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映画と日常

週刊映画鑑賞記(2020.8/24~2020.8/30)

トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品について日記代わりに書き留めています。



8/28(金)
『死亡遊戯』
(劇場:福井メトロ劇場)
『死亡遊戯』ポスター画像
<あらすじ>
世界的アクションスターのビリーはドクター・ランド率いる国際的犯罪シンジケートから終身契約を迫られていた。
脅迫に屈せず契約を拒否するビリーに業を煮やしたランドはついにビリーの暗殺を命じる。


まあ、ハッキリ言ってストーリーなんかどーでもいい映画です(笑)。
ラスト15分(正確には12分ほど)のブルース・リー本人のアクションを見せるための長い長い前置きに過ぎないのですから。

『死亡遊戯』と『カタストロフ』
『死亡遊戯』は私が初めて映画館で観たブルース・リー作品です。
中学2年だった昭和53年のGWに同級生のT君と二人で一日中映画をハシゴして見て回ったうちの一本でした。

ちなみに、この日観た映画は全部で5本(!)。
中学生が一日に見る映画の数としてはかなりの本数ですがこれには訳がありました。
私の家から映画館がある福井市までは電車で片道800円もかかるのです。
往復だと1,600円!。
これはもう当時の映画館の入場料より高い値段です。
お小遣いが乏しい中学生としては、移動費を抑えて一日で可能な限りの数の映画をハシゴするしかありません。

『宇宙からのメッセージ』新聞記事
この日最初に見たのは『宇宙からのメッセージ』
皆さんご承知とは思いますが『スター・ウォーズ』人気に便乗して東映が急遽こしらえた和製スペースオペラの怪作です。
確かこれが10時からの上映で・・・

『フレッシュ・ゴードン』新聞記事
昼食を挟んで午後からは『フレッシュ・ゴードン』
(注:『フッシュ』じゃなくて『フッシュ』の方です)
実はこの日の本命はコレでした(笑)。
昭和53年は空前のSF映画ブームであり、当時の私にはブルース・リーより『宇宙からのメッセージ』や『フッシュ・ゴードン』のほうが優先順位が高かったのです。

あと、『喧嘩プロフェッショナル』とかいう同時上映も見たはずなんですがこれは全然覚えていません。
おそらく『死亡遊戯』の公開に便乗してどこかから引っ張り出してきた格闘アクションではないかと思われます。

『フレッシュ・ゴードン』と『喧嘩プロフェッショナル』を見終わった時点(午後5時頃)で帰る予定でいたのですが、私もT君も「今日一日がこれで終わっていいのか?」という気分になっていました。
まあ、早い話が『フレッシュ・ゴードン』と『喧嘩プロフェッショナル』に全く満足していなかったということです(笑)。
そしてどちらからともなく「せっかく来たんだからブルース・リーも見ていこう」と福井県最大のスクリーンサイズを誇るテアトル福井へと足を運んだのでありました。
この時、私の脳裏に小学生の頃『怒りの鉄拳』や『ドラゴンへの道』に連れて行ってもらえなかった悔しい思い出が蘇ってきたのでした。

『死亡遊戯』と『カタストロフ』カップリングちらし
ただ、問題だった(邪魔とも云う)のは同時上映の『カタストロフ 世界の大惨事』の存在です。
映画館に着いた時はちょうど『カタストロフ』が始まる時間で『死亡遊戯』の上映開始は8時頃だったのです。
そうなると帰宅は11時過ぎということになってしまいますが、私もT君も「映画は最初から通して観る」主義だったので途中入場はしたくありません。
結局、退屈極まりない『カタストロフ』を全編見てから『死亡遊戯』鑑賞という運びになりました。

『死亡遊戯』対ハキム戦
中二男子だった私には、終盤のB・リー本人のアクションのカッコ良さは筆舌に尽くし難いほどのインパクトがありました。
決して大袈裟でなく、このたった12分間のシーンだけでこの日朝から観てきた4本の映画『宇宙からのメッセージ』『フレッシュ・ゴードン』『喧嘩プロフェッショナル』『カタストロフ』の記憶が全部吹き飛んでしまったくらいです。

『死亡遊戯』似てなさすぎ・・・
まあ確かに、「どちら様でしたっけ?」って訊きたくなるくらい似てない替え玉俳優とか・・・

『死亡遊戯』鏡に顔写真
中二のガキにも分かってしまうくらいチープ過ぎる特撮とか、当時の私にも気になるところはいくつもありました。

でも、この『死亡遊戯』の前に見てきた映画が『宇宙からのメッセージ』とか『フレッシュ・ゴードン』とか『喧嘩プロフェッショナル』とかいったモノだったためか、いちいち腹を立てることもなく寛容な気持ちで見ていたように思います(笑)。
(あるいは一日中映画ばかり見ていて脳が疲れていただけか?)

『死亡遊戯』対パスカル戦
それでも、対ダン・イノサント戦で見せてくれたヌンチャク対決と怒涛の4連回し蹴りには本当に血沸き肉踊りました。
帰りの電車(終電)で相棒のT君と「ブルース・リーすげー」「やっぱ本物は違うわ」などと熱く語り合い興奮状態のまま帰宅したことを今でもよく覚えています。
もちろん、家に入るやいなや父親のグーパンチと母親の涙ながらのお説教を喰らったことは言うまでもありません。


008.jpg
福井メトロ劇場での『死亡遊戯』上映は連日14時50分からの一回限り。
普通の就労者がホイホイ観に行ける時間帯ではありません。
実は月曜から日曜まで終日仕事が入っていたので映画館に行く時間など取れないだろうと諦めていたのですが、金曜日だけ仕事が早く終わった(その代わり早朝5時スタートでしたが)のでなんとか上映時間に間に合いました。

まあ、公開当時に一度映画館で見たことありますし、内容的にもB・リー本人のシーン以外見どころは無いと思っていたので無理して観に行く理由は思い当たらなかったのですけど、「劇場スクリーンで仰ぎ見ることで『ドラゴンへの道』の時みたいにまた何か新しい視点が見つかるかも知れない」と思い、眠いのを我慢して劇場に向かいました。
ちなみに、昼食は抜きです。
時間ギリギリだったのと、食べてしまうと睡魔に負けてしまいそうな気がしたので(笑)。

入館したのが開始時間ギリギリだったためよく観察してはいませんが客入りは少な目だったように思います。
やっぱり本物の割合が少ない(110分中12分だからわずか11%)と分かっているので、よほどのファンで限りお金を払ってまで見に行こうとは思わないのかも知れません。
(私もその点で迷っていたのは事実です)

『死亡遊戯』誰?
『死亡遊戯』は「リー没後も続くムーブメントが冷める前に稼げるだけ稼ごう」とばかり、リーの死によって宙に浮いたままだった遺作『死亡的遊戯』の撮影フィルムを使って無理やりでっち上げた映画です。
中学生時代映画館の大スクリーンで最初に観た時は確かに大興奮しましたが、月日が流れてビデオやDVDで何度か見返すうち次第に残念という想いだけでなく怒りの感情さえ沸き立つようになりました。

残念というのは言うまでもなく、「ブルース・リーが生きてさえいたら・・・」という無念さと「代役にしても合成にしてももう少しなんとかならんかったのか?」という失笑交じりの歯がゆさです。

『死亡遊戯』カットされた二人
それに対し、怒りの感情とは、OKテイクだけでも45分以上あったとされるリーが遺した撮影素材をたった12分程度に切り刻んでしまったロバート・クローズ監督に対するものです。

現存する撮影素材のほとんどを収録している『GOD.死亡的遊戯』とそのアメリカ版『Bruce Lee: A Warrior's Journey』を見ると、当初の構想ではリーは二人の仲間(チェン・ユアンとジェームズ・ティエン)と一緒に五重塔を登っていたことが分かります。
ところがクローズ版『死亡遊戯』では仲間二人が映っている部分を丸ごとカットしてしまいました。
(ただし、一部のカットには床に転がっている彼らの死体が写っている)

この点に関しては、当人たちでの追加撮影が出来ない諸事情(追加撮影開始時にはチェン・ユアン氏は既に亡くなっていた等)もあったりしたのである程度仕方なかったのだろうとは思います。

しかし、以下の話を知った時はクローズ版『死亡遊戯』の関係者に対して心の底からの怒りを覚えました。

『ドラゴンへの道』「おまいはタン・ロンか~?」
実はB・リーは五重塔内部の戦闘シーン以外にも屋外乱闘シーンを撮影していたらしいのです。
そしてそこには『ドラゴンへの道』の「おまいはタン・ロンか~」の人も出演していたとのことでした。
ところがクローズ版『死亡遊戯』ではそのシーンを一切使わなかったばかりでなく、こともあろうにその貴重なネガを「もう要らない」と焼却処分してしまったのです。

これは亡きブルース・リーに対する冒涜行為以外の何物でもありません。
ロバート・クローズ(監督)とレイモンド・チョウ(製作)、断じて許すまじ!

『GOD 死亡的遊戯』ポスター画像 Bruce Lee A Warriors Journey DVD
リーが遺した『死亡的遊戯』の格闘シーンを見るなら『GOD.死亡的遊戯』と同じ素材を使ったアメリカ版『Bruce Lee: A Warrior's Journey』のほうが満足度は高いです。
日本版の前半は再現ドラマ、アメリカ版は関係者のインタビュー中心といった違いはありますが、後半でオリジナル素材をリーの構想に沿って編集している点は同じです。
ただし、日本版とアメリカ版では音響効果の使い方が全く違います。
B・リーの構想では、この五重塔は雪に覆われた山の中という設定だったそうで、日本版のほうは時折ビュービューと鳴る風の音が聞こえてくるのに対し、アメリカ版はそういった環境が分かる細かな音は聴き取れません。
逆にアメリカ版は効果音とBGMが派手目に乗せられているため、アクションシーンの鑑賞という意味ではこちらの方が面白いです。

全く同じフィルムを使っていながら、編集と音響が変わればこんなにも印象が違って見えることを実感出来る希有なフィルムだと思います。
また、クローズ版『死亡遊戯』がこの素材をどう切り刻んで作られたのか考えてみるのも一興です。
これから映画を学ぼうという若い人たちにとって、この3本は良い教材になるんじゃないでしょうか?。


残念ながら『Bruce Lee: A Warrior's Journey』のDVDは現在絶版となっていて入手は困難です。
YouTUBEで観られるのでリンクを貼っておきます。(画質はそれなりですが・・・)

最後に・・・。
『死亡遊戯』オープニング
リー本人の登場場面以外は見るべきところなど全く無いと思っていたクローズ版『死亡遊戯』ですが、今回見直してみて一つだけ良かった部分がありました。

生前のリーの映像をふんだんに使ったオープニングがまるで007みたいで実にカッコ良いのです。
それもそのはずで、本作の音楽担当は007シリーズでお馴染みのジョン・バリー氏でした。
あのスリリング&甘美な音楽が乗るだけで『ドラゴンへの道』の対コルト戦も少し違った印象に見えてくるから不思議です。


『ドラゴン危機一発』ポスター画像
ここ数週間のうちに『怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』『死亡遊戯』とブルース・リー作品を3本続けて観てきたわけですが、こうなると『危機一発』を見逃してしまったことが余計悔やまれます。
来週は『ドラゴン危機一発』のブルーレイでも見ましょうかね。
私にとっての「ブルース・リー復活祭2020」補完計画といったところです(笑)。



なんだか初見の思い出話がメインになってしまった気がしますが、今となってはあまり書くことも無い作品なのでご勘弁を。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
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COMMENTS

4 Comments

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ゾンビマン  

お疲れさまです。

とても素晴らしい記事で、こちらの魂も熱くなってきました! 
映画を日に5本ハシゴは凄いですね!

2020/08/31 (Mon) 23:12 | EDIT | REPLY |   

ダリルジョン  

おはようございます!

「宇宙からのメッセージ」
確か中学生? の時に友人と観に行った記憶?懐かしい!
役者さんも豪華、スタッフも!
日本もガンバって作ったんだなぁでしたね。

「フレッシュ・ゴードン」
これはもう、ポコチンロケットや変態タコ怪獣、、、
エロパロ・スペースオペラ殿堂入りじゃないでしょうか?
確か、当時購読していた「月刊ランデブー」でも記事にされていて、
今思えば、少年の心は大人の休日倶楽部が何たることかと思ったものです( ´∀` )/

2020/09/01 (Tue) 06:26 | EDIT | REPLY |   
トガジン

トガジン  

ゾンビマンさんコメントありがとうございます

>こちらの魂も熱くなってきました

恐縮です。
無理して行くか行くまいか少し迷っていたのですが、先週ゾンビマンさんからいただいたコメントが背中を押してくれた形になりました。
おかげさまで中学時代の無垢な気持ち(笑)を取り戻せた気がします。


>映画を日に5本ハシゴ

中高生時代は時間と移動費を少しでも節約したかったので一日4本くらいは当たり前でした(笑)。
あと、ド田舎で館数が少ないため都会では単品興行の作品でも2本立て興行になることが多かったということもありました。
今では2本が限界ですね。
集中力が持たないです。

2020/09/01 (Tue) 20:35 | EDIT | REPLY |   
トガジン

トガジン  

ダリルジョンさんコメントありがとうございます

>「宇宙からのメッセージ」

2年ほど前にWOWOWで放映していたのを見返したのですけど、なんかワケの分からんパワフルな感じでブッ飛んでましたね~。
なにせ宇宙ものだというのに千葉真一のセリフが「その罪、万死に値する!。」ですから(笑)。
ハッキリ言ってSF設定も特撮もムチャクチャで『スター・ウォーズ』のパクリなのですけど、『スター・ウォーズ』だって結局チャンバラやってたわけですから。

>「フッシュ・ゴードン」

今思えば、あれが中学生でも見られる一般上映だったことがビックリですね(笑)。

あのあと一度も見返したことがないのでかなり脳内補正入ってるかも知れないですが、エロパロものとしては結構真面目に作られていた気がします。
下らない下ネタギャグが散りばめられていましたが、ちゃんと『フッシュ・ゴードン』に似た世界観を醸し出してストーリーも適当に投げ出さず最後まで完走していたように思います。
あと、ハリーハウゼンみたいな人形アニメーションもあって映像面でもそれなりに楽しめた覚えはあります。

もっとも、そんな印象もブルース・リーのあまりのカッコ良さに上書きされてしまって、今回の記事を書き始めるまで綺麗サッパリ忘れていたのですがね(笑)。

2020/09/01 (Tue) 21:06 | EDIT | REPLY |   

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