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映画と日常

『スター・ウォーズ』38年史(その3)

トガジンです。

今回はこの人についてです。
george-lucas-2.jpg
ジョージ・ウォルトン・ルーカス・ジュニア

スター・ウォーズ』シリーズの生みの親として知られる人物です。
しかし、育ての親としてはどうであったかというと大いに疑問に思っています。
真に『スター・ウォーズ』を育てて、私の好きな作品世界を作り上げてくれた人たちは別に居ると思っております。


まずは、1981年12月公開のこの作品に遡ります。

レイダース
『レイダース 失われた聖櫃〈アーク〉』です。

第2次大戦中考古学者のインディアナ・ジョーンズが、モーゼの十戒の石板が収められているという聖櫃(アーク)をナチスと争いながら追いかけるというストーリー。
息つく暇もないアクションと随所にちりばめられたユーモアの数々。
帝国の逆襲』の興奮さめやらぬ私にとって、この『レイダース』は最高のニトロ・グリセリンのような映画でした。

原案・製作総指揮はジョージ・ルーカス。
脚本はローレンス・カスダン。
主演はハリソン・フォード。
そして監督はあのスティーブン・スピルバーグ。
私が興奮しないわけがありません。

ルーカス&スピルバーグ
スピルバーグは当初『ジェダイの復讐』の監督をやる予定でした。
しかし、ルーカスが全米監督協会と喧嘩してしまい、協会員だったスピルバーグは監督を断らざるを得なくなります。
スピルバーグが演出する『スター・ウォーズ』・・・。
観てみたいと思う反面、『ジェダイ~』のストーリーではより子供っぽさが強調されてしまいそうな気もしますね。

リチャード・マーカンド
スピルバーグに代わって監督に就任したのがリチャード・マーカンドです。
『針の目』というスパイ・サスペンスものでルーカスの目に止まり『ジェダイの復讐』監督のオファーを受けました。

しかしながら、スパイ映画の演出が優れていたとしてもSF映画においては別のセンスが必要です。
人物や出来事だけでなく、それらが存在している世界そのものが架空のものという映画なのです。
残念ながらマーカンド監督には、そういったものを描く上でのセンス・オブ・ワンダーが欠落していたように思います。

そのせいでしょうか。
マーカンド監督は、前作からの俳優たちには人望がなかったという話があります

『ジェダイの復讐』の撮影時、前作の監督であるアーヴィン・カーシュナーが現場を訪問したことがありました。
すると、俳優たちがこぞってマーカンドにではなくカーシュナーにアドバイスを求めたというのです。
その時マーカンド監督がどのような気持ちで現場に立ったのかは知るよしもありません。

一方、そのアーヴィン・カーシュナー監督。
カーシュナー監督1
こんな写真を見るとかなりお茶目な監督さんだったようですね。

カーシュナー監督2
非現実世界においてもその世界感を壊すことなく、そこに生きる人間関係を緊迫感とユーモアを交えながら描き出す『帝国の逆襲』のあの演出はルーカスではなくカーシュナー監督のものだと思います。

ところが、当時カーシュナーは頻繁にルーカスと衝突していました。
ルーカスは当初カーシュナーの演出プランに難色を示していたそうなのです。

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当時のルーカスは、限られた期限内に続編を公開出来なければ全ての権利をフォックス社に取り上げられてしまうという崖っぷちの状況にありました。
しかも制作費は全額ルーカスが出しているので、間に合わなければ破産は確実です。
ところが制作開始早々に脚本家が病死してしまうなどのトラブルに見舞われスケジュールはギリギリの状態でした。

カーシュナー監督3
カーシュナーのように緻密に人物描写をやっていてはそのリアリティを維持するためにさらに細かな表現が必要になり予算も時間もかかってしまう危険があります。

1作目の時には革新的な映画作りに全身全霊をかたむけていたはずのルーカスが続編では失敗を恐れるあまり手抜きも辞さない状態になっていました。

カーシュナー監督とルーカス
それでもルーカスが折れたことで、私たちの知るあの『帝国の逆襲』が無事世に出ることになりました。

ゲイリー・カーツ
プロデューサーのゲイリー・カーツ氏もまた、『帝国の逆襲』において作品の質を落とすことをよしとせずギリギリまで不出来なショットにリテークを出し続けた人物でした。

ジェダイの復讐 ハン
第3作『ジェダイの復讐』は作り手の思い入れが皆無な作品でした。
もしカーツ氏とカーシュナー監督が携わっていなかったら、『帝国の逆襲』もああなっていたかもしれなかったのですね。

結果的に『帝国の逆襲』は大ヒットしたものの、多額の予算オーバーに腹を立てたルーカスは二人を解雇してしまいました。
第一作から共に映画作りをしてきた仲間であるゲイリー・カーツ氏と、俳優たちにも絶大な信頼を寄せられたカーシュナー監督という二人の人材をです。

スター・ウォーズ』における世界感のディティールへのこだわり。
加えて『帝国の逆襲』において空想世界を支え得た人物描写とユーモアセンス。
『ジェダイの復讐』では失われてしまったこれらの要素こそが、私が好きだった『スターウォーズ』なのです。


お付き合いいただきありがとうございました。

スター・ウォーズ』についてはまだいくつか書きたいことが控えています。
ですが、ここ数日で集中して書きすぎました。
少し休んで今月末WOWOWで『フォースの覚醒』が初放映される頃にまた書かせてもらいます。

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ホームシアターへの出発点となったレーザーディスクの購入。

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1983年夏のテレビ初放映と不幸なあの出来事。

フォースの覚醒
そして昨年末の『フォースの覚醒』。
ネタバレに警戒し、初日のチケット確保のために徹夜した、あの「至福の時」。
そして、「あのカット割りはどういう意味だったんだろう?」今も引っかかっているクライマックスのある1シーンのお話です。。

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