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映画と日常

ゴジラシリーズ全作品レビュー25 『ゴジラxメガギラス-G消滅作戦-』(2000年)

トガジンです。

前回の『ゴジラ2000』から1年10ヶ月振りとなるゴジラ全作品レビュー。
今回は国産24作目(海外作品も含めると25作目) 『ゴジラxメガギラス-G消滅作戦-』です。

『ゴジラxメガギラス-G消滅作戦-』ポスター画像(コラージュタイプ)

この映画、公開前は全くのノーマークでした。

なぜならば。
その頃の私は公私ともに難儀があり過ぎてとてもじゃないが映画どころではなかったのです。



【平成12年(西暦2000年)】
この年の12月、私は大学に進学して以来約18年と9ヶ月の間住んだ大阪を離れ福井の実家にUターンすることになりました。

きっかけは父の病気でした。
肺に癌が見つかったのです。
幸い転移は無かったものの、父はかなり弱気になっていました。
手術後見舞いに行ったとき、父の口から「お前は長男なんだからもうそろそろ帰って来てくれや」と直接言われてしまったのです。
都会(大阪)で好きな仕事に就いて実家を顧みようともしなかった私も、さすがにこれには気持ちが揺らぎました。

また、私自身も仕事や今後の人生設計について悩んでおりました。
1995年の阪神淡路大震災以降、他人様の不幸を面白おかしく伝えようとするワイドショーの仕事が増えてしまったのです。
東京キー局の仕事なのでギャラは良いのですが、肉親を亡くされて悲しんでいる方々や住む家を失って途方に暮れている被災者の皆さんに「今のお気持ちは?」「ひと言お願いします」などと無神経にマイクを突き出す連中との仕事が心底嫌になっていました。
その後「酒鬼薔薇事件」や「和歌山ヒ素カレー事件」などにも駆り出され、その度に「自分が好きでやっているこの仕事は本当に他人様のお役に立っているのだろうか?」と自分の仕事に懐疑的になっていたのです。

また、数年前から結婚を前提に付き合っていた女に裏切られて生活もかなり乱れていました。
それで「ここらが潮時か・・・」と福井の実家に戻ることを決めたのです。
年末は仕事の引継ぎや引っ越し準備、そしてお世話になった人たちへの挨拶回りなど忙しい毎日を送っておりました。



【初見】
『ゴジラxメガギラス』割引券
『ゴジラxメガギラス-G消滅作戦-』を観たのは、仕事の引継ぎや引っ越し準備、そしてお世話になった人たちへの挨拶回りがひと段落ついた頃でした。
劇場はナビオ阪急内にあった梅田劇場です。
日付は覚えていませんが、五月蠅いガキんちょとかち合わないよう小中学校が冬休みに入る前に見たのは確かです。

ただ、この時は特にゴジラ映画最新作を楽しみにしていたわけではありません。
あくまでも気分転換や暇つぶしに見に行ったに過ぎませんでした。
あの時の私は、前述した女性とのいざこざのせいで生活も気持ちも荒れていて、あれほど好きだった怪獣映画にもまるで興味が湧かなくなっていたのです。
最初『ゴジラxメガギラス-G消滅作戦-』などというまるでプロレスの宣伝文句みたいなタイトルを聞いたときも「フン」と鼻で笑っておりました。

しかし!
『ゴジラxメガギラス』01ゴジラ初襲来
この映画は、疲れ切っていた当時の私を子供の頃から好きだった怪獣映画の世界にぐぃと引き戻してくれました。

確かに、最初のうちは珍妙で無駄の多いストーリーにいちいち突っ込み入れながら見ておりました。
しかし、開始後5分くらいでこの映画はマンネリ化した以前の平成ゴジラとは一線を画す作品であると気付いたのです。



【音楽の魅力】

『ゴジラxメガギラス』が私の気持ちを捕らえた最大のポイント。
それは大島ミチルさん作曲の音楽でした。
大坂にゴジラが上陸するシーンに流れる新しいゴジラのテーマ曲に全身がビビッときたのです。

どどん、どどん、どどどん、と徐々に近づいてくるゴジラの足音を表現する重低音、更にそこからゆっくりと闊歩するゴジラのイメージが重量感豊かに続きます。
伊福部先生のオリジナルから大島さん作曲の新しいテーマ曲へとバトンタッチするかのような使われ方もされていて、伊福部音楽の呪縛から解き放たれて新しいゴジラ音楽へと移行していきます。
もちろん伊福部先生の楽曲に較べると若干軽く感じますが、戦争や自然災害のメタファーという意味を失った平成の怪獣たちにはこれくらいがちょうど良いのかも知れません。

作曲家:大島ミチルさんとゴジラ
以前から大島ミチルさんのお名前は知っていましたが、失礼ながらこれほど骨太な楽曲が書ける方だとは思っていませんでした。

過去、伊福部昭先生以外にも佐藤勝先生やすぎやまこういち先生や服部隆之先生といった超一流の作曲家たちがゴジラの音楽を担当されていました。
もちろんそれぞれの楽曲が単独で使われている間は独自の世界観を醸し出していますが、そこに1シーンだけでも伊福部先生の曲が使われた途端「やっぱゴジラの音楽はこれだよな~」と他の作曲家の音楽の印象が全て霞んでしまうのです。

ところが、大島さんの音楽には伊福部音楽に勝るとも劣らない力強さがありました。
『ゴジラxメガギラス』にも一部伊福部楽曲が使われた部分がありますが、大島さんの音楽は伊福部先生の音楽に食われてしまうことは一切無く、むしろ「全編を大島さんの楽曲で通して欲しかった」と残念に思ったくらいです。

CD 『ゴジラxメガギラス』
映画鑑賞後、即サントラCDを買って帰ったことは言うまでもありません。

CD ミレニアムゴジラ4作品
実は私、『メガギラス』だけでなく大島さんが担当したゴジラ映画のサントラは3枚とも持っています。
褒める人があまりいない「ミレニアムシリーズ」ですが、少なくとも音楽に関してはもっと評価されていいと思っています。


私が大島ミチルさんの音楽を知ったのは、’90年代にフジテレビで放映されていた『ワーズワースの庭で』という番組のテーマソング「シャ・リオン」が最初でした。
番組終了後もあのノスタルジックな曲調が忘れられず、シングルCDが出たときは速攻で買ったほどです。

CD『ワーズワース』
『ワーズワースの庭で』とその続編『ワーズワースの冒険』は、物事に対するアプローチや絵作りが非常に独特かつハイセンスな番組でした。
例えば、ただの有名観光地をまるで異世界のように見せてくれたり、父親の主観映像(画面に登場するのは娘だけで父親はアフレコのセリフのみ)で親子二人旅を描いて見せたりと斬新な演出が続出していました。
今のTV局があの頃のセンスを取り戻してくれることを願います。



【現実と虚構】
『ゴジラxメガギラス』40救助
公開当時、水没した街から市民が救命ボートで非難する場面に強い既視感を覚えました。

なぜならば・・・。

2000年東海豪雨
2000年9月
秋雨前線と台風が重なった影響で東海地方は豪雨に見舞われ、大規模な内水氾濫により名古屋市の約4割が浸水するという未曾有の大水害が発生しました。
東海地方(静岡・岐阜・愛知・三重)で合わせて10人が死亡。
家屋全半壊200棟以上、床上床下浸水は約7万棟、経済的被害は2700億円以上という甚大な被害を出しました。

2000年東海豪雨 救助
その時、私たちは自衛隊がボートを使って住民を救助するところをTVニュースや新聞で何度も目にしていたのです。

それからわずか3ヶ月後に公開された『ゴジラxメガギラス』にあの東海豪雨を彷彿とさせる場面があったことに驚きました。
制作途中で急遽あの東海豪雨を作品に取り入れたのでしょうか?。
あるいはただの偶然だったのか?。
いずれにせよ、水害救助シーンのリアリティが強まったことがこの映画の腰骨を強くしたことは間違いありません。



【七代目ゴジラ監督】
手塚昌明監督
手塚昌明監督は幼少時に『キングコング対ゴジラ』を見て以来のゴジラ好きであり、「自分はゴジラを撮りたいがために東宝に入った」とまで言っておられた方です。
確かに『ゴジラxメガギラス』の画面の端々から「俺は今、怪獣映画を作ってるんだ!」という喜びがほとばしり出ていました。
それは手塚監督と同じく怪獣映画を作りたくてたまらなかった金子修介監督や樋口真嗣監督が平成『ガメラ』シリーズで発していたものと同じ陽のオーラだったと思います。
同じ東宝の社員監督である橋本幸治監督の『84ゴジラ』や大河原孝夫監督のVSシリーズと『2000』に垣間見える「やらされてる感」は一切なく、怪獣映画に対する思い入れ(愛とも云う)の強さがまるで違っていました。



【俳優さん】
『ゴジラxメガギラス』辻森桐子
主人公は、尊敬していた上官を殺された憎しみをゴジラに向け続けるGグラスパー隊長辻森桐子
演じたのは第4回東宝シンデレラオーディション出身の田中美里さん。

辻森はゴジラシリーズ初の女性主人公です。
過去にはVSシリーズ6作品に連続登場した三枝未希(演:小高恵美)や、メカキングギドラを操縦して主役の男性(演:豊原功補)を完全に食ってしまったエミー(演:中川安奈)などもいましたが、本当の意味でゴジラ映画の主役を務めたのは本作の辻森と『ゴジラxメカゴジラ』の家城茜(演:釈由美子)の二人だけです。

【星由里子さん】
『ゴジラxメガギラス』20科学者役
ブラックホール兵器開発の女性科学者役に往年の名女優:星由里子さん。
特撮映画への出演は『モスラ対ゴジラ』『地球最大の決戦』のほかごく数本しかなく、その後は特撮とは距離を置いておられたイメージがありましたが今回36年ぶりのゴジラ映画出演となりました。
ただ、星さんについては『モスゴジ』『地球最大の決戦』『世界大戦争』の庶民的なイメージが強いせいか、クールな科学者役はあまり向いていなかった気もします。

【加藤茂雄さん】
『ゴジラxメガギラス』加藤茂雄さん
この映画を見るたび必ず目が止まる一つのカットがあります。
辻森にスカウトされた工藤が初めてGグラスパー基地に入るシーンで、年老いた警備員が満面の笑顔で迎えてくれるのですがなぜかその警備員がいきなり単独1ショットで映るのです。

この警備員を演じたのは、初代『ゴジラ』や『七人の侍』の時代から東宝大部屋俳優の一人として数多くの作品に出演されてきた加藤茂雄さんという方です。
加藤さんは70年代に東宝が専属俳優制度を廃止した後も地元で家業の漁師をしながら俳優活動を続けてこられました。
映画だけでなく『ウルトラ』シリーズなどにも数多く出演されていて、私たち特撮ファンには馴染み深い俳優さんのお一人です。

しかし、この加藤さんの笑顔のアップはこの映画全体において全く必要のない絵です。
そればかりか、観客に「このおじさん誰?」「このあと重要な役割を果たす人?」など余計な疑問や誤解を生んでしまう危険性もあります。

それでも手塚監督はあえて加藤さんの1ショットを挿入しました。
元々熱烈なゴジラファンだったという手塚監督は、昭和ゴジラシリーズのほとんどに出演してきた加藤さんに敬意を表してあのシーンを作ったに違いないと思うのです。
それは(作劇としての賛否は別として)私のような昭和の特撮映画ファンにとって実に粋な計らいでした。
この1シーンだけでも手塚監督が特撮映画に対して深い愛着と敬意を持っていると感じます。

『ゴジラxメガギラス』56最後まで芝居がクサい
役者さんの演技は全員100点満点!といきたかったのですが、一人だけ妙に演技がクサくて浮いてる人がいました。
もう一人の主人公、若くてチャラい天才科学者:工藤元を演じた谷原章介さんのことです。
現在の谷原さんは俳優以外にも歌謡番組の司会や朝の情報番組のMCなど多岐にわたってご活躍中(しかもいずれも評価が高い!)ですが、21年前の彼の演技はいちいち大げさ過ぎて当時のCGと同じくらい周囲から浮いて見えました。



【採点】
『ゴジラxメガギラス』タイトル
役者さんの演技は(一人を除いて)100点満点。
映像表現はCGの不自然さを減点して75点!。
そして、音楽とゴジラ愛はどちらも300点!!。

でも・・・。
『ゴジラxメガギラス』07閣議紛糾
シナリオは0点だ!

基本設定にまるで筋が通っておらず、登場人物たちへの配慮も行き届いていない稚拙な脚本です。
以下は『ゴジラxメガギラス』のシナリオ批判が続きます。



【消された歴史】
『ゴジラxメガギラス』02ゴジラ東京を襲う
ミレニアムシリーズは『ゴジラの逆襲』から続く昭和シリーズ14作品と84年版『ゴジラ』からのVSシリーズ7作品全てを無かったことにして、一作ごとに昭和29年の『ゴジラ』一作目から直接続く第2話として作られています。
ところが、前作『ゴジラ2000』ではその基本概念をきちんと説明しないまま話を進めたため、多くの観客が『ゴジラvsデストロイア』の続編と勘違いしていたように思います。
(少なくとも私の周囲にはそう思い込んでいた人が多かったです)
そのため、『ゴジラxメガギラス』は冒頭で基本設定をハッキリさせておこうとこの場面を作ったものと思われます。

ところが、(最初見たときは気付かなかったのですが)よく見ると東京を焦土と化したゴジラが海に去っていくところまでしか描かれておらず、ナレーションにも「化学兵器でゴジラを消滅させた」といった解説は一切ありません。
つまり、この時間軸の世界に芹沢博士は存在しなかった(あるいは最後までオキシジェン・デストロイヤー使用を拒んだ)ということであり、『ゴジラxメガギラス』に登場するゴジラは昭和29年に東京上陸した個体と同一ということになります。
だからわざわざ昭和29年のモノクロ映像にギザギザ背びれのミレゴジをはめ込んで歴史をリブートしていたわけです。

しかし、これでは一作目を全否定したも同然ではないでしょうか?。

『ゴジラ』より 芹沢博士
自らが作り出してしまった原水爆に代わる大量殺戮兵器:オキシジェン・デストロイヤーとともに核の落とし子ゴジラと刺し違えた芹沢博士。
このシナリオはそんな芹沢の苦悩も覚悟も全て闇に葬ってしまいました。
「ゴジラが存在する世界」を昭和29年の時点まで遡って再構築したかった気持ちは分かりますが、だからといって1作目の結末を無かったことにするのはいかがなものかと思います。

『ゴジラxメガギラス』23発射!
ゴジラの歴史から無かったことにされたオキシジェン・デストロイヤーに代わり、本作に新しく登場するのがディメンション・タイド。
人為的にブラックホールを作り出してゴジラを吸い込ませてしまうというものですが、それって原子力よりよっぽど危険じゃないのか?って思います。

ディメンション・タイドが大量殺戮兵器として使われる可能性はきちんと描くべきでした。
一応、「ディメンション・タイドもブラックホール生成技術もゴジラ消滅に成功後破棄する」という口約束は語られていましたが、ほんの短いシーンだっためほとんど印象に残りません。

『ゴジラxメガギラス』19演技がクサい
しかも、ディメンション・タイド開発の中心にいるのがこんな軽薄そうな若造だったりなんかします。
これではゴジラ史から抹消されてしまった芹沢博士が浮かばれません。



【エネルギーの謎】
『ゴジラxメガギラス』04東海原発襲撃
(作品世界における)1966年。
12年ぶりに出現したゴジラにより東海村の原子力発電所が破壊されたことを受け、日本政府は重大な決定を下します。

『ゴジラxメガギラス』06原電永久放棄
「全ての原子力発電を永久放棄」
この時点から、この映画は我々の知るこれまでのゴジラ世界や現実世界とは全く異なる別のユニバースへと移行します。

しかし、ちょっと待っていただきたい。
確かにそれはチェブノルイリや福島で原発事故の恐ろしさを知ってしまった人類にとっては理想的なお話ですが・・・。

1964東京オリンピック開会式
では、この作品世界の日本は60年代から70年代にかけての高度経済成長や東京オリンピック・大阪万博など国際イベントを支える膨大なエネルギーをどう賄っていたのでしょうか?。
それに、台風被害や震災の復興も原発の電気エネルギー無しでは現実よりもっと長い歳月が必要なはずです。

ナレーションで「火力・水力・ソーラー・風力では原発エネルギーを補うには至らなかった」と解説していました。
30年間もエネルギー不足に悩まされているのなら、日本は北●鮮のように貧しい国になっているかと思いますが、後半出てくる東京の風景を見た限りでは現実と同じような経済発展を経験してきたようにしか思えません。

このシナリオからは、SFに不可欠なifの世界とか裏設定といったものが何一つ読み取れないのです。

福井県の原発地帯
特に原発立地県である福井に生まれた私としては「原発永久放棄」という設定を看過するわけにはいきません。

賛否両論ありますが、かつては道路整備もままならない貧しい漁村地帯が原発誘致によって人並みの生活が出来るようになったことは確かです。
『ゴジラxメガギラス』の世界における我が福井県は今もまだ貧しいままなのでしょうか?。
せめて破棄された原発誘致計画の代わりにプラズマエネルギー研究所を福井に作ったという設定にしてもらいたかったです。

「たかが子供向けの怪獣映画に何を目くじら立てているんだ?」と笑われるかも知れません。
しかし「たかが怪獣映画」だからこそ上手に嘘をついて欲しいのです。
優れたSF作品というものは画面やセリフに現れない部分まで裏設定が綿密に作り込まれているものです。
だからこそ物語に一本筋が通って、画面上では描かれていない部分も観客が想像しながら楽しむことが可能になるのです。

そこがまるで書けていないから、このシナリオは0点です。



【首都大阪】
『ゴジラxメガギラス』09首都大阪
ゴジラシリーズの2作目はどれも必ず大阪が舞台になっています。
昭和30年の第2作『ゴジラの逆襲』然り。
リブート版『84ゴジラ』から続く『ゴジラvsビオランテ』然り。
そしてミレニアムシリーズ第2弾の本作も大阪が重要な舞台として登場します・・・が。

『ゴジラxメガギラス』14ゴジラ大阪に”初”襲来
本作における大阪の扱いは実に中途半端なものでした。

冒頭では「昭和29年のゴジラ襲来で首都機能を失った東京に代わり大阪が新しい首都になった」と説明されています。
1996年にその首都大阪のど真ん中で原子力に代わるプラズマクリーンエネルギーの開発が始まり、そこを狙ったゴジラが今度は大阪を襲撃します。

『ゴジラxメガギラス』10大阪市のど真ん中!
政府はどうしてエネルギー開発施設などという危険な施設を首都(大阪)のど真ん中になんか作ったのでしょうか?。
それは原子力発電所や高速増殖炉を東京のど真ん中に作るのと同じことです。
「ゴジラに大阪を襲撃させたい」というストーリー上の都合でそう設定したのだろうと思いますが、こんなことは現実的には断じてあり得ない話です。
これだけ見ても、この脚本家の頭の悪さとSFセンスの欠如が伺い知れます。



『ゴジラxメガギラス』17舞台はなぜか東京へ
大阪のプラズマエネルギー研究所がゴジラに襲われてから5年後、舞台は何の説明もないまま突然東京・秋葉原に切り替わります。
これ以降、「大阪が首都」という設定はうやむやにされ、いつも通り東京中心にストーリーが進行していきます。

私は生まれは福井ですが、大学進学から18年間大阪に住んで「大阪は第2の故郷」と思っているくらいなのでこれは本当に残念な展開でした。

冒頭で語られた「首都を大阪に移して」云々という話は一体何だったのでしょうか?。
以後のストーリーも大阪を舞台に進めるのが当然で、このシーンは秋葉原ではなく日本橋でんでんタウンであるべきです。

ひっかけ橋
仮に全編大阪が舞台になったとして・・・。
大阪で東京の渋谷に相当する場所となるとやはり難波でしょうか?。
ミナミが水没して腰から下が水に浸かったグリコ男がガイラみたいに見えるとか、かに道楽の巨大カニが水面から怪獣みたいに顔を出してるといった画を見たかったです(笑)。



【少年の罪】
『ゴジラxメガギラス』22実験場
Gグラスパーの対ゴジラ兵器:ディメンションタイドの実験場となった廃校。

『ゴジラxメガギラス』25遭遇
ここで第3の主人公:早坂淳くんが登場し、小学生男子の視点が加わります。
偶然ブラックホール兵器の実験を目撃してしまった彼は、その後現場でメガヌロンの卵を発見し持ち帰ります。

『ゴジラxメガギラス』25不法投棄
徐々に巨大化する卵に恐れを抱いた淳くんは、なんと、それを引っ越した先の東京の下水に捨ててしまいます。
(しかもバレないようにしっかり蓋を閉めて逃げ去っている)

彼のこの行動が後の東京水没に繋がります。
確かに元を正せば原因はディメンション・タイドのせいで次元の穴が開いたことですが、子供とはいえ彼にあのような行動をとらせたことに問題があると感じます。

あれでは淳くんは一生罪の意識に苛まれることになってしまいます。
せめて、「淳くんが自分の意思で捨てたのではなく、何らかの不可抗力で下水道に落としてしまった」といった展開に出来なかったものでしょうか?。
脚本家の配慮の無さに腹が立って仕方ありません。



【それでも大好き『ゴジラxメガギラス』】
BD 『ゴジラxメガギラス』
ここまで散々ディスっておきながら言うのもなんですが(笑)、実は私、この『ゴジラxメガギラス』は全ゴジラ映画の中でもかなり好きなほうだったりします。
大島ミチルさんの音楽の心地良さ、そして画面からほとばしり出る手塚監督の怪獣映画愛を肌身で感じられるからです。

『ゴジラxメガギラス』57手塚監督
ラストシーンにはヒッチコックみたいに手塚監督ご自身も先生役でカメオ出演していらっしゃいます。
エキストラの一人として『シン・ゴジラ』に参加した私には、監督のお気持ちが分かる気がします。
それは「自分もゴジラ世界の一部になりたい」という手塚監督の想いの現れに違いありません。

BD『GMK』
次回のゴジラ全作品レビュー26は金子修介監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』になります。
ただ、これは好き過ぎてどこからどう書いていいか悩みまくってるところで、完成はいつになるか分かりません(笑)。

でも、その前に同じ金子修介監督の平成ガメラ三部作を自分なりに整理しなければ!。
そこを乗り越えなければ『GMK』にはたどり着けない気がしています。


長文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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COMMENTS

4 Comments

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ゾンビマン  

毎度です。

私も平成ゴジラシリーズでの大島ミチルさんの音楽は大好きです。
ビオランテの時のすぎやまこういちさんも最高でしたが。
私は生まれて初めて観た映画が「地球最大の決戦」なので、一番最初に意識した異性が星由里子さんかもしれません。

2021/12/16 (Thu) 21:17 | EDIT | REPLY |   

トガジン  

ゴジラ映画を彩った女性たち

ゾンビマンさん、コメントありがとうございます。

>大島ミチルさんの音楽

今回写真撮影のため久し振りにCDを引っ張り出したんですが、そのまま聴きながらこの記事を仕上げてました。
出撃シーンの高揚感とかクライマックスの盛り上げの上手さとか、(失礼ながら)本当に女性が書いた曲とは思えないくらいのパワフルさでした。
それでいて女性らしい優しいメロディラインもあって聴いていて飽きないです。
現在も劇伴音楽の第一線で活躍されていますが、いつかまた特撮怪獣映画に楽曲を作っていただきたいです。

>星由里子さん

私は『世界大戦争』の婚約者とはなればなれになる町娘役の星さんがチャーミングで一番好きです。
怪獣出現とか核戦争勃発とかの異常事態を一般市民目線で見させてくれる女優さんでした。

2021/12/17 (Fri) 05:29 | EDIT | REPLY |   

へろん  

ゴジラシリーズはあまり詳しく追ってなかったのですが、原発放棄とか首都大阪とか、ずいぶんと「面白い」ネタを扱ってるんですね。しかしなかなか扱いが難しいですから、シナリオは厳しくなりますよね(^^;)

>上手に嘘をついて欲しい
はまったく同感です。

かに道楽の巨大ガニが水没するシーンは見てみたですね……(笑)
あとはやっぱり太陽の塔がゴジラに……?

2021/12/18 (Sat) 18:04 | EDIT | REPLY |   

トガジン  

お世辞にも上手いとは言えませんが・・・

へろんさん、コメントありがとうございます。

『ゴジラxメガギラス』は設定でかなり思い切った冒険をしていたと思うんですが、シナリオにまとめる時間が無かったのか脚本家にセンスが無かったのかどの要素も中途半端になってしまったのが残念です。
でも、手塚監督はこの作品の反省を踏まえつつ次作『ゴジラxメカゴジラ』でまた新しいことに挑戦しておられます。
よほど怪獣映画が好きでなければあんな前向きにはなれないと思うので、今でも手塚監督のゴジラ3作品は大好きです。

太陽の塔・・・。
内部見学に行って万博の時代に思いを馳せてからもう3年も経ちました。
(へろんさんも行かれたのですよね)

次に日本でゴジラが作られるときは是非大阪に誘致してほしいですね。
りんくうゲートタワーとか咲洲コスモタワーとか阿倍野ハルカスとか、大阪にも壊し甲斐のあるデカい建物が増えましたから(笑)。
そして自衛隊は通天閣に指揮所を構えて、太陽の塔の反射鏡みたいな顔からビーム攻撃してゴジラ撃退に成功するという、昭和の遺物が大活躍する話も面白いかも?。

2021/12/18 (Sat) 22:19 | EDIT | REPLY |   

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