週刊映画鑑賞記(2020.10/19~2020.10/25)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週はNETFLIX独占配信作品のこの2本。
10/19(月)
『オールド・ガード』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

<あらすじ>
兵士アンディ率いる秘密の特殊部隊「オールド・ガード」。
永遠の命を持つ不死身の傭兵たちで構成されるその部隊は、何世紀にもわたって歴史の影で暗躍し、誰にも知られることなく人類を守り続けてきた。
ある日、彼女たちの特別な能力が何者かによって暴かれてしまう。
その能力の複製を企む強大な謎の組織の手段を選ばない脅威がアンディたちを襲う。

「不老不死」を描いた映画といえば「バンパイア(吸血鬼)」が最初に思い浮かびますが、本作ではある種の突然変異的存在として描かれます。
また、不老不死の身体であることが知られると軍や政府によって研究対象にされてしまうため、人目を忍んで行動する必要があるという設定です。

不老不死になることで家族や友人たちとはもう同じ時間を過ごせなくなるという恐怖や悲しみにも触れていてストーリーに深みがあって良かったと思います。

こうした点を描いた作品で他に思い浮かぶとすれば、高橋留美子先生の「人魚」シリーズくらいでしょうか?。

主演はシャーリーズ・セロン。
『イーオンフラックス』『アトミックブロンド』『マッドマックス』等々、私がSFやアクションものばかり好んで見るせいもありますが、この人が一般女性の役を演じてるところを見た記憶がありません。
アクションシーンもほとんど自分でこなしているとかで、まさに女性版トム・クルーズといった感じです。

かつて魔女裁判にかけられ、鉄製の檻に入れられて海に沈められたアンディの相棒クイン。
不死の身体のために溺死と蘇生を永久に繰り返すというまさに生き地獄に落とされた女性で、続編には重要な役で再登場するのは必至のキャラクターです。
で、演じているこの東洋系の女優さん、「前にどこかで見たはずだ」と思って調べてみたところ「ああ、あの子か!」と思わず膝を打ちました。
彼女の名前はベロニカ・グゥ。

『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』冒頭で爆撃機と共に殉職したパイロット役の人でした。
たったあれだけで私の記憶に残ったほどですから確かに美人さんですね(笑)。

もう一人、「コイツ絶対にどこかで見たぞ?。」と気になった俳優がこの人。
不老不死の薬を作るためアンディたちを捕獲・研究しようとする若き科学者を演じていたハリー・メリングです。
ググってみてビックリしました。

『ハリー・ポッター』シリーズでハリーを虐待していた人間一家のデブ息子ダドリー役だった人でした。
えらくガリガリに痩せていたので気が付きませんでしたが、自己中な役柄はダドリーのままでした(笑)。
10/22(木)
『エノーラ・ホームズの事件簿』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

<あらすじ>
1884年、イギリス。
16歳の誕生日を迎えたエノーラ・ホームズだが、母親が暗号を残して行方不明になる。
兄のシャーロックとマイクロフトのもとに預けられるも、母親を捜そうとたった一人でロンドンへ向かう。
その途中で貴族の青年が失踪する事件に出くわしたことから巨大な陰謀に巻き込まれた彼女は、兄譲りの推理力を発揮して立ちはだかる謎と危機を乗り越えていく。

主人公はあの名探偵シャーロック・ホームズの実妹:エノーラ・ホームズ。
原作者はナンシー・スプリンガーという女性です。
「ホームズ」は既にパブリックドメイン化されているはずなので版権的には問題ないのでしょうけど、これってつまりコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」の二次創作ものということでしょうか?。
小学生の頃『名探偵ホームズ』(ポプラ社版)の愛読者だった私としては、妹の存在とホームズ正史との折り合いをどう付けていくのか気になります。
『金田一少年の事件簿』みたいに、ホームズの娘とか孫という設定であれば整合性など考えずに楽しめると思うのですがね。

エノーラを演じるは『ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ』のミリー・ボビー・ブラウン。
『ゴジラ』のマディソンと同じ活動的かつ聡明な女の子で、物語の中でいつも母親に振り回されるところも似ています(笑)。
映画は彼女の一人称で語られていて、時折”第四の壁”を超えてカメラ目線で観客に語りかけてストーリーの重要ポイントを印象付けたりもしています。
まさにミリー中心の映画といった感じですが、それもそのはず、なんと彼女はプロデューサーの一人に名を連ねているのです。
先行き楽しみな女優さんですが、私としてはとりあえず来年公開予定の『ゴジラVSコング』を心待ちにしているところです。

若手新人女優の人気にあやかろうとするアイドル映画かと思いきや、脇を固める俳優たちもビッグネームが揃っています。
エノーラの母親を演じるのはヘレナ・ボトム・カーター。
娘の前から忽然と姿を消し、女性の参政権を求めて過激な行動を取る女性政治社会連合に参加していました。
そういえばこれまでヘレナは演じてきた役の多くは味方であれ悪役であれ、決して男に従属などしない役が多かった気がします。

二人の兄、シャーロックとマイクロフト。

次兄のシャーロックは言わずと知れた名探偵。
この頃はまだ探偵のキャリアをスタートさせた直後らしく、相棒ワトソンとはまだ出会っていないようです。
演じるのは『マン・オブ・ザ・スチール』のヘンリー・カヴィル。
スーパーマン役の印象が強かったため、てっきりアメリカ人だと思っていましたが実はイギリス人なのですね。
一時は007候補にも挙がったことがあるとかで、今回の若きホームズ役もハマっています。

ちなみに、うちの嫁は『ホームズ』といえばコレしか浮かばないそうです(笑)。
そういえば『エノーラ~』にもこんな形の蒸気自動車が出てきました。

もう一人の兄マイクロフトを演じるのは『ハンガーゲーム』のサム・クラフリン。
現在34歳の男前な俳優さんですが、おっさんキャラが妙にハマっております。
ある意味、本作最大の敵キャラはマイクロフトなのかも知れません。
別に悪事を働くわけではないですが、妹エノーラを「男に従属する淑女」(彼女が最も嫌うもの)に仕立てようと一方的にパワハラかます石頭として描かれているのです。

この映画の背景になっているのは、今から100年ほど前にイギリスで起こった女性参政権を巡る保守派と改憲派との争いです。
改憲派の一部には放火や器物破壊など過激な行動に出るグループもありました。
エノーラの母は娘の前から姿を消して女性政治社会連合に参加して保守派と戦っていたようです。

エノーラが兄マイクロフトの束縛から逃れようとする縦軸のストーリーは、実は100年前のイギリスで実際にあった女性解放運動のメタファーにもなっていたのです。
本作のマイクロフトが悪役に見えたのはそのせいだったのかも知れません。

ちなみに、ロバート・ダウニーJr主演『シャーロック・ホームズ』に登場したマイクロフトは、家の中をフル●ンでうろつき回る裸族のおじさんでした(笑)。

コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズは小学校の時図書館で全巻(多分)読んでいます。
そこから、モーリス・ルブランの『怪盗ルパン』シリーズ(南洋一郎訳)、江戸川乱歩の『怪人20面相』(後に40面相にパワーアップ)にも手を出して、中学生になってからは同じ江戸川乱歩でも『黒蜥蜴』など大人向けの明智小五郎ものや横溝正史、アガサ・クリスティ等へと順当に進化していきました。
あの年頃に推理小説を読み耽ったことで、文章からイメージを膨らませる力が身に付いたように思います。
それは現在の仕事にも確実に役立っているものです。
そんな自分の小学生時代のことを思い出しながら楽しませてもらいました。
続編があるなら是非見てみたいです。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

今週はキュラソ星人とあのメトロン星人が登場します。
しかし、2本ともセブンの戦闘シーンがほとんどありません。
初回放映当時に見ていた子供たちはこの2つの回をどう思って観ていたのでしょうか?。
第7話「宇宙囚人303」

<あらすじ>
謎の怪物が出現し次々と市民を襲っていた。
犯人はキュラソ星から脱獄・逃亡し地球へやって来た凶悪犯303号と判明する。
ウルトラ警備隊はこれ以上犠牲者を出さないため監視体制を強化した。
だが、必死の逃亡者・キュラソ星人は、意外な奇策で逆襲に転じた。

『ウルトラセブン』見ていて昭和42年という時代を感じてしまうのは宇宙空間の表現です。
ピュ~~~~~~ゥ、ピッ、ポッ、パッ
擬音で表すのは難しいのですが(笑)、こんな感じの謎の効果音が響き渡っているのです。
宇宙空間を無音の世界として表現した映画『2001年宇宙の旅』が公開されたのは『ウルトラセブン』の翌年のことでした。
もし、放映時期があと2年遅ければ、『セブン』の宇宙は全く違ったイメージになっていたかも知れません。

「宇宙囚人303」で最もインパクトがあるのは、なんといってもガソリンスタンドでキョラソ星人に襲われる外人のおねーさんです。
カタコトの日本語で「コニチワ、ガソリンヲクダサイ。・・・ダレモイナイノカシラ?。」とまるで頭のてっぺんから出してるみたいな甲高い声で喋るのです。
その素っ頓狂な声の主は「みなしごハッチ」の栗葉子さん。
栗さんは第19話「ブロジェクトブルー」でもバド星人に襲われる科学者の奥さんの声を吹き替えていますが、やはり昔のマリリン・モンローやベティ・ブープみたいな甲高い声で演じておられます。
アフレコの時、スタッフが栗さんに対し「向井真理子さん(モンローやベティ・ブープの吹替え声優)のイメージでお願いします」とでもオーダーしたのでしょうかね?。

今回は、セブンと敵宇宙人(キュラソ星囚人)が戦うシーンが一切ありません。
ダンがセブンに変身したのは墜落するウルトラホークから脱出するためだけで、キュラソの囚人はたらふく飲んだ腹の中のガソリンに引火して爆発四散するだけです。
これには大人になって見ても「え?」と思ってしまったくらいですから、ウルトラセブンがカッコ良く戦う場面を心待ちにしていた子供たちはさぞガッカリしたことと思います。
『ウルトラセブン』初期の数本は前作『ウルトラマン』との差別化を図ろうと色々奇をてらった演出を繰り出していますが、それらが必ずしも成功しているとは思えません。

監修の円谷英二氏は『ウルトラマン』の時とは違って『セブン』に対しては苦言を呈することが多かったと聞いたことがあります。
おそらくそれは、こうした若手スタッフの「独善的暴走」と「本来の視聴者(子供)をおいてけぼりにした」事に対するお叱りだったのではないかと思います。
第8話「狙われた街」

<あらすじ>
北川町で人間が突然暴れ出すという事件が続発した。
時を同じくして旅客機の墜落事故が発生するが、そのパイロットも北川町の住人だった。
北川町でいったい何が起きているのか。
ウルトラ警備隊の調査が開始されるが、調査から戻ってきたフルハシとソガまでもが暴れ始めた。
どうやら原因はタバコにあるらしい…。

実相寺昭雄監督の独特な画面作りが強く印象に残る回です。
『ウルトラセブン』全49話中実相寺監督作品はわずか4本(うち一本は現在欠番)のみですが、それでも「『ウルトラセブン』といえば実相寺」という印象を与えているのですから凄いインパクトです。

私も大学時代には8ミリ映画でこうした実相寺アングルを真似したものです。
しかし、よほど計算して絵作りしないと映像に余計な意味合いが生まれてしまい、いざ編集してみるとどうにも繋がりが悪いというか作品の中でそのショットだけ浮いてしまうのです。
そのため、結局は「保険」として撮っておいた”普通”のショットを使っていました。
仲間の中には全編実相寺タッチで作ろうとした猛者もいましたが、結局は「実相寺モドキ」と揶揄されて終わりでした。

アパートの一室でちゃぶ台をはさんで会話するダンとメトロン星人。
『ウルトラセブン』という作品の一つのアイコンともなっている名場面ですが、実はこのシーンを強行したことで実相寺監督はしばらく『セブン』の現場から干されてしまいました。
『ウルトラセブン』は海外輸出を視野に入れていたため「日本的なものは極力登場させない」という取り決めがあったのですが、実相寺監督はそれを完全無視してこの場面を作ったのだそうです。
連日
『エール』
(居間49インチ4K液晶テレビ:NHK総合)

月曜日はまだ通常のオープニングがありませんでしたが、火曜日からいつもの『エール』に戻りました。
「童謡 とんがり帽子」(YouTUBEより)
裕一復活の曲は「とんがり帽子」。
NHKの連続ラジオドラマ『鐘の鳴る丘』の主題歌です。
戦時中に作った「露営の歌」「暁に祈る」「若鷲の歌」等は、戦意高揚のための歌でありながら勇壮さや力強さよりどちらかといえば哀愁を帯びた曲調でした。
それに対し、戦争孤児を歌ったはずのこの曲に暗さは微塵もなく、ひたすら前向きで明るいメロディです。
後の「栄冠は君に輝く」や「東京オリンピックマーチ」に似たフレーズもあって、これこそが古関裕而先生の戦後日本への応援歌の原点なのだと感じました。

木曜日、私と妻はいつものように『エール』を見ながら「あ、この歌聴いたことある」「音楽の時間に習った気がする」などと言い合っておりました。
その時!。
この場面を見ていた今年78歳になる母が「♪かねがなりますキンコンカン、メーメーこやぎもないてます~」と画面の子供たちに合わせて歌い始めたのです。
母の幼い頃は両親(私の祖父母)とも健在で家を焼かれることも無かったですが、戦後食べ物が無い状況の中で7人姉弟のうちの2人が病気で亡くなったとのことです。
そんな中、生き残った母たち姉弟はこのラジオドラマを毎日楽しみに聴いていたのだそうです。
この日の朝は、『エール』と同じ時代を生きた母の昔話に思わず聞き入ってしまいました。

週後半は「長崎の鐘」編でしたが、こちらはかなり駆け足気味でした。
「長崎の鐘」は第1話のオリンピックのシーンにも繋がる大事な曲なので、もっと時間を割いて描くべきだったと思います。
こんなところに話数短縮の悪影響が出たということでしょうか?。

さて、来週は「栄冠は君に輝く」編であることはもう間違いありません。
「栄冠は君に輝く ~全国高等学校野球選手権大会の歌~」(YouTUBEより)
あ、あかん・・・来週マジで泣いてまうかも・・・?。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。