週刊映画鑑賞記(2020.12/28~2021.1/3)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
12/29(火)
『日本独立』🈠
(劇場:アレックスシネマ大津)

<あらすじ>
終戦直後に外務大臣に就任した吉田茂は、日本の再出発のため旧知の仲である白洲次郎を呼び寄せる。
抜群の英語力を持つ白洲は開戦前から既に日本の敗戦を予測し実業の第一線を退いて郊外で農業に専念していた。
吉田はそんな白洲に、GHQとの交渉役となる終戦連絡事務局の仕事を託す。
こうして白洲は交渉の最前線に身を置くが、GHQは米国主導の憲法改正を強引に推し進めようとする。

安倍前総理が推し進めようとしていた憲法改正案を牽制し、現在の平和憲法の精神を改めて世に問おうとする作品・・・に違いないと思っておりました。
しかし、実際は真逆の内容で、ソ連介入前に自分たちに都合の良い憲法を押し付けようとする米国とそれを良しとしない日本政府の駆け引きを描いた映画でした。
当時の為政者たちは発布された日本国憲法には全く納得しておらず、そればかりか「日本国憲法はやっつけ仕事で作られた」とまで言い放つ始末です。
「とりあえず憲法発布を期限までに間に合わせておいて、それから少しづつ改正していこう。」という、安倍前総理の憲法改正を擁護・後押しする内容でした

会話シーン、そして会議シーンがかなり多く、まるで岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』を見ているようです。
実際、内容的には『日本の~』の直後から始まっている映画なわけで、あれの続編と思って見るのも面白いかと思います。

映像面では頻繁に挿入される当時の記録フィルムと最新機器で撮影された綺麗な4K映像とが全く融和していないのが気になりました。
実際の記録映像に再現ドラマを混ぜたTVドキュメンタリーに近い印象です。

また、合成されたB29などのCG映像も実景映像と馴染んでいません。
まるでグレーディング(映像の階調と色調を整える画像加工処理)工程前の未完成品を見ているようでした。
予算の都合かあるいは時間が無かったのかは分かりませんが、シーンごとにコロコロと画調が大きく変わるので集中力が削がれてしまいます。

実はこの映画、約2年前に私もエキストラの一人としてワンシーンに参加してきた作品です。
撮影に参加した場面は、何も知らずに憲法発布を祝って市民が踊るお祭りシーンでした。
映画のラスト近くに出てくる場面ですが、残念ながら私の姿が確認出来るカットはありませんでした。_| ̄|○...

時は2019年3月23日(土曜日)。
場所は滋賀県大津市の「びわ湖大津館」。
かつて昭和天皇や様々な著名人が宿泊したという「琵琶湖ホテル」(昭和9年建築)を保存改修し、琵琶湖を見渡せるレストラン・文化施設として利用されている建物です。

この日の私の衣装。
衣装と言っても、スーツと革靴は自前です。
ネクタイだけはこの時代に合うものを持っていなかったため衣装さんからお借りしたものです。

髪は7:3にビシッと分けられ、ポマードかなにかでカチコチに固められました。
ちなみに後ろに立っている女性と椅子に座っている男性もエキストラです。
この日は総勢250人のエキストラが昭和レトロな扮装でびわ湖大津館の周りをウロウロしておりました。

こちらは撮影の待ち時間にこっそり撮った現場の写真です。
この広場を皇居前に見立てて、日本国憲法発布を祝う市民の祭りのシーンを撮影しました。
広場の中央には紅白幕や万国旗で飾り立てた大きなやぐらが二つ組まれていて、その上段と周りで踊り子の女性たちが踊っていました。
私もカット毎にテラスの上や芝生中央部などに場所移動させられながら、踊る女性を遠巻きに見ながら一緒になって歌ったり踊ったり手拍子を打ったりしておりました。

琵琶湖に面したこの芝生広場には桟橋があり、撮影中に遊覧船が接岸してきました。
昭和レトロな扮装をしたエキストラ総勢250人がお出迎え&お見送りです。
遊覧船の乗客はさぞビックリしたことでしょう(笑)。
撮影は一部天気待ち(晴れ待ちではなく曇り待ち)があったものの、順調に進んで午後4時過ぎには全て終了しました。
途中冷たい風が吹きつけてとても寒かったですが、以前『ちはやふる』『カツベン!』『るろうに剣心』などの撮影で知り合ったエキストラ仲間とも再会出来て本当に楽しい一日でした。
撮影終了後、伊藤俊也監督が参加者一人一人に頭を下げて「今日は寒い中ありがとうございました」と声をかけて下さったのが本当に嬉しかったです。

『日本独立』は12月18日からの公開となっていましたが、実は福井ではまだ公開予定すら立っていません。
しかし、数少ない劇場リストの中になぜか大津のアレックスシネマの名がありました。
おそらく一部のロケが大津で行われたことからこの劇場での上映が実現したのでしょう。
せっかくエキストラ参加した作品ですから少しでも早く見たくて、思い切って滋賀まで足を延ばしました。

時節柄ということもあるでしょうが、客は私も入れて全部で3人・・・。
自分も現場を体験した映画ということもあるので、余計寂しさが増しました・・・。
12/30(水)
『アーヤと魔女』🈠
(ホームシアター:NHK総合)

宮崎駿監督の一方的引退宣言により解散したはずのスタジオジブリの最新作が突然発表されました。
監督は宮崎駿ジュニアこと宮崎悟朗氏。
映像はフルCG。
そしてなぜかNHK総合でのテレビ放送。

最初は、赤い髪の母親の言動と行動がいちいち癇に障ってどうにも気持ちが乗りませんでした。

それでも見ていくうちに、ネコのキャラクターとかおばさんの変化とか良い部分も見えてきたのですけど・・・
「えっ、ここで終わり?」というとこで話をぶった切られてしまいました。

アーヤの親たちに昔何があったのか?。
駿監督の新作も気になるけど、この続きを早く見せてくださいよスタジオジブリさん。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

今週の『セブン』にはウルトラ警備隊科学担当アマギ隊員の主役回が含まれます。
シリーズも折り返し点を過ぎ個々のキャラクター像を浮き彫りにしようとする時期にきたようです。
・・・が、しかし。
アマギにはもう少しカッコ良い見せ場を用意してあげても良かったんじゃないかと思うのですがね~。
第28話「700キロを突っ走れ!」

<あらすじ>
防衛軍が開発した高性能爆薬「スパイナー」が実験場に運送途中、襲撃を受けた。
ウルトラ警備隊はラリーに紛れて密かに運ぶことになり、ダンとアマギがその任務につく。
しかし、その情報をキャッチした謎の宇宙人は執拗に2人の車を狙う。
それらをかわして輸送に成功、実験が行われようとしたその時恐竜戦車が突如出現した。

冒頭いきなりダンとアンヌのデートシーンから始まります。
でっかい煎餅(笑)をかじりながら映画に熱中するダン。
前席のおっちゃんが迷惑そうにしてますが、これは明らかにダンのマナー違反であります(笑)。
今回の監督はウルトラセブン最終回を手掛けることになる満田かずほ監督。
この回あたりから最終回のダンとアンヌの別れを描くための伏線張りを始めていたのでしょうか?。

映画の内容はサファリラリーの記録映画のようです。
(もっとも、絶対にアフリカの風景ではないし、走っているのも品川ナンバーの日本車ばかりですが(笑))
そういえば「地震源Xを倒せ」(第20話)にもラリーに参加している女性二人組が出てきました。
実はこの当時、アフリカで開催されたサファリラリーで日産チームが優勝したことを受けてにわかにラリーブームが沸き起こっていました。
『ウルトラセブン』もそんな世間の流行りを貪欲に取り入れ視聴率アップに努めていたのですね。

その頃、ウルトラ警備隊では新開発の超強力爆薬「スナイパー」の運搬方法に頭を悩ませていた。
空輸はもちろん通常の陸路でも何者かの攻撃を受けてしまうため、敵の目をあざむく方法を考えなければならない。
ちょうどラリーにハマっていたいたダンは、ラリーに紛れてスパイナーを運ぶことを進言し承認されます。
ついこの間超兵器R1号で大変な目に遭ったばかりというのに、地球防衛軍は性懲りもなくまた新兵器開発に勤しんでいたわけですね。
しかも、この作戦で二人の民間人犠牲者が出てしまうのですが、そのことには最後まで触れないまま話が進みます。

ウルトラ警備隊がスナイパー輸送に利用したラリーは、軍が主催するダミーレースではなく一般人が参加する民間開催のレースのようです。
そこに紛れてスナイパーを運ぼうというという作戦ですが、敵もいつの間にかそのことを察知して次々に罠を仕掛けてきます。
しかし、たまたまダンとアマギの車を追い抜いた3号車が不運にも地雷の犠牲になっってしまいます。
参加者全員が軍属であればこれは「殉職」扱いになるのでしょうが、問題は死んだ3号車の人たちがただの民間人だということです。
ウルトラ警備隊の囮作戦に民間人を巻き込んでしまったとなるとこれは大問題ではないでしょうか?。

そして、爆破された車両を見て「身体がすくんで動かない~」と泣き言を言い出すアマギ。
なんでも子供の頃に近所の花火工場の爆発事故を目撃して以来爆発物が怖くて仕方がないそうな。
彼は「空間X」の回でスカイダイビングにビビッていましたが、この回で完全に「意気地のない隊員さん」の烙印を押されてしまったように思います。
高所恐怖症に加えて火薬恐怖症ときては、恐すぎてウルトラホークになんか乗れないだろうと思うのですがね(笑)。

この回はシナリオも演出もなんだか変です。
中でも一番笑ったのが、ダンとアマギが乗るラリーカーにポインターと同じジェット噴射機能が付いていて高所から落ちても全然平気という違反車だったということ。
これではまるで「チキチキマシン猛レース」です(笑)。

最後に出現する敵の恐竜戦車。
デザイナーの成田亨さんは、円谷プロから「東宝のお下がりミニチュアを使って予算を節約したいので、戦車に恐竜を乗っけたみたいなやつ描いてくんない?」というオーダーにモチベーションがダダ下がりし、その後しばらくして『セブン』から降りてしまったそうです。
第29話「ひとりぼっちの地球人」
<あらすじ>
京南大学が教材用科学衛星の打ち上げに成功した。
しかし防衛軍はそのことに対し不審を抱く。
ソガは大学に在籍する婚約者の冴子を通じて、一の宮という青年が関わっていることを知った。
一の宮が心酔する物理学教授・仁羽の目的は防衛軍の戦略資料を母星に持ち帰ることであった。
深夜のキャンパスでセブンとプロテ星人が対決する。

ソガに婚約者が?。
冒頭部分からはまるでソガの主役回のように思われそうですが実は違います。

今回の本当の主役は青年科学者:一の宮青年です。
彼は地球人の常識を越えた電送装置(『スタートレック』や『ザ・フライ』に出てくるアレ)理論を発表したが、地球人の常識では全く理解されず黙殺されたことで地球人を憎むようになっていたのです。
そんな時、彼の理論を正しく理解し、しかも電送装置を完成させてくれた大学の仁羽教授(プロテ星人)にだけは深く心酔していたのでした。

礼儀正しい言葉使いの裏側に、地球人類に対する蔑みと悪意を醸し出す実に憎たらしい仁羽教授(プロテ星人)。
演じているのは、後の第43話「第四惑星の悪夢」にもロボット長官役で出演することになる成瀬昌彦さん。
成瀬さんは『帰ってきたウルトラマン』第37話では坂田兄妹を殺害して郷秀樹の心を乱したナックル星人役も演じていて、私たち特撮ファンの深層記憶には「成瀬さん=冷酷な悪役」というイメージがしっかり刻み込まれております。

正体を現したプロテ星人とセブンの戦い。
しかし、いつものようにアイスラッガーで首チョンパしても決して死なないプロテ星人。
これはプロテが見せる幻影でセブンも手も足も出せない。
この間に一の宮の電送装置で防衛軍の情報をプロテ星に送られてしまう・・・。

騙されたと知った一宮は、生きては帰れぬ覚悟で仁羽もろとも転送装置へ飛び込みます。
彼は一人の地球人として、その命と引き換えに地球を救ったのです。
しかし、この事実は誰も知りません。

それでもなぜか、ダンはラストで「(一宮は)死んだとは限らない。」「ひょっこりこの学校に戻ってくるかもしれない。」と彼が転送装置で消えていったことを知っているような言動をしています。
セブンはプロテ星人の幻影と戦っていて一ノ宮の行動を見ていたわけではないはずなのに?。
このセリフは、あのままでは一宮の勇気ある行動を誰一人知らないまま終わってしまうことを不憫に思った監督か脚本家が最後に書き加えた一宮へのレクイエムと考えています。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。