週刊映画鑑賞記(2018.5/7~2018.5/13) 『シェーン』『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』『レディ・プレイヤー1』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
ここ2ヶ月ほど続いていた過酷な連続労働も月曜日でようやく一区切り付きました。
これからしばらくの間、ヒマな時期に入ります(例年ならその筈です)。
「何か面白い映画はないかいな?」と思っていたら、いつの間にか今年も「午前十時の映画祭」が始まっていたではありませんか!。
5/8(火)
『シェーン』
(劇場:イオンシネマ金沢フォーラス)

福井では「午前十時の映画祭」をやってくれる映画館が無いため、金沢駅前のイオンシネマ金沢フォーラスまで遠征です。
『シェーン』を劇場スクリーンで鑑賞するのは今回が初めてです。
前回(最初)はおよそ四半世紀前、大阪で一人暮らしをしていた頃にレンタルビデオで観ました。
傍若無人な搾取者たちに悩まされる農民を助ける腕利きのガンマンの物語に、当時は「なんだか『七人の侍』の一人版みたいな話や」と思ったものでした。
多分これは、『シェーン』を借りて観た数日前に『七人の侍』リバイバル上映を観たばかりだったせいだと思います。

初めて観た時には農民を守って戦ってくれるシェーンを頼もしく思いながら観ていたように思います。
それはすなわち、シェーンに憧れ慕っていたジョーイ少年の視点でした。
しかし、50歳を過ぎておそらくこのまま死ぬまで地元福井に住み続けるであろう今の私には、流れ者の助っ人シェーン(演:アラン・ラッド)よりも土地を守ろうと孤軍奮闘する農夫のジョー(演:ヴァン・ヘフリン)のほうがより身近に感じられます。
やはり年齢や立場の違いで映画の見え方も変化するものなのですね。

さて、現在開催中の「午前十時の映画祭9-デジタルで甦る永遠の名作-」ですが、このあとも『地獄の黙示録』『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』『雨に唄えば』と再びスクリーンで見られる喜びを味わわせてくれる作品群が控えています。
当分の間、毎週金沢遠征が続くことになりそうです。
5/10(木)
『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル)

久しぶりに終日休業となったこの日のお楽しみは、前日に録画しておいたHDリマスター版『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の鑑賞です。

この映画、とにかく画が強いのです。
当時の東宝特撮スタッフのビジュアルセンスと細部へのこだわりに加え、合成技術が格段に進歩したことでこんな映像が全く違和感なく実写映像に入り込んできます。

東宝特撮には欠かせないメーサー殺獣光線車はこの作品が初お目見えですが、その原型は『モスラ』に登場した原子熱線砲です。
『モスラ』と『サンダ対ガイラ』は2002年の『ゴジラxメカゴジラ』の中では同じ時間軸上で起きた史実として扱われています。
このメーサー殺獣光線車は36年後の特生自衛隊に受け継がれ再出現したゴジラに立ち向かうことになるのです。
ついでに言えば、1970年代にはMハンター星雲の宇宙怪獣ガイガンや地底怪獣メガロも、ガイラを追い詰めたのと全く同じこの場所で迎え撃っていたりもします(笑)。

ストーリーの根幹は怪獣版「海幸彦山幸彦」で、人を襲って食う凶暴な弟ガイラを人間の優しさに触れたことのある兄サンダが力づくで止めようとするお話です。
そのため怪獣同士の格闘、いわゆる「怪獣プロレス」が盛大に繰り広げられますが、実はそのための基本設定において他の対決型怪獣映画とは一線を画しています。
例えば、『キングコング対ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』といった作品は、ゴジラ、キングコング、モスラといった単独主演作品があるスター怪獣同士のコラボレーションのようなものです。
また、キングギドラやガイガンやメカゴジラといったお馴染みの敵役怪獣たちにしても、ゴジラ世界に元々存在していたわけではありません。
(そんな中にもゴジラとがっぷり四つに組んでタイマン勝負したヘドラという個性派もいましたが・・・)
怪獣バトルを成立させるためだけに無理矢理な後付け設定が付加され続け、元来の『ゴジラ』の世界観も大きく歪められてしまったのです。
でも、『サンダ対ガイラ』における怪獣同士の戦いには、物語上の必然性がありロジックが確立されています。
バトルを繰り広げる2匹の怪獣を最初から対となる存在として描いた怪獣映画は、実はこの『サンダ対ガイラ』が最初です。
また、この構図を踏襲した映画は95年の『ガメラ 大怪獣空中決戦』まで登場していません。
『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』は、実は東宝怪獣映画の中でも1、2を争うエポックメイキングな作品なのです。

私が初めて『サンダ対ガイラ』を観たのは大学1年か2年の頃だったと思います。
当時急速に増えてきたレンタルビデオでした。
『フランケンシュタイン対地底怪獣』の姉妹編(続編とは異なる)という微妙な立ち位置の作品ではありますが、その点はあまり気にせず観てました
実は『フランケン~』については小学一年の時テレビで観る機会があったものの、そのあまりの不気味さに途中で投げ出してしまって結局最後まで見たことはなかったのです。
つまり、私はこの『サンダ対ガイラ』の方を観たことになるわけですが、もしも順番通り『フランケン~』を先に全編観ていたとしたら続きものとしてのちぐはぐさに当惑して評価は大きく変わっていたかも知れません。
初めて観た時の印象は、「見慣れたようでいて実はとても珍しい怪獣映画」というものでした。

実は『サンダ対ガイラ』の公開はあの『ウルトラマン』放映開始とほぼ同時期(1966年7月)なのです。
ウルトラシリーズでは巨人と巨人(ウルトラマン対●●星人等)が戦う絵面もそれほど珍しくもありませんが、東宝怪獣映画でシネマスコープの横長画面に二体の巨人(人型怪獣)同士の戦いが描かれる作品はこの『サンダ対ガイラ』一作しか存在しません。
前作『フランケンシュタイン対地底怪獣』で巨人と4つ足怪獣の戦いを描いた円谷特撮が今度は巨人同士の激突を描いたことは、当時並行して作られていた『ウルトラマン』と決して無関係ではないはずです。

そんなことを考えながら見ていたら、なんと画面の片隅にこの人のお姿が!(笑)。
古谷敏さんです。
この後古谷さんはスーツアクターとして、今や日本人で知らない者はいないウルトラマン役を演じることになるのです。

・・・さて。
今回の日本映画専門チャンネル・HDリマスター版『サンダ対ガイラ』も目の醒めるような高画質に仕上がっていました。
しかし、所有している東宝版ブルーレイと見比べてみると、『ラドン』の時と違って一部優劣付け難い部分も多かったです。

「映像学科22番」恒例の画質比較。
まずは当然、水野久美サマから。
HDリマスターの素晴らしさは一目瞭然です。
血色が良くお肌もスベスベ、ピンクの唇もつやつやです。
ブルーレイ版は暗部を持ち上げ気味で髪の毛一本一本がよく見えますが、トータルとしての映像としてはリマスター版の圧勝です。

ガイラに捕まって食べられてしまう気の毒な空港女性職員(演:田辺和佳子)。
お顔が映ったのはわずか3カットだったにも関わらず強烈に印象に残っている女性です。
この映像もコントラストの違いによって見え方が大きく変わっていて、影が濃く見えることで彼女の恐怖の表情がより際立ちます。
またリマスター版は肌の血色も良く、こちらのほうが美味しそうに見えますね。(不謹慎でスミマセン)

余談ですが、彼女を食べ終えたガイラがペッと何かを吐き出した次のカット。
海外版では噛み砕かれたボロボロの衣服が映っていたそうですが、日本公開版では何故かいきなり花束が映し出されます。
昔これを見て「ポルノ映画で局部隠しのため手前に置く花瓶みたいや」と笑った大馬鹿者がおりましたが、これはそんな単純なものではありません。
公開当時、この映画は夏休みの子供向け映画だったのです。
(同時上映はアニメ『ジャングル大帝』と人形アニメ『鶴の恩返し』)
血まみれになった人の残骸なんか映したりしたら、見た子供たちに大変な心的障害を与えてしまいます。
古い映画を観る場合、公開された当時の環境や世相なども考え合わせて観るとよりよく理解が深まるはずです。
また、本多猪四郎監督は犠牲となった女性職員への哀悼の意味も込めていたに違いない、とも思っています。

HDリマスターのコントラストが高過ぎるのか東宝ブルーレイが暗部を持ち上げ過ぎなのかは分かりませんが、この場面に関してはブルーレイ版の方が見易かったです。
夜、森の樹木の間から自衛隊の動きを伺うガイラ。
HDリマスター版は暗くて顔がよく見えないうえに手前の樹木が黒くつぶれ気味でデティールが分かり辛いです。
反面、ブルーレイは顔も樹木の細部もよく見えますが、やはり暗部を持ち上げ過ぎのせいでメーキャップも小道具の樹木も作り物っぽく見えてしまいます。

でも、東宝ブルーレイの最大の問題点はこれです。
『ラドン』もそうでしたが、デジタル処理でミニチュアを吊っているピアノ線や固定用フックを消してしまっているのです。
この処理を行った技術者たちには、昭和の特撮映画を楽しむために必要な”見立て”のセンスが欠落しているようです。
ピアノ線で吊ったヘリは時折ピアノ線を支点とする不自然な動きをすることがありますが、我々観客はピアノ線の存在を認識しつつ脳内でピアノ線を消去して映像世界を楽しむのです。
観客の脳内補完能力と一体となっているのが日本の特撮映画です。
こうして放映されるたびに性懲りもなく見返してしまうほど好きな映画ですが、不満が無いわけではないのですよ。

『フランケンシュタイン対地底怪獣』の続編のようでありながら、なぜ主要キャストが前作と同じ水野久美/ニック・アダムス/高島忠夫のトリオではないのか?、とか。
(いっそ3人とも入れ替えるか、水野久美さんの役が前作と同じ”戸上季子”であってくれれば脳内補完も容易だったと思います)
フランケンシュタインというのは死体を使ってモンスターを作った科学者(原作では学生)の名前なのに、サンダとガイラのことをフランケンシュタインと呼称するのはおかしい!・・・と、今更なツッコミをしたくなることとか(笑)。

外国人歌手のキップ・ハミルトン女史が、(失礼ながら)私の目にはどうしても美しく見えないこととか。
しかも彼女の歌のシーンが『ゴジラ対メカゴジラ』の「ミヤラビの祈り」みたいに無駄に長くて結構苦痛だったりするとか(笑)。
それでもこうしてリマスター版が放送されるとなると、やっぱりソワソワしてしまって見ずにはいられない大好きな映画なのです。

突然ですがこの写真大好きなんですよね~。
中島春雄さんも関田裕さんもお茶目な感じで、当時のスタッフ・キャストが楽しんで作っていることが伝わってきます。
出来るものなら、一度だけでも劇場の大スクリーンで仰ぎ見たいものです。
(その時は是非『フランケンシュタイン対地底怪獣』とのカップリングで)
こういうプログラムも、京都みなみ会館ならとっくの昔にやってたんだろうな~。
5/11(金)
『レディ・プレイヤー1』
(劇場:109シネマズ エキスポシティ)

この映画に乗れるか乗れないかは、その人が80年代をどう過ごしたかに左右されると思います。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が、若い80年代の観客だけでなく1950年代に青春時代を過ごした人たちからも支持されたのと同じ構図です。
しかし、80年代が青春ど真ん中だったという人たちの反応にはどうやら2種類あるみたいですね。
一つは「懐かしい!、好きだったあのキャラにこんな活躍をさせてくれて嬉しい!」と、まるでゲーム『スーパーロボット大戦』を遊ぶかの如く素直に楽しんでいる人たちです。
幸か不幸か、私はこちらのタイプでした。
「自分がこの世界に入り込むならアバターは『カリ城』のルパン、レースで乗る車はもちろんフィアット500。巨大化するなら絶対帰ってきたウルトラマン!。乗り込む巨大ロボットは原作版ゲッターロボで母艦は宇宙戦艦ヤマト!。」
こんな風に整合性なんか完全無視して、想像(妄想とも言う)を膨らませながら楽しんでおりました(笑)。
もう一つは、オリジナル作品を愛するあまり「元の映画とキャラクター性が全然違う!」と目くじらを立てる人たちです。
その熱い想いは私も否定しません。
例えば、あの優しかったアイアン・ジャイアントが、殺戮兵器形態に変形しないまま目からビームを撃ったり敵メカを踏み潰したりする姿にかなりの違和感を覚えたのは確かです。
例えば『シャイニング』のようにスピルバーグ監督自身の思い入れが強い作品と、必ずしもそうでない作品との温度差は確実にありました。
これは想像ですが、モブシーンにチラッと映っているだけといった扱いのキャラは、末端のCGスタッフが自分の好みで描き込んでいるだけのような気がします。
現在CGを生業とするスタッフはおそらく20代から30代と思われます。
70~80年代カルチャーをリアルタイムで体験した世代ではないため、監督や原作のコントロールが無いところではそれこそ『スーパーロボット大戦』のガンダムとマジンガーが混在する違和感も気にならないのでしょう。
この「オリジナル(当時)体験の有無」による受け取り方の差異については如何ともし難い気がします。
今回2度目を観終えて頭に浮かんだのは、ファミコン全盛期当時の子供たちの憧れだった”高橋名人”のこの言葉でした。
「ゲームは一日一時間」
「外で遊ぼう元気良く」
映画のラスト。
仮想現実世界<オアシス>の運営権を手に入れた主人公は、週のうち2日を休業日に定めてリアル世界で生きることを決定します。
「美味いメシは現実世界でしか食えない」
オアシスの創造主ハリデーの言葉は、そのまま高橋名人の言葉に重なり、スピルバーグのメッセージでもあると思います。
私はこれを”お説教”とは思いません。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』🈠
(劇場:109シネマズ エキスポシティ)

う~む。
「全滅」とまではいかないまでも「壊滅」でしたねえ。
上映開始からもう2週間が過ぎたとはいえ、さすがにこの内容をネタバレすることは私がいかに無頓着な人間でも出来ません(笑)。
それと、実は私は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と直接の前作にあたる『マイティ・ソー/バトルロイヤル』を見ていないため、あまり内容を語れるような立場でもないと思っています。
主要ヒーローの●にざまについても、サノスの娘であるガモーラとスパイダーマン以外はあまり印象に残っていません。
というわけで、今は大雑把な話に留めておきます。
単独主演作品がいくつかあって、それらが一堂に会して共通の巨大な敵に立ち向かう。
この『マーベル・シネマティック・ユニバース』の構造は、特撮映画ファンの私の目からはまるで東宝怪獣映画の推移を見ているようでなりません。
まず『ゴジラ』『ゴジラの逆襲』『空の大怪獣ラドン』『大怪獣バラン』『モスラ』と単体作品が続きます。
『モスラ対ゴジラ』で怪獣たちのクロスオーバーが始まり、やがてキングギドラやX星人、キラアク星人といった地球外の敵に対する共闘へと続き最後はオールスター総力戦へとなだれ込みます。
つまり私は、この『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はマーベル版『怪獣総進撃』ではないのか?と思っているわけです。
『サンダ対ガイラ』にボリュームを割きすぎてとんでもなく長くなってしまいました。
(単体記事にすれば良かった・・・反省)
来週の日曜日(20日)にはWOWOWで『モスラ』が放映されるというので心なしかウキウキしてるのかも知れません(笑)。
こんな長文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。