綿谷新の姿を撮り続けております。
自分史上、最もカッコ良く映画に映らせていただきました。\(^o^)/

映画封切り前に発表されたメイキング映像の中にも、ほんの数秒ですが私の名カメラマンぶり(笑)が映っています。
前の撮影でお世話になったベテランの方も、この日初めて会って親しくなった新聞カメラマン役の若い男性も私の記憶どうりの場所に位置しています。
さらに私のすぐ後ろにはこの試合を偵察しに来た宮内先生と菫が立っていて、彼女たちを狙うショットでは手前にいる私もかなりのアップになっていました。
興奮のあまりカット数を確認していませんでしたが、このシーンでは3~4カットはしっかり映っていたと思います。

ついでに記念品のTシャツも合計4枚になりました(笑)。
ありがとうございます、小泉監督!。
ありがとうございます、柳田カメラマン!。
そしてスタッフの皆さん、一緒に参加したエキストラ仲間の皆さん。
本当にありがとう。
お疲れさまでした!。
そしてご訪問いただいた皆様。
こんな長文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。