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映画と日常

週刊映画鑑賞記(2017.7/9~2017.7/15)

トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。

7/9(月)
『椿三十郎』(午前十時の映画祭)
(劇場:イオンシネマ金沢フォーラス)

『椿三十郎』チケット
月曜は、金沢で黒澤明監督の娯楽時代劇『椿三十郎』を観てきました。
先週の『用心棒』と同じ「午前十時の映画祭」のプログラムの一つです。

『椿三十郎』ポスター「御存じ三十郎と・・・」
『七人の侍』や『用心棒』と同じく、劇場でも何度も繰り返し観てブルーレイも持っているほど大好きな作品ですが、実は最近この映画に対してある疑問が生じてきておりました。

「この映画、やってることが酷すぎやしませんか?」

黒澤明監督の『椿三十郎』が、何度見てもめちゃめちゃ面白い映画であることには微塵の揺らぎもありません。
でも、ここ何年かの私は「罪もない人の死を面白がっている」映画に無意識のうちに嫌悪感を抱くようになってきているのです。
23年前の阪神淡路大震災現場での体験や、私自身も父の他界を経験したことがこの心境変化の要因かも知れません。

『椿三十郎』30人斬り
映画の中盤(始まってから1時間くらい)、三十郎は捕らえられた4人の若侍を救うためそれまで封印していた人斬りをしなければならなくなります。
まず先行した手練れの藩士3人を(騙し討ちで)一瞬で倒します。
さらに、わずか40秒ほどの間に屋敷内の藩士約30人を一人残らず斬り殺してしまうのです。
口封じの必要があるため、悲鳴を上げて逃げ惑うだけの見張り番にも容赦はしません。
一人斬るたびに肉や骨が砕かれる効果音が鳴り響き、辺りの壁や地面に血しぶきが迸ります。
まさに三船無双とも呼ぶべき物凄さで、ラストの室井(演:仲代達矢)との一騎打ちと並ぶ『椿三十郎』最大の見せ場です。

しかしですね・・・。
前作『用心棒』の相手は全員(三十郎曰く)「叩っ斬らなきゃならねえ」悪党ばかりでした。
でも、今回の30人は運悪くとばっちりを受けてしまっただけの気の毒な人たちなのですよ。
あの家臣全員が大目付たちの汚職を知ったうえで室井に従っているのだとしたら、私もこんな余計なことは考えずに素直に楽しめたと思います。
でも、おそらくあの人たちは上の連中の悪事など知る由もなく、ただ室井の命令に従っていただけだったはずなのです。
それを見張り番に至るまで皆殺しにするというのは、いかがなものかと思ってしまうのですよ。

映画『椿三十郎』の迫力は観客には大受けしたものの、その残酷さに対しては批判も相次ぎました。
黒澤監督は猛反省し、次の時代劇である『赤ひげ』では派手なチャンバラを封印してしまったくらいです。

『切腹』(1962)
また、こんな悪影響もありました。
『椿三十郎』の反響に気をよくした東宝は、9ヶ月後の『切腹』に本編内容そっちのけのまるでチャンバラ活劇みたいな安っぽいキャッチコピーを付けたのです。
『椿三十郎』のようなチャンバラ活劇を想像して劇場入りした観客は、あの『切腹』を観せられてさぞ困惑したことでしょう(笑)。

山本周五郎『日日平安』
元をただせば、『椿三十郎』の原作は山本周五郎の短編小説『日日平安』です。
全体のストーリーは同じですが、原作では気弱で腕もない浪人が主人公で、その奸智でたまたま知り合った若侍を助けてお家騒動を解決に導くという内容でした。
それを『用心棒』の三十郎を主人公に据えて脚本を書き変えたため、こうしたアンバランスな構成になってしまったのではないかと思います。

『椿三十郎』と『切腹』はそれぞれ別の原作を元に作られた映画ですが、実はこの二つの原作にはある共通点がありました。
『椿三十郎』の原作『日日平安』で主人公と若侍が出会ったきっかけというのが、なんと『切腹』の主題である狂言切腹なのです。
なんだか面白い一致です。
同じ年に公開されたこの2本の映画は(時代劇だけに)斬っても斬れない関係にあるのですね。



7/10(火)
『美女と液体人間』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル)
『美女と液体人間』ポスター あッ人間が溶ける!

先週じっくり腰を据えて鑑賞しようとしたものの、あの大雨の影響で電波が乱れたためキャバレー襲撃事件の辺りで中断していたHDリマスター版『美女と液体人間』です。
日曜日の再放送では正常録画出来たので再び腰を据え直して鑑賞しました。

『美女と液体人間』舞台は築地
この新聞記事のカットで初めて知ったのですが、この映画の舞台って築地だったのですね!。

築地市場移転騒動
築地といえば、昨年の「築地市場移転問題」が思い出されます。
市場の移転先予定地であった豊洲に土壌汚染が見つかったことで移転中止が取り沙汰されていたアレです。
昨年5月の地質調査では、築地からも土壌汚染対策法の基準値を超える5種類の有害物質が検出されてしまい話がさらにややこしくなってしまいました。

築地の地下に溜まっていた汚染物質って、もしかして液体人間の生き残り?。

『美女と液体人間』を観た直後だとこんなアホなことも考えてしまいますね(笑)。

さらに、築地という土地にはとんでもない過去がありました。
戦時中には旧・日本帝国海軍の毒ガスや化学兵器の研究を行う「化学兵器研究室」があった場所なのです。
『ガス人間第一号』で佐野久伍博士(村上冬樹)が水野(土屋嘉男)をガス人間に改造したのもここだったりして?・・・と、これまたアホなことを思ってしまいました。

築地の地下にはさらにとんでもない代物が眠っています。
昭和29年のビキニ沖核実験で被爆したあの第五福竜丸から水揚げされたマグロ(通称:原爆マグロ)が埋められているのです。
液体人間は「水爆実験に巻き込まれたマグロ漁船:第二龍神丸の乗組員たちが強い放射能で変化してしまった姿」という設定ですが、制作者たちがこの土地を舞台に選んだのは絶対に偶然ではないと思います。

『美女と液体人間』あやしい刑事
『美女と液体人間』には東宝特撮作品常連俳優の土屋嘉男さんもしっかり出演しておられます。
この映画での土屋さんは液体人間を追う刑事役なのですが、何故かその表情や行動の一つ一つが妙に怪しく見えてしまうんですよね(笑)。

新井千加子(演:白川由美)の着替えを覗こうとしたのを止められニヤリと笑うところなどはどう見てもただの刑事ではないです。
何も知らずに初めてこの映画を観た人は「あッ、この刑事怪しい!コイツが液体人間の正体に違いない!。」とか勘違いしてしまいそうな表情です(笑)。



木曜に観たのは、その土屋嘉男さんが主役を張った『ガス人間第一号』でした。

7/12(木)
『ガス人間第一号』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)
『ガス人間第一号』ポスター1
主演は三橋達也さんかも知れませんが、主役は間違いなく土屋嘉男さんです。
今回は昨年お亡くなりになった土屋さんを偲びながらの鑑賞となりました。

『ガス人間第一号』藤千代と水野
日本映画専門チャンネルさんのデジタルリマスター技術は、ヒロイン藤千代(演:八千草薫)を美しく妖艶に蘇らせてくれました。
岡本警部補でなくとも茫然と見とれてしまいますし、水野が自分の全てを捧げたくなるのも頷ける美しさです。

『ガス人間第一号』(左:2018年/右:2009年)
彼女に惚れた水野が、自分の持つ特殊能力の全てを彼女のために使おうと思わしめた藤千代。
それを観客全員が納得出来るほど彼女が美しく見えなければこの映画は成立しません。

前回の東宝特撮王国で放送された映像と比較してもこの通り。
向かって左が今回のHDリマスター版、右が2009年放送の東宝特撮王国時のものです。
新リマスター版を見比べてしまうと、旧版は肌が荒れて唇の血色も良くありません。
またこのコマはカット変わり直前のコマなのですが、旧版には処理ミスによるブロックノイズが発生しています。
動画として見た場合、画面全体に一枚のベールが張られているかのような違いがあります。

『ガス人間第一号』変身
主人公:水野(ガス人間)に扮した土屋嘉男さんの名演もこの映画を傑作たらしめる要素の一つです。
自分がガス人間であることをカミングアウトするシーンでは、まるで俗世に興味を失ったかのような虚ろな目で亜人と化した男の心境を表現していました。

『ガス人間第一号』土屋、円谷、人形
黒澤明監督、本多猪四郎監督、そして円谷英二特技監督にも可愛がられ重宝された俳優さんでした。
他の俳優が嫌がる顔が映らないような役でも「面白い!」と思えば志願してその役を演じ、自ら様々なアイデアを盛り込んで作品世界を盛り上げようと常に努力を惜しまない方だったと思います。

『椿三十郎』の土屋氏
今週は奇しくも土屋嘉男さんの出演作品を3作連続で観たことになりました。
土屋嘉男さんは2017年2月8日に肺癌でご逝去されています。
その死が報じられたのは7か月後の9月6日でした。
ここに改めて土屋さんのご冥福をお祈り申し上げます。



7/13(金)
『チア☆ダン』
(居間の37インチ液晶テレビ:北陸放送)
金曜ドラマ『チア☆ダン』
先月14日、福井市で行われたこのドラマのロケに参加してきました。
エキストラに関する話は14日の記事に書きましたので、今回はストーリーやキャラクターについてです。

まだ第一話の段階なので今後話が進むにつれてどう変わっていくかは分かりませんが、キャラクターの設定が昨年の映画『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』をそのままなぞっているだけのような気がしました。
例えば、「生真面目で練習にも厳格なためチームの中で孤立するリーダー」であったり「いつも一人でストリートダンスをしている登校拒否生徒」や「バレエ経験者」がいたりと、メンバー構成が映画の焼き直しで新鮮味には欠けます。

しかし、それはそれで私は少しも構いません。
私にとって映画版『チア☆ダン』は、福井人の物語を全編新潟県で撮影しやがったという「どうしても許せない」「無かったことにしてしまいたい」作品なのです。
福井ロケを敢行してくれた今回のドラマ版はその仕切り直しと思っていますので、素直にドラマの進行を見守りたいと思っております。
斯様に映画版『チア☆ダン』が福井人に与えた心の傷は深いものなのであります(笑)。




ところで・・・。
最近、劇場で新作映画を観ていない気がしますねえ。

金沢フォーラス『ハン・ソロ』上映中
そういえば、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』もまだ観ていません。
『スター・ウォーズ』歴40年の私としたことが、公開されてから一週間以上経っても新作を観ていないなんて初めてのことです。
これも昨年の『最後のジェダイ』の影響かな?。

と言うわけで、今度の休みには大阪のエキスポ・シティへ足を運んで『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』『ジュラシック・ワールド 炎の王国』のIMAX 3D版をハシゴして観に行こうと思います。
出来れば太陽の塔内部見学もしたいのですが、7月は既に予約が埋まっているため無理ですね。
でも、今度こそは万博食堂で前回食いそびれた「月の石ハンバーグセット」を食ってやるぞ~(志低っ)。


今週もお付き合いいただきありがとうございました。
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