週刊映画鑑賞記(2018.5/28~2018.6/3)
CATEGORY週刊映画鑑賞記
トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。

6月分のWOWOW予約を入れてる最中、レコーダーの録画可能時間がいつの間にやら残り24時間を切っていることに気が付きました。
ええ~?。
去年の夏、6TBのHDDに換装した時には555時間もあったのに?。
録るだけ録っておいて観ないまま放置してきた作品がざっと360本・・・。
このうち約2TB(150時間)分は以前使っていたレコーダーから移動したものですが、一年足らずで貯まりに貯まったこの本数には我ながら驚いてしまいました。
近々レコーダー録画物の断捨離をしなければなりませんが、とりあえず時間の長いモノの中から面白そうな作品をチョイスして観ていく事にします。
比較的時間に余裕があった火曜日に観たのは、総尺3時間オーバーのこの作品です。
5/28(火)
『怪談』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)

「4話のオムニバスだし、途中で眠くなったら切りのいいところで翌日に持ち越せばいいや」と軽い気持ちで見始めました。
・・・が、しかし。
ごめんなさい、私、この作品を舐めておりました!。
「黒髪」

「なんだか『雨月物語』とよく似た話だな。」というのが正直な感想です。
それでいて怪談というよりお化け屋敷的な見せ方をしていて私の好みではありません。
終盤の三国連太郎のビビり演技が少々やり過ぎな感があり、この時点では「次の話を観たあたりでもう寝よう。」と考えておりました。
最初に『雨月物語』を思い浮かべてしまったのが良くなかったのかも知れません。
「雪女」

「これ観たら寝よ」と思いつつ見始めたものの、冒頭の山小屋シーンで完全に引き込まれてしまいました。
うわ、怖ええええええ!
最初、この雪女があの『悪魔の手毬唄』の岸恵子さんだとは気付きませんでした。
このあと、人間の姿で再登場する岸さんはもの凄くチャーミングなのですがね。

この映画のほとんどはスタジオ内のセットで撮影されています。
当然、背景はホリゾントへの書割りになるわけですが、これがまたリアルさを度外視していて実に絵画的です。
太陽がまるで登場人物を見つめている目玉であるかのような画作りをしていて、常に映像内に第三者(物の怪?)の存在を匂わせているようです。
こんな色使いや画作りを前にもどこかで見たな・・・と考えているうち思い出しました。
黒澤明監督の『どですかでん』です。
モノクロにこだわり続けた黒澤監督は初カラー作品『どですかでん』でかなり極端な色の演出をしていました。
そして、この『怪談』は小林正樹監督にとって初のカラー作品です。
白黒映画で名声を得た監督たちがカラー映画へのアプローチに苦心する様子が垣間見えた気がします。
「耳無芳一の話…」

とにかく美術さんのお仕事が素晴らしい映画です。
この源平合戦のシーンもイラストに実写俳優を合成したかのような画作りになっています。
絵物語を子供に語って聞かせているイメージで作られているのかも知れません。

芳一役の中村賀津雄さん。
観ている間は気付きませんでしたが、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の「ゴジラは赤くねえ!」のおっちゃんでした。
「茶碗の中」

勝手に他人の茶碗の中に現れてへらへら笑うという物の怪も迷惑千万ですが、いくら暑いからってそれを一気に飲み干してしまう男の神経もいかがなものかと思います。
小泉八雲が思い付きで書き始めてオチをつけないまま放置した話に、映画化に際して結末を付け足したとのことです。
5/31(木)
『上意討ち 拝領妻始末』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)

暇を出された主君の妾を息子の嫁にと押し付けられ、孫娘も出来てようやく打ち解けた頃にお家の事情で再び大奥に戻せという。
封建時代のこんな理不尽極まりない仕打ちに対し、忍耐に忍耐を重ねた伊三郎(演:三船敏郎)がついに己を開放して主命に対して牙を剥く。
こんな忍耐と逆襲とのコントラストが見事で痛快な作品です。
しかし、この映画の撮影中主演の三船敏郎さんは小林正樹監督の演出方法に対してかなり苛立っていたそうです。
一台のカメラで撮影する場合、通常はスケジュールを有効活用するために「中抜き」と呼ばれる撮影手順を取ることが多いです。
例えばAとBの対話シーンだとすると台本の順序にとらわれることなく、先にカメラを向けてセッティングをしたAのセリフやリアクションをまとめ撮りして、次にカメラをBに向けてBの映るシーンをまとめ撮りします。
これによってカメラや照明のセッティング時間を大幅に節約することが出来るわけです。
ところが、小林監督は愚直なまでに台本通りの順番で撮っていく「順撮り」にこだわっていたのです。
1カット毎にカメラや照明などのセッティングを動かすのですから、当然通常の映画撮影の倍以上の時間がかかっていました。
撮影時間がかかるということは、同時にスタッフの拘束時間も増えるわけで制作費を圧迫することにも繋がります。
三船さんは主演俳優であると同時に制作会社:三船プロダクションの社長でもあるわけですから、いくら監督のこだわりとはいえこんな時間とお金の無駄使いをされてはたまったものではありません。
しかし、人格者であった三船さんは現場の雰囲気を壊さないためにも監督に直接文句を言うことは避け、ひたすら我慢に我慢を重ねていたのだそうです。
この作品の耐える主人公の姿は、まさに撮影中の三船さん自身そのものだったのですね。

その三船さんの怒りが爆発するクライマックスシーン。
無理難題を押し付け続けてきた憎たらしい神山繁を串刺しにするシーン。
この三船さんの形相は、実は小林監督に対して向けられたものなのかも知れません。
神山さんはこの時、自分に斬りかかってくる三船さんの歯ぎしりが聞こえてゾッとしたと語っていました。
でも、もしも小林監督の行動が世界のミフネからこの鬼気迫る演技を引き出すための演出の一環だったとしたら?。
黒澤作品では見られなかった三船敏郎が見られる作品であることも確かなことなのです。
レコーダー内の小林正樹監督作品はまだあと『切腹』が残っているのですが、こうも濃い作品ばかり3本も続けて観たら胸焼けしてしまいそうです(笑)。
ここらで甘いデザートでも・・・ということで。
6/2(土)
『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』
(ホームシアター:WOWOW録画)

この『宇宙小戦争』と『海底鬼岩城』は物語の一部に”死”の影がちらついているためか、今に至るもリメイクされていません。
実は、藤子・F・不二雄先生が自ら原作・脚本を手掛けた8本の劇場版『ドラえもん』の中にあって唯一好きになれない作品です。
冒険に出かけてたまたま戦争に巻き込まれる話はいくつかありますが、今作では(友達を助けるためとはいえ)最初から戦争することを目的にピリカ星へ向かいます。
スモールライトで小さくなって改造したおもちゃの戦車に乗り込んで戦争するという話ですが、ドラえもんたちが妙に好戦的に描かれてなんだかとても”らしくない”のです。
もちろん、のび太たちが撃墜する敵機は無人機という設定になっているので誰も殺してはいませんが、なんだか戦闘をゲームのように楽しんでいるようにも見えて藤子先生の作品にしては異質な感じがします。
スネ夫が”死”に怯えたり、”死”を覚悟して戦いに赴くことを「勇気」として描いたりと、まるで戦意高揚映画状態です。
(それでいて最後の逆転劇は「先生、そのオチはあんまりですよ~!」と脱力することうけあいです)
ところで・・・。
『ドラえもん』の声優陣が総入れ替えになってもう13年も経ったのですね。
このところWOWOWで録画した大山のぶ代さん時代の映画『ドラえもん』を立て続けに観ていますが、不思議なもので全然違和感を感じません。
旧作放映の前後には水田わさびさん(現在のドラえもん役声優)の声で番宣が入りますが、そちらも全く抵抗なく”ドラえもんの声”として認識できています。
慣れてしまうものなのですね。
昔はドラえもんの声といえば大山のぶ代さん以外想像も出来なかったというのに・・・。
そんなことを考えてしまったのは、このニュースを見て驚いたせいです。

しんちゃん役の矢島晶子さんご自身から降板を申し出たそうです。
あの独特の声と言い回しは、かなり無理をして演じておられたということなのでしょうか?。
『サザエさん』のカツオや波平のように声優さんがお亡くなりになられての交代は別として、あれだけ個性的で有名なキャラクターの演者が番組継続中に替わるのは『ドラえもん』以来ではないかと思います。
矢島さんの後を引き継ぐ方はさぞ大変でしょうね。
アニメ『クレヨンしんちゃん』はこれまで劇場版しか見たことがなかったのですが、TVアニメも矢島さんが降板されるまで(6月いっぱい)に見納めをしておきましょうかね。
来年の劇場版はおそらく新しい声優さんに替わっているはずですから。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
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