週刊映画鑑賞記(2021.2/8~2021.2/14)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
2/10(水)
『テネット』
(自室液晶テレビ:レンタルBlu-ray)

去年10月に劇場で見た作品です。
映像は確かに凄かったですが、ストーリーについては時間軸が複雑に絡み合っていてもう何が何やら・・・。
先日、BD/DVDレンタルが始まったので早速借りてきました。
返却まで3日しかなく「ストーリーを分析しながら見る」時間も無かったので、今回は劇場で見たとき「ソフト化されたら絶対やってみよう」と思っていた”あること”を試してみました。

その”あること”とは、この作品最大の売りである「時間逆行シーンを逆転再生で見る」ことです。
CGをほとんど使っていないというこの作品では、時間軸逆行世界のほとんどをフィルムを逆転撮影することで表現しています。
つまり、時間逆行シーンで前を向いて歩いてる人は撮影時には後ろ向きで歩いていたことになります。
そうしたシーンを逆転再生して俳優さんたちの元の動きを見てみたかったのです。
ただ、どういうわけか現在我が家にあるBD再生機(プレーヤー/レコーダー/PC再生ソフト)にはどれも等倍の逆転再生機能が付いていません。
どれも2倍速以上の逆方向再生は出来るのに、なぜか単なる逆転再生が出来る機種が無いのです。
理由はすぐ思い当たりました。
BDやDVDの映像圧縮がMPEG方式だからです。

MPEGは数フレームごとにキーフレームを記録し、その間は差分データだけを記録することで容量圧縮する方式です。
再生するときはベースとなるキーフレームに差分データを掛け合わせて間のフレームを生成します。
これを逆転再生するとなると、まず数コマ先にあるキーフレームを読み込み差分データを使って逆の順番でコマを生成していくという実にめんどくさい工程が必要になってしまうのです。
これをリアルタイム再生で実現するには非常に高速な処理速度が必要です。
そんなわけで、現在一般的に売られているようなBD/DVDプレーヤーではアナログビデオやフィルムと同じ感覚での逆転再生は理論的に無理なのです。
MPEG動画をスムーズな等倍逆転状態で見るには、何らかの映像処理ソフトを通して速度マイナス100%の動画に変換するしかありません。
ブルーレイを使い始めてもう13年になりますが、初めて等倍の逆転再生は出来ないという事実に遭遇しました(笑)。

しかし、等速逆再生こそ出来ないものの、逆転スロー/コマ送りが可能な機種が一つありました。
それはなんと、BD黎明期に発売されたPS3です。
△ボタンで表示される操作メニューから正逆逆転スローの切り替えも簡単に出来て、今更ながらPS3のポテンシャルの高さに驚かされました。
(ちなみに私は、最新のPS5もPS4も持っておりません。PS5なら等速度逆転再生出来るのですかね?。)

普通に撮影したものを単純に逆再生しただけの映像なら、それを元に戻すだけなので特に変わったことはありません。
しかし、通常時間側の人間と逆行時間側の人間が同じ画面に収まるシーンでは、どちらか片方が逆の動きをしていることになります。
人間が後ろ向きに歩いたり走ったりする場合、体重移動とか踵のつけ方とかがまるで違います。
後ろ向きに歩く人を撮影した映像を逆転再生で見たことがある人にはお分かりと思いますが、この場合正常な動きには見えないことが多いのです。
そのため出演者たちは「逆再生で見ても不自然にならない後ろ歩き」を研究&練習する必要があります。
しかし、『テネット』に出演した俳優さんやスタントマンは相当練習して撮影に臨んだのでしょう。
逆転で見ても普通の動きと変わらない自然な動きになっていて驚きました。

次に注目したのは主人公と時間逆行世界から来た覆面男(正体はネタバレになるので伏せます)の格闘シーン。
二人の俳優(覆面男はスタントマン)が同じ画面の中で戦うわけですが、この場合どちらか片方は常に逆の動きをし続けていたはずです。
残念ながらレンタルBDにメイキングは収録されていませんでしたが、YOUTUBEに動画が上げられていました。

やはり出演者たちは逆再生で見ても違和感のない動きをしっかり練習したうえで撮影に臨んでいたことが分かります。
また、この場面を正逆繰り返してよく見ると、順時間で撮影したカットと逆転撮影した短いカットとを巧く編集することであの異常な動きのアクションシーンを作っていることが分かりました。

そして、正逆時間両方の兵士たちが同じ画面の中で行き違うモブシーン。
画面左側のチームは普通に走っていますが、右側のチームは全員が後ろ向きに走っています。
画面に収まるのが数人だけなら監督の意向を完璧に反映させることも出来るでしょうが、これだけ大勢の人間が登場すると全員が訓練通りに自然(?)な後ろ歩きをしているとは限りません。
一人くらい変な動きになっている奴がいないかと目を凝らして見ておりましたが、残念(?)なことにそういた突っ込み甲斐のある奴はいませんでした。
クリストファー・ノーラン監督のこだわりは、末端のエキストラたちにまで徹底的に浸透していたようであります。

今回はちょっと変わった映画の楽しみ方を試しましたが、肝心のストーリーのほうはまだチンプンカンプンなままです。
次はタイムラインを紙に書き出しながら見てみようかとも思いましたが、なんかもうお腹いっぱいであります。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

「玉石混交」という言葉がピッタリの『ウルトラセブン』。
その4K放送も今週で40話まで到達しました。
第40話「セブン暗殺計画(後編)」

<あらすじ>
セブンを捕らえることに成功したガッツ星人は夜明けと共に処刑すると通告。
ウルトラ警備隊はセブンがエネルギー切れで動けないことを知り、マグネリュームエネルギーを与えて復活させようと考える。
それに必要なダイモード鉱石はフルハシと彼の妹の友人である女性レーサーの夏彩子が持っていた。
その情報をキャッチしたガッツ星人は彩子を狙う。

前回の冒頭で夏彩子からフルハシ宛てに送られてきていたダイモード鉱石。
彼女も同じものを持っているとのことで二人お揃いというわけです。
「ひとりぼっちの地球人」ではソガの婚約を羨んでいたフルハシですが案外隅に置けませんね(笑)。

セブンの脳髄から出ている電波を分析した結果、この石を使ったビームをセブンに与えれば復活出来ると判明!。
しかし、一個だけではパワーが足りません。

もう一個のダイモード鉱石を持つ女性:夏彩子が遂に画面に登場します。
当時はサファリラリーで日本チームが優勝したことからカーレーシングブームが沸き起こっていました。

ガッツ星人もセブンの通信を傍受したらしく、ウルトラ警備隊より一足先に石を奪おうと彩子に接触します。
もっとも、ガッツ星人がどうして彩子のことを知っていたのかは謎ですが(笑)。
このシーン、影を使った見せ方がホラータッチで結構怖いです。
しかし、ガッツ星人は彼女を殺そうとしたり連れ去って人質にとったりなどはせず、欲しいもの(石)だけ奪って去っていきました。
この妙な生真面目さがガッツ星人の人気の秘密かも知れません。

彩子はガッツ星人のことを「変な動物」呼ばわりするほど気丈な女性です。
フルハシは将来絶対尻に轢かれるでしょうな(笑)。
石を奪われ「万事休す」と唇を噛んだフルハシでしたが、ガッツ星人が持ち去ったのは実はイミテーションだったことが判明。

「ざまぁみろ!ガッツ星人め!ガラス玉を持っていきやがったwww」
だが思わず口を押えてカメラ目線
「し~っ、聞かれたかな?」
今までの硬派な『ウルトラセブン』にはなかったこのコミカルシーンからは、同じ飯島監督の『ウルトラマン』第2話(制作順は第1話)「侵略者を撃て」のイデ隊員を彷彿とさせてくれます。
ホラー調の演出と、こういったコミカルシーンとのバランスが絶妙です。

必要量のダイモード鉱石は手に入れたものの、セブンの居場所が分からなければ意味がありません。
ウルトラ警備隊は彩子を囮にガッツ星人をおびき出す作戦を実行。
フルハシが護衛に付いてはいますが、民間人を危険に晒していいのでしょうか?。
この彩子の車ですが、今回見ていて初めて気が付きました。
3年後の『帰ってきたウルトラマン』に登場するマットビハイクルと同型です。
ポインターと比べると明らかに走りが軽やかで、このことが元で後にMATの車両として採用されたのかも知れません。

セブンは無事復活。
前回での苦戦ぶりはどこへやら、ガッツ星人を円盤ごと粉砕します。

円盤内で慌てふためくガッツ星人たち。
事前に綿密な調査を行い周到に作戦を練ってきた彼らも、いざ想定外の反撃を食らうと何をどうして良いか分からずただ取り乱すばかり。
古今東西、たとえ宇宙人であっても、(文字通り)頭でっかちのエリートさんは臨機応変というやつが苦手なようですね(笑)。
第41話「水中からの挑戦者」

<あらすじ>
伝説の動物・河童が出没するという噂を聞きつけた河童の愛好グループ「日本河童クラブ」のメンバーが伊集湖に出向いた。
同じ頃、未確認飛行物体の調査にウルトラ警備隊も出動。
双方が探索するなか、同クラブのメンバーの一人・竹村が何者かに殺害された。
河童に瓜二つの容貌を持つ宇宙人が地球侵略の目的で湖に潜伏していたのだ!

冒頭いきなり大村千吉さんの絶叫どアップ。
「うぎゃ~~~~~」
おおっ、これ、これですよ!。
下手な怪獣や宇宙人以上に怖いかも?。

もう一発、大村千吉さんのどアップ(笑)。
東宝特撮映画でお馴染みのこの方が出てくるだけでリアリティが増す・・・ことは無いかもしれませんが、特撮ファンとしては何か安心感みたいなものがありますね。

河童出現のニュースを見て、わざわざ現場にやってきた「日本河童クラブ」のメンバー4人。
最近では「心霊スポット巡り」などと称して幽霊が出るという廃墟に深夜のこのこ出かける連中が多いと聞きますが、あれと似たようなものでしょうか?

そのうちの一人、竹村(演:梅津栄)は河童をおびき寄せる餌のキュウリをポリポリかじったり、河童(テペト星人)とウルトラ警備隊見間違えて声をかけるなどユーモラスな描写が目立ちます。
この軽妙な演出タッチで最後まで行くのかと思いきや・・・。

なんと、その竹村が河童の犠牲に!。
唐突すぎる人死にシーンにビックリです。
前回までの飯島演出と違って、何か見ていて落ち着かないアンバランスさを感じます。

現場にはウルトラ警備隊も調査に来ていましたが、まだこれといって情報は得られずにいるようです。
しかし、メンバーの中でダンだけが何かの異常を感じ取っていました。

そうです!。
前回までうなじが見えるほどのショートカットだったアンヌの髪が急に伸びているのです!(笑)。
今回の監督は最終回をてがけることになる満田かずほ氏です。
満田監督の頭の中にはすでにラストのイメージが出来上がっていて、「アンヌの髪は絶対に長くなければ」と強引に設定変更したものと思われます。
満田監督、あの最終回の髪が風になびくカットがどうしても撮りたかったのですね(笑)。
もちろん、この場面でダンが何事か訝しんでいたのは宇宙人の気配を感じていたからであって、別にアンヌの髪を気にしていたわけではありません。

ところで・・・
今回登場する怪獣テペトですが、そのデザインはかなり残念なものになっています。
色がグリーン一色で、頭のお皿以外これといった特徴が無く、しかも口元からは中の人の肌色が見えてしまっています。
とても池谷仙克さんの作とは思えません。
・・・それもそのはず。
実はこのテペト、当時開催された「怪獣デザインコンクール」で金賞を受賞した中学3年生(当時)の作品なのだそうです。
この頃の『ウルトラセブン』は視聴率低化を挽回しようと、こうした募集デザインを導入したり時節に合わせた流行を無理矢理盛り込もうとしていました。
ところが、既に進められていたシナリオや美術制作にそれらを割り込ませたためこのような中途半端な造形になってしまったものと思われます。

任務終了後は、ダンとアンヌはボートに乗って湖上デート。
だって、満田監督作品ですから(笑)。
最終回への伏線として、無理矢理にでも二人のデートシーンを挿入したに違いありません。

ラストはちょっと薄気味悪い終わり方でした。
日本河童クラブの残り3人が現場を離れる車中の会話で終わるのですが、何故か死んだ竹村のことには誰一人触れようとしないのです。
SF作家「(ドヤ顔で)昔からカッパって呼ばれていたのはあのとおり宇宙人だったんだよ」

漫画家「(ムキになって)あれは確かにて宇宙人だったが、河童は絶対他にいる。」

女 「(遠い目をして)そうかも知れないわね・・・」
なんか意味ありげではありますが、単に仲間の死を忘れているようにも見えますね。
ていうか、そもそも竹村氏を殺す必然性は無かった気もしますけど・・・?。

ところで今回登場したテペト星人ですが、彼らは一体何しに地球へ来てたのでしょうか?。
地球侵略の尖兵だったとか、あるいは宇宙船が故障して不時着しただけだったとか、何ひとつ理由が描かれないままセブンに成敗されてしまいました。
もしかして・・・彼らは人類以前に地球に住んでいた先住文明人だったとか?。
いやいや、今回の場合それはないでしょう。
だってそのネタは、次回の大傑作「ノンマルトの使者」でしっかりと描かれますから。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。