週刊映画鑑賞記(2018.6/11~2018.6/17) 『七人の侍』『犬ヶ島』『キングコングの逆襲』『妖星ゴラス』
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
先週は、不覚にも体調を崩してしまいほとんど映画を観られませんでしたが、その反動もあって今週は合計4本もの映画を鑑賞しております。
しかもそのうち2本はお隣石川県まで遠征したうえ、一日2本の映画館ハシゴ!。
さらに木曜日にはテレビドラマへのエキストラ出演まで果たしました。
なかなか充実した映画ライフでしたが、また疲れが貯まってダウンでもしたら元も子もありません。
用心用心・・・。

現在開催されている「午前十時の映画祭9」。
残念ながら私の住む福井県ではどの映画館も上映してくれませんが、お隣石川県まで足を延ばすことを考えればイオンシネマ金沢フォーラスさんにて観ることが可能です。
先月も往年の名作西部劇『シェーン』をスクリーンで鑑賞してきました。
今月は2年ぶりに私の生涯ベスト10作品が再上映されます。
6/11(月)
『七人の侍』(午前十時の映画祭9)
(劇場:イオンシネマ金沢フォーラス)

私にとってオールタイム・ベスト10映画の一つである『七人の侍』。
今まで劇場・TV放映・パッケージソフトの全ての媒体を合わせて一体何回見たことでしょうか?。
この作品についてはいつか必ず自分なりの文章にまとめなければならないと思っていますが、観返すたびに視点や感情移入する人物が変化して新しい面白さを発見出来てしまう作品であるため一体どこから手を付ければいいのやら・・・?。
「自分の血肉になっている」と言っていいほど好きな映画なのですが、今回はあえて”気になっている部分”についていくつか書いてみましょうかね。
ここに挙げた3点はどうしても脳内補正が出来ない部分なのですが、それで『七人の侍』の評価が下がることはありません。
むしろこのくらいの粗があってくれたほうが「人間が作ったもの」と思えて安心出来るというものです(笑)。
■与平に米を投げつける利吉

侍を雇うための大事な糧である米を盗まれてしまった与平に、激怒した利吉は余った僅かな米を与平に投げつけます。
このシーンは初めて観た時からずっと気になっていました。
いくらカッとなったとはいえ毎日丹精込めて米作りをしている百姓が大切な米を人に投げつけたりなんかするでしょうか?。
私の住む福井県は米作農家が多く、実は私の家も曽祖父の代までは米農家でしたから特にそう感じます。
黒澤監督は侍たちに主眼を置いて作り始めたせいか百姓に対しては思慮が浅く、しかも若干小馬鹿にした態度で描いているようにも思えます。
そのことに対する自戒の念も込めて百姓上がりの侍(自称):菊千代が登場するわけですが、この場面の段階では菊千代はまだ物語に絡んできてはいません。
■編集ミス

野伏のアジトの位置を知った侍たちは奇襲をかけて敵の出鼻をくじく作戦を立案します。
下を向いて熟考する勘兵衛は、溜めに溜めた後やがて決断して一瞬顔を上げます。

ところが次のカット頭では勘兵衛は再び下を向いていて、そこから再び顔を上げて「よし、やろう」と決断します。
つまり、カットが連続する瞬間、勘兵衛が二度顔を上げるアクションをしてしまっているのです。
おそらく勘兵衛の一連の芝居を2つのサイズで撮った素材から2カットに分けて編集したものと思いますが、広い画のカット尻で勘兵衛が顔を上げる動き(ほんの数コマ)が残っているのに気付かずに次のカットに繋いでしまったのでしょう。
重箱の隅をつつくような本当に細かいツッコミですが、日頃自分も「映像編集」という作業をしている者としてはどうしても気になってしまうのであります。
■瀕死の平八を地面に叩きつける久蔵

野伏のアジト襲撃の際、利吉を庇って重傷を負った平八。
利吉が自分の妻があの中にいたことを吐露して泣き伏した瞬間、それまで瀕死の平八を支えていた久蔵が奇異な行動を見せます。
利吉の言葉に驚いた久蔵は、まるで平八などどうでもいいかのような態度で彼の傷ついた身体を地面に打ち捨てたのです。
そのまま平八は絶命し、利吉に気を取られていた久蔵も慌てて平八を抱き起そうとします。
この久蔵の謎行動だけは、どう頑張っても脳内補完することが出来ません。
おそらく利吉の吐露と平八の絶命を同時にしたかったことから、その両方に関わっている久蔵(演:宮口 精二)の演技にそのタイミングを託したものと思われます。
ところが、利吉に気を取られた久蔵が思わず平八から手を放してしまう演技が強くなりすぎたのではないか?。
今はそう考えながら観ることにしております。

今回「気になる部分」を書きましたが、口直しにもう一度『七人の侍』を観返したくなってしまいました(笑)。
基本的に「午前十時の映画祭」は1週間ごとにプログラムが変わるのですが、『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』の黒澤作品三本に関しては2週間連続上映されるようです。
来週も金沢へ行くくらいの時間は確保出来るはずなので、もう一回観に行くつもりです。
『犬ヶ島』(字幕版)🈠
(劇場:ユナイテッドシネマ金沢)

『七人の侍』鑑賞から4時間ほど間をおいて、「午前十時の映画祭」と同じく福井では上映されないこの作品を観ることにしました。
せっかく金沢まで来たのですから、福井では見られない映画を観なければ損です。
ここ最近、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』や『ぼくの名前はズッキーニ』など、良質な海外製人形アニメーション作品が続出していることからこの作品にもかなり期待をしておりました。
・・・が。
う~む。
私、この作品は駄目でした。
人間にも犬にも、全てのキャラクターにまるで感情移入が出来ないのですよ。
一番困ったのが、主人公:小林アタリ少年を助ける5匹の犬のうちチーフ以外の4匹の個性が判別出来ないまま終わってしまうことです。
それぞれ見せ場もないまま、ダラダラと会話劇が続く印象で途中で睡魔に襲われてしまいました。
声の出演には『ゴーストバスターズ』のビル・マーレイや『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムなど錚々たる顔ぶれが揃っていましたが字幕ではその個性が出ていなかったのかも知れません。
また一応日本語を喋るアタリや小林市長もその言葉はたどたどしくて聞きづらく、作品世界へ没入することを拒まれた気がします。
『犬ヶ島』をこれから観る方には日本語吹替え版のほうをお勧めします。
ストーリーの分かりづらさはともかく、少なくともキャラクターへの理解は出来るのではないでしょうか?。
6/12(火)
『キングコングの逆襲』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)

1967年公開作品。
円谷英二監督が特技監督を務めた最後の怪獣映画です。
この作品の前後から特技監督のポジションを有川貞昌さんに譲り、円谷監督自身は特技監修として参加するとようになりました。
そう考えると、観ながら思わず姿勢を正してしまいそうになりますね(笑)。

コングVSゴロザウルスのシーンは、円谷監督が好きだった『キングコング(1933年)』のコング対恐竜と同じようなシチュエーションを再現しているのが分かります。
想像ですが、円谷監督はおそらくこれが最後の怪獣映画ということで、原点に返ってやりたいことを好き勝手にやったのではないでしょうか。
画面の隅々から楽しんで作っていることが伝わってきます。

私が『キングコングの逆襲』を初めて観たのは1983年夏、大阪の劇場でした。
当時特撮ブームが沸き起こっていたことから、『復活フェスティバル ゴジラ1983』と銘打って旧作の再上映が開催されたのです。
私は子供の頃から「東宝チャンピオンまつり」で怪獣映画に親しんでいましたが、小学校高学年の頃からは特撮映画の公開が無くなったせいもあって『宇宙戦艦ヤマト』などのアニメ作品に夢中になっていました。
そんな私の特撮映画好きの血を再びたぎらせてくれたのがこの『ゴジラ1983復活フェスティバル』だったのです。
『ゴジラ(昭和29年)』『キングコング対ゴジラ』『海底軍艦』『モスラ(昭和61年)』『空の大怪獣ラドン』を初めて観たのもこの時でした。
そして、その中にこの『キングコングの逆襲』もあったのです。

初めて観た時、この作品が面白かったか?と聞かれると正直なところ少し困ってしまいます。
なんだか初めて観る者に対してとても不親切な気がしたのです。
「みんな、ドクター・フーも彼が作ったメカニコングのことも当然知ってるよね?。余計な説明は飛ばしてお話を始めるよっ。」
・・・みたいな感じでいきなり、天本英世さん演じる怪しいマッド・サイエンティストを受け入れなくてはならなくなるのです。
例えるなら、『踊る大捜査線』のTVシリーズも劇場版も観たことないのに、いきなりスピン・オフの『交渉人 真下正義』を観てしまった時のような「置いてきぼり感」でしょうか(笑)。
そのため、私には「なんか雑な脚本だな~」という悪印象に繋がってしまったのでした。

その疑問が解けたのはずいぶん後になってからでした。
『キングコングの逆襲』は東宝とランキン・バス・プロダクション(アメリカ)との合作ですが、実はこの当時、同じくランキン・バス・プロダクションと東映動画との合作でテレビアニメ版『キングコング』も作られていたのです。
南海の孤島に暮らすキングコング。
コングと心を交わす人間の少年ボビー。
彼らは共に、世界征服を企む宿敵ドクター・フーと戦います。
しかもメカニコングも出てきます。
『キングコングの逆襲』は、1933年のオリジナル『キングコング』や東宝の『キングコング対ゴジラ』の続編ではなく、このテレビアニメ版『キングコング』と世界観を共有していたのです。
このテレビアニメ版の存在すら知らなかった私が「置いてきぼり」にされた気になるのも当然であります(笑)。

ところで・・・。
初公開当時の同時上映作品は、劇場版『ウルトラマン』でした。
TVシリーズから数本のエピソードを選んでつなぎ合わせた再編集作品です。
主演は黒部進さん。
ウルトラマンに変身する科学特捜隊のハヤタ隊員役であり、当時の子供たちの憧れの存在だったはずです。

ところが『キングコングの逆襲』では、その黒部進さんがドクター・フーの手下の一人として悪役を演じているのです。
しかも『キングコングの逆襲』公開日は1967年3月21日、そして『ウルトラマン』の最終回は同じ1967年の4月9日。
黒部さんがヒーローを演じる『ウルトラマン』はテレビでもまだ絶賛放映中だったのです。
このカップリングを観た当時の子供たちは、この世界の何を信じていいのか分からなくなってしまったに違いありません(笑)。

日本映画専門チャンネルがHD映像をさらにブラッシュアップしたHDリマスター版仕様ですが、これまでの作品と同様まさに目の醒めるような高画質に仕上がっていました。
以前放送された旧HDバージョンは、DVD-R(DL)に圧縮記録するAVCRECで保存していたため今回は画質比較を控えますが、一見しただけでも綺麗になっっていることがわかります。
それはリンダ・ミラーさんの美顔と、シーン毎に衣装が変わるマダム・ピラニア(演:浜美枝)だけ観れば一目瞭然であります。
このHDリマスターシリーズ、高画質の基準は女優さんをどれだけ綺麗に若々しく見せられるか?にあるようです(笑)。
6/13(水)
『妖星ゴラス』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)


今年4月から再開された日本映画専門チャンネルの「東宝特撮王国」。
これまでの5作品では目の醒めるような高画質化を果たしてくれていましたが、それに比べると今回の『妖星ゴラス』は画質向上の度合いが少なめだった気がします。
まるでアナログHD時代のビデオのように黒浮きが目立ち、全体の色調も茶色く退色した感じで補正しきれていない印象です。
もちろん過去のHD素材から傷や汚れを取り画面の揺らぎも補正して見易い画面にしてくれているのは確かですが、本来なら元になるネガテレシネそのものをやり直すべきだったのかも知れません。
それは日本映画専門チャンネルさんの責任ではなく、版権元の東宝がきちんとやるべき仕事だと思います。

本多猪四郎監督の特撮作品の中にあって『妖星ゴラス』は少々奇異なポジションにある作品だと思っています。
まず気になるのが、園田博士の孫:速男という少年キャラクターの存在です。
少年といっても中学生くらいですが、この速男くんは「地球にでっかいロケットを据え付けてゴラスから逃げる」というストーリーの根幹部分となるアイデアを出す重要な役割を担います。
さらに責任者の孫という立場も利用して南極基地の設備を見学するという、観客の代理人的役割も持たされていました。
実は本多監督作品で子供がストーリー展開に深く関わっている特撮作品は極めて稀なのです。
初代『ゴジラ』はもちろん、『キングコング対ゴジラ』から『怪獣総進撃』といったお祭り映画も東宝チャンピオンまつりの『メカゴジラの逆襲』でさえも、ストーリーを牽引するのは常に大人たちでした。
例外はファンタジー色の強い『モスラ』と、最初から子供の夢として作られた『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』くらいではないでしょうか。
どんなに荒唐無稽なSFや怪獣映画であっても、分別ある大人が物語を引っ張ってみせることで地に足の着いたリアルさを醸し出していたのが本多演出による初期昭和ゴジラシリーズの特徴であり、子供を主役に据えた昭和ガメラシリーズとの決定的な違いでもあります。
(昭和ガメラもあれはあれで好きなのですがね)

もう一つ奇異に映るのがこうした過度なお色気サービスシーンの存在です。
目には楽しいですが(笑)この映画の内容に即しているかといえば疑問が残ります。
オープニングシーンも、水野久美さんと白川由美さんが夜の湖畔でひと泳ぎしようと服を脱ぎ始める場面から始まっていました。
少年キャラクターに物語の開始を託したわりには大人の男性客を強く意識したお色気シーンも出てきたりして、対象とする客層が分かりづらい映画です。

さらにもう一つの違和感は、物語の途中で唐突に現れる怪獣マグマ。
南極大陸に設置されたロケット設備の一部を破壊し、計画に大きな遅延ダメージを与えます。
本来シナリオになかった怪獣登場シークエンスでしたが、東宝上層部の「特撮なんだから怪獣を出せ」というお達しで急遽制作されることになったとのことです。
そのせいでしょうか。
造形はダブダブのゴムで中の人間(中島春雄さん)の体形がはっきり分かってしまいますし、着ぐるみのファスナー部分もあからさまに分かる単純なもので、急ごしらえ感とスタッフの思い入れの無さばかりが目に付いて哀しくなってしまいます。
子供の集客を狙って急遽登場させられたマグマにそれほど活躍の機会が与えられるはずもなく、たった一機の戦闘機によってすぐに始末されてしまうのですが・・・。

この映画最大の違和感がこのショットです。
人間の手によって一方的に殺されたマグマの無残な屍をモロに映し出しています。
いくら上からのゴリ押しで無理矢理登場させられた怪獣とはいえ、こんな画まで見せるのはいくらなんでもあんまりです。
敬愛してやまない本多猪四郎+円谷英二コンビの手による映像とは思いたくないです・・・。

そのマグマを退治した国連VTOL機。
とても有名な話ですが、独特なシルエットを持つこの機体は・・・。

4年後の『ウルトラマン』に登場する科学特捜隊の主力戦闘攻撃機:ジェット・ビートルの原型です。
円谷英二特技監督が『妖星ゴラス』で作った国連VTOL機のミニチュアを持ち帰って『ウルトラマン』に流用したという説話がありますが、実際には同じ木型を元にして作った別個体でありビートルには独自のデザインが施されています。
お?
これで『キングコングの逆襲』と『妖星ゴラス』が繋がりました(笑)。
これまでのところ「東宝特撮王国」は月2本づつ放送されていますが、その2本には必ずなんらかの関連性がありました。
4月の『空の大怪獣ラドン』と『宇宙怪獣ドゴラ』の共通項は「石炭」でした。
5月の『フランケンシュタイン対地底怪獣』と『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は姉妹作。
来月放送の『美女と液体人間』と『ガス人間第1号』はどちらも「変身人間」もの。
でも今月の『キングコングの逆襲』と『妖星ゴラス』の共通項は今まで分からなかったのですよ。
それが2本とも視聴したことでようやく分かりました。

『ウルトラマン』繋がりだったのですね。
来週も観たい映画がいっぱいです。
「午前十時の映画祭」でもう一度『七人の侍』を観るチャンスがあるのに加えて・・・

現在なんとメトロ劇場さんで『銀河鉄道999』が再上映されているのですよ!。

これは現在福井市美術館で開催中の「松本零士展」とのコラボ企画らしいのですが、『999』を劇場で観るのは中学三年の時以来になります。
劇場版の鉄郎は15歳という設定になっていて当時の自分と同い年だったのですよ。
まさかもう一度映画館で見られるとは思ってもいませんでした。
楽しみです。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。