週刊映画鑑賞記(2019.1/14~2019.1/20)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
1/14(月)
『2001年宇宙の旅』
(自室37インチ液晶テレビ:日本語吹き替え版ブルーレイ)

『2001年宇宙の旅』は先週も見たばかりですが日本語吹替え版でもう一度見ることにしました。
実は私が新バージョンのブルーレイを購入した理由の一つにはこの「吹替え音声収録」があったのです。
なぜならば。
この日本語吹替え音声版こそが、私が生まれて初めて観た『2001年宇宙の旅』の姿なのですから。
今回の記事は特定のセリフ部分に話を絞っています。
吹替え版全体の印象や感想などは、いずれそのうち『2001年宇宙の旅』のレビュー記事の一部として書き記す予定です。

この吹替え音声は今から38年前「日曜洋画劇場」でTV初放送された時のもので、フロイド博士役を『ウルトラマン』のムラマツキャップ『仮面ライダー』の立花藤兵衛でお馴染みの小林昭二さんが担当されています。
放映時(福井はテレビ朝日系列局が無いため翌年の7月)にビデオに録画して何度も何度も繰り返し観ているため、私には今でもこの吹替えの声のイメージが根強く残っております。
字幕版LDを手に入れた'84年夏頃からこのバージョンを観返すことは無くなりましたので、これが実に35年ぶりの再会ということになりました。
前回の字幕版鑑賞からわずか4日後に再び吹替え版を観たのにはワケがありました。
字幕版では、ある重要なシーンのセリフがもの凄~く変なのです。
そこで昔の吹替え版ではどうだったのかを確かめたくなってしまいました。
最初は該当シーンだけでいいと思っていたのですが、いざ再生を始めてみると結局前奏から最後の終曲まで約2時間半しっかり見てしまいました(笑)。
ほんの数日前に字幕版を見たばかりでしたがセリフや演技がしっかりしているので全く飽きることなく楽しめました。

ディスカバリー号のメインコンピューター:HAL(ハル)9000が判断ミスを犯した直後、ボウマン船長とプール副船長の二人が作業ポッドに籠って今後の処置について話し合うシーン。
このままハルの不調が明らかになったとしたら、船の制御から”彼”を切り離す必要さえ生じかねない事態です。
ところが、最近の日本語字幕ではこのシーンの字幕がおかしなことになっているのです。
「これまでハルはミスを犯したことがないから”彼”の反応が心配だ」とハルを気遣うボウマンに対するプールのセリフが・・・

このように、実にふざけた駄洒落にされてしまっています。
しかもご丁寧に、ハルのハの字に点をつけてサルと引っ掛けていることを強調しています。
愚劣なオヤジギャグそのもので作品への冒涜も甚だしいです。
アメリカの宇宙船内で交わされる飛行士のセリフに日本のことわざが出てくるという違和感が半端ないです。
しかもこのセリフでは事の重大さがまるで伝わらず、後のプール殺害シーンに繋がらない気がします。

このセリフのニュアンスはプール副長のキャラ設定とも大きく食い違っています。
ミスを犯したハルが「それ人間のせいだ」と言った時、プールの表情にはハルに対する怒りと不信感がはっきり表れていました。
「ハルも木から落ちると言うでしょ」などという軽いセリフはあの険しい表情と全くリンクしておらず、監督の意図もフランク役のゲイリー・ロックウッドさんの演技も台無しにしているのです。
私はこれを書いた奴のセンスと教養を疑います。

木原たけしさん、アンタの事だよ!。
誤訳と独りよがりの女王:戸田奈津子女史は『フルメタル・ジャケット』の時キューブリック監督にクビにされましたが、監督がご存命であれば木原氏もご同様です。
私はこのふざけた字幕を見るたびにイラッとさせられていて、そのことを先週の記事にも書きました。
それに対して頂いたへろんさんのコメントへの返信を書いてるうち「そういえば、前はこんなふざけた字幕ではなかったはずだ」と思い出しそれを確かめたくなったのです。
そこで、リマスター版ブルーレイに収録されている日本語吹替え音声、そして昨年11月にBSプレミアムで放送されたものを見返してみることにしました。

ちなみにこれが元のセリフです。
翻訳サイトで直訳を見ると「残念ながら、それは有名な最後の言葉のように少し聞こえる。」となります。
なんとも歯切れが悪くて回りくどい言いまわしですが、プール副船長もハルを気遣ってズバッとは言いにくかったのかも知れません(笑)。
この部分が「ハルも木から~」にされていたわけですが、これが38年前の日本語吹替え版ではこうなっていました。

「しかし、間違いを指摘したのは同じ型のコンピューターですよ!?」
原語のニュアンスが全く残っていないことには驚きましたが、会話の流れとして全く違和感が無いうえに話の展開をスムーズに理解させてくれる見事な翻訳です。
この翻訳を担当したのは飯嶋永昭さんという方で映画字幕だけでなく英書の翻訳もされていたらしいのですが、ネットで調べても詳しいことが分かりません。
年齢も不明なのでもしかするともうご存命ではないかも知れません。
でも私はこの吹替え版のお仕事に心から感謝したいと思います。
最初に書いたように、この吹替えTV放映版こそ私が初めて出会った『2001年宇宙の旅』だったのですから!。
ついでと言ってはなんですが、昨年11月BSプレミアムで放送されたバージョンも見てみることにしました。
すでに旧ブルーレイは持っていて、さらに4Kリマスター版も注文済でしたから特に録画する必要は無かったのですけど、IMAXシアターの特大画面と大音響で観てきたばかりだったので何となく録画予約しておいたものです。
最近のハイビジョン版は全て「ハルも木から落ちるでしょ」にされているかと思いきや、BSプレミアム放送版はこんな字幕になっていました。

素晴らしい!。
「ハルも木から~」なんかより、こちらのほうが自然に腑に落ちます。
ハルの実績とプライドを気にするボウマンに対して「それはもう過去の話だ」と切って捨てるプールのドライさが表現されています。
このセリフであれば、ハルが彼の抹殺計画を実行したことにも納得出来るというものです。
録っておいて本当に良かった!。
4Kリマスター高画質BDまで買ったものの、今後私が見る『2001年宇宙の旅』はこの録画ディスクがデフォルトになるかも知れません。
(前奏と終曲がカットされていて音声もステレオリミックスになっているのが残念ですが・・・)

BSプレミアム版の翻訳は月橋凌子さんという方ですが、飯嶋永昭さんと同じでいくら調べても情報が出てきません。
洋画を見る時には必ずお世話になっている字幕翻訳家ですが、こうして改めて考えると我々はほとんど何も知らないのですね。
こうなってくると、DVD以前に出回っていたレーザーディスクやビデオテープの字幕がどうだったのかも気になりますね。
中古でLDプレーヤーとか昔のLD盤とか買ってしまいそうです(笑)。
1/18(金)
『トクサツガガガ』(第1話)🈠
(37インチ液晶テレビ:NHK総合リアルタイム視聴)

正月明けから気になって仕方がなかったこのドラマ。
リアルタイムで、しかも夫婦二人でテレビの前に並んで鑑賞しました。
こんなことは半年前の『チア☆ダン』の時以来です。
『チア☆ダン』は福井が舞台だったことに加えて、私がエキストラとしてロケに参加したことから一緒に見ましたが、今度のは二人とも純粋にドラマ内容が気になって見てました。
ちなみに嫁の職場にはマンガ本がいっぱいあって、彼女はそこで原作を読んだことがあるそうです。
私はNHKの番組サイトに載っている以上のことは何も知らず、ほとんど白紙状態で見てました。
【大切なことは全部彼らが教えてくれた】

満員電車の中で座る席が無くて辛そうにしているお爺さんとお婆さん。
誰もが思わず寝たふりしたくなる場面です。
そんな時、主人公:仲村叶(演:小芝 風花)の目に特撮ヒーロー:シシレオーの姿が!?。
「自分が苦しいからって弱き者を見捨てていい理由にはならない!」
絵に描いたみたいに分かりやすくて拍手喝采ものです(笑)。
この場面を見ていて、私は子供の頃毎週欠かさず見ていたある特撮番組を思い出しておりました。

『帰ってきたウルトラマン』(昭和46年4月~翌年3月)です。
「レーサーがレース中に考えることは勝利の一字だけだ。お前は一度負けたくらいで尻尾を巻くのか?。」(坂田健)
「どこに移り住んでもくじけそうになったら思い出すんだ。僕は故郷で怪獣と戦ったんだ、と。」(南隊員)
「君も嫌なもの、許せないものと戦える勇気ある男になるといい」(郷秀樹)
「ウルトラ5つの誓い」(坂田次郎)
一つ、腹ペコのまま学校に行かぬこと
一つ、天気の良い日に布団を干すこと
一つ、道を歩く時には車に気をつけること
一つ、他人の力を頼りにしないこと
一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと
もっとも・・・当時小学一年生だった私のお目当てはウルトラマン対怪獣の戦いであって、正直なところこれら名セリフの数々も馬の耳に念仏状態だったと思います(笑)。
でも、この作品が持っている独特の重厚さだけは子供心にも感じ取っていて、他の特撮番組より格上の存在として見ていたことは確かです。
数年後、再放送で見返したときには怪獣や宇宙人だけでなくこれらのセリフやストーリーも明瞭に蘇ってきました。
子ども相手に大人が本気で作ってくれたこのドラマは私の深層意識にしっかりと刻み込まれていたのです。
【円盤買うしかない!】

WOWOWで全話録画したBD-Rは持ってますけど、やっぱりこれは欲しいなあ。
でも、『帰ってきたウルトラマン』ブルーレイBOXって4万円以上もするのですよ。
『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『ウルトラマンA』は2万円くらいの廉価版が出てるのに、何故か『帰ってきた~』だけはまだなんですよね。
【自分の好きなものを悪く言われたり嫌われるのって、もの凄く怖いことなんだよ】

あと大笑いしたのが、仲間を欲する心情とオタバレ(オタクであることがバレること)への怖れという葛藤を解説したこの例え。

私「『沈黙』かよ!。」
嫁「分るわ~、親にアニメ雑誌取り上げられたこととか、自分がアニメ好きだとバレたら馬鹿にされるんじゃないかというあの感じ。」
彼女は小学生の頃から『キャプテンハーロック』や『サイボーグ009』といった男子向けのアニメが好きで、中学に上がってからも『あしたのジョー2』や『スペースコブラ』といった出崎統作品に夢中だったそうです。
ところが、そのことをクラスメートに笑われてからはず~っとアニメ好きを隠し続けてきたのだそうな。
嫁「あたし、特撮のほうはあまり知らんけどこの子(主人公)の言ってることはよ~っくわかるの!」
私「ふ~ん。でも言っちゃ悪いけど俺にはそこまでしてコソコソ隠す気持ちが分からんのや。」
嫁「あたしはあなたがいつも一人で『ゴジラ』とか観にホイホイ行ける神経が分からんわ。うらやましいくらいやわ。」
う~む。
40年以上培われた隠れファンのトラウマとは私の想像を絶するもののようです。
私の場合、幸運にも中学時代に同じ趣味(映画やアニメ)を持つ友達に会えたことが大きかったのかも知れません。

『トクサツガガガ』はキャストもスタッフも楽しんで作っているのが伝わってくる楽しいドラマでした。
観ている私も子供の頃好きだった番組を思い出し、嫁とも話が盛り上がりました(笑)。
2話以降も楽しみです。
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。