週刊映画鑑賞記(2021.1/18~2021.1/24)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
1/21(木)
『宇宙戦争(1953年)』
(ホームシアター:WOWOW録画)

<あらすじ>
世界各地に隕石が降り注いだ。
科学者のフォレスター博士はカリフォルニアに落下した奇妙な隕石の分析を依頼される。
その夜、隕石の中から突如アームのようなものが伸びて光線を放ち、監視の男達を焼き殺してしまう。
アームの正体は火星人が地球侵略のために建造した戦闘兵器の一部だった。
やがて軍隊の総攻撃が始まるが、目に見えないバリヤーに守られた戦闘兵器には原子爆弾すら通じなかった。

原作はH・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説。
細菌をコンピューターウィルスに翻案した『インデペンデンス・デイ』(1996年)や、内容はそのままに現代に置き換えてリメイクしたスピルバーグ版(2005年)など時代を越えて作り続けられる異星人襲来ものの原点です。
映画化以前にオーソン・ウェルズがラジオドラマしていますが、その演技があまりにも真に迫っていたため全米の聴衆がパニックに陥ったという有名な逸話があります。

「火星人はタコみたいな姿をしている」という通説はこのH・G・ウェルズの『宇宙戦争』が発端と言われていますが、実はこの映画の火星人はタコ型ではありません。
登場する攻撃兵器も円盤型です。

「火星人≒タコ」という既成観念は当時原作に添えられていたこの挿絵から生じたものでした。
このイメージが現在の私たちの脳裏に深く刻み込まれていたのではないかと言われています。
でも不思議なのですよ。
私がこの映画を初めて観たのは大学生の頃(レンタルビデオ)だったのですが、その時すでに私の頭の中には「火星人=タコ型」というイメージが出来上がっていたのです。
この映画を初めて見たとき「あれ?、タコ型じゃないの?。」と意外に思ったことを覚えています。
よく考えてみると、私にタコ型火星人のイメージを植え付けたのは『宇宙戦争』ではなく、実は全く別のものでした。

これです!。
黎明期のTVゲーム「スペースインベーダー」。
現在50歳以上の人ならば、先生や生活補導員の姿に怯えながらも、なけなしのお小遣いをつぎ込んで遊んだ中学生時代を過ごした人も多いはずです。
(少なくとも私はそうでした)

あの当時、極度に集中して見つめ続けたこのタコ型キャラクターが脳細胞にガッツリ刻み込まれてしまったため、「火星人」と聞くと条件反射的にタコ型のイメージが浮かんでしまうのではないかと考えています。

また、原作の挿絵では火星人の乗る攻撃兵器も(タコのような)三本足の戦車として描かれています。
1953年の特撮技術ではこの三脚兵器を映像化するのが難しかったため円盤型に変更したのかも知れません。

この三脚戦車はスピルバーグ版『宇宙戦争(2005)』においてようやく映像化されました。
リメイク版は子供二人が鬱陶しくてあまり好きではないのですけど、この三脚戦車(トライポッド)の情け容赦ない攻撃力とズォォォ~ンという重低音の唸り声が怖くて見応えはありました。

また、『宇宙戦争』が後年の東宝特撮映画に大きな影響を与えたことも確かです。
特に4年後に制作された『地球防衛軍』(1957年)にはよく似たシーンがいくつか見受けられます。

たとえば、敵の巨大メカ出現に一人だけ逃げ出す警官。
自分だけ逃げたその警官は敵のビーム攻撃を受けて死亡しますが、逃げ損ねた主人公の科学者ともう一人の警官は助かります。

『地球防衛軍』にもモゲラ出現シーンで似たようなシチュエーションが描かれていました。
このシーンが『地球防衛軍』へのオマージュであることは明白です。
ただし、本多猪四郎監督は自分一人だけ助かろうと逃げるような無責任な警官は描きません。
『地球防衛軍』で犠牲になる警官は主人公たちを逃がすため最後までモゲラに立ち向かっていました。
そしてもう一点。
日本の特撮映画が決して模倣しなかった点がありました。
敵に対しての核兵器の使用です。

「アメリカ人はなんて簡単に原爆を使うんだろう。」と思わず笑ってしまいました。
しかも肉眼で着弾点が見えるような近い距離で、防護壁もただ土嚢を積んだだけというイージーぶり。
アメリカ人は原爆を「単に威力のバカでかい爆弾」程度にしか思っていないのでしょうね。
一度自分たちの頭の上で原爆を炸裂させられなければ彼らには決して分からないのでしょう。
だからギャレス版『ゴジラ』も『キング・オブ・モンスターズ』も、出てくる軍人たちはためらうこともなく核兵器に手を伸ばすわけですね。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

今週放送分の2本は、どちらもアンヌがダンの無事を祈るお話でした。
第34話「蒸発都市」

<あらすじ>
深夜、第6管区をパトロール中にダンとソガが消えた。
その翌朝、同地区のビル街が一区画、丸ごと消失する。
ウルトラ警備隊に会見を求めてきた霊媒師・ユタ花村の口を通じて宇宙生物ダンカンが語る。
ダンカンは一時的な宇宙乱流を避けるために地球に侵入したが、そのまま強引に居座ろうとしていた。
やがて彼らに洗脳されたダンはセブンに変身して街を破壊し始める。

今回の見どころは霊媒師(笑)ユタ花村を演じる真理アンヌさんの美貌であります。
チーフライターの金城哲夫さんは、真理アンヌさんの大ファンだったとか。
アンヌ隊員のキャラクターは真理さんが前作『ウルトラマン』にゲスト出演したときのイメージを元に作ったとのことです。
友里(ユリ)アンヌと真理(まり)アンヌ、一字違いの二人のアンヌ。
もしかすると、アンヌ役は菱見百合子でも豊浦美子さん(制作開始直後に降板した当初のアンヌ役)でもなく、真理アンヌさんになっていたかも知れなかったのですね。
残念なのは、真理アンヌさんことユタ花村の人間らしいところが一切描かれなかったこと。
ダンカンから解放されて笑顔を見せるシーンも見たかったです。

アンヌ隊員は、消えた街とその住人・・・いや、ダンのことが心配でならない。
捜索中、フルハシが差し入れたコーラに口もつけずに遠くを見つめるアンヌ。

一方、なぜかフルハシは捜索にあまり身が入っていない様子。
アンヌ 「ずいぶん冷たいのね」
フルハシ「うん、よく冷えてるだろ」
アンヌ 「コーラじゃないわ。あなたのことよ。拉致された二人のことも考えないでよくこんなものが飲めるわね!。」
先輩であるはずのフルハシを「あなた」呼ばわりして、彼のコーラを奪い取るアンヌ。
表情は冷静に見えますが、この一連の会話でいかにアンヌが心乱しているかが伺えます。
それに対し、フルハシはまるでコントみたいな切り返しばかりで何だかキャラ設定が変わっている気がします。
今回のフルハシはどうしてこうも態度が適当なのでしょうか?。
「北へ還れ」で泣かせてくれたあのフルハシシゲルと同じ人物とは思えません。
もしかして、円谷一監督はフルハシが好きではなかったのかな?。

ところで、今回のお話には現在でも十分通用しそうなSFマインドが埋め込まれていました。
都市と一緒に拉致された人間の目を通して外界の状況を見ているダンカン(おっさん形態)。

そしてその言葉はそのまま麗しきユタ花村の口から発せられる。

このオンライン感覚、近年とあるSF作品でよく目にするものでした。
そう、『攻殻機動隊』です!。
草薙素子や笑い男が、オンラインで他人の目や耳を盗んで情報を得て、他人の口で喋り手足を使って行動したあれです。
『攻殻』より四半世紀も前の昭和43年にサイバースペースSFの映像化に挑んでいたのですね。
『ウルトラセブン』凄いです!。
第35話「月世界の戦慄」

<あらすじ>
地球防衛軍の月面基地が謎の爆発を起こし、ダンとキリヤマが調査に出発する。
同じ頃、宇宙ステーションV3からもクラタが現地に向かった。
実はクラタに同行したシラハマ隊員は、3年前にキリヤマ・クラタのコンビによって全滅させられたザンパ星人の生き残りで2人が揃う機会をずっと窺っていたのだ。

市川森一氏脚本、クラタ隊長シリーズ第2弾。
戦争経験があるおじさん二人の会話がなにげに怖いです。

「一緒に宇宙に出るのは3年ぶりじゃないか?」
「そうだな。あれはヘルメス惑星のザンパ星人を全滅させた、あれ以来だな。」
これ、実は伏線でした。
ちなみにザンパとは、昭和20年4月アメリカ軍が最初に上陸した沖縄の残波岬からきています。
ああっ、ここにもまた沖縄出身スタッフのドス黒い怨念が・・・。

今回はキリヤマとクラタの友情話というより、部下(ダン)と上司(キリヤマ)の信頼関係のお話でした。
ホーク1号が突然原因不明の故障を起こし、キリヤマは一瞬ダンの確認不足を疑いますがすぐ笑顔で次の行動に移ります。
キリヤマ隊長はダンに厳しく当たりつつも部下を信じていたのです。
実はこの故障はウルトラ警備隊内部の仲間割れを狙ったザンパ星人の仕業でした。

合流するクラタと部下のシラハマ、そしてキリヤマとダン。
この時、ダンはシラハマが持っていた装置を見てホーク1号が狂った原因を察知します。
ダン 「隊長、ホークの故障の原因がわかりましたよ」
キリヤマ「ハハハ、私にもわかったよ」

ところで、ダンとキリヤマが着ていた黄色い宇宙服は、実は同じ年に公開された東宝特撮映画『怪獣総進撃』のSY3号の宇宙服を流用しています。
『怪獣総進撃』の公開は昭和43年8月、「月世界の戦慄」放映は同年6月とこちらの方が先ですが、実は『怪獣総進撃』は春頃にクランクアップしていたので、円谷英二監督繋がりで借りてきたものと思われます(笑)。
胸にウルトラ警備隊エンブレムを付け足しただけですが、言われなければ分かりませんね。

ラスト、キリヤマはなかなか戻ってこないダンを案じて、危険を顧みず夜の月面に戻ろうとしますがそこにダンが無事生還。
この時の隊長の嬉しそうな顔!。
「地球人類ファースト」過ぎる思考がちょっと問題ある人ではありますが、最後まで部下を信じてくれる最高に素敵な上司です。

ラストシーンは連絡が取れなくなったキリヤマとダンを案じて月を見上げるアンヌ。
「きっと、帰って来るわ」
満田かずほ監督が自分の担当作でじわじわ印象付けてきた「ダンとアンヌは恋仲」設定ですが、ここにきて円谷チーフ監督と鈴木監督もその伏線描写に協力しているようです。
この地道な積み重ねが、あの感動の最終回を生み出すことになるのですね。

『エール』終了後、ぱったりと見なくなってしまったNHKの朝ドラ枠ですが、先日この時間久し振りに朝飯食べながら妻と母と三人で『おちょやん』を見て(というより眺めて)おりました。

舞台女優の話だと思っていたのですが、いつの間にか映画の世界へ入っていたのですね。
大正から昭和にかけての映画産業の活況が描かれていてなんだか楽しそうです。
スタート時には『エール』ロスが激しくてずっとスルーしていたドラマですが、これまで見ていなかったことを今少しだけ後悔しています・・・。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。