週刊映画鑑賞記(2018.11/5~2018.11/11)
CATEGORY週刊映画鑑賞記
トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
月曜日の仕事は午後からのスタートだったため、午前中映画一本見てから職場に向かうことにしました。
11/5(月)
『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』🈠
(劇場:テアトルサンク)

「えちてつ」とは、福井県嶺北部を走るローカル電鉄「えちぜん鉄道」のことです。
その母体は戦時中(!)から福井県内を走っていた京福電鉄でした。

京福は2000年から2001年にかけて2度も電車同士の正面衝突事故を起こし、国交省から運行停止命令を受けてそのまま2年程放置状態になっていました。
聞いた話では、当時の京福電鉄は運行安全の為の設備投資費用が捻出出来ないほど経営が悪化していたのだそうです。

路線はそのまま廃止になるものと思われましたが、電車を必要とする地元住民の働きかけで第3セクター「えちぜん鉄道」として復活しました。
実は、かく言う私もえち鉄沿線住民の一人です。
幼い頃は走る電車(当時は京福)を見るのが大好きで、保育園では電車とウルトラセブンの絵ばかり描いてました。
現在はクルマ移動がほとんどで電車に乗る機会は少ないですが、夜お酒を呑んだ時にはとても頼りになる電車です(笑)。

一度は事故で失われかけたローカル路線。
その復活を望む沿線住民の声から生まれたのがえちぜん鉄道でした。
スローガンは「鉄道業ではなく、サービス業である」。
制服を着た女性アテンダントが乗車し、乗車券の販売・観光案内・高齢者の介助などを行う新サービスもその一つ。
この映画は元・えちぜん鉄道アテンダント嶋田郁美さん著「ローカル線ガールズ」を元に作られた映画です。
作品内にはえち鉄電車と沿線各駅が度々登場しますが、その中には私の家の最寄り駅もちらっとだけ映っています。
これまで40年間、私の一番身近な場所で撮影された日本映画は東映実録やくざ映画『北陸代理戦争』だったのですが、『えち鉄物語』の登場でようやく記録が塗り替えられることとなりました(笑)。
>『北陸代理戦争』~世界でいちばん身近な映画~ (2018/3/8)
<あらすじ>
お笑いタレントを目指して上京するも全く売れずにいた山咲いづみ(演:横澤夏子)。
ふとしたきっかけで故郷・福井県のえちぜん鉄道でアテンダントをすることになった彼女は新たな人生を歩み始める。
しかし、自分が養女であるということにわだかまりを抱くいづみは兄との関係もギクシャクしたまま。
職場でも空回りが続いてしまう。
そんなある日、いづみが乗る列車内である事件が・・・。
ここまでだったら、「自分探し」をテーマにしてご当地風景をふんだんに盛り込んだよくある「町興し映画」の一つでしかありません。
でも、終盤のクライマックスシーンには少々驚かされました。
これより以下はクライマックスシーンに関するネタバレが含まれています。
映画『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』を白紙の状態で楽しみたい方はご注意願います。

ある時、いづみが乗る列車内で一人の妊婦が急に産気づくという事態が起こります。
救急車を呼ぼうにも、折り悪くその日の道路はどこも渋滞のため駅まで救急車が来られません。
いづみは意を決して社長に直談判するのでした。
「この電車を臨時特急にして患者を救急車が到達できる駅まで運ばせて欲しい」

ラストのこの展開には(良い意味で)予想を裏切られました。
「急行電車の中で急病人が出たため、やむなく途中駅で臨時停車した。」という事例はこれまで何度か聞いたことがあります。
しかし、たった一人の急病人を運ぶために通常運転の電車から他の乗客を降ろして臨時特急に変更するという話は今まで聞いたことがありません。
いや、「聞いたことがないからこんな話はダメだ」なんて野暮を言うつもりはないのですよ。
都会では電車内で病人が出ても「迷惑だ」「降りろ」などと心無い言葉を吐く人がいる昨今、この映画で描かれる田舎ローカル線ならではのクライマックスはむしろ爽快だったくらいです。

でもそれならそれで、えち鉄運行スタッフの努力と工夫をもっと具体的に描いて見せて欲しかったと思います。
別に『新幹線大爆破』みたいな波乱万丈の展開を求めているわけではありません。
管制室で「どの電車をどこの駅で止めて臨時電車をどれくらいのスピードで走らせれば安全なのか」を具体的に示して見せて、その指示を正確に実行する運転士の緊張感をもう少し描いてくれれば、観客もえち鉄スタッフの緊張感を共有出来たはずだと思うのです。
社長の鶴のひと声で全ての道が開けたかのようにも見えて、なんだか予定調和的に終わってしまったのが残念でした。
以上、ネタバレ終わり

正直なところ、映画としては手放しで褒められるものではありません。
特に地元民の目から見た場合、気になって鑑賞の妨げになってしまうほどの単純な演出ミスがやたら多いのです。
「福井弁が変」なのはいつもの事(笑)ですが、それ以外にも・・・。

映画の冒頭、いづみがえち鉄勝山線に乗って帰省するシーン。
合間にインサートされる風景ショットが何故か全然方向違いの三国線の映像という単純な編集ミスとか・・・。

生まれ育った勝山からは直線距離で40キロ以上離れた坂井市三国町の東尋坊にやって来たいづみが
「高校時代は学校帰りによくここに来た。」
という、地元の人間には到底信じ難いセリフを口にしたり・・・。
(電車で勝山から東尋坊へ行くには往復でおよそ約3時間半、運賃は往復2,020円かかります。勝山の女子高生が学校帰りにポコポコ行けるところではありません。)
他県の方には気にならない(分からない)だろうと思いますが、こんな初歩的ミスが多い映画であることは確かです。
プロデューサーは福井出身(しかも勝山市)のご出身と伺っていますが、どうしてこれにダメ出しをしないのか理解に苦しみます。
ほんの数カットの画を差し替えるだけ、そしてたった一言のセリフを変更するだけで、地元の人間も心から満足出来る映画になり得たかも知れないのに・・・。

しかし、この映画には我が福井県の美しい風景がタップリ詰まっています。
こんな画を見ただけで穏やかな気持ちになれるのは、私が福井県人である証しに他なりません。
現在他県で頑張っている福井出身の同胞たち。
親戚の家が福井にあるので定期的に行ってるよ、というご家族。
仕事や学校の関係で一時的にであっても福井で暮らしたことのある方々。
あと、旅行で訪れたことがあるという方や、「仲のいい友達に福井の奴がいるよ!」という人。
この映画は現在福井で暮らしている人たちではなく、遠く離れた場所で福井を想う人たちに観てもらいたい映画です。

『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』は今のところ福井県内先行上映のみとなっています。
私は今月5日(月)に見てきましたが、他県ではまだ上映は始まっていません。

映画『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』は
11月23日から順次全国公開開始です
今週観た映画はこれ一本でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について徒然なるまま書き留めております。
月曜日の仕事は午後からのスタートだったため、午前中映画一本見てから職場に向かうことにしました。
11/5(月)
『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』🈠
(劇場:テアトルサンク)

「えちてつ」とは、福井県嶺北部を走るローカル電鉄「えちぜん鉄道」のことです。
その母体は戦時中(!)から福井県内を走っていた京福電鉄でした。

京福は2000年から2001年にかけて2度も電車同士の正面衝突事故を起こし、国交省から運行停止命令を受けてそのまま2年程放置状態になっていました。
聞いた話では、当時の京福電鉄は運行安全の為の設備投資費用が捻出出来ないほど経営が悪化していたのだそうです。

路線はそのまま廃止になるものと思われましたが、電車を必要とする地元住民の働きかけで第3セクター「えちぜん鉄道」として復活しました。
実は、かく言う私もえち鉄沿線住民の一人です。
幼い頃は走る電車(当時は京福)を見るのが大好きで、保育園では電車とウルトラセブンの絵ばかり描いてました。
現在はクルマ移動がほとんどで電車に乗る機会は少ないですが、夜お酒を呑んだ時にはとても頼りになる電車です(笑)。

一度は事故で失われかけたローカル路線。
その復活を望む沿線住民の声から生まれたのがえちぜん鉄道でした。
スローガンは「鉄道業ではなく、サービス業である」。
制服を着た女性アテンダントが乗車し、乗車券の販売・観光案内・高齢者の介助などを行う新サービスもその一つ。
この映画は元・えちぜん鉄道アテンダント嶋田郁美さん著「ローカル線ガールズ」を元に作られた映画です。
作品内にはえち鉄電車と沿線各駅が度々登場しますが、その中には私の家の最寄り駅もちらっとだけ映っています。
これまで40年間、私の一番身近な場所で撮影された日本映画は東映実録やくざ映画『北陸代理戦争』だったのですが、『えち鉄物語』の登場でようやく記録が塗り替えられることとなりました(笑)。
>『北陸代理戦争』~世界でいちばん身近な映画~ (2018/3/8)
<あらすじ>
お笑いタレントを目指して上京するも全く売れずにいた山咲いづみ(演:横澤夏子)。
ふとしたきっかけで故郷・福井県のえちぜん鉄道でアテンダントをすることになった彼女は新たな人生を歩み始める。
しかし、自分が養女であるということにわだかまりを抱くいづみは兄との関係もギクシャクしたまま。
職場でも空回りが続いてしまう。
そんなある日、いづみが乗る列車内である事件が・・・。
ここまでだったら、「自分探し」をテーマにしてご当地風景をふんだんに盛り込んだよくある「町興し映画」の一つでしかありません。
でも、終盤のクライマックスシーンには少々驚かされました。
これより以下はクライマックスシーンに関するネタバレが含まれています。
映画『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』を白紙の状態で楽しみたい方はご注意願います。

ある時、いづみが乗る列車内で一人の妊婦が急に産気づくという事態が起こります。
救急車を呼ぼうにも、折り悪くその日の道路はどこも渋滞のため駅まで救急車が来られません。
いづみは意を決して社長に直談判するのでした。
「この電車を臨時特急にして患者を救急車が到達できる駅まで運ばせて欲しい」

ラストのこの展開には(良い意味で)予想を裏切られました。
「急行電車の中で急病人が出たため、やむなく途中駅で臨時停車した。」という事例はこれまで何度か聞いたことがあります。
しかし、たった一人の急病人を運ぶために通常運転の電車から他の乗客を降ろして臨時特急に変更するという話は今まで聞いたことがありません。
いや、「聞いたことがないからこんな話はダメだ」なんて野暮を言うつもりはないのですよ。
都会では電車内で病人が出ても「迷惑だ」「降りろ」などと心無い言葉を吐く人がいる昨今、この映画で描かれる田舎ローカル線ならではのクライマックスはむしろ爽快だったくらいです。

でもそれならそれで、えち鉄運行スタッフの努力と工夫をもっと具体的に描いて見せて欲しかったと思います。
別に『新幹線大爆破』みたいな波乱万丈の展開を求めているわけではありません。
管制室で「どの電車をどこの駅で止めて臨時電車をどれくらいのスピードで走らせれば安全なのか」を具体的に示して見せて、その指示を正確に実行する運転士の緊張感をもう少し描いてくれれば、観客もえち鉄スタッフの緊張感を共有出来たはずだと思うのです。
社長の鶴のひと声で全ての道が開けたかのようにも見えて、なんだか予定調和的に終わってしまったのが残念でした。
以上、ネタバレ終わり

正直なところ、映画としては手放しで褒められるものではありません。
特に地元民の目から見た場合、気になって鑑賞の妨げになってしまうほどの単純な演出ミスがやたら多いのです。
「福井弁が変」なのはいつもの事(笑)ですが、それ以外にも・・・。

映画の冒頭、いづみがえち鉄勝山線に乗って帰省するシーン。
合間にインサートされる風景ショットが何故か全然方向違いの三国線の映像という単純な編集ミスとか・・・。

生まれ育った勝山からは直線距離で40キロ以上離れた坂井市三国町の東尋坊にやって来たいづみが
「高校時代は学校帰りによくここに来た。」
という、地元の人間には到底信じ難いセリフを口にしたり・・・。
(電車で勝山から東尋坊へ行くには往復でおよそ約3時間半、運賃は往復2,020円かかります。勝山の女子高生が学校帰りにポコポコ行けるところではありません。)
他県の方には気にならない(分からない)だろうと思いますが、こんな初歩的ミスが多い映画であることは確かです。
プロデューサーは福井出身(しかも勝山市)のご出身と伺っていますが、どうしてこれにダメ出しをしないのか理解に苦しみます。
ほんの数カットの画を差し替えるだけ、そしてたった一言のセリフを変更するだけで、地元の人間も心から満足出来る映画になり得たかも知れないのに・・・。

しかし、この映画には我が福井県の美しい風景がタップリ詰まっています。
こんな画を見ただけで穏やかな気持ちになれるのは、私が福井県人である証しに他なりません。
現在他県で頑張っている福井出身の同胞たち。
親戚の家が福井にあるので定期的に行ってるよ、というご家族。
仕事や学校の関係で一時的にであっても福井で暮らしたことのある方々。
あと、旅行で訪れたことがあるという方や、「仲のいい友達に福井の奴がいるよ!」という人。
この映画は現在福井で暮らしている人たちではなく、遠く離れた場所で福井を想う人たちに観てもらいたい映画です。

『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』は今のところ福井県内先行上映のみとなっています。
私は今月5日(月)に見てきましたが、他県ではまだ上映は始まっていません。

映画『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』は
11月23日から順次全国公開開始です
今週観た映画はこれ一本でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
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