週刊映画鑑賞記(2021.3/1~2021.3/7)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
先週WOWOW-4Kと日本映画専門チャンネル4Kの受信対応を完了しました。
でも、放映されているタイトルはまだ全然物足りないですね。
日本映画のほうは週末に『ゴジラ』リアル4K放送があるのでいいですが、WOWOW-4Kは『相棒』劇場版とか山田洋二監督の旧作がメインで「4Kならでは」な映画作品がほとんど無いのが現状です。
(でも『徳川女系図』とか『徳川セックス禁止令 色情大名』のエロ時代劇を4Kでやるのはある意味攻めてるかも?。)
結局、記念すべきWOWOW-4K開局日にはBSプレミアムの大長編日本映画を観ておりました(笑)。
3/1(月)
『黒部の太陽』🈠
(ホームシアター:BSプレミアム)

「世紀の難工事」といわれた黒部ダム建設を描いた日本映画史に残る大作映画。
恥ずかしながら今回が初鑑賞です。

石原裕次郎x三船敏郎(敬称略)という、当時の日本映画界トップスター二人のダブル主演作品。
お二人とも独立プロダクション経営者なので製作も兼ねています。
当時裕次郎は日活から独立したものの、五社協定などという狭量極まりない因習のためなかなか思うように映画を作れずにいたそうです。
特に陰険だったのは古巣の日活で、、出演予定の俳優に脅しをかけたり関西電力に「そんな映画に協力するのはおやめなさい」などと横槍入れて妨害してきたというのは有名な話です。
(モノ作りする会社としては実に腐りきった根性で、こんなだから数年後ポルノに堕ちて倒産したのでしょう。)
多大な困難を乗り切って映画を成功させた石原裕次郎と三船敏郎という二人の映画人(俳優としてよりもプロデューサーとして)の熱い想いが詰まった作品です。
今までこの作品を食わず嫌いしてきた自分を恥じ入るばかりであります。

映画『黒部の太陽』は、ダム建設に必要な資材・重機・そして人材を運ぶための工事用トンネル作りの話でした。
15年ほど前に妻と二人で黒部ダム見物に行ったことがあってその時このトンネルをバスで通った覚えがあります。
もしそれ以前に『黒部の太陽』を見ていたならら、この関電トンネルをバスで通ったときにもっと感慨に耽ることが出来たのではないかと思います。
また、現在は黒部ダムの敷地内にトンネル工事場面のセットのレプリカが置かれているそうです。
黒部の紅葉は本当に奇麗でしたから、コロナが収まったらもう一度行く価値はあると思います。

三船が演じるのは黒部ダム建設担当を拝命した関西電力社員:北川という人物です。
途中、長女が下請けの若い監督(裕次郎)と結婚したり次女を白血病で失ったりと、日本映画伝統の昔ながらのドラマチックな展開も用意されてはいますが、そんな茶番は必要ないくらい人物像がしっかりしていました。

一方の裕次郎は、若い下請け業者の役でした。
見た目も言動も青臭く昔ながらの土建屋の父親に反感を抱いているという人物で、扱い方も新世代のヒーローっぽいイメージだったように思います。
終盤、トンネル開通直後の祝賀シーンでまき子夫人が場違いな恰好で突然登場したのには少し萎えました。
トンネル工事現場の最深部にあんな綺麗な服装の事務の女性が入れるとは思えません。
あれが裕次郎サイドの要求だったのかスタッフ側の忖度だったのかは分かりませんが、この映画唯一のマイナス点でした。

ラストシーンで裕次郎は三船演じる北川の長女と結婚し、三船を「お義父さん」と呼んでいます。
終戦直後から日本映画界を支えてきた三船敏郎とその次の世代の大スター石原裕次郎が義理の親子となるこの映画には、黒部ダム建設という難工事を描くその裏側で五大映画会社が牛耳る日本映画界に風穴を開けようとする二人の映画人の連帯意識が見え隠れします。

この映画では関西電力だけでなく下請け会社がすべて実名で登場していることに驚きました。
会社名が実名であることによりリアリティが増幅している気がします。
特に裕次郎が属することになる熊谷組という会社は福井県の会社なので見ていて思わず背筋を正してしまいました。
当時の熊谷組社長の熊谷太三郎という人物は、その後国会議員に当選し科学技術庁長官や原子力委員会委員長を歴任してやがて高速増殖炉もんじゅの建設を推進した人です。
現在福井県若狭湾沿岸部が14基もの原発が集中する”原発銀座”となったのは、この映画に登場する熊谷組や関西電力と決して無関係ではありません。
そんな側面もあって、福井県民としてはまた違った面白さが見出せました。
あと、映画とは直接関係ないですが・・・。

黒部ダムといえば、私は富山名物の超絶しょっぱいブラックラーメンを思い出します。
元祖を名乗る富山駅近くの店で食べたのですが、これがまたとんでもない塩分量で白ご飯と一緒でなければとても食えません。
私は普段ラーメンの汁の一滴まで飲み干す主義なのですが流石にこれは飲めませんでした。
台湾ラーメンなど辛いもの好きな妻も「これは無理!」と半分以上残してました。
店に置かれていた資料によると、なんでもブラックラーメンは黒部ダム建設に従事する肉体労働者たちのエネルギー(炭水化物)と塩分補給のために考え出されたメニューだったそうです。
意外なところにダム建設時の残光を見た気がしました。
3/6(土)
『ゴジラ』(リアル4K放送)
(ホームシアター:4K日本映画+時代劇専門チャンネル)

この放送がなければ急いでアンテナ交換までして4K受信対応することはなかったと思います。
これから半年間、日本映画専門チャンネルがその名にかけて世に送る「ゴジラシリーズ最恐画質連続放送」。
その第一弾、昭和29年公開の第一作『ゴジラ』です。

リアル4Kで見る初代『ゴジラ』は陰影とデティールがくっきりしたことで画面の奥行き感が今まで以上に感じられ、またゴジラ自体も生物感が増していました。

リアル4Kによって見え方が違ったのは、特撮シーンよりむしろ俳優さんの日常芝居のほうでした。
特に目元のデティールが向上したことで細かな表情の変化まで読み取れる気がします。
芹沢博士が少女合唱団の歌声を聴いてオキシジェン・デストロイヤーを使うことを決意する瞬間の表情に、「ここで覚悟を決めたのだな」と分かって思わず身体が震えたほどでした。
画面の隅々まで、特別に見ようと意識せずとも自然に目に入ってくるという感じで、その分場面の情緒に浸りきることが出来た気がします。

一つだけ残念なのは、常に画面右下に出ているウォーターマークがやたら目立つことです。
日本映画専門CHだけならコンパクトでそれほど気にならなかったのですが、チャンネル二つ分の大きさがあるのと時代劇CHのロゴはデザインに顔が含まれているため気になって仕方ありません。
改善を希望します。

今回の「ゴジラシリーズ最恐画質連続放送」で個人的に楽しみにしているのは、実は9月放送予定の『ゴジラ対ヘドラ』です。
もちろん、私が映画館で見た最初の映画ということもありますが、この作品も4K化したということはその後に続く『ガイガン』『メガロ』『メカゴジラ』(二部作)もいつかは高画質で見られる日が来るはずだということなのです。
あと、『モスラ対ゴジラ』『地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』の4本については、東宝チャンピオンまつり用に再編集された際にカット部分のオリジナルネガを紛失してしまっているそうです。
(東宝さん、映画で食ってる会社としてそれはいかがなものでしょうかね?)
そのため、東宝チャンピオンまつり版ならオリジナルネガがあるので高画質化リマスターが可能(以前日本映画専門CHでリマスター版を放送していた)でしたが、オリジナル全編となると一部ネガが無いためポジフィルムからのリマスター作業になるため非常に困難なことと思われます。
それら4本の画質についても今から興味津々といったところです。
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

昨年秋から半年間、週に2話づつ放送されてきたBS4K『ウルトラセブン』もいよいよ大詰め!。
今週はオーラス(最終話)前の2本ですが、どちらも肩の力を抜いて楽しめる作品です。
第46話「ダン対セブンの決闘」

<あらすじ>
伊良湖岬一帯の不穏な動きを察知した防衛軍は調査を開始。
おりしもダンとアンヌが目をつけた「水中翼船の女」こそ侵略者サロメ星人の一人であった。
彼女はダンを誘い出して拉致・監禁する。
彼らの目的は「ウルトラセブン」であった。
ダンから自白させたウルトラビームの秘密を組み込まれたセブン型ロボットが今、出撃する!

冒頭、ハイドランジャーが何者かに撃沈されます。
「ノンマルトの使者」の衝撃がまだ残っていたため、ふと「ノンマルトの復讐?」みたいな錯覚を覚えました。
だって、ハイドランジャーはノンマルトを直接攻撃して全滅させた艦なのですから。

今回は愛知県・伊良湖周辺が舞台。
やはり愛知&岐阜ロケ作品だった『恐怖の超猿人』と監督・脚本家が全く同じなので、おそらくこの2話は同時に撮影されたものと思われます。
最終回が近いことから、もしかするとロケと慰安旅行も兼ねていたのかも知れません。

伊良湖周辺を調査するダンとアンヌ。
やはり「恐怖の超猿人」と同じくタイアップ先への感謝シーンが半端ないです。
アンヌは怪しい女を探してホテル内を歩き回りますが、大人の女性が入りたがるような場所ではなくなぜかタコ風呂とかすべり台が付いたお風呂といった視聴者(子供)が喜びそうな施設ばかり(笑)。

多分スタッフ・キャストの皆さんはこのホテルに安く宿泊していたのでしょうね。
ちなみにホテルの名は松風園。
現在も愛知県蒲郡三谷温泉内の一軒として絶賛営業中とのことです。

サロメ星人に捕らえられたダンはにせウルトラセブンを見てビックリ!。
自分自身と同じ姿をした奴が目の前に出てきたらそりゃ驚きますよね(笑)。

手元にウルトラアイが無いため焦るダン。
「盗まれたウルトラアイ」以来ですが・・・最終回直前でまだこのネタやりますか?。
しかも今回はウルトラアイを車の中に置き忘れたって・・・。
もう今更だけど「大事なものは肌身離さず持っとけよ。ダン!」

アギラとにせセブンの戦いはどこかコミカルなものでした。
特ににせセブンはロボットのくせに妙に人間臭い仕草を見せてくれます。

そして本物セブンとにせセブンの戦い。
製作費を最終回のためにとっておきたいのでしょうね。
セットではなく屋外の岩場を山はだに見立てて撮影しています。
そのため巨大感がまるで感じられないのが残念です。
にせセブンの最期は直接的な描写はありませんでした。
たとえ偽物といえど、セブンの姿をしたものが爆発したりましてやアイスラッガーで首チョンパなんてことになったら子供たちに大変なトラウマを受け付けてしまうでしょうから。
第47話「あなたはだぁれ?」

<あらすじ>
団地に住むサラリーマン・佐藤は酔って帰宅した深夜、家族や隣人から「誰なのか知らない」と言われ途方に暮れる。
やがて彼の姿は消えた。
佐藤からの通報を受けていたウルトラ警備隊は調査に乗り出す。
ダンとフルハシはフック星人が夜な夜な住民を建物ごと入れ替えて団地を宇宙人居住区にしようと企てていることを知る。

異次元世界?。
何らかの国家的陰謀?。

まあ、『ウルトラセブン』の一遍なので宇宙人の侵略計画の一環なのは分かっていますが、それでも冒頭の不気味にさは背筋が冷えます。
お巡りさんもお隣の太ったおばさんも町内会長さんも、そして佐藤の奥さんも・・・。

どこか『第四惑星の悪夢』に近い感覚を感じます。
そういえば脚本家も『第四惑星』と同じ上原正三さんです。
もしかすると『第四惑星』の人間が住んでいた団地と同じ場所で撮影されたのでしょうか?。
安藤達己監督はこれまで助監督として『セブン』を支えてきた方で、本作が監督デビューだそうです。
「(お金が無いから)極力特撮パートを少なくしろ」と命じられたそうですが、「むしろその方が人間ドラマをしっかり描ける」と喜んだという実にポジティブな監督さんです。

佐藤の奥さん役は『静かなる決闘』で三船敏郎の婚約者役を演じた三條美紀さん。
特撮ものだと『ゴジラ』と同じ年に公開された『透明人間』のヒロイン役がありました。
お?、今週の記事は三船・ゴジラ・ウルトラセブンが三條美紀さんで一つに繋がりました!(笑)。

そして今回のメインゲストは小林昭二さん!。
特撮ファンならば知らない人はいない筈です。
もしいたとしたら、そいつはフック星人に違いない!。
科特隊キャップ、SRIに難儀を持ち込む町田警部、昭和ライダー達のおやっさん。
あと、「ダイゴロウ」の小役人も忘れ難いです。
70年代には市川崑監督の金田一シリーズに色々な役で出演していて、そのうちの2本で三條美紀さんとも共演しています。
そして、平成ゴジラの内閣安全保障室室長役を経て遺作がなんと『ガメラ2 レギオン襲来』!。
日本の代表的な特撮作品のほとんどに出演されている俳優さんで、私の記憶にはこの方の姿・セリフ・行動が遺伝子レベルで刻み込まれているのです。

相手が小林さんということもあってか、今回ダンと組むのは元『ウルトラマン』のアラシ隊員・・・とは別人のフルハシ隊員。
退官して一般市民になった元上司を守って戦うアラシ・・・みたいにも見えてなんか楽しくなってくる絵です。
今回特撮シーンは少ないですが、その分役者さんたちが楽しんで演技していることが伺えます。

そしてウルトラ警備隊隊長と科特隊キャップの夢の競演!。
奇しくもお二人のアンダーネームは字まで同じ”昭二”です。
ところで、小林さんと中山さんとはプライベートでも交流はあったのでしょうか?。
『帰ってきたウルトラマン』の加藤隊長を演じた塚本信夫さんは小林さんの後輩だったそうですが・・・。

ラストはダンも含めたウルトラ警備隊6人の満面の笑顔で終わります。
これは視聴者に対してだけでなく、ある意味出演者たちにとっても最高のサービスショットだった気がします。
次回は最終回。
ダンが彼らの元から永遠に去っていくお話です。

現在、確定申告の準備で領収書の山と格闘中であります。
今年から申告書の様式が少し変わったらしく、控除分をどこに書けばいいのかよく分かりません。
あと、昨年は持続化給付金をもらっているのでそれもどこにどう書けばいいのやら・・・?。
締め切りまであと一週間。
来週は家でゆっくり映画を見る時間はなさそうです・・・。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。