アッチョンブリケ!

先週、手塚治虫先生の名作『ブラックジャック』全話(封印エピソードは除く)を読破しました。
これは仕事のローテーションの関係でほぼ一週間巣籠り状態だったからこそ出来たことです。

しかも、全22巻中21巻まで全部無料!。

たまたま先週日曜(5/31)に開いたebookjapanさんでこのキャンペーンを開催してるのを知りました。
ただし、この無料キャンペーンは6月4日までで現在は終了しています。

5日間でコミックス21冊分読むのは結構大変でした。
毎日2~3時間づつ目をショボショボさせつつ、それでも「次、次っ」と夢中になって読み耽っておりました。

で、歯痒いことに最後の22巻目だけが有料・・・。
結局我慢できずに「165円なら・・・」とポチってしまいました。
嗚呼、ebookjapanの思うツボに・・・。
【連載当時】

読んでるうちに中学時代の色々な思い出も蘇ってきました。
私が中学生だった頃、漫画週刊誌は一冊150円でした。
現在に比べるとずいぶん安いですが、当時はこうした週間少年漫画雑誌が4誌(ジャンプ、サンデー、マガジン、チャンピオン)もしのぎを削っていたのです。
そのうちの一誌だけでも毎週買って読もうとすると一ヶ月600円にもなってしまいます。
中学生の限られたお小遣いではかなり大きな出費なのに、それが4誌となると全部を読むことは到底不可能でした。
今と違って、まだ漫画喫茶みたいな店もありません。
(仮にあっても一般的な中学生には出入り不可能でした)
そこで一時期、同じクラスの男子数名でそれぞれ担当を決めて、一人一誌づつ買って回し読みしていたことがありました。
私は『ブラックジャック』『ドカベン』『がきデカ』『エコエコアザラク』が載っていた少年チャンピオン担当でした。
今も親交のあるT君は『野球狂の詩』『三つ目がとおる』の少年マガジン担当。
少年ジャンプは『すすめパイレーツ』の大ファンだったH君。
『一球さん』『がんばれ元気』『おれは鉄兵』などスポーツ漫画が多かったサンデーはクラス委員だったM君が担当でした。
(水島新二先生はジャンプ以外の3誌で同時連載していたのですね!)
良いアイデアだと思ったのですが、一円も出してない奴に「俺にも貸せ」と持ち去られてしまったり、他にも買いたい物があって小遣いが足りなくなったりなんかもして、結局夏休み前には自然消滅してしまいました。
あと、単行本はほとんど立ち読みで済ませたことは言うまでもありません(笑)。
(雑誌は自動販売機だったりヒモで縛られたりしていて立ち読みは出来なかったのです)
【56歳の春だから】
中学時代にはリアルタイムで読んでいたのでほとんど全部の話を覚えてましたが、大人(50代)になって読み返すと『ブラックジャック』の感動ポイントがずいぶん変わっておりました。
例えば、昔はこういった話(↓)に胸がスカッとしていました。

「助け合い」
外国の地で無実の罪に問われたブラックジャックが一人の善良な日本人サラリーマンに救われた話です。

彼は帰国後会社の陰謀に巻き込まれ、全ての罪を被せて殺されそうになります。
それを知ったブラックジャックはあらゆる手段を駆使して彼の元に駆け付け、しまいには妨害する病院そのものを買い取ってまで彼の命を助けます。

昔はこうした権威や暴力をカサにした鼻持ちならない輩をブラックジャックが医療技術と男気で凹ませるといった話が好きで満足しておりました。

でも、歳を重ねてから読み返すとこの「おばあちゃん」のような親子の話が心に染み入ります。
何かと言えば「お金お金」と言う業突張りのお婆ちゃん。
しかし、貯金をしている様子もなく、息子は貯めたお金を持って出かける母親の後をつけ、自分にまつわる真実を知ります。
彼女はかつて難病に侵された息子の手術費を何年も何年もかけて少しづつ払い続けていたのでした。

ところがその直後、母親が倒れてしまいます。
その場に居合わせたブラックジャックは「手術費は3千万円」と告げるが・・・。
中学時代にも「いい話だな~」と感動した記憶がありますが、実際に母が老齢化してきて私自身も先月56歳になった現在、余計に身に染みてポロポロと涙が止まらなくなってしまいますね。

これも強烈に記憶に残っている話です。
何十年も植物状態で眠り続けていた少年がブラックジャックの手術によって目を覚まします・・・が。
少年はみるみるうちに歳相応の老人の姿に変貌し、そしてそのまま老衰死してしまう。
怖いと同時に切なくてやるせない気分が中学時代の脳裏にザクッと刻み付けられたストーリーでした。
【映像化作品】

角膜移植を受けた少女の目に、ドナー(故人)が最後に見た男の姿が映るという「春一番」。
この話を大林宜彦監督が実写映画化したのが・・・

’77年公開『瞳の中の訪問者』です。
「そーいえばコレ、前にWOWOWで放送してたのを録ってたはずだ!」と思い出し観てみました。

ブラックジャック役は宍戸錠さん。
う~む。
なんと言うか・・・。
やる気とBJ愛は感じましたが、この映画にとっては台無し感が半端ないです(笑)。
無理にブラックジャックのコスプレさせずに、普通の腕の良い目医者さんでも良かったんじゃないかな?。
あと、実写のブラックジャックには

加山雄三版とか

もっくん(本木雅弘)版とか

隆大介(『影武者』で織田信長だった人)版とか

岡田将生が演じた若い頃版とか

あと、まさかの板尾創路バージョンまで!。
これってコントかなにかだったのかな?。
見たいような見たくないような・・・いや、見てはいけないような・・・。

さらに手塚先生が愛した宝塚歌劇でも上演されたみたいです。
いろいろあるみたいですが、宍戸錠以外のコスプレ・・・じゃなくて、実写版ブラックジャックはどれもまだ見たことありません。
【出崎アニメ版】

私にとっての『ブラックジャック』映像化作品はこれこそが最高にして至高です。
1993年から1996年にかけて発表された出崎統&杉野昭夫コンビニよるオリジナル・ビデオアニメ版シリーズです。
この印象が強すぎて、今回原作漫画を読み返していてもブラックジャックのセリフが大塚明夫さんの声で聞こえてきました(笑)。

そしてもちろん、ピノコは故・水谷優子さんの声で。
水谷さんは私と同い年の方でしたが、4年前に病気でお亡くなりになられました。
似た声だけなら別の女性声優さんでも出せるかも知れませんが、出崎アニメ版ピノコのあの独特の可愛らしさは水谷さんの演技あってのものだったと思います。

そのOVAシリーズの中で今も見るたびに必ず泣いてしまうのが第10話「しずむ女」です。
これも月子役の声優:折笠富美子さんの演技が素晴らしかった!。
実はこの「しずむ女」は私と妻が付き合うことになるキッカケとなった作品でもあるのですよ。
彼女とはまだ仕事相手の一人として時々顔を合わせる程度の間柄でしかなかった頃、ひょんなことから『ブラックジャック』の話題が上がり、そこで私は出崎監督の『ブラックジャック』を絶賛して「中でも「しずむ女」は何度見ても泣いてしまうんですよ」と恥ずかしげもなく語ったのでした。
実は中高生時代はアニメージュ誌に投稿が載ったことがあるという筋金入りのアニメファンだった妻(そのときはまだ隠していた)は、自分も大ファンだった出崎作品を熱く語る目の前の男(私)に特別な感情を抱くようになったのだそうです(妻の証言より)。
この「しずむ女」にも相当する原作があったはずですが、残念ながら今回読んだ22冊の中には含まれていませんでした。
これも封印されたという数本のうちの一つだったのですかね?。
なんとか機会を見つけて読んでみたいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。