『君よ憤怒の河を渉れ』🈠
CATEGORY日本映画:か行
トガジンです。
『君よ憤怒の河を渉れ』🈠
(ホームシアター:BSプレミアム録画)

先日、BSで放送されたものを録画して観ることが出来ました。
実はこの作品、”ある理由”があってどうしても観ておきたかった作品だったんです。
その”ある理由”については最後の方で明かします。
<概要>

『君よ憤怒の河を渉れ』は1976年公開の松竹映画です。
元大映社長の永田雅一氏が、大映倒産後に初プロデュースした作品です。
監督は佐藤純彌。
そして主演は高倉健。

監督と主演のお二人は、私が好きな映画『野生の証明』(1978年)でもタッグを組んでいます。
また、どちらの作品にも中野良子さんが健さんに協力する女性の役で出ています。

しかし、それと同時に佐藤純彌監督はあの『北京原人 Who are you?』(1997年)の監督でもあります。
さて、『君よ憤怒の河を渉れ』はいかなる作品だったのでしょうか?。
<ストーリー>

東京地方検察庁刑事部検事・杜丘冬人は、突然、警察官に強盗傷害容疑で連行されてしまう。

警察は水沢恵子と名乗る女性の通報を受け杜丘を拘束したのだ。

杜丘は旧知の警視庁捜査第一課・矢村警部を呼び出し無実を主張する。
だが何故か矢村は冷たくあしらう。
「俺は何も信じない」

すると今度は、寺田俊明と名乗る男性が「この男にカメラを盗まれた」と杜丘を名指しで通報してきた。

「これは罠だ」と主張するが、上司の検事正は「なんてことをしてくれたんだ!」ととり合おうとしない。

隙を見て脱走した杜丘は、真相を暴くべく水沢恵子の故郷へ赴くが彼女はすでに何者かに殺害されていた。
敵に先手を打たれた杜丘は、次に寺田の故郷である北海道へと向かう。

北海道警察の非常線を突破して、深い森の中に入り込んだ杜丘は巨大な熊に襲われている女性を助けた。

助けた娘、遠波真由美はその土地の実力者の娘で命の恩人である杜丘に好意を抱く。

一方、矢村の追跡は執拗だった。
真由美が食料を運ぶ所を突き止め、隠れていた杜丘を逮捕することに成功する。

だがその時、熊が三人を襲い杜丘と真由美は逃亡に成功する。
中略

途中いろいろあって真相が見えてきた。
杜丘を罠にはめたのは、政界の黒幕・長岡了介だった。
長岡は自分の企みに知らず知らずのうちに近づいていた杜丘を排除するためあのような罠をしかけたのだった。

長岡は精神病院の院長と製薬会社に命じて秘かに新薬の生体実験をしていた。
その薬の作用とは人の脳に作用してロボットのように従順にさせてしまうというものだった。
精神病を装って堂塔院長の懐に飛び込んだ杜丘だったが、逆に捕らえられ新薬の実験台にされてしまう。
(とても珍しい健さんの恍惚演技が見られます)
しかし実は、飲まされては吐いて・・・を繰り返して、いつしか証拠をつかむに至っていた。

黒幕・長岡了介に対峙した杜丘と矢村。
二人は韓国へ高飛びしようとしていた長岡を射殺してしまう。

二人の行為は「正当防衛」ということになり、杜丘の無実も証明された。
杜丘は「法律では裁けない罪や悪がある事を知った」と言い残し、真由美と共に去って行くのだった。
<感想>
いやもう、感想がどうのこうの云うレベルではないです。
<突っ込み>
とりあえず音楽と音楽の使い方がもの凄く変です。
どういうわけか、緊迫したシーンに限ってウクレレとかハワイアンみたいな能天気なBGMが流れます。

例えばこのシーン。
健さんが水沢恵子なる女性の死体を発見した瞬間にウクレレ曲が流れてくるのですよ。
普通はジャーンとかガーンという緊迫したイメージの楽曲が流れるところでしょう。
脱力することこのうえないです。
黒澤明監督が好んで使った「対位法」とは違います。
(「対位法」とは、「悲しい・辛い場面であえて劇中曲として明るい曲が聞こえてくる」というものです。)
本作品のこれは、間違いなく音楽担当者のセンスを疑うべき問題です。

中盤、熊が出てきます。
着ぐるみの熊です。
しかも2回も出てきます。
どちらの出番もストーリーが進行するうえで非常に重要な役どころです。


中野良子が木に登って悲鳴をあげているところを健さんが助けます。
そらもう漫画みたいな画です。
いかにも『北京原人』の監督さんらしい迷場面でありました。
<中国>
『君よ憤怒の河を渉れ』は1979年に中国で『追捕』のタイトルで公開されました。
文化大革命後に初めて上映された外国映画として累計観客動員は8億人と言われるほど歴史的なヒットとなりました。
無実の罪で連行される主人公の姿と、文化大革命で理不尽な扱いを受けた中国人が自身の姿を重ね合わせて共感を持ったのでしょうか。
この映画の影響で、中国では高倉健や中野良子は最も人気のある日本人俳優になったそうです。


もっとも中国で公開された際には、このようなシーンは全部カットされていたそうです。
ご愁傷様です。
<リメイク>

現在『君よ憤怒の河を渉れ』は、香港と中国の合作で再映画化が進行中です。
リメイク版のタイトルは『追捕 MANHUNT』
監督はあのジョン・ウー(『男たちの挽歌』『レッドクリフ』等)。
高倉健が演じた杜丘検事(本作では弁護士)をチャン・ハンユーが務め、原田芳雄が演じた杜丘を追う矢村警部を福山雅治が演じます。
香港・中国の合作というものの、撮影は大阪・神戸・岡山で行われています。
実は私、7月に『追捕 MANHUNT』の撮影にエキストラとして参加してきました。
『君よ憤怒の河を渉れ』を観ておきたかったのはそのためです。
兵庫県西宮市北部の住宅地で、主人公の弁護士が自宅から逮捕・連行されるシーンの撮影でした。
家から出てきた犯人を取材陣が追う最中、後方の建物から銃声が聞こえて現場が騒然となる、といった内容です。
私の役柄は、取材に来ていたTVカメラマンの一人です。
本職ですから現場で何をどうすればいいのかはよく解っています。
他のカメラマン役の方が四苦八苦していたので、効率の良い動き方をアドバイスさせていただいたりしました。
こうした事件事故現場では、警察官の指示に従い決められた範囲で撮影や取材をするのが普通です。
最初のリハーサルでは、日本のマスコミらしく折り目正しい取材をする感じでやっていました。
ところがジョン・ウー監督から「大人しすぎて面白くない、もっと行儀悪くやれ。」と指示を受けました。
「監督がそうおっしゃるならば」と、私がこれまでに知っている同業者の中で一番行儀が悪い奴の真似をしてみせました。
制止する警官を押し倒し、護送車に乗せられる容疑者に罵声を浴びせ、窓ガラスにレンズを押し付けて顔を撮ろうとしました。
「知り合いに見られたら好感度下がるだろうなぁ」と思いながらも、実はやってて気持ち良かったことを白状しておきます(笑)。
ロケ現場の写真が無いのが残念ですが、現場では(当然ながら)写真を撮ることはご法度なので仕方がありません。
ご勘弁願います。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。
『君よ憤怒の河を渉れ』🈠
(ホームシアター:BSプレミアム録画)

先日、BSで放送されたものを録画して観ることが出来ました。
実はこの作品、”ある理由”があってどうしても観ておきたかった作品だったんです。
その”ある理由”については最後の方で明かします。
<概要>

『君よ憤怒の河を渉れ』は1976年公開の松竹映画です。
元大映社長の永田雅一氏が、大映倒産後に初プロデュースした作品です。
監督は佐藤純彌。
そして主演は高倉健。

監督と主演のお二人は、私が好きな映画『野生の証明』(1978年)でもタッグを組んでいます。
また、どちらの作品にも中野良子さんが健さんに協力する女性の役で出ています。

しかし、それと同時に佐藤純彌監督はあの『北京原人 Who are you?』(1997年)の監督でもあります。
さて、『君よ憤怒の河を渉れ』はいかなる作品だったのでしょうか?。
<ストーリー>

東京地方検察庁刑事部検事・杜丘冬人は、突然、警察官に強盗傷害容疑で連行されてしまう。

警察は水沢恵子と名乗る女性の通報を受け杜丘を拘束したのだ。

杜丘は旧知の警視庁捜査第一課・矢村警部を呼び出し無実を主張する。
だが何故か矢村は冷たくあしらう。
「俺は何も信じない」

すると今度は、寺田俊明と名乗る男性が「この男にカメラを盗まれた」と杜丘を名指しで通報してきた。

「これは罠だ」と主張するが、上司の検事正は「なんてことをしてくれたんだ!」ととり合おうとしない。

隙を見て脱走した杜丘は、真相を暴くべく水沢恵子の故郷へ赴くが彼女はすでに何者かに殺害されていた。
敵に先手を打たれた杜丘は、次に寺田の故郷である北海道へと向かう。

北海道警察の非常線を突破して、深い森の中に入り込んだ杜丘は巨大な熊に襲われている女性を助けた。

助けた娘、遠波真由美はその土地の実力者の娘で命の恩人である杜丘に好意を抱く。

一方、矢村の追跡は執拗だった。
真由美が食料を運ぶ所を突き止め、隠れていた杜丘を逮捕することに成功する。

だがその時、熊が三人を襲い杜丘と真由美は逃亡に成功する。
中略

途中いろいろあって真相が見えてきた。
杜丘を罠にはめたのは、政界の黒幕・長岡了介だった。
長岡は自分の企みに知らず知らずのうちに近づいていた杜丘を排除するためあのような罠をしかけたのだった。

長岡は精神病院の院長と製薬会社に命じて秘かに新薬の生体実験をしていた。
その薬の作用とは人の脳に作用してロボットのように従順にさせてしまうというものだった。
精神病を装って堂塔院長の懐に飛び込んだ杜丘だったが、逆に捕らえられ新薬の実験台にされてしまう。
(とても珍しい健さんの恍惚演技が見られます)
しかし実は、飲まされては吐いて・・・を繰り返して、いつしか証拠をつかむに至っていた。

黒幕・長岡了介に対峙した杜丘と矢村。
二人は韓国へ高飛びしようとしていた長岡を射殺してしまう。

二人の行為は「正当防衛」ということになり、杜丘の無実も証明された。
杜丘は「法律では裁けない罪や悪がある事を知った」と言い残し、真由美と共に去って行くのだった。
<感想>
いやもう、感想がどうのこうの云うレベルではないです。
<突っ込み>
とりあえず音楽と音楽の使い方がもの凄く変です。
どういうわけか、緊迫したシーンに限ってウクレレとかハワイアンみたいな能天気なBGMが流れます。

例えばこのシーン。
健さんが水沢恵子なる女性の死体を発見した瞬間にウクレレ曲が流れてくるのですよ。
普通はジャーンとかガーンという緊迫したイメージの楽曲が流れるところでしょう。
脱力することこのうえないです。
黒澤明監督が好んで使った「対位法」とは違います。
(「対位法」とは、「悲しい・辛い場面であえて劇中曲として明るい曲が聞こえてくる」というものです。)
本作品のこれは、間違いなく音楽担当者のセンスを疑うべき問題です。

中盤、熊が出てきます。
着ぐるみの熊です。
しかも2回も出てきます。
どちらの出番もストーリーが進行するうえで非常に重要な役どころです。


中野良子が木に登って悲鳴をあげているところを健さんが助けます。
そらもう漫画みたいな画です。
いかにも『北京原人』の監督さんらしい迷場面でありました。
<中国>
『君よ憤怒の河を渉れ』は1979年に中国で『追捕』のタイトルで公開されました。
文化大革命後に初めて上映された外国映画として累計観客動員は8億人と言われるほど歴史的なヒットとなりました。
無実の罪で連行される主人公の姿と、文化大革命で理不尽な扱いを受けた中国人が自身の姿を重ね合わせて共感を持ったのでしょうか。
この映画の影響で、中国では高倉健や中野良子は最も人気のある日本人俳優になったそうです。


もっとも中国で公開された際には、このようなシーンは全部カットされていたそうです。
ご愁傷様です。
<リメイク>

現在『君よ憤怒の河を渉れ』は、香港と中国の合作で再映画化が進行中です。
リメイク版のタイトルは『追捕 MANHUNT』
監督はあのジョン・ウー(『男たちの挽歌』『レッドクリフ』等)。
高倉健が演じた杜丘検事(本作では弁護士)をチャン・ハンユーが務め、原田芳雄が演じた杜丘を追う矢村警部を福山雅治が演じます。
香港・中国の合作というものの、撮影は大阪・神戸・岡山で行われています。
実は私、7月に『追捕 MANHUNT』の撮影にエキストラとして参加してきました。
『君よ憤怒の河を渉れ』を観ておきたかったのはそのためです。
兵庫県西宮市北部の住宅地で、主人公の弁護士が自宅から逮捕・連行されるシーンの撮影でした。
家から出てきた犯人を取材陣が追う最中、後方の建物から銃声が聞こえて現場が騒然となる、といった内容です。
私の役柄は、取材に来ていたTVカメラマンの一人です。
本職ですから現場で何をどうすればいいのかはよく解っています。
他のカメラマン役の方が四苦八苦していたので、効率の良い動き方をアドバイスさせていただいたりしました。
こうした事件事故現場では、警察官の指示に従い決められた範囲で撮影や取材をするのが普通です。
最初のリハーサルでは、日本のマスコミらしく折り目正しい取材をする感じでやっていました。
ところがジョン・ウー監督から「大人しすぎて面白くない、もっと行儀悪くやれ。」と指示を受けました。
「監督がそうおっしゃるならば」と、私がこれまでに知っている同業者の中で一番行儀が悪い奴の真似をしてみせました。
制止する警官を押し倒し、護送車に乗せられる容疑者に罵声を浴びせ、窓ガラスにレンズを押し付けて顔を撮ろうとしました。
「知り合いに見られたら好感度下がるだろうなぁ」と思いながらも、実はやってて気持ち良かったことを白状しておきます(笑)。
ロケ現場の写真が無いのが残念ですが、現場では(当然ながら)写真を撮ることはご法度なので仕方がありません。
ご勘弁願います。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。
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