週刊映画鑑賞記(2020.8/10~2020.8/16)
毎週日曜日は、この一週間に観た映像作品の感想を日記代わりに書き留めております。
8/11(火)
『ドラゴン怒りの鉄拳』
(劇場:福井メトロ劇場)

<あらすじ>
日本帝国主義が横行する1900年代初頭の上海。
恩師を殺された青年が単身日本人武術家一派に立ち向かう。

日本初公開は昭和49年夏。
その少し前から『燃えよドラゴン』『ドラゴン危機一発』とブルース・リー映画が立て続けにヒットしていて、当時の私(小四)も「アチョー」と叫ぶながらオモチャのヌンチャクを振り回したりしておりました(笑)。
もちろん映画自体も観たくてたまらなかったですが、いつも映画館に連れて行ってくれる祖母は「そんな暴力的な映画はダメ!」と相手にしてくれず、結局この時連れて行ってくれたのは「東映まんがまつり」でした。

余談ですが、この夏の「東映まんがまつり」メインプログラムはかの名作『マジンガーZ対暗黒大将軍』でした。
これはこれでトラウマレベルの衝撃と面白さで大満足して帰ったことを覚えています。

私が『怒りの鉄拳』を初めて見たのは当然ながらテレビ放送です。
それはかなり遅くて、確か大学2回生の時の「月曜ロードショー」でした。
その時、解説の荻昌弘さんが冒頭で仰っていたことが今でも『怒りの鉄拳』を観るたびに蘇ってきます。
「カンフー映画の傑作だが見る前にこれだけは言っておかなければならない。かつて日本人が中国の人たちにしたことを彼らは決して忘れていないのだということを。」

『怒りの鉄拳』のTV放映やパッケージソフト化が他のブルース・リー作品に較べて遅かったのは敵が日本人である点と決して無関係ではなかったはずです。
実際、日本公開当時は日本人が悪役であることを隠して宣伝していたそうです。

私が観てきたのは11日(火曜)の19時40分からの回でした。
19時に仕事を終え、晩飯も食わずに大急ぎでメトロ劇場に移動しました。

平日の夜の回だったせいか客は私を入れてたったの4人。
年齢層は(予想通り)私と同じくらいの人ばかりでした。
自分と同年代のブルース・リー好きがもっと大勢集まって来るものと思っていたのですがね・・・・

今回上映された『怒りの鉄拳』は日本初公開時と同じ英語吹き替えバーションでした。
公開当時に観た人たちは喜んでいたようですが、私は今までDVDやブルーレイで中国語版しか見たことがなかったので英語版音声にはなんとなく違和感がありました。

例えば、師匠の葬儀に駆けつけたチェン(ブルース・リー)が師の棺にすがり付いて泣くシーン。
(そういえばリー師父の泣き演技が見られるのは全作品中でこのシーンだけです)
この時「ティーチャー(先生)!」と叫ぶのですが、それではまるで『熱中時代』か『金八先生』みたいです。
この場合は「マスター」で字幕も”師匠”の方が合っていると思うのですがね。

今回の劇場上映で初めて気が付いたのですが、この映画はスタジオのセット撮影ばかりで屋外ロケシーンがほとんどありません。
(屋外撮影は公園入口でのいざこざシーンのみ)
『危機一発』や『ドラゴンへの道』に較べると『怒りの鉄拳』の映像からはかなり閉鎖的な印象を受けますが、それがかえってこの映画が持つ閉塞感には合っていた気がします。

ラスボスの鈴木を演じたのは『大魔神』の中の人である橋本力さん。
『怒りの鉄拳』で描かれる日本人の姿は袴を前後逆に履いていたり芸者さんがストリップしたりと滅茶苦茶ですが、橋本さんはそれらの描写に関しては監督に抗議されていたそうです。

これが問題の前後逆履き袴。
監督は「この方が見た目が良い」と言って強行したそうですが、もしかすると腰当部分を剣道の胴と勘違いしていたのかも知れません。

あと、道場の名札の中になぜか室田日出男さんの名前がありました。
(今回は4Kリマスターの高画質上映だったせいかすぐに気が付きました)
私の想像ですが、橋本力さんが「日本人の名前を何人分か教えてくれ」などと訊かれて適当に知ってる俳優さんの名前を出したのがそのままあの名札になったのかも知れません。

今回一番気になったのは、墓地に身を隠したチェンが何かの動物を丸焼きにして食っているこのシーン。
この動物は「犬」という説が多いみたいですが犬にしては頭がずいぶん小さい気がします。
昨今の世界情勢に感化された私の目には全く別の生き物に見えました。
コウモリ・・・?
そう、羽根をむしり取ったコウモリのように見えたのです。
現在世界中に感染拡大している例の新型ウィルスの最初の宿主は、中国・武漢市のコウモリだったという説があります。
あと、映画『コンテイジョン』でもコウモリが感染の大元だったというお話でした。
リー師父、そんなものを(火を通しているとはいえ)ガツガツ食って大丈夫なんですか?。

しかもその直後、感染予防策もないままノラ・ミャオとチュウ・・・。
う~む。
ここ半年間ほどで私の映画の見方もすっかり変わってしまったのでしょうかね~?。

それでもやはり大画面&高画質で見るブルース・リーのクンフーアクションは迫力がケタ違いで、細かいことなど綺麗さっぱり忘れさせてくれました。
現在は次の『ドラゴンへの道』に切り替わっていますがこれも絶対見に行かねば!。

あの「おまいはタン・ロンかぁ~?」を劇場で聴けるのかと思うと今からワクワクが止まりません(笑)。
8/14(金)
『沖縄スパイ戦史』🈠
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)

<解説>
第2次世界大戦末期、わずか3カ月の間に民間人を含む24万人余りが命を落とした沖縄戦。
軍に召集された少年兵部隊「護郷隊」はスパイ活動やゲリラ戦に従事し、八重山列島では住民が離島への強制疎開を命じられ3000人以上がマラリアに感染し死亡したという事実があった。
そしてその裏側には身分を隠して沖縄の各地に潜伏していた工作員養成機関「陸軍中野学校」出身者42人の存在があった。

この映画には、銃弾でハチの巣にされた少年や、頭が割れて脳が飛び出ている遺体などテレビでは絶対出せない凄惨な映像がたくさん出てきます。
(しかもその一部はカラー)
これが作り物のスプラッタホラーだったらさっと目を背けたりその時点で見るのを止めたりするのですが、本作に限っては「これは目を逸らさずきちんと見なければならない」と正視しておりました。
作品から醸し出される作り手の真摯な姿勢が私にそうさせたのかも知れません。

戦時の軍隊は現地の人々をも巧みに利用し、不都合になれば「国益優先」とばかり平気で口封じ(処分)を行ってきました。
後からどんなに綺麗事で装飾しても、現地の人たちの記憶は消えません。
でも、それはあくまでも旧・日本帝国軍の話だと思っておりました。

しかし、この映画の最後で現在の自衛隊法について触れた場面で心底ゾッとしました。
例えば、有事法制の中にこんな一節があります。
「自衛隊は病院や民間の家屋や物資を優先的に使用できる」
自衛隊法の根底は旧・日本帝国軍のそれとほとんど変わりがないものなのです。

現在、米中関係が悪化の一途をたどっています。
もし本当に戦争勃発なんてことになったら、自衛隊は台風や地震など自然災害の時と同じように戦火に巻き込まれる日本国民を助けてくれるのでしょうか?。
この映画の答えは「否」です。
自衛隊が守るべきはあくまでも「国の独立と平和」であって、有事の際においては国民の生命や財産など二の次なのです。
私の中の『シン・ゴジラ』や平成『ガメラ』に登場した自衛隊のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく気がしました。

ところで・・・。
今回、本当に久し振りに日本映画専門チャンネルを見た気がします(笑)。
最近はTVドラマの再放送ばかりで「これのどこが日本映画専門やねん」って感じでしたし、「特撮王国」も全然やらなくなってしまって一時は退会も考えたくらいでした。
それでも日専CHは時々こういう良質なドキュメンタリー映画を放映してくれるので捨てがたいです。

今週は映画以外に太平洋戦争絡みのドキュメンタリーやスペシャルドラマをいくつか見ておりました。
毎年この時期はNHKが戦争関連のドキュメンタリーを多数放送してくれるのでそれらを録画して片っ端から見ています。
『歴史秘話ヒストリア 伊400 幻の巨大潜水艦』(8/10)
これは以前放送されたものの再編集版でした。
伊400と聞くと私は反射的に東宝特撮映画『海底軍艦』を思い出してしまいます。
海底軍艦(轟天号)は終戦直後に出撃した伊403(架空の伊400同型艦)の乗組員たちが密かに作り上げたという設定でした。
昭和の特撮映画には戦争時代の傷跡が垣間見える作品が数多いのです。
『歴史秘話ヒストリア ガダルカナル 大敗北の真相』(8/13)
日本軍の一方的な惨敗と思われていたガダルカナルの戦いですが、実は優秀な現地指揮官の作戦により一時は勝利目前まで迫っていたという話です。
その勝利をドブに投げ捨ててしまったのは現場を知らない大本営のボンクラ幹部たちでした。
特に輸送艦を出し渋って現地の陸軍兵士を武器弾薬と食料不足に陥れた海軍の罪は重いです。
現代社会にもこういうバカ上司はいくらでもいますよね~。
『#あちこちのすずさん~教えてください あなたの戦争~』(8/14)
アニメ映画『この世界の片隅に』をモチーフとして、戦時中でも毎日を懸命に生きた「すずさん」のような人の投稿エピソードを短編アニメ化して紹介する番組です。
昨年も同じ内容の番組が放送されていてそれの再放送かと思っていたら今年新しく作られた新作でした。
空襲のさなか、こっそり(禁制の)お酒を作ったのがバレるのを恐れてご近所全員で飲み干した話。
片足を失って義足を付けることになった女性が、その義足職人に見初められて結婚した話。
叔母の家に養われて肩身の狭い思いをしていた女性が、街の盆踊りでひと時の解放感を味わった話。
どれも味わい深いものばかりでしたが、中でも昨年の番組で紹介されたとある少女と戦地の兵士との文通の話の続編でした。
前回は素性が不明なままで終わった相手の兵士の詳細とその生家を、手紙に書かれた内容や同梱されていた折り紙を手がかりになんとか探し当てていました。
思い出話の中の登場人物でしかなかった人が、この地球上で実際に生活していた人間だったことを実感させてくれた希有なレポートでした。
『NHKスペシャル 証言と映像でつづる 原爆投下・全記録』(8/15)
最近発見されたというアメリカの原爆開発計画責任者の手記を元に構成された原爆ドキュメンタリー。
これを見ると「戦争を早く終わらせるために原爆投下は必要だった」というアメリカ人の言い分も分からなくはない気がしてきます。
あと、ポツダム宣言受諾を渋る日本政府(というか陸軍)の証言を聞いていると、『日本のいちばん長い日』の阿南陸軍大臣(演:三船敏郎)の姿がダブってきました。
つくづく「私は戦争を知らない子供たちの一人であり、自分にとって戦争とは映画の中での出来事でしかないのだな。」と感じさせられた番組でした。
『太陽の子』(8/15)
先日亡くなられた三浦春馬さんが出演しているということで妻が熱心に見ていたのを私も横からなんとなく見ておりました。
戦時下に核分裂エネルギーを使った新型爆弾の製造を命じられた日本の研究者を描くドラマ。
当然フィクションですが、当時日本にも核爆弾の研究をしていた科学者グループが存在していたのは事実だそうです。
怪獣映画ファンの私としてはついつい『フランケンシュタイン対地底怪獣』みたいなSF的展開を妄想しながら見ておりました。
それが不謹慎であることは重々承知していますが、これは新作怪獣映画に飢えている私の性(さが)なのでしょう。
あと、このドラマ関連で今日(16日)午後10時からBS1で『原子の力を解放せよ ~戦争に翻弄された核物理学者たち~』というドキュメンタリー番組が放送されていましたが、今夜はこのブログ記事を書いていたためまだ見ていません(笑)。
もちろん録画はしてあるので来週中に時間を見つけて見るつもりです。
ところで・・・。

今年は寂しいお盆になりました。
例のウィルス禍のせいで、毎年必ず大挙して訪れるはずの東京・大阪・京都からの親戚たちが一軒も来なかったのです。
これは私の知る限り初めてのことです。
私の家は父方の本家で、先祖代々のお墓はもちろん祖父母をはじめ父と父の兄弟全員(とその家族)の墓もこちらにあります。
そのため毎年必ず3~4軒が子供連れで泊まりに来て、墓参りのついでに海水浴の民宿として(笑)利用していくのです。
子供がいない我が家もこの時期だけは幼子の笑い声とドタバタ走り回る音で連日騒々しくなるのですが、今年はそれが全くありません。
子供たちを交代で海に連れて行ってやる気苦労も、毎日大量の食事を用意(海行きの弁当も含む)する手間も無く、母と妻は「今年は楽だ~」と強がりながらかなり寂しげな表情でした。
実は、6月末くらいまでは「感染予防策さえきちんとしてくれれば来てもらっていいのでは?」と言っていましたが、7月に入って東京の感染者数が激増すると母が「今年は来ないように言ったほうがいい」と言い出しました。
もちろん親戚たちに来てほしい気持ちに変わりはないですが、母は感染の心配よりも近所のリアクションを恐れたようです。
「こんな時期に東京や大阪なんかから来やがって!」と石を投げつけられたり「呼んだお前らも非常識だ。」と村八分にされることを恐れたみたいです。
(馬鹿げた話ですが、当地は田舎の農村なので決して有り得ない話ではありません。)
私から東京や大阪の従妹たちに「今年は来るな」とは言い出しにくくてしばらく悶々としていたのですけど、幸い先方から「今年はやめておく」と連絡してきてくれたので助かりました。
また、今年の春先には京都の伯母(母の実姉)が亡くなっているのですけど母はその初盆に行くことも出来ません。
これでフラストレーションが溜まって再びメニエール病を発症して倒れたりしないか心配です。
来年のお盆には我が家に以前と同じ喧噪が戻ってくることを願ってやみません。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。