週刊映画鑑賞記(2018.7/30~2017.8/5)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
7/31(火)
『Mr.インクレディブル』
(ホームシアター:Blu-ray)
続編鑑賞に向けて前作の予習です。

所有するブルーレイで鑑賞しました。
実は『Mr.インクレディブル』は私のディズニー(ピクサー)・アニメーション映画ベスト10の一つなのです。
<トガジン的ディズニーアニメベスト10(順不動)>
『ファンタジア』(1940)
『ノートルダムの鐘』(1996)
『ターザン』(1999)
『トイ・ストーリー2』(1999)
『モンスターズ・インク』(2001)
『Mr.インクレディブル』(2004)
『ウォーリー』(2008)
『ボルト』(2008)
『メリダとおそろしの森』(2012)
『ベイマックス』(2014)
ディズニー好きの嫁に言わせると、この私のランキングはかなり変わっているらしいです。
嫁「プリンセスが出てこない映画ばっかり!」
私「でも、メリダはバイキングの王女じゃなかったっけ?」
嫁「違う、最後にイケメン王子様と結ばれてこそプリセンスなの!」
彼女曰く、『Mr.インクレディブル』は「アクションシーン(=暴力)が多くて、乙女には夢の無いディズニーアニメ」なのだそうです。
映画の好みがなかなか合わない嫁ではありますが、まさかディズニーアニメまで好き嫌いが分かれるとは・・・。

プリンセスではなくミセスですが、私にはこの肝っ玉母ちゃん:イラスティガールがディズニー・ヒロインNO.1なのですがね(笑)。
『Mr.インクレディブル』の魅力をひと言で表すなら「やんちゃ」
ダッシュの悪童ぶりだけではなく、作品自体にも最後に悪役が死ぬなどそれまでのディズニーには無かった毒気があります。
それもそのはず。
元々はワーナーの2Dアニメーション用企画であり、監督はあの『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バードなのですから!。
8/1(水)
『インクレディブル・ファミリー』🈠
(劇場:福井コロナシネマワールド)

毎月1日(ファースト・デー)は入場料1,100円で映画が観られます。
この日の仕事は午後からのスタートだったため、午前中に職場へ向かう国道8号線沿いにある映画館で観てきました。

図らずも『インクレディブル・ファミリー』初日の初回上映を鑑賞することが出来ました。
急いで観に行った理由は、前作が好きだったことに加えて「字幕版」を確実に観たかったからです。
ここ数年のディズニー作品は字幕版上映が無いことが多く、あったとしても最初の1~2週間で終わってしまうことが多いのです。
これからしばらくは、仕事とお盆休みで福井に来る親戚たちの対応で忙しくなります。
暇が出来た頃には字幕版上映が終わってしまう可能性が高いのです。
ただ、『インクレディブル・ファミリー』に関しては日本語吹替版も是非観に行きたいと思っています。
前作の三浦友和・黒木瞳 の吹替はとても良かったですから。

ストーリーが14年前の前作ラストシーンから直結していることにまずビックリ。
そう言えば、前作ラストの時点ではまだヒーローたちの活動禁止令と「スーパーヒーロー保護プログラム」は生きていたのですね。
全体としてはたたみかけるアクションと適度な謎解き、そして家族の物語として十二分に楽しませてくれた快作でありました。
何より、続編制作に当たって監督を代えなかったことが大きかったと思います。
『ミッション・インポッシブル』や『トゥモローランド』で一時は実写映画へ活躍の場を移したブラッド・バード監督でしたが、自作の続編制作に対して脚本だけとか製作総指揮とかいった参加形体ではなくきちんと「演出」をしてくれたのが嬉しいです。
ただ、前作『Mr.インクレディブル』に比べるとブラッド・バード監督の”やんちゃ”さは抑え気味だったように思います。
元々ワーナーの企画だった前作と違い、今回は最初からディズニー(ピクサー)側の意向が影響していたせいかも知れません。
近年のディズニー作品『カールじいさんの空飛ぶ家』『ベイマックス』『ズートピア』等に見られる「最も信頼していた人物が実は黒幕だった」というストーリー・パターンもそのままでした。
また、インクレディブル役のクレイグ・T・ネルソンの声がやや老いた感じがしたのが気になりました。

『インクレディブル』シリーズに次回作があるとしたら、ママの若い頃を描くスピン・オフ『イラスティ・ガール』かな?。
今よりキュッと引き締まったお尻とモヒカン・ヘアーで、伸縮自在のバイクに跨り颯爽と悪に立ち向かうヘレン。
そこに若きボブ(インレディブル)とその相棒ルシアス(フロゾン)も絡んで、あと『Mr.インクレディブル』では既にお亡くなりになっていたゲイザー・ビームら大勢のスーパーヒーローが活躍する姿も見てみたいですね。
アニメですから『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の時みたいに「似てる・似てない」は関係ありません(笑)。
8/2(木)
毎月第1、第2水曜日の私のお楽しみは、今年4月から日本映画専門チャンネルで再開された「東宝特撮王国」です。
今月第一週は昭和38年公開作品『海底軍艦』でした。
『海底軍艦』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)

『海底軍艦』を初めて観たのは、昭和58年夏の「ゴジラ1983復活フェスティバル」です。
予備知識はほとんど無く、あるとすれば『スター・ウォーズ』の便乗パクリ映画『惑星大戦争』に出てきた轟天号のオリジナルが登場するということくらいでした。
その初鑑賞時の第一印象は「なんだか『宇宙戦艦ヤマト』みたいな話やな・・・」でした。
『宇宙戦艦ヤマト』(第一作)は、太平洋戦争でほとんど活躍の場を得られないまま撃沈された戦艦大和が254年後の未来に最新鋭宇宙戦艦となって蘇り、旧ナチスを思わせるガミラス星軍を撃破して母国(星)を救うという物語です。
このストーリーから軍国主義教育を受けた当時の大人たちの「歴史補正願望」を感じ取ったのはずいぶん後になってからのことでした。
続編『さらば宇宙戦艦ヤマト―愛の戦士たち―』の敵ガトランティスがアメリカをイメージ(白色彗星の中から現れた都市帝国がまるでニューヨークの摩天楼のように見えた)していたことに気付いた時です。
しかも、その強大な敵に対して最後は特攻(体当たり)で勝利するというあまりにも露骨な軍国美談ぶり!。

終戦からわずか18年後に作られた『海底軍艦』からも、私は当時の大人たちがまだ引きずっていた(であろう)「軍国主義への回帰願望」を嗅ぎ取っていました。
それもそのはずです。
映画『海底軍艦』は脚本家の関沢修一さんが自らの戦争体験を元に書いたストーリーだったのですから。

当時、初鑑賞であったにも関わらず私は轟天初出撃シーンで何故か強烈なデジャヴ(既視感)を感じていました。
その一連のカット割りが『さらば宇宙戦艦ヤマト』のヤマト発進シーンにそっくりだったのです。
(正確には『さらば宇宙戦艦ヤマト』('78)が『海底軍艦』('63)に似ているというべきですが)
アングルやサイズは違いますがカット割り自体は『海底軍艦』のそれとほとんど同じで、「水位10、15・・・」とか「微速前進」といった操舵時のセリフも踏襲しているのが分かります。

発進準備。
轟天はドックから水路へ移動。
ヤマトは桟橋をスライド後退させて注水準備。

注水開始。
アングルは違いますがやってることは同じです。

水位が艦底部からひたひたと上がってきます。
実写の『海底軍艦』はミニチュアへの注水シークエンスをサイズを変えて撮っているだけですが、アニメである『ヤマト』はカット毎にアングルを変えながら見せています。
この違いは、高精度のミニチュア模型をシネスコサイズで撮ることで長尺でも画が持つ特撮と、同じようなアングルを繰り返してしまうと冗長になってしまいかねない平面の絵であるアニメとの違いかも知れません。

水位が艦体の半分近くまで進攻したことを見せるカット。
轟天は艦首ドリル部分、ヤマトは主砲が水に浸かることで表現しています。

水位が艦橋を超えるカット。
このカットも同じようなタイミングで挿入されます。

両作とも注水シーンの合間に内部乗組員のカットが何度か出てきますが、その挿入タイミングもほぼ同じです。
『海底軍艦』神宮司大佐「前進、微速」
『さらば宇宙戦艦ヤマト』古代進「微速前進、0.5」
艦内で交わされる指示や複唱も、似たような文言が同じタイミングで交わされます。

注水完了後、海へつながるゲートに向かう両艦船。
『海底軍艦』神宮司大佐「第2ゲート開け!」
『さらば宇宙戦艦ヤマト』真田技師長「ゲートオープン」

ザッバーン!
間違いありません。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』の発進シーンは明らかに『海底軍艦』の轟天発進シーンをトレースしています。
舛田利雄監督の演出か?。
松本零士先生の趣味か?。
あるいは、絵コンテを描いた安彦良和さんが『海底軍艦』を参考にしたのか?。
私はテクニカル・ディレクターを担当した石黒昇さんの仕事ではないかと考えています。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』公開当時、石黒さんはテクニカル・ディレクターという耳慣れない役職についてこう語っていました。
「僕の仕事はメカの動きや爆発、水や火といったエフェクトアニメーションの演出。実写映画で言えば特撮監督といったところかな。」
誰が『海底軍艦』にオマージュを捧げたのかは別として、公開から15年後のアニメ映画に影響を与えたというこの事実は凄いと思います。
『海底軍艦』の話がいつの間にか『ヤマト』ネタになってしまいました。
いつもながらの脱線ぶりに反省しきりです。
反省ついでに、もう一つ『海底軍艦』の影響を受けた作品の事を・・・。

マンダを称える踊り。
『モスラ』や『キングコング対ゴジラ』など60年代前半の東宝特撮映画によく出てくるモブシーンです。
しかし、この画面の男性ダンサーの動きをよく見てみると・・・

このポーズはッ?

赤塚不二夫大先生が生み出した歴史的ギャグ「シェー!」のポーズではありませんか!?。
東宝特撮では『怪獣大戦争』ではゴジラにもシェーをさせたくらいでしたから、最初これを見た時には「円谷監督、よっぽどシェーが気に入ってたんだな~」と思わず笑ってしまったものでした。
でも、『海底軍艦』が流行に乗って「シェー!」を取り入れたという事は絶対にあり得ません。
むしろ逆である可能性のほうが高いのです。
『海底軍艦』の公開は昭和38年12月。
そして、赤塚先生がマンガに「シェー」を描き始めたのはその約3か月後の昭和64年春のことです。
つまり、タイミングからみて『海底軍艦』を観た赤塚先生が、ムウ帝国人のあの珍妙な踊りからシェーのポーズを産み出したとも考えられるのです。
全ては私の想像(妄想)に過ぎませんが、こんなおバカなことを考えながら昔の映画を楽しむのもオツなものですね。

・・・と、ここまで読んだ方には「もしかして、トガジンは『海底軍艦』が嫌いなのか?」と思われたかもしれませんがとんでもない。
大好きです
特にHDリマスター化でさらにお美しく蘇ったこのお二人が!。

「嫌いです!」
神宮司大佐の愛娘:真琴(演:藤山陽子)。
大佐にしてみれば、20年ぶりに再会した娘に「そんなお父様は嫌いです」と言われてしまっては宗旨替えくらい大した問題ではありません。
そして・・・

「マンダの生贄にせよ!」
ムウ帝国皇帝陛下(演:小林哲子)。
小林さんの特撮映画出演は本作一本のみですが、決して忘れることの出来ない強烈な印象を残しています。
高飛車な態度とは裏腹に、若くして皇帝の地位に着いた少女が必死に背伸びしている儚さや心細さといったものを細かな目の動きと「心ここにあらず」な口調とで表現されていました。
これらを受けとめることによって、「死を覚悟で故郷に帰っていく」ラストの彼女の行動が理解出来るのです。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。