週刊映画鑑賞記(2021.8/23~2021.8/29)
CATEGORY週刊映画鑑賞記
トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
ただ、今週はひどく忙しくて長尺の映画は一本も見れていません。
その代わりと言ってはなんですが、週末は良質な短編アニメをまとめて堪能しておりました
8/28(土)
『アニメーション作家 川本喜八郎の世界』
(ホームシアター:WOWOWプラス録画)

WOWOWプラスがまたやってくれました!。
日本が世界に誇るべき人形アニメーション作家、川本喜八郎さんと岡本忠成さんの短編作品を4K修復版で放映してくれたのです。
ありがとう、WOWOWプラス!。
契約していて本当に良かった!。

NHKの人形劇「三国志」で川本喜八郎さんの名前は知ってはいましたが、人形アニメ作品を初めて見たのは大学4回生のとき店頭で見たデモ映像に一目惚れして買ったこのレーザーディスクでした。
当時は20インチのブラウン管TVで見ていたのですが、「道成寺」や「火宅」の人形の鬼気迫る表情に思わず身震いしたことを今でもよく覚えています。

2007年頃にはLDを全て処分したため、DVD盤を買い直しました。
LD収録分にその後の作品も追加されていて、晩年の「冬の日」と遺作となった「死者の書」以外は殆ど全ての作品が収録されていたと思います。
このDVDはその後廃盤になりましたが何故かすぐ中古価格が高騰、「どうせそのうちブルーレイ版が出るだろう」と高値で売れるうちにヤフオクで売ってしまいました。
でも、いつまで経ってもブルーレイ化されなくて、DVDを手放したことをず~っと後悔しておりました。

今回の4K修復は、5月から各地で上映されている「アニメーションの神様、その美しき世界」のために行われたもので、これにはWOWOWプラスも出資しているようです。
今回放送されたのは、川本喜八郎さんの初期短編アニメ作品「花折り」「鬼」「詩人の生涯」「道成寺」「火宅」の5本。
これらは「アニメーションの神様、その美しき世界」で上映された内容と同一です。
この上映は隣の石川県でも予定されていて私も見に行きたかったんですが、現在コロナのせいで上映館のシネモンドさんが休館中のため未だに開催の目途が立っていません。
だから、今回の放映は本当に有難いです。
今回の放送は4K素材からダウンコンバートした2K画質です。
それでも十分すぎるほど高精細な映像で、もし服飾関係者が見たら人形の着物の素材さえ分かるんじゃないかと思えるほど細かな部分までよく見えます。
人形の角度と照明を駆使した「光と影」の演出についても、コントラストがはっきりしたことでキャラクターの心情変化が手に取るように分かります。
「花折り」(1968年)

一本目は独立第一作目の「花折り」。
この頃はどちらかといえば岡本忠成さんの作品のような印象もあって、後に確率された作風とはかなり違っています。
「鬼」(1972年)

「花折り」の4年後に作られた「鬼」では、後年の人形劇「三国志」に繋がる馴染み深いイメージの人形が登場します。
光と影の演出もこの時すでに確立されている感があります。
「詩人の生涯」(1974年)

今回唯一の2D(平面)アニメですが、セルアニメではなく切り絵のような方式で作られています。
川本さん自身が体験した東宝争議が下敷きになっているそうですが、制作がオイルショック後の混迷期であったことを考えると高度経済成長期の傲慢な企業経営に対する批判も込められている気がします。
とはいうものの、話が抽象的過ぎて私には今ひとつ理解出来ませんでしたが・・・。
「道成寺」(1976年)

昔LDやDVDで何度も見返した作品です。
この作品にはセリフが一切ありません。
話の流れも人物の心の動きも、全て人形の動き・表情・目線、そして照明と音楽だけで表現しています。
この作品の評価が海外でも非常に高いことも頷けます。

原作は「安珍清姫伝説」
要は「執着心の強いストーカー女に追い回されて挙句は焼き殺されてしまう男の話」なのですけど、映像表現においては今見ても全く色褪せることはありません。
「火宅」(1979年)

1979年といえば『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームの真っ只中で、『機動戦士ガンダム』『銀河鉄道999(劇場版)』『エースをねらえ!(劇場版)』『ルパン三世カリオストロの城』といったアニメの歴史に残る名作が作られた年です。
また、旧い特撮作品にも再びスポットが当たるようになった年でもあり、福井でも『ウルトラマン』から『レオ』まで全ウルトラシリーズが(白黒の『Q』のみ除いて)毎朝再放送されておりました。
当時中3だった私は上記の作品群に夢中になっていて、一般的なアニメとは別次元のこの作品の存在すら知りませんでした。

二人の男に同時に求婚され、決めかねて入水したものの、あの世でも地獄の呵責に櫛見続けているという莵名目処女の物語。
なんとも救いの無い話ですが、この作品では500年後の世の中に莵名目処女の亡霊が表れてその苦しみを旅の僧に打ち明けるという構成になっていて若干なりとも無情さが緩和されている気がします。

今回久し振りに川本喜八郎作品を見返して感じたのは「常に女性が登場する」ことと「妙に官能的な作品が多い」ということでした。
「道成寺」と「火宅」はまさに男と女のドロドロ愛憎劇。
そして「鬼」と「詩人の生涯」には母親が重要な役回りで登場します。
「花折り」には女性は登場しませんが、女装させられた小坊主に和尚がつい欲情するといった艶やかな場面がありました。
NHKの人形劇から『火宅』や『死者の書(遺作)』に至るまで、川本作品の根底に流れるエロさ(下衆な言葉でスミマセン)に私は惹きつけられているのかも知れません。
【今週のその他諸々】
■8/23(月)
『ウルトラQ』第22話「変身」
(ホームシアター:BS4K録画)

今回妙に耳に残るセリフがありました。
由利子「わりかし空想力に乏しいのね。自称SF作家のくせに。」
万城目「こらこら、自称だけ余計だろ」
そういえば万城目淳はパイロットでありSF作家でもあったのでした。
でも、彼が小説を書いてる場面なんて『ウルトラQ』全エピソード中一度もありません。
『ウルトラQ』を「万城目淳というSF作家が書いた短編小説集」と考えると、各エピソードから感じられるある重大な違和感が払拭されるんですよね。
星川航空のパイロットに過ぎない万城目と一平が、どうして怪獣出現から強盗事件に至るまでありとあらゆる怪事件に都合よく首を突っ込むことが出来たのかという疑問です。
主人公に「SF作家」という設定を与えておきながらただの一度も小説執筆シーンを見せなかった金城哲夫チーフライターは、案外そんな裏設定をベースに各話のシナリオを作っていたのかも知れません。
現在の再放送はもう終わりに近づいていますが、次の周回では全話「SF作家万城目淳の作品集」の視点で見返してみようと思っています。
(「まだ見足りんのかい!」と言われそうですが、あと2周くらいは美味しくいただける自信があります)
■8/26(木)
『ブラック・ジャック KARTE8:緑の想い』
(ホームシアター:WOWOWプラス録画)

ロンドンの学校で寮生活を送るアンドリューは、同じ寮に暮らす弟ロレンスの体から木の芽が吹き出しているを見て驚き、ブラックジャックに治療を依頼する。
一方、兄弟の両親が住む南米の村では、道路工事のため村外れの大きな老木が切り倒されることになっていたが、偏屈な老人アルマンドだけはそれをなんとか阻止しようとしていた。
果たしてロレンスの病と老木との関係は?。

私も妻も出崎統監督のOVA版『ブラック・ジャック』のファンなのですが、中でもこの「緑の想い」は妻が一番好きなエピソードとのことです。
何といっても、杉野昭夫さんの描く美少年がタップリ拝めるとあって、かつて筋金入りの腐女子出崎・杉野アニメファンだった妻には最高の一本のようです(笑)。

本作では道路のコース変更は果たせませんでしたが、日本の場合は木を避けて道路を敷くことが多い気がします。
日本各地で道路の真ん中に堂々と巨木が生えているその両隣を人や車が通っている風景をよく見かけます。
明治・大正・昭和(初期)の日本人は何百年も生きた樹木には神様が宿っていると信じていて、樹齢何百年というようご神木をどうしても切ることが出来なかったのでしょう。

実は、我が福井県にもそうした大木がそのまま残ってる道路があるのですよ。
丹生郡越前町を通る県道104号線のど真ん中にそびえ立っている千足杉です。
ここは昔、この街道の休憩ポイントになっていて、多くの旅人が草履を履き替えたという場所でした。
そしていつしか、「脱いだ古い草鞋を放り上げてそれが杉の木の枝にひっかかれば旅の安全が保障される。」という妙なジンクスが生まれて、そこから「千足杉」の名が付いたそうです。
確かに、旅の安全を祈願する木を道路拡張のために切り倒すわけにはいきませんね(笑)。

福井では現在、北陸新幹線の延線工事が進められています。
道路であれば多少の迂回くらいは可能ですが、新幹線は直線なので一本の木だけを特別に避けて通るわけにはいきません。
北陸新幹線はルート上の土地買収にずいぶん難儀したと聞いたことがありますが、もしかするとどこかで「ご神木を切るな!」などといった地元民の巨樹信仰や山岳信仰に阻まれたのかも知れません。
■8/27(金)
『マジンガーZ』
(居間49インチ液晶テレビ:東映チャンネル録画)

第39話「捨身の挑戦!真紅の海のサルード」
前回の予告編では「ブロッケン伯爵登場」と言っていたはずなのに、タイトルにはなぜかあしゅら男爵の乗艦サルードの名前しか書かれていません・
実際にはブロッケン登場によって立場が無くなって焦るあしゅら男爵の話で、ブロッケンが戦闘指揮を執るのは次回からです。

第40話「悪魔の支配者 ブロッケン伯爵」
この回からオープニング映像が変更。
主題歌は同じだがまるで印象が違う。
前期オープニングは歌詞の「天空(そら)にそびえる黒鉄の城」の部分を具体化したもので重量感あふれるものだった。
しかし、後期では「無敵の力は僕らのために」の歌詞そのままにマジンガーZの滅茶苦茶な強さをアピールしたものになっています。
ロケットパンチ一発で4体の機械獣の腹をブチ抜き、ブレストファイヤーで6体一度に消滅させてしまう。
まさにマジンガー無双!。
今見てもこの血沸き肉躍る感は凄いです。
多分、子供の頃は魂を抜かれたみたいに呆けた顔して見ていたんだろうなあ~。
■8/28(土)
『ウルトラマン80』
(ホームシアター:ファミリー劇場録画)

第43話「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」
ユリアン登場編。
いや、それ以上に重要なことは、番組開始時からのレギュラーにしてヤマトの恋人にまで昇格した城野エミ隊員の殉職回ということです。
それなのに、彼女の死よりユリアン登場を優先したタイトルはいかがなものか?。
これではまるで新女性レギュラーのユリアンにエミが押し出されたみたいにしか見えません。
円谷一さん亡き後の円谷プロはキャラクターの扱いが冷淡だな~とつねづね感じていたのですが、『80』の時代でもそれは変わっていなかったようです。

ただ、実際の降板理由は城野エミ役の石田えりさんが自ら望んだためらしいです。
周囲の人に「ウルトラに最後まで出演すると大成しない」と聞かされて、それを気にして自分から降板を申し出たのだそうです。
誰だ!。
そんな根も葉もない噂を吹き込んだバカは!?。

まあ、それはそれとして・・・。
最後にエミ隊員の豊満なおムネを瞼に焼き付けられただけ良かったです\(//∇//)\
それにしても・・・このサイズ差!。
失ったモノの大きさを改めて思い知らされるショットであります。
第44話「激ファイト! 80vsウルトラセブン」

見ていて実に不愉快な回でした。
弟のサッカーチームを勝たせようと練習中のライバルチームをバイクで襲撃する暴走族。
嫌がらせ程度ならまだしも、重傷を負ったナオト少年に「とどめを刺してやる」と本当に轢き殺そうとします。
ここまで来たらもはや殺人未遂です。

暴走族に重傷を負わされた少年の怨念がセブン人形に乗り移り、自分を襲った暴走族ども殺そうと追い回します。
あれ?、こんなシチュエーションを前にもどこかで見たような?。
・・・思い出した!

『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』のハヌマーンです!(笑)。

自慢じゃないですが、実は私、この映画を劇場で見たことがあるのですよ。
『ウルトラマン80』開始直前の’80年春、湯浅憲明監督(『80』チーフ監督)の『宇宙怪獣ガメラ』と一緒に劇場公開されていて、それでハヌマーンの悪夢がまだ強烈に残っていたのでした。

ハヌマーンは仏像泥棒を食い止めようとして殺された信心深い少年の仇を討つため、悪党どもを(正義のヒーローらしからぬ邪気に満ちた方法で)皆●しにしてしまいます。
あれをウルトラセブンで再現しようとしているのかと心配になってしまいました(汗)。

最後、UGM隊員にすがりついて詫びる暴走族たち。
お前ら、謝る相手が違うだろ!。
こいつらがナオト君に直接謝罪する場面が無ければ全く納得いきません。
【今週のトピック】
ここ一週間ほどの間に、私にとって忘れ難い3人の俳優さんの訃報が立て続けに公表されました。
(以下の順番は公表順)

先週日曜(19日)に亡くなられた千葉真一さん。
『キイハンター』が有名ですが、当時福井には系列局が無かったため残念ながら見たことはありません。
その後もヤクザ映画のイメージがあったためか縁遠い存在だったのですが、カレーのCMと『宇宙からのメッセージ』の宇宙版柳生十兵衛
そして、高校生のとき劇場で観た『戦国自衛隊』の伊庭義明三等陸尉のカッコ良さにシビれました。
コロナ感染が原因だったそうですが、こんなことさえなければまだまだ活躍されていたはずだと思います。

先週土曜日(18日)には辻萬長さんがご逝去されています。
最初は市川崑監督の金田一シリーズの加藤武さんの部下役でなんとなく存在は知っていた程度でした。
しかし、今、私の記憶に強烈に焼き付いているのはやはり『ガメラ2 レギオン襲来』の坂東師団長役です。
「火力をレギオンの頭部に集中しガメラを援護せよ!」
この場面は何度見ても鳥肌が立ちます。
同じ地球に住む者同士として人間とガメラが一つになった瞬間でした。

そして、先日も記事に書かせていただいた『ウルトラマン』のイデ隊員こと二瓶正也さん。
二瓶さんは、十年ほど前から肺気腫を患っていつも酸素チューブを付けて生活しておられたそうです。
実は私の父も晩年同じ病気にかかって常に酸素吸入器を必要としていたのです。
だからどうしても他人事とは思えません。
改めてお三方のご冥福をお祈り申し上げます。
どうか安らかに・・・。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
ただ、今週はひどく忙しくて長尺の映画は一本も見れていません。
その代わりと言ってはなんですが、週末は良質な短編アニメをまとめて堪能しておりました
8/28(土)
『アニメーション作家 川本喜八郎の世界』
(ホームシアター:WOWOWプラス録画)

WOWOWプラスがまたやってくれました!。
日本が世界に誇るべき人形アニメーション作家、川本喜八郎さんと岡本忠成さんの短編作品を4K修復版で放映してくれたのです。
ありがとう、WOWOWプラス!。
契約していて本当に良かった!。

NHKの人形劇「三国志」で川本喜八郎さんの名前は知ってはいましたが、人形アニメ作品を初めて見たのは大学4回生のとき店頭で見たデモ映像に一目惚れして買ったこのレーザーディスクでした。
当時は20インチのブラウン管TVで見ていたのですが、「道成寺」や「火宅」の人形の鬼気迫る表情に思わず身震いしたことを今でもよく覚えています。

2007年頃にはLDを全て処分したため、DVD盤を買い直しました。
LD収録分にその後の作品も追加されていて、晩年の「冬の日」と遺作となった「死者の書」以外は殆ど全ての作品が収録されていたと思います。
このDVDはその後廃盤になりましたが何故かすぐ中古価格が高騰、「どうせそのうちブルーレイ版が出るだろう」と高値で売れるうちにヤフオクで売ってしまいました。
でも、いつまで経ってもブルーレイ化されなくて、DVDを手放したことをず~っと後悔しておりました。

今回の4K修復は、5月から各地で上映されている「アニメーションの神様、その美しき世界」のために行われたもので、これにはWOWOWプラスも出資しているようです。
今回放送されたのは、川本喜八郎さんの初期短編アニメ作品「花折り」「鬼」「詩人の生涯」「道成寺」「火宅」の5本。
これらは「アニメーションの神様、その美しき世界」で上映された内容と同一です。
この上映は隣の石川県でも予定されていて私も見に行きたかったんですが、現在コロナのせいで上映館のシネモンドさんが休館中のため未だに開催の目途が立っていません。
だから、今回の放映は本当に有難いです。
今回の放送は4K素材からダウンコンバートした2K画質です。
それでも十分すぎるほど高精細な映像で、もし服飾関係者が見たら人形の着物の素材さえ分かるんじゃないかと思えるほど細かな部分までよく見えます。
人形の角度と照明を駆使した「光と影」の演出についても、コントラストがはっきりしたことでキャラクターの心情変化が手に取るように分かります。
「花折り」(1968年)

一本目は独立第一作目の「花折り」。
この頃はどちらかといえば岡本忠成さんの作品のような印象もあって、後に確率された作風とはかなり違っています。
「鬼」(1972年)

「花折り」の4年後に作られた「鬼」では、後年の人形劇「三国志」に繋がる馴染み深いイメージの人形が登場します。
光と影の演出もこの時すでに確立されている感があります。
「詩人の生涯」(1974年)

今回唯一の2D(平面)アニメですが、セルアニメではなく切り絵のような方式で作られています。
川本さん自身が体験した東宝争議が下敷きになっているそうですが、制作がオイルショック後の混迷期であったことを考えると高度経済成長期の傲慢な企業経営に対する批判も込められている気がします。
とはいうものの、話が抽象的過ぎて私には今ひとつ理解出来ませんでしたが・・・。
「道成寺」(1976年)

昔LDやDVDで何度も見返した作品です。
この作品にはセリフが一切ありません。
話の流れも人物の心の動きも、全て人形の動き・表情・目線、そして照明と音楽だけで表現しています。
この作品の評価が海外でも非常に高いことも頷けます。

原作は「安珍清姫伝説」
要は「執着心の強いストーカー女に追い回されて挙句は焼き殺されてしまう男の話」なのですけど、映像表現においては今見ても全く色褪せることはありません。
「火宅」(1979年)

1979年といえば『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームの真っ只中で、『機動戦士ガンダム』『銀河鉄道999(劇場版)』『エースをねらえ!(劇場版)』『ルパン三世カリオストロの城』といったアニメの歴史に残る名作が作られた年です。
また、旧い特撮作品にも再びスポットが当たるようになった年でもあり、福井でも『ウルトラマン』から『レオ』まで全ウルトラシリーズが(白黒の『Q』のみ除いて)毎朝再放送されておりました。
当時中3だった私は上記の作品群に夢中になっていて、一般的なアニメとは別次元のこの作品の存在すら知りませんでした。

二人の男に同時に求婚され、決めかねて入水したものの、あの世でも地獄の呵責に櫛見続けているという莵名目処女の物語。
なんとも救いの無い話ですが、この作品では500年後の世の中に莵名目処女の亡霊が表れてその苦しみを旅の僧に打ち明けるという構成になっていて若干なりとも無情さが緩和されている気がします。

今回久し振りに川本喜八郎作品を見返して感じたのは「常に女性が登場する」ことと「妙に官能的な作品が多い」ということでした。
「道成寺」と「火宅」はまさに男と女のドロドロ愛憎劇。
そして「鬼」と「詩人の生涯」には母親が重要な役回りで登場します。
「花折り」には女性は登場しませんが、女装させられた小坊主に和尚がつい欲情するといった艶やかな場面がありました。
NHKの人形劇から『火宅』や『死者の書(遺作)』に至るまで、川本作品の根底に流れるエロさ(下衆な言葉でスミマセン)に私は惹きつけられているのかも知れません。
【今週のその他諸々】
■8/23(月)
『ウルトラQ』第22話「変身」
(ホームシアター:BS4K録画)

今回妙に耳に残るセリフがありました。
由利子「わりかし空想力に乏しいのね。自称SF作家のくせに。」
万城目「こらこら、自称だけ余計だろ」
そういえば万城目淳はパイロットでありSF作家でもあったのでした。
でも、彼が小説を書いてる場面なんて『ウルトラQ』全エピソード中一度もありません。
『ウルトラQ』を「万城目淳というSF作家が書いた短編小説集」と考えると、各エピソードから感じられるある重大な違和感が払拭されるんですよね。
星川航空のパイロットに過ぎない万城目と一平が、どうして怪獣出現から強盗事件に至るまでありとあらゆる怪事件に都合よく首を突っ込むことが出来たのかという疑問です。
主人公に「SF作家」という設定を与えておきながらただの一度も小説執筆シーンを見せなかった金城哲夫チーフライターは、案外そんな裏設定をベースに各話のシナリオを作っていたのかも知れません。
現在の再放送はもう終わりに近づいていますが、次の周回では全話「SF作家万城目淳の作品集」の視点で見返してみようと思っています。
(「まだ見足りんのかい!」と言われそうですが、あと2周くらいは美味しくいただける自信があります)
■8/26(木)
『ブラック・ジャック KARTE8:緑の想い』
(ホームシアター:WOWOWプラス録画)

ロンドンの学校で寮生活を送るアンドリューは、同じ寮に暮らす弟ロレンスの体から木の芽が吹き出しているを見て驚き、ブラックジャックに治療を依頼する。
一方、兄弟の両親が住む南米の村では、道路工事のため村外れの大きな老木が切り倒されることになっていたが、偏屈な老人アルマンドだけはそれをなんとか阻止しようとしていた。
果たしてロレンスの病と老木との関係は?。

私も妻も出崎統監督のOVA版『ブラック・ジャック』のファンなのですが、中でもこの「緑の想い」は妻が一番好きなエピソードとのことです。
何といっても、杉野昭夫さんの描く美少年がタップリ拝めるとあって、かつて筋金入りの

本作では道路のコース変更は果たせませんでしたが、日本の場合は木を避けて道路を敷くことが多い気がします。
日本各地で道路の真ん中に堂々と巨木が生えているその両隣を人や車が通っている風景をよく見かけます。
明治・大正・昭和(初期)の日本人は何百年も生きた樹木には神様が宿っていると信じていて、樹齢何百年というようご神木をどうしても切ることが出来なかったのでしょう。

実は、我が福井県にもそうした大木がそのまま残ってる道路があるのですよ。
丹生郡越前町を通る県道104号線のど真ん中にそびえ立っている千足杉です。
ここは昔、この街道の休憩ポイントになっていて、多くの旅人が草履を履き替えたという場所でした。
そしていつしか、「脱いだ古い草鞋を放り上げてそれが杉の木の枝にひっかかれば旅の安全が保障される。」という妙なジンクスが生まれて、そこから「千足杉」の名が付いたそうです。
確かに、旅の安全を祈願する木を道路拡張のために切り倒すわけにはいきませんね(笑)。

福井では現在、北陸新幹線の延線工事が進められています。
道路であれば多少の迂回くらいは可能ですが、新幹線は直線なので一本の木だけを特別に避けて通るわけにはいきません。
北陸新幹線はルート上の土地買収にずいぶん難儀したと聞いたことがありますが、もしかするとどこかで「ご神木を切るな!」などといった地元民の巨樹信仰や山岳信仰に阻まれたのかも知れません。
■8/27(金)
『マジンガーZ』
(居間49インチ液晶テレビ:東映チャンネル録画)

第39話「捨身の挑戦!真紅の海のサルード」
前回の予告編では「ブロッケン伯爵登場」と言っていたはずなのに、タイトルにはなぜかあしゅら男爵の乗艦サルードの名前しか書かれていません・
実際にはブロッケン登場によって立場が無くなって焦るあしゅら男爵の話で、ブロッケンが戦闘指揮を執るのは次回からです。

第40話「悪魔の支配者 ブロッケン伯爵」
この回からオープニング映像が変更。
主題歌は同じだがまるで印象が違う。
前期オープニングは歌詞の「天空(そら)にそびえる黒鉄の城」の部分を具体化したもので重量感あふれるものだった。
しかし、後期では「無敵の力は僕らのために」の歌詞そのままにマジンガーZの滅茶苦茶な強さをアピールしたものになっています。
ロケットパンチ一発で4体の機械獣の腹をブチ抜き、ブレストファイヤーで6体一度に消滅させてしまう。
まさにマジンガー無双!。
今見てもこの血沸き肉躍る感は凄いです。
多分、子供の頃は魂を抜かれたみたいに呆けた顔して見ていたんだろうなあ~。
■8/28(土)
『ウルトラマン80』
(ホームシアター:ファミリー劇場録画)

第43話「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」
ユリアン登場編。
いや、それ以上に重要なことは、番組開始時からのレギュラーにしてヤマトの恋人にまで昇格した城野エミ隊員の殉職回ということです。
それなのに、彼女の死よりユリアン登場を優先したタイトルはいかがなものか?。
これではまるで新女性レギュラーのユリアンにエミが押し出されたみたいにしか見えません。
円谷一さん亡き後の円谷プロはキャラクターの扱いが冷淡だな~とつねづね感じていたのですが、『80』の時代でもそれは変わっていなかったようです。

ただ、実際の降板理由は城野エミ役の石田えりさんが自ら望んだためらしいです。
周囲の人に「ウルトラに最後まで出演すると大成しない」と聞かされて、それを気にして自分から降板を申し出たのだそうです。
誰だ!。
そんな根も葉もない噂を吹き込んだバカは!?。

まあ、それはそれとして・・・。
最後にエミ隊員の豊満なおムネを瞼に焼き付けられただけ良かったです\(//∇//)\
それにしても・・・このサイズ差!。
失ったモノの大きさを改めて思い知らされるショットであります。
第44話「激ファイト! 80vsウルトラセブン」

見ていて実に不愉快な回でした。
弟のサッカーチームを勝たせようと練習中のライバルチームをバイクで襲撃する暴走族。
嫌がらせ程度ならまだしも、重傷を負ったナオト少年に「とどめを刺してやる」と本当に轢き殺そうとします。
ここまで来たらもはや殺人未遂です。

暴走族に重傷を負わされた少年の怨念がセブン人形に乗り移り、自分を襲った暴走族ども殺そうと追い回します。
あれ?、こんなシチュエーションを前にもどこかで見たような?。
・・・思い出した!

『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』のハヌマーンです!(笑)。

自慢じゃないですが、実は私、この映画を劇場で見たことがあるのですよ。
『ウルトラマン80』開始直前の’80年春、湯浅憲明監督(『80』チーフ監督)の『宇宙怪獣ガメラ』と一緒に劇場公開されていて、それでハヌマーンの悪夢がまだ強烈に残っていたのでした。

ハヌマーンは仏像泥棒を食い止めようとして殺された信心深い少年の仇を討つため、悪党どもを(正義のヒーローらしからぬ邪気に満ちた方法で)皆●しにしてしまいます。
あれをウルトラセブンで再現しようとしているのかと心配になってしまいました(汗)。

最後、UGM隊員にすがりついて詫びる暴走族たち。
お前ら、謝る相手が違うだろ!。
こいつらがナオト君に直接謝罪する場面が無ければ全く納得いきません。
【今週のトピック】
ここ一週間ほどの間に、私にとって忘れ難い3人の俳優さんの訃報が立て続けに公表されました。
(以下の順番は公表順)

先週日曜(19日)に亡くなられた千葉真一さん。
『キイハンター』が有名ですが、当時福井には系列局が無かったため残念ながら見たことはありません。
その後もヤクザ映画のイメージがあったためか縁遠い存在だったのですが、カレーのCMと『宇宙からのメッセージ』の宇宙版柳生十兵衛
そして、高校生のとき劇場で観た『戦国自衛隊』の伊庭義明三等陸尉のカッコ良さにシビれました。
コロナ感染が原因だったそうですが、こんなことさえなければまだまだ活躍されていたはずだと思います。

先週土曜日(18日)には辻萬長さんがご逝去されています。
最初は市川崑監督の金田一シリーズの加藤武さんの部下役でなんとなく存在は知っていた程度でした。
しかし、今、私の記憶に強烈に焼き付いているのはやはり『ガメラ2 レギオン襲来』の坂東師団長役です。
「火力をレギオンの頭部に集中しガメラを援護せよ!」
この場面は何度見ても鳥肌が立ちます。
同じ地球に住む者同士として人間とガメラが一つになった瞬間でした。

そして、先日も記事に書かせていただいた『ウルトラマン』のイデ隊員こと二瓶正也さん。
二瓶さんは、十年ほど前から肺気腫を患っていつも酸素チューブを付けて生活しておられたそうです。
実は私の父も晩年同じ病気にかかって常に酸素吸入器を必要としていたのです。
だからどうしても他人事とは思えません。
改めてお三方のご冥福をお祈り申し上げます。
どうか安らかに・・・。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
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