週刊映画鑑賞記(2021.3/8~2021.3/14)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
3/8(月)
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』🈠
(ホームシアター:WOWOW-4K録画)

<あらすじ>
世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが彼の豪邸で開かれた。
その翌朝ハーランが遺体となって発見され、依頼を受けた名探偵ブノワ・ブランは事件の調査を進めていく。
莫大な資産を抱えるハーランの子どもたちとその家族、さらに家政婦や専属看護師といった屋敷にいた全員が事件の第一容疑者となる。

『ルーパー』('12)で一躍名を馳せ、続く『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』('17)で世界中のSWファンを失望のどん底に突き落としたライアン・ジョンソン監督の最新作。
『最後のジェダイ』の悪印象があったため少しばかり警戒していましたが、見終わってみると二重三重のどんでん返しと少々漫画チックなキャラクターとがいい塩梅に絡み合う実に面白い映画でした。
ジョンソン監督が「アガサ・クリスティーに捧げて作った」オリジナルストーリーとのことですが、随所に名作映画(特にミステリーもの)からの引用が散りばめられています。
中でも遺言状公開シーンは日本の『犬神家の一族』を彷彿とさせてくれました。
遺言状の内容を知っ親族たちのパニクりようがそれこそ市川崑監督みたいな細かく素早いカット割りで描かれていて思わずニヤリとしてしまいました(笑)。
また、「移民問題」や「差別問題」なども盛り込まれていて、作中に「赤いキャップはもうたくさん!」というセリフがあるなど、当時のトランプ大統領への批判も込められています。(赤い帽子はトランプ支持派のトレードマーク)

主役の名探偵:ブラン役は、現役007ことダニエル・クレイグ。
事件に巻き込まれる誠実で心優しい看護師:マルタを演じるのは『ブレードランナー2049』のジョイ役で私のハートを鷲掴みにしたアナ・デ・アルマス嬢。
「マルタは嘘を付くと”ある生理的現象”を抑えられなくなる」という設定は実に面白いと思いました。
この二人は現在公開延期中の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でもボンドとボンドガールの関係で共演しています。

他にも、キャプテン・アメリカことクリス・エヴァンス。
『トゥルー・ライズ』の奥さん役が今も記憶に残るジェイミー・リー・カーティス。
つい先日お亡くなりになられた、名作『サウンド・オブ・ミュージック』のお父さん役で有名なクリストファー・プラマー。

そしてハーランの遺言状を公表する弁護士役はなんと『スター・ウォーズ』のヨーダことフランク・オズ!。
ライアン・ジョンソン監督は『最後のジェダイ』で12年ぶりにヨーダをスクリーンに登場させましたが、それが縁で出演依頼を受けたのでしょうか?。

『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』はとても満足度の高い作品でしたが4K放送としてはちょっと残念な内容でした。
確かに4K放送ではありましたが、実はリアル4K素材ではなく2K素材からのアップコンバート放送だったようなのです。
リアル4K番組は自社制作ドラマやドキュメンタリー作品がほとんどで、それらには番組表に4Kマークが付いていますが、『ナイブス・ナイト』や『相棒』など映画作品にはそれがありません。
私としては映画の4K放送を目当てに左旋パラボラアンテナに交換したというのに・・・!。

そこで次はWOWOW-4Kの中から4Kマークが付いた映画をチョイス。
『ナイブズ・アウト』は「なんちゃって4K」(アプコン)でしたがこちらにはリアル4Kマークが付いています。
『東京物語』は古いモノクロ映画ですが、4K高精細映像とHDRの高コントラストを味わうにはむしろ最適な作品です。
3/13(土)
『東京物語』
(ホームシアター:WOWOW-4K)

<あらすじ>
尾道で暮らす老夫婦・周吉ととみは、東京で暮らす子どもたちを訪ねるため久々に上京する。
しかし医者の長男・幸一も美容院を営む長女・志げもそれぞれの生活に忙しく、両親を構ってばかりいられない。
唯一、戦死した次男の妻・紀子だけが彼らに優しい心遣いを見せるのだった。

小津映画はローアングル&固定画面&カメラ目線が特徴です。
視点が低くなるということは、人物の細かな演技だけでなくその背景も奥のほうまでしっかり見えてしまうということです。
セットの作り込みの甘さや屋外ロケのエキストラのいいかげんな動きなどが目立ちやすく、特に4Kとなるとそれが顕著になります。
しかし、小津監督とそのスタッフの仕事に抜かりは一切ありません。
「映画の神は細部に宿る」という言葉がありますが、まさに画面の隅々に至るまで舞台が構築されていて主役の老夫婦も心優しい未亡人もそこに確かに存在していると実感出来る画です。
背景に映る薄暗い昔の日本家屋も、暗部が潰れたり窓の外が白く飛んだりすることもなく当時の美術スタッフの匠の技をじっくり堪能できます。

内容に関しては、今の自分の環境(子供はおらず母親と同居)とは全くかけ離れたものなので特に触れません。
ていうか、親元を離れて大阪に住んでいた頃のことを思い出して心が痛くなる映画です。
いつまでも独り身の私を心配して様子を見に来た両親を「忙しいから」と邪険に扱った30代の頃の自分をぶん殴ってやりたくなります。(;^_^A
『ウルトラセブン』(4Kリマスター版)
(ホームシアター:BS4K録画)

昨年秋から週2話づつ放送されてきた4Kリマスター版『ウルトラセブン』も、今週ついに最終回を迎えました。
そういえば、自分は今までに何度『ウルトラセブン』を見てきたのだろう・・・?。
初めて見たのは保育園の時(5~6歳)。
しかし、この時の記憶は「セブンかっこいい!」「ウルトラホークかっこいい!」と「時々怖いときがある」以外全くと言っていいごど残っていません。
2度目は中3の秋の再放送で、このとき『セブン』のSFマインドと話の奥深さに魅了されました。
そして3度目は大学に入って知り合った先輩に借りて見た全話録画ビデオ。
この先輩はウルトラシリーズ再放送を全てβⅠで録画して持っているという”猛者”で、年上ながらも見終えたあと各話について熱く語り合える特撮好きの同志でありました。

4度目は85年秋から隔月で発売されたレーザーディスク全12巻でした。
このLD全12巻は長い間大事に持っていて、全話ではないにせよ時折気になる回をよく見返してました。
その後深夜番組かなにかで見たかも知れませんが記憶に残っていません。
「もうLDがあるから」とCM入りの民放TV放送には興味を失っていた時期だったためかと思います。
次に覚えているのは、80年代後半か90年代初頭のアナログBS放送での再放送。
もちろんS-VHSに全話録画しましたが、160分テープ一本に6話づつ録画したため各話の頭出しが面倒で放送後も結局はLDばかり見てました。

その次に全話視聴したのは、90年代終わり頃から順次発売されたDVD全12巻。
心情的にはLDのほうが好きでしたが、片面に4話収録されている中からランダムアクセスで見たい回をすぐに呼び出せるいう利便性に負けて以後はDVDばかり観るようになりました。

そしてデジタル放送時代になってまだ間もない頃、8年前WOWOWで放送されたハイビジョンリマスター版。
後にこのハイビジョンマスターを元にしたブルーレイBOXも発売されましたが、コレはあまりにも高かったので買ってません・・・。

そして今回のBS4K放送版です。
恥ずかしながら白状します。
実は私、(最初の保育園時代は別として)『セブン』最終回を見るたびに必ずといっていいほど泣いてしまうのですよ。
それは今回も同じでした。
第48話「史上最大の侵略(前編)」

<あらすじ>
過去の侵略者たちとの激しい戦いによって、セブンの身体は多くのダメージを受けていた。
これ以上地球に留まることは彼の死を意味する。
ダンは体調不良のため、不覚にもゴース星人の地球への侵入を許してしまう。
ゴース星人はアマギを捕らえ、さらに怪獣パンドンを送り込んでウルトラ警備隊に襲いかかる。
ダンはセブンに変身しパンドンを辛くも退けたものの、負傷によって体力をさらに消耗してしまった。
ゴース星人は捕えたアマギを介して地球防衛軍に対し全面降伏を勧告。
敵の基地を発見したウルトラ警備隊は、アマギを犠牲にしてでも攻撃するという非情な決断を下す。
そのことを知ったダンは、アンヌに自分の正体を明かして最後の戦いに赴いていく.。
この「史上最大の侵略」がウルトラシリーズ中最高の最終話であることに異論を挟む者はいないでしょう。
それと同時に、他の回と変わらないくらいツッコミどころが多いことも確かです。
例えば・・・

ウルトラ警備隊はたった6人だけで回している自転車操業組織なのか?、とか。
(でも、ダンの顔色を気遣って「代わろうか?」と言ってくれるソガは最高にいい奴です。)

墜落したホーク2号から救助された時点でダンの身体はとっくに検査されていて、地球人ではないこともとっくにバレているはずだ、とか。

セブン上司がセブンと同じ姿で実にややこしい。
ウルトラマンとゾフィーみたいに、デザイン面でセブンと差別化して欲しかった、とか。

よく聞くとゴース星人が喋っている言葉がなぜか関西弁だとか。

時間的には一晩の間の出来事なのに避難する人たちのシーンがなぜか昼間の画だとか。
(これは参謀たちのイメージという捉え方も有り?。あと、裏事情としてはこの映像は『世界大戦争』からの流用だから。)

地球全体が滅亡の危機に瀕しているというときにどうしてラジオからは呑気に野球中継なんか流れているのか?とか。

明けの明星が輝くのは西じゃなくて東の空だろう、とか。
ええ、おかしなところがいっぱいあることはよ~く分かってます。
分かってますけど・・・それでもやはり、私は最後には必ず目頭が熱くなって画面が霞んでしまうのです。

「アンヌ、僕は・・・僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲からきたウルトラセブンなんだ!。」
最愛の地球人女性アンヌに告白するダン。

その瞬間、背景は眩しく輝きアンヌの髪が風にたなびきます。
満田かずほ監督は2クール(半年)以上前から自作に何度もダンとアンヌのデートシーンを挿入し続け、シリーズ全体の繋がりを無視してでもアンヌをロングヘアーにさせて撮ってきました。
それらは全て、最終回のこのシーンためだったのです。
この場面だけで見てしまうとただの変な画としか見られませんが、全話を通して見ていれば満田監督の熱い想いが画面からほとばしり出てくるのが感じ取れるはずです。

「行かないで!」と腕にすがるアンヌを振りほどき最後の変身をするダン。
この時流れる音楽はいつもの勇壮な楽曲ではなく、ダンの覚悟を表現するかのように切なくてそれでいてなんだか優しい気持ちにさせてくれる曲でした。
このあとの戦闘シーンにはクラシック音楽(シューマン「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」)がBGMとして使われます。
満田監督は確固たる意図を持って選曲したのでしょうし、あの曲がセブン最終回の印象を強めていることは確かです。
それを分かったうえで書きますが、私としては最後まで冬木透先生のオリジナル楽曲で勝負してほしかったと思っています。
「史上最大の侵略」に不満があるとすればその一点だけです。

ボロボロになってもなお立ち上がり、文字通り生命を賭して敵に向かっていくセブン(=ダン)。
地球人に頼まれたわけでもなく、ましてや誰かの命令を受けて戦っているのでもない。
たまたまこの星の人間の勇気ある行動に感動し、多くの侵略者に狙われているこの美しい星を守ることを自らの意志で選択した一人の異邦人。
この点において、のちにM78星雲から宇宙警備隊員として地球に派遣されてくるようになる幾多の後輩ウルトラマンたちとは根本的に違うのです。

アンヌはダンに知らされた事実を仲間に打ち明けます。
「ウルトラセブンの正体は私たちのダンだったのよ。M78星雲から地球を守るために遣わされた平和の使者で、自分を犠牲にしてまでこの地球のために戦っているんだわ。」
このセリフは、セブンが恒星観測員として地球にやってきて自分の意志でこの星に留まったという基本設定と矛盾します。
ただ、このセリフがアンヌの主観によるものだと考えれば納得がいきます。
セブンの本来の任務が何であれ、アンヌをはじめ地球人から見ればセブンが自分たちを守り続けてくれたヒーローであることに変わりはないのですから。

事実を知ったウルトラ警備隊の仲間たちは全員ウルトラホークでセブン=ダンの援護へと飛ぶ。
「ダン!離れるんだ、怪獣は俺に任せろ!。」
「ダン!」
セブンのことを「ダン!」と当たり前のように友の名で呼ぶ仲間たち。
ここが中学時代から40年以上経った今も変わらない私の涙腺崩壊ポイントです。
フルハシとアマギのこのセリフを聞いた瞬間から、私の目頭はどうしようもなく熱くなってしまって困ります。
『ウルトラセブン』は突き詰めて考えると現代の移民問題や外国人に対する偏見の話に繋がる作品です。
やたら暴力的な連中とか卑怯で狡猾な奴等もいましたが、中には話し合いのテーブルに着いた者ややむにやまれぬ事情を抱えた者も大勢いました。
そして、言ってしまえばセブン自身もいわば不法移民者の一人です。
常に誠実であり続けたセブン(ダン)と地球人(ウルトラ警備隊)が真に一つになれたこの場面は『ウルトラセブン』の着地点としても相応しいものだったと思えます。

今回初めて「4Kで見れて本当に良かった」と感じたのが最終回のこのカットでした。
闘いが終わり、満身創痍の身体でゆっくりと立ち上がるセブン。
今まで見た中で最も美しい彼の雄姿でありました。

放送前に見た特番によると、今回の4K化カラーリングを担当したのは佐々木さんという20代の若者でした。
本放送時はまだ生まれていなかったその人が当時の貴重な撮影資料を見て目を輝かせているのを見て「こういう『セブン』を愛する人が手掛けてくれるなら絶対におかしなものにはならないはずだ」と思って半年間付き合い続けてきました。
彼らは本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
50年来のファンとして、4K化に携わった全てのNHKスタッフさんに感謝いたします。
ありがとうございました。
『ウルトラセブン』記事の最後は私が大好きなあるエピソードの紹介で締めくくりたいと思います。

ウルトラセブンのスーツアクターを務めたのは当時三船プロ在籍の殺陣師だった上西弘次さんという方でした。
上西さんはその殺陣師の技を生かして前作『ウルトラマン』とは全く違う独自のヒーロースタイルを確立されました。
全49本のうち14話と15話を除く47本でセブンを演じ、その後『スペクトルマン』でも主役ヒーローを演じられています。
しかし、セブンの依頼を受けたばかりの頃の上西さんは”顔が出ないぬいぐるみ役者”の仕事にあまり乗り気ではなく、あくまでも「後学のため」と割り切っていたそうです。
(推測ですが、14話と15話だけ菊池英一さんに交代した時には他の顔出し出演作を優先していたのかも知れません)
しかし、あるときから上西さんの考えがガラリと変わったそうです。
とある身障児施設の営業イベントにセブンの姿で出演した時、突然一人の少年が自分の元に駆け寄ってきました。
それは、イベント会場ではどこででもあるごく当たり前の光景と思われました。
ところが。
実はその少年は足に障害があって歩く事はおろか立つことさえ出来ない子だったことを知らされました。
「憧れのウルトラセブンが自分のところに来てくれた!」という思いが奇跡を起こしたのです。
ヒーローの影響力の大きさに気付いた上西さんは、それ以降スーツアクターへの偏見など捨て去り特撮ヒーロー番組に全力で取り組まれたそうです。
この話が本当にあった出来事かどうかは分かりません。
もしかすると誰かの作り話かも知れません。
でも、そんなことはどうでもいいのです。
このエピソードは子供たちにとってヒーローとはどんな存在なのかということを如実に表してくれているのですから。

今週はとても喜ばしいニュースを目にしました。
4月から「午前十時の映画祭」が再び開催されるのです。
ショーン・コネリーとエド・ハリスをはじめオヤジ俳優が滅茶苦茶カッコいい『ザ・ロック』。
S・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』と『シャイニング』。
8月はJ・キャメロン監督の『ターミネーター』『ターミネーター2』の2連発。
邦画では『座頭市物語』(一作目)と『隠し砦の三悪人』。

そしてなんといっても年末の『モスラ』('61)ですよ!。
’83年夏の「ゴジラ復活フェスティバル1983」以来、38年ぶりに『モスラ』を映画館のスクリーンで仰ぎ見ることが出来るのです。
昨年の春頃、『午前十時の映画祭』復活へのリクエスト募集があって、私はそこに「今まで日本の特撮映画が一本も無い!。ゴジラ、ラドン、モスラのいずれか(あるいは全部)を所望!。」と書いたのですがその希望が一部叶いました。
選定委員の皆さん、本当にありがとうございます!。
(『モスラ』を推したのは町山智浩さんかな?)

そして更に喜ばしいことに、今回はなんと我が福井県の劇場でも上映されるのですよ!。
上映館は鯖江アレックスシネマさん。
この劇場は最初の2回だけ「午前十時の映画祭」をやってくれてたんですが、客入りが今一つだったのか3回目以降は止めてしまっていたのです。
そのため第3回からはお隣石川県の劇場まで足を運ばねばならず、「昔の映画見るのにわざわざ金沢まで行くなんて馬鹿みたい」と妻に呆れられたりしてたのでした。
でも今年は県内の劇場です。
時間さえ合えば(仕事が午後からであれば)、出勤前に見ることだって可能です。
家からは車で1時間ほどかかりますが、職場と同じ方向なのでそれほど苦にはなりません。
(金沢の開催劇場へは1時間半ほどかかる)
今心配なのは、再びコロナ感染が拡大して途中で「中止」になりはしないか?ということです。
無事に一年間の開催を全うし、そのまま12、13へと続けていただきたいものです。
また長い記事になってしまいました。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。