週刊映画鑑賞記(2020.8/17~2020.8/23)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めております。
連日の猛暑のため、今週だけで2回も熱中症の初期症状(極度の疲労・目眩など)に見舞われました。
帽子・黒タオル数本・水・凍らせた飲み物・塩分・そして冷却用としての氷冷ギャッツビー(無香料)が毎日の必需品です。
8/17(月)
『ドラゴンへの道』
(劇場:福井メトロ劇場)

<あらすじ>
ローマの中華料理店「上海」は立ち退きを迫る地元マフィアから執拗な嫌がらせを受けていた。
香港から弁護士を呼び寄せるが、やって来たのは中国拳法の達人でマフィアが送り込むチンピラたちを鮮やかに撃退してしまう。
しかし、マフィアもアメリカから最強の武道家を呼び寄せ抗争は激しさを増していく。

ブルース・リー主演映画5作品(生前に撮影されたもの)の中で私が一番好きな作品です。
リー自身が主演だけでなく監督・脚本・武術指導・製作も兼務したことで、彼の鋭利なアクションにユーモラスなイメージが程よく散りばめられていているのがその理由です。

初めて見たのは中学1年になったばかりの昭和52年4月、「水曜ロードショー」での放映でした。
小学生の頃は深夜に及ぶ映画番組は親の許可がなければ見せてもらえなかったので、その反動もあってか中学生になってからはTVで放映される映画という映画を片っ端から見まくっておりました。
(それでもえっちなシーンや残酷描写が多い映画はダメでしたが)
『ドラゴンへの道』はそうした環境変化の最初の頃に見たこともあって強く印象に残っています。

劇場にはお盆明けの月曜日に見に行きました。
前週の『怒りの鉄拳』は一日2回上映がありましたが、『ドラ道』はなぜか一日1回のみ。
しかも日中の時間ばかりで夜の回はありません。
この日たまたま休みが取れたからよかったものの、普通なら絶対見られないプログラムです。

平日の真昼間でありながら、お客さんの数は私も含めてざっと15人ほどいたと思います。
私と同年配の人が多いのは当然として、驚いたことに20代くらいと思しき若い男性や母と娘2人の親子連れなどもいました。
『怒りの鉄拳』の時とはえらい違いです。

今回の上映は、最近東映の倉庫から発見されたという「日本公開バージョン」とのことでした。
冒頭、龍の絵バックに日本語文字で「ブルース・リー」の名前がデカデカと出てきます。
今まで通りのカヌー(?)を漕ぐ男たちを描いたアニメーションもちゃんとありました。
なんだか冒頭の日本語クレジットは無理矢理付け足したもののような気がします。

音声は『怒りの鉄拳』と同じ英語吹き替え版でした。
そのため、中国語版ではいつも大笑いさせてくれていた変な日本語セリフ「おまいはタン・ロンか~?」まで英語のセリフに吹き替えられていたのが残念でなりません。
この映画の重要なアクセントの一つが失われてしまった気がします。
あと、字幕の表記も今まで見てきたDVDやブルーレイと違っていて、主人公の名前がタン・ロンではなくタン・ルンになっていました。
日本初公開時もタン・ルンだったのでしょうかね~?。
あえて言わせていただきます。
「日本公開版も英語吹替えもいらねえ!」
だって、私は日本公開当時『ドラ道』上映館には連れて行ってもらえなかった子なのですから。
そんなわけで本記事では主人公の名前をタン・ロンで通させていただきます。

『ドラゴンへの道』の主人公はカンフーが取り柄の田舎の青年タン・ロン。
序盤から中盤にかけてこんな朗らかな笑顔をたくさん見せてくれます。
また、裸の娼婦を見た途端に慌てて逃げ出したところを見るとタン・ロンはまだ童貞なのかも知れません。

それが格闘シーンになった途端まるで別人のように豹変しますが、これはまあご愛敬ということで(笑)。

でも、今回劇場のスクリーンで見返すうち「実はこれも計算された演出の一つだったんじゃないか?」と思うようになりました。
『ドラゴンへの道』はリー自身が脚本・監督を兼務した作品ですから、彼の頭の中には全体のイメージが出来上がっていたはずなのです。
今回の鑑賞で私はそのことを確信しました(後述)。

『怒りの鉄拳』に引き続きヒロインはノラ・ミャオさん。
前作の純朴そうなイメージと打って変わり、今回は気の強いツンデレお嬢さんといった役柄です。
いかにも田舎者なタン・ロンを冷たい目で見る前半と・・・

彼のことを信頼し切ってうっとりしている後半とのギャップがたまりません(笑)。
余談ですが、私は数年前メイキングビデオか何かで思いっきり中年太りした彼女を見てしまって死ぬほど後悔したことがありました。
名画の中の美少女は決して現実に追いかけてはならないというよき教訓です(笑)。

ストーリーは西部劇そのものです。
悪どい連中に嫌がらせを受けて困ってる美女がいて、そこにふらりと現れた凄腕用心棒が悪党どもをやっつけて去っていく。
『シェーン』とか『荒野の用心棒』(元ネタは黒澤明の『用心棒』)みたいな感じのお話ですね。

ところで、本作ではリーが敵をやっつける時も決して相手を殺していません。
たとえ相手が悪党であろうとタン・ロンはあくまでも武道家として対応していました。
現に戦意を喪失した相手は脅して逃がしてやったりもしています。

唯一の例外は『ドラ道』最大の見せ場であるラストの対コルト(演:チャック・ノリス)戦です。
闘う前にはお互いに準備運動を行い野良猫の声をゴング代わりにして戦い始めますが、これは明らかに武闘家同士1対1の「決闘」として描いています。
コルトを戦闘不能になるまで追い詰めたタン・ロンは相手に対して「もうやめておけ」とアイコンタクトを送ります。
それでもなお立ち向かってくる武人に対しては中途半端に情けをかけるほうがかえって侮辱というものです。

戦い終わったタン・ロンは複雑な表情でコルトの遺体に服を掛けて哀悼の意を捧げています。
これが彼にとって初めての殺人であったことは確かです。

タイトル『ドラゴンへの道』の「道」には、「それまで純朴なカンフー青年だったタン・ロンが初めて人を殺してしまったことで裏の世界に足を踏み入れていく」という意味合いが含まれていたのかも知れません。
そう考えてみると、ラストでタン・ロンを見送る仲間が言った妙にシリアスなセリフ「彼の行く先にはナイフと銃が待ち受けている」がすんなり受け入れられます。
ブルース・リーは本作以降もタン・ロンを主人公にしたシリーズ化を考えていたんじゃないかとも思いました。
まあ、全ては私の思い込みに過ぎませんけどね。

でも、この映画の舞台がローマでなければならなかった必然性は今でもよく分かりません(笑)。
ヒット作を連発して多くの予算を勝ち取ったリー師父が思いっきり無駄使い(海外ロケ)をしてみたかったのか?。
あるいは映画撮影を口実にノラ・ミャオとアバンチュールしたかっただけなのか?。

いずれにせよ、ラストのチャック・ノリスとの死闘は「この背景でなければ!」というくらい強い絵になっているので「それで良し」といたしましょう。
ブルース・リー映画に理屈は要りません。
面白ければそれで良いのであります。
アチョォ~!
さて

「ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020」上映も現在は最後の『死亡遊戯』に切り替わっています。
う~ん、これどうしようかなあ。

ロバート・クローズ版『死亡遊戯』って、終盤12分程度のリー本人の格闘シーン以外見るべきところが全くないんですよね~。
しかも公開当時(’78)も見に行ってるし・・・。
それでも、もう一度だけあの場面を映画館の大スクリーンで仰ぎ見たいという欲求も捨てがたいしなあ。
でも、それ以前の問題として・・・

『死亡遊戯』は連日14時50分からの一回づつしか上映が無いんですよね。
来週はすでに仕事でスケジュールが埋まっているためなんか無理っぽいです。
火曜日以降は終日仕事が入って思うように時間が取れず、また猛暑のため体調を崩したりもして結局今週観れた映画は『ドラゴンへの道』一本だけでした。
皆様におかれましても熱中症には十分お気をつけ下さい。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。