週刊映画鑑賞記(2022.7/4~2022.7/10)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

先日の記事に書いた通り、7月はプレミアムプランに変更したNETFLIXの映画作品を集中的に観ることにしています。
ただ、せっかくプラン変更したばかりだというのに、今週後半は急に忙しくなったためNETFLIX作品は2本しか観れていません。
NETFLIX以外では、日本映画+時代劇4Kチャンネルで放映された4Kリマスター版『マタンゴ』を観ています。
7/4(月)
『アダム&アダム』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

『フリーガイ』のライアン・レイノルズとショーン・レヴィ監督コンビの最新作。
軽い気持ちで見始めたんですが、これが意外に面白かったです。

2050年、優秀なパイロットであるアダム(40歳)はある目的のためタイムマシンを奪って2018年へ飛びますが、敵の妨害を受けて2022年に不時着してしまいます。

大ケガをしたアダムは当時の自宅に入り込み治療しますが、そこで12歳の頃の自分と出会ってしまいます。
少年時代のアダムは、科学者だった父親を事故で失い母子家庭で育ち、学校ではいじめに遭い母に対しても反抗的な態度を取り続けるひねくれた子供でした。
母に対する不満ばかりを口にする子供時代の自分に、40歳のアダムは「母にそんな態度を取り続けたことを俺は30年間ずっと後悔し続けている!」と吐露します。

タイムマシンの再起動には健康なアダムのDNAが必要なため、ケガをしている40歳アダムは仕方なく12歳アダムを連れてタイムトラベル装置開発を阻止するべく2018年へと向かいます。
2018年には事故死した父親(タイムトラベル装置の発明者)がまだ生きていて、親子三人(?)で力を合わせてタイムトラベル装置の独占を目論む悪玉と対決します。
こうして文章にするとかなりめんどくさいストーリーに見えますが、映画ではセリフでくどくど説明はせず映像と演技でうまく見せてくれるのでとても分かり易くすんなり頭に入ってきます。
流石は『フリーダム』でややこしい設定を面白おかしくエンターテインメントに昇華させていたショーン・レヴィ監督です。

ただ、2018年のタイムマシン完成阻止に成功しても、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに都合よく未来が変わることはありませんでした。
父親も歴史的事実である事故死は免れず、少年アダムも結局元の母子家庭のままです。
ただ、このタイムトラベルを通して心が学んだことだけは残っていて、意固地になっていたアダム少年が素直に母親に抱き着くラストは救いでした。
タイムパラドックス設定としてはやや難がある気がしますが、アダム少年を主人公としたジュブナイルとして見る限りなかなかの秀作だったと思います。
唯一物足りなかったのは、いじめられっ子だったアダム少年が自力でいじめっ子に打ち勝つ場面が最後まで無かったことくらいでした。
それってジュブナイルとして絶対必要な要素だと思うのですがね。

映像は4K解像度+ドルビービジョン(HDR規格の一種)。
解像度についてはフルHDと同じ画像で比較が出来ないため何とも言えませんが、HDRの効果は間違いなくあるようです。
暗い室内シーンで黒潰れも黒浮きもせず、画面内で展開している内容がハッキリ見て取れます。
ただ、残念ながら我が家のプロジェクター:ビクターDLA-X990Rはドルビービジョンには対応していないため基準フォーマットのHDR10に変換されてしまいます。
これはDLA-X990Rだけの問題ではなく、現在発売されているプロジェクターは全てドルビービジョンには対応していません。
以前某有名AVショップで聞いた話ですが、ドルビービジョンの高コントラストを表現するには投射型プロジェクターの光量では足りないのだそうです。
NETFLIXのHDR効果はプロジェクター使いには宝の持ち腐れであるようです。
音響はドルビーアトモス立体音響を採用。
タイムマシンによる時間移動時や未来の戦闘機による襲撃シーン、そしてクライマックスの時間移動装置開発ラボ内に充満する機械音などでその効果が発揮されてました。
市販ブルーレイの高ビットレートな音と比べると全体的に小じんまりとした音場ではありますが、5.1.4チャンネル立体音響として特に不足は感じません。
7/5(火)
『オキシジェン』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

目覚めたとき何故かカプセルホテルみたいな狭い部屋に閉じ込められている女性:リズ。
自分が誰かもなぜここにいるのかも思い出せない。
話し相手は”ミロ”と名乗るコンピューターのみ。
しかも酸素は残り僅か。
ミロを通じて警察に連絡を試みるがどうも怪しい。
更に謎の女性から電話がかかってきて「助かるためには酸素残り2%を死守しろ」とアドバイスされる。
何が起こっているのか?。
誰を信じたらいいのか?。

極限状態の狭苦しい一室から始まって、主人公の正体と状況が徐々に判明していき、やがて人類と地球全体の運命にまで関わる話にスケールが広がっていくのは見ていて壮観でした。
実に面白い!。
唯一の残念ポイントは、主人上のリズが時々ヒステリックに喚き散らすのが鬱陶しいことくらいでした(笑)。

仕様は『アダム&アダム』と同じく4Kドルビービジョンとドルビーアトモス立体音響を採用。
映像の印象は『アダム&アダム』とほぼ同じですが、音響に関する限りこちらは少々期待外れでした。
リズが狭い室内をあちこちバンバン叩く音が四方八方から響いて、自分もあの空間に閉じ込められている気分になれるに違いない・・・と期待したのですが、特に天井スピーカーが活用されることは無かったように思います。
室内シーンでは上下感覚よりも前後左右の音声の狭さの表現に神経を使っている気がして、それが逆に終盤の外のシーンの音場の広がり感を強めていたように思います。
多分それがこの映画の音響演出方針なのでしょう。
7/7(木)
『マタンゴ』
(ホームシアター:日本映画+時代劇4Kチャンネル録画)

『マタンゴ』のポスターにはスチール写真ではなく手書きのイラストが使われています。
キノコ人間のデザインを手掛けたのは、科学雑誌のイラストや『サンダーバード』などプラモデルのBOXアートで有名な小松崎茂先生でした。
そのため、ポスターも小松崎先生に描いてもらうことにしたのでしょう。
それは多分正解だったと思います。

こんなグロいスチール写真を元にポスター化しても、当時のお客さんはほとんどドン引きするだけだと思いますから(笑)。

世の男性特撮ファンが「『マタンゴ』が4Kリマスター化される」と聞いて真っ先に考えたこと。
それは「あの水野久美さんの妖艶さがどこまで悩ましく迫ってくるか?」という一点に尽きると思います。
心配は無用でした。
マタンゴに魅入られた麻美(水野さん)の微笑が、まるで冷たい吐息が顔にかかってくるんじゃないかと錯覚するくらい美しくも不気味に迫ってきます。
その妖艶さはもちろん水野さんご自身が醸し出しているもの(あるいは演技)ですが、4Kリマスターによって肌や髪の艶や唇の赤みが増したことで「人ならざるモノ」に変わってしまった麻美が一層不気味な存在として映りました。
願わくば、このクォリティの『マタンゴ』を劇場公開していただきたいです。

食料集めの能力に長けていて、しかもそれをお金に換えて儲ける逞しくもがめつい雇われ漁師:小山(演:佐原健二さん)。
歯が一本欠けているのが特徴的ですが、これは当時たまたま歯医者に通っていた佐原さんが自身のアイデアで歯を抜いてもらった状態で演じたそうです。
この独特の風貌により、この人物の育ちの悪さが如実に現れていました。
佐原さんは本作の悪役ぶりが気に入られたらしく、翌年の『モスラ対ゴジラ』でも悪役で出演しています。

最初にマタンゴ(キノコ)を食って人間の嫌らしい本性を現すインテリ作家:吉田役の太刀川寛さん。
ちょっとタレ目で人の好さそうな顔つきをした俳優さんですが、今回はイッってる目をして嫌味と悪態を吐く本当に嫌な奴を楽し気に演じています。

私としては、小泉博さん演じる作田艇長の行動が一番ショックでした。
いつも品行方正で沈着冷静な役柄が多い小泉さんは今回も皆のリーダー格となる役割を演じていましたが、その後全ての食糧を持ち出して自分一人だけ船で逃げてしまいます。

作田艇長のような裏切り者役はそれまで土屋嘉男さんが多く演じてきましたが、その土屋さんが普通の人に見えてしまう(笑)くらいの逆張りキャスティングでした。

一人島からの脱出に成功し、奇跡的に日本に帰ってきた村井(演:久保明さん)。
しかし彼は「自分も意地を張らず恋人や仲間たちと一緒にマタンゴを口にしてあの島でキノコ人間になって生きる道を選ぶべきだった」と嘆きます。

でも、村井はもう悔やむ必要はありません。
彼の身体にはマタンゴの胞子がしっかりと根付いていたのですから。
その胞子はやがて病院の空調設備を通じて建物の外へと流れ出し、平和と繁栄に浮かれる東京を、そして日本全体をマタンゴだらけにすることでしょう。

村井が隔離された部屋から見える夜景は、実景でも写真でもなく全てミニチュアの町にネオンサインなどを飾り付けたものです。
そんなニセモノの街並みをわざわざ作って見せたのは、これから日本に襲い掛かるであろうマタンゴ・パンデミックを予感させるためかも知れません。
ところで・・・

ずいぶん後になってから知ってビックリしたんですが、初公開時の同時上映作品は『ハワイの若大将』だったそうです。
この謎カップリングは、前期のNHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(大阪編)でもしっかりネタにされてました(笑)。
当時の観客は東宝のセンスを疑うとかしなかったのでしょうか?。
【訃報】

6月27日、特技監督の中野昭慶さんが逝去されました。
86歳でした。
日本の映画産業がどん底状態にあった1970年代も「東宝チャンピオンまつり」で低予算のゴジラ映画を作り続けた中野監督。
私が初めて映画館で観た作品『ゴジラ対へドラ』も中野監督が特撮を手掛けた作品でした。
ある時は一点豪華主義、ある時は過去作のフィルムや撮影用プロップを再利用しながら当時の子供たち(私も含む)を楽しませてくれました。
『ゴジラ対メガロ』の時に仰ったという「低予算だから・・・なんて言い訳は、お金を払ってくれたお客さんに失礼だ。」というお言葉は名言中の名言です。

奇しくも、私が中野監督の訃報を知ったのはちょうど4Kリマスター版『マタンゴ』の放送日でした。
中野さんは特撮部の助監督として『マタンゴ』にも参加されています。
クレジットに中野さんの名を見たとき、私は思わず姿勢を正しました。
中野昭慶監督のご冥福を心よりお祈りいたします。
<(_ _)>
今週もお付き合いいただきありがとうございました。