週刊映画鑑賞記(2021.1/25~2021.1/31)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
先週『宇宙戦争(1953年)』を観ながら「昔のSF映画ってなんかいいなあ」と思ったので、今週も’50年代の古典的SF映画をチョイスしてみました。
1/25(月)
『禁断の惑星』
(ホームシアター:アマゾンプライム有料レンタル)

<あらすじ>
宇宙への進出が可能になった2200年代。
アダムズ船長の乗る宇宙船は惑星第4アルテアで、過去にこの星で連絡を絶った移民の生き残りとして、モービアス博士を発見する。
モービアス博士は救出は不要と述べるもアダムズ船長はアルテアに着陸する。
そこで博士の作った高性能ロボット、ロビーの出迎えを受ける。
モービアス博士とともに昼食をとったクルーは、かつてこの星にたどり着いた人々はモービアスとその妻を除いて、未知の怪物によって殺されてしまったことを知る。
そして現在はモービアスの妻も死んでしまい、この星で生まれた娘のアルティラだけが生き残っていた。
モービアスはアダムズに宇宙船にも危機が及ぶ可能性があることから直ちにに退避することを求める。
そしてアダムズたちはこの星が抱える深い闇について知ることになる。

初めて『禁断の惑星』の存在を知ったのは高校生の頃でした。
富野喜幸(現:由悠季)監督のアニメ『伝説巨神イデオン』に出てくる<人の意識の集合体:無限エネルギーイデ>が『禁断の惑星』のイドの怪物と同類のものではないか?という説を当時アニメ雑誌で読んだことがきっかけでした。
しかし、ネット配信はおろかビデオレンタルすらまだなかった時代です。
見たい映画を見たいときに見れるはずもなく、テレビ放映か近場での再上映を待つよりほかに方法はありませんでした。

その『禁断の惑星』を初めて観たのはレンタルビデオでした。
「おお、なるほど。確かにイデオンの元ネタだ。」と長年の留飲を下げましたが、映画としてはひどく退屈に感じた記憶があります。
せっかくの優れたSF設定をほとんどセリフだけで説明してしまっているのが残念でした。

今回はおよそ35年ぶりの『禁断の惑星』となりました。
目が行くのはやはりなんといってもヒロインのアルティラとロボットのロビー。
アルティラはやたら欲情を煽る恰好で女日照りの男たちの前に現れ、彼らのリビドーを刺激しまくります。
彼女が動くたびミニスカートの辺りに視線が行ってしまう私もまだまだ現役の男であります(笑)。

『禁断の惑星』は後の『スタートレック』に影響を与えた作品としても知られています。
冒頭に転送装置みたいな機械が出てきましたが、あれはワープ航行中の安全装置か何かだったのでしょうか?。

キャプテンが降り立った星ですぐ美女とラブラブになる点も『スタートレック』に受け継がれています(笑)。
カーク船長の原点はこのアダムズ船長だったのですね。

そして、SF映画最初にして最高のロボットキャラ:ロビー。
彼こそが『禁断の惑星』の一番の見どころかも知れません。
(ちなみにポスターに描かれているロビーが金髪美女をお姫様だっこする場面は本編にはありません)
滅亡したクレール文明の超科学を応用して作られていてまるで意思があるかのような受け答えをしますが、その一方でアイザック・アシモフのロボット3原則に忠実という実にロボットらしいロボットです。
【第1条】
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
【第2条】
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、その命令が第1条に反する場合はこの限りでない。
【第3条】
ロボットは、第1条および第2条に反するおそれのない限り自己を守らなければならない。
このロボット3原則が後半のストーリー展開に有機的に絡んでいるのもポイント高いです。

ロビーというと必ずといっていいほど『スター・ウォーズ』のR2-D2が引き合いに出されますが、私はロビーのキャラ性を最も色濃く現代に受け継いでいるのは『宇宙戦艦ヤマト』のアナライザーではないかと考えています。
アナライザー「ワタシハ天才、ナニヲヤラセテモ役ニタツ」
そしてロビーも・・・

と、似たようなセリフを言ってます。
でも、ロビーはアルティラのスカートをめくったりはしませんけどね(笑)。
『禁断の惑星』は現在に至るもまだリメイク作品が作られていません。
リメイク・リブートばかりのハリウッドにおいては珍しいことです。
確か十年ほど前ジェームズ・キャメロンがリメイク企画を進めていると聞いた覚えがあるのですがどうなったんですかね?。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

Wikipediaによると、番組開始以来ずっと20%以上をキープしていた『ウルトラセブン』の視聴率は、35話を境に15~16%にまで急激に落ち込んでいます。
何か強力な裏番組が始まったせいかも知れませんが、原因はそれ以外にもあったように思います。
『セブン』の難解で不気味なイメージが子供たちから敬遠され始めていたのかも知れません。
第35話「必殺の0.1秒」

<あらすじ>
防衛軍の射撃大会で優秀な成績を収めた隊員たちが人工太陽計画の最高責任者であるリヒター博士の警護を命じられた。
しかしメンバーの一人、参謀本部のエリートでソガのライバルでもあるヒロタは侵略者ぺガ星人の指令で動くスナイパーであった。
ソガはヒロタを説得するが受け入れられず、自身もペガ星人に洗脳されてしまう。

あるときは、侵略者の身勝手な言い草に激怒する正義漢。
またあるときは、悩み傷ついた後輩(ダン)にさりげなく声をかけてくれる良き先輩。
そしてまたあるときは、女子大生の婚約者がいることを暴露されてデレデレしっぱなしのコメディリリーフ。
そんなウルトラ警備隊きっての好漢:ソガ隊員が今回の主役です。

当初、ソガは前作『ウルトラマン』におけるイデ隊員のような3枚目キャラとして設定されていました。
ところが、ソガ役の阿知波信介さんがその設定を知ってか知らずか2枚目の好青年イメージで演じてしまったためあのキャラクターに定着していったのだそうです。
そのためウルトラ警備隊には科特隊のイデのようなコメディリリーフがいなくなり、子供番組でありながら大人の雰囲気が色濃いシリーズになったものと思われます。
ただ、そのしわ寄せを食ったのがフルハシでした。
フルハシが時々いい加減な態度を取ってみせたり、隊長や他のメンバーにからかわれたりするなど三枚目を演じることがありますが、それらはソガが二枚目路線になったことでフルハシに三の線が回されたからではないかと思っています。

ソガの親友でありライバルでもあったヒロタ。
しかしヒロタはソガに勝ちたい一心で、ペガ星人という悪魔に魂を売ってしまいます。
ソガも後半はペガ星人に催眠術で操られてしまいますが、ヒロタは終始自分の意志で行動しているように見受けられます。
「ひとりぼっちの地球人」の一の宮と「栄光は誰のために」のアオキを足したようなキャラクターで、最後の最後に人間性を取り戻して死を迎えるところも同じです。
(アオキは最後まで自己中のままだった気もしますけど)

最後はソガとヒロタの一対一の勝負となり、ソガが勝利します。
「もしかするとヒロタはわざと負けたのか?」
そんな想像の余地も残されている幕引きで、それがまたソガの悲しみをより感じさせてくれます。

『ウルトラセブン』には時々何考えて侵略しに来たのかよく分からない宇宙人が出てきますが、今回の敵もそんな連中の一人(一匹?)でした。
地球を太陽系侵略基地にするのに邪魔な人口太陽開発を阻止するため、わざわざ地球人(ヒロタ)に催眠術をかけて利用したペガ星人。
自ら手を下そうとしない理由は「残念ながら我々は地球の気圧に耐えられない」からだそうな。
でも、『宇宙戦争』じゃないですけど、地球の環境に100%適応できる異星人なんて実際ほとんどいないんじゃないですかね。

実際、ダンも最終回には・・・
第36話「盗まれたウルトラ・アイ」

<あらすじ>
地球に侵入した円盤を調査中、ダンは謎の少女・マヤの襲撃を受けウルトラ・アイを盗まれてしまう。
マゼラン星人はセブンの動きを封じ、巨大な恒星間弾道弾を発射して地球壊滅を目論んでいた。
母星からの迎えを信じて待ち続けるマヤ。
しかし、母星は最初から彼女を見捨てていた。
事実を知ったマヤは静かにダンにウルトラ・アイを差し出した。

マゼラン星の美少女潜入工作員:マヤ。
白い服を着て清楚なイメージですが、実は地球破壊作戦の障害となるウルトラセブンの行動妨害を任務とする潜入工作員。
(マヤという名はシナリオに書かれているのみで本編中には一切出てきません)

迎えを呼ぶ通信電波が都内のスナック・ノアから発せられていることを察知したウルトラ警備隊は現場に急行。
不気味な音楽に合わせて踊り狂う虚ろな目をした若者たち。

そこにはウルトラアイを奪っていったあの少女がいた。
テレパシーで話しかけるダン。
ダン「地球を侵略するつもりなのか?。」
マヤ「こんな狂った星を…?。見てご覧なさい。こんな星、侵略する価値があると思って?。」
二人とも無表情のままテレパシーで会話が進むせいか、かえって話の内容が耳や心にすっと入ってきます。
このセリフは当時の退廃的な若者世相を皮肉っているのでしょうか。

ウルトラアイを取り戻すため再び店を訪れたダンはウルトラアイを装着した大勢の若者たちに襲われます。
彼らはウルトラアイ(偽物)でマヤに操られていただけなのか?。
あるいは、一度踊りを強制的に止めたウルトラ警備隊に対しての腹いせだったのか?。

この画像はちょうど「盗まれたウルトラアイ」が放映された1968年6月の東大安田講堂前の光景です。
当時は高度経済成長期であると同時に、ベトナム戦争反対運動などを通して学生運動が盛んになってきた頃でもありました。

「盗まれたウルトラアイ」でダンをボコボコにした若者たちは、(武装こそしていませんが)ウルトラ警備隊を機動隊に見立てての学生運動のメタファーではないかとも考えられます。
また、彼らがウルトラアイで表情を隠しているのは、「大人たちに対し反抗的態度を取ってはいるものの、実はそのほとんどは無個性・無自覚でありごく一握りの扇動者に煽られているに過ぎない」と皮肉っているようにも見えます。

マヤ「この星の命も、午前0時でお終りです」
ダン「君も死ぬのか?」
マヤ「私は仲間が迎えに来てくれるわ」
ダン「……誰も来ない。君は初めから見捨てられてたんだ」

事実を知るマヤ。
ダン「この星で生きよう…この星で一緒に……」
そう言うダンに、黙ってウルトラアイを差し出すマヤ。
デュワッ!
いつもの変身シーンはなく、次のカットではウルトラセブンが宇宙へ飛び立っていきます。
見方によってはマヤが自分の手でダンにウルトラアイを着けてあげたようにも見えますし、あるいはマヤがセブンに乗り移ったかのようでもあります。
これほど切なく印象的な変身シーンは他にありません。

マヤはおそらくプロのスパイではなく、何らかの理由で軍に雇われた民間人だったと思います。
プロであれば自らを犠牲にしてでも母国の命令遂行を優先したはずですから。
それでもマヤがダンの誘いを断り自決する道を選んだのは、仮に帰還出来たとしても待っているのは死(処刑)あるのみであることを知っていたからなのでしょうか?。
シナリオ段階でのタイトルは「他人の星」でした。
内容的には絶対「他人の星」のほうが合っていると思いますが、やはり年少の視聴者を繋ぎ止めておきたいためか分かりやすいタイトルに変えたものと思われます。

私の中で『ウルトラセブン』全49話中最高ランクに位置するこのエピソードですが、実は一点だけ気になる点があります。
マゼラン星の巨大ミサイル迎撃に向かう直前、ダンは隊長命令を無視して勝手にスナック・ノアに向かってしまいます。
これは明らかな命令違反であり、軍隊では決して許されないことです。
そして、「頼むぞ、ダン!」と肩を叩いてくれたキリヤマ隊長の信頼を裏切る行為でもあります。
この場合、ダンは「自分はあの誘導したマゼラン星の少女を追いたい。ミサイルを止める鍵になるかもしれないから。」と隊長の許可を取ってスナック・マヤに向かい、隊長は初めからアンヌと出撃する展開にするべきだったと思います。
隊長がホーク2号のコクピットでイライラしながらダンを待つシーンは不要になりますから、ダンの進言シーンを挿入する尺的余裕は十分あるはずです。
また、ミサイルの軌道が変わったとき、隊長は「ダンが少女の説得に成功したのだろう」と納得して終われるはずです。
この点だけが、かえすがえすも残念です。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。