映画館に学ぶ
「ことごとく書を信ずればすなわち書無きに如かず」(by孟子)
この世の中、何事も教科書通りにはいかないものであります。
頭では分かっていたことですが、この歳になって・・・しかも趣味の世界でその言葉の意味を考え直す出来事がありました。

それは、先週の月曜日。
お隣石川県のイオンシネマ白山で『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観たときのことです。

『007』を上映していた8番シアターは、イオンシネマ独自の大画面上映システム「ULTIRA」と北陸圏で唯一(多分)「DOLBY ATOMS」を兼ね備えた劇場なのです。
この通り、入口前の壁には二つのロゴが誇らしげに掲げられています。

そして、チケットにもやはり誇らしげに「ATOMS」の文字が(笑)。
今までは「DOLBY ATOMS」を体験するには大阪(梅田ブルク7)か京都(MOVIX京都)まで足を延ばすしかなかったのですが、イオンシネマ白山が出来たことで片道1時間強の移動時間で観に行けるようになりました。
(といっても、超巨大スクリーンのIMAXやハイコントラスト映像が売りのドルビーシネマはまだ都会に出る必要がありますが)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のドルビーアトモス立体音響一番の聴きどころは、私にとって同作の一番の見どころと同一でした。
『ブレードランナー2049』のジョイ役を見て以来すっかりファンになってしまったアナ・デ・アルマス嬢演じる新人エージェント:パロマがボンドと組んで細菌学者を奪取するシーンです。
ボンドとパロマは耳に仕込んだ無線機で常に会話するのですが、状況音の中で互いの無線の音が常に頭の上(天井スピーカー)から聞こえてくるのです。
「おお~、めっちゃ分かりやすいアトモス効果!」と嬉しくなった私は、一連のシーンが終わるとすぐに天井を見上げました。

イオンシネマ白山のエフェクトスピーカーはリア・サイド・トップ全て球状のスピーカーでした。
さらに目を凝らしてみると・・・?。

おや?。
天井スピーカーが私の方・・・つまり客席中央部を向いているではありませんか!?。

後ろを振り返ってみると、やはり後方のトップスピーカーも同じく客席中央部に向けてあります。
あれ?。
確か「ドルビーアトモスのトップスピーカーは真下に向ける」というのがセオリーだったはずでは・・・?。

私は自宅のホームシアターでもドルビーアトモス(とDTS:X)を実践していますが、天井スピーカーはドルビー社やアンプメーカーの推奨に従ってこのように真下に向けて設置しています。

当時参考にしたパイオニアHPの記事から抜粋してみると・・・。

ほら、ここに「視聴位置に向けず、まっすぐ下へ向けて配置」と書いてあるでしょ?。
私はこれを信じて天井スピーカーを真下に向けてセッティングしたのです。

でも、映画館の本物のドルビーアトモスはスピーカーを観客(自分)に向けていました。
しかも、その効果が半端なく素晴らしいときた!。

・・・となれば、やるべきことはただ一つ!。

帰宅してすぐ、4つの天井スピーカーを視聴位置に向けて角度を付けました。

ただし、取り付け金具(BOSE製)の構造上そのままの位置で角度だけを変えることが不可能だったため、一度反対方向に付け直して角度調整を行いました。
距離が少し離れましたが、その点についてはボリュームとディレイを調整すれば何も問題ありません。
この状態で音出ししてみるとトップの音が強く出すぎな感じがしました。
スピーカーの音が私に直撃するようになったのですから当然の変化です。
そのためボリュームを3dbほど下げてフロントやリアとのバランスを取りました。

仮調整ではありましたが、そのまま試しにネットでダウンロードしたDOLBY ATOMSデモを再生してみました。
これは私が最初にATOMSを導入した時リファレンス音源として何度も聴いたもので、森の中のさざめきや雨・雷の音などの環境音で室内が立体音響で満たされるデモ映像です。

トップスピーカーを真下に向けていた時よりも音の密度が上がっていることがハッキリ分かります。
周囲を飛び交う鳥や虫の羽音、雨の音が以前より近くに感じられるようになりました。
そして落雷の音も本当に真上から聴こえます。
オーディオに全く興味のない妻でさえ「一度聞き比べただけで違いが分かった」と言っていたくらいです。
妻「虫の音が鬱陶しい!」
それすなわち、このセッティング変更が成功だったことを意味します(笑)。

実を言うと、今までは4つの天井スピーカーの間(つまり私の頭のてっぺん)にまるでエアポケットのように音が抜けているように感じていました。
でも、「ドルビーやメーカーの推奨通りなのだからこういうものなんだ」と思い込んでいたのです。

それが各スピーカーを自分に向けると音の死角が無くなり、本当に森の中にいるかのように360度音に包まれたような感覚に陥ります。
まだまだ調整を追い込む余地は残されていますが、サラウンド効果に関しては満足いく結果が出ました。
私としたことが、どうしてこれを試そうとしなかったんだろう?。
歳のせいか頭が固くなっていたのかも知れません。
あああ、恥ずかしい!。

しかし、一つ気になる副作用が・・・。
せっかく壁に飾ったLDジャケットにスピーカーの影が落ちてしまうのです。
特に右後方は、ナウシカのとこだけ暗くなってしまってなんか不吉ですらあります(汗)。
これも何か対策を考えねばなりません。
後方に間接照明でも仕込んでみようかな?。

これでドルビーアトモスやDTS:Xで音声収録されたソフトを見る楽しみが倍増しました。
それどころか、いままでに見たアトモス作品全部をもう一度片っ端から見返したいくらいです。
来月初頭には『ゴジラvsコング』のブルーレイ(ATOMS音声収録)が出るので、『髑髏島の巨神』『キング・オブ・モンスターズ』(どちらもATOMS音声収録)と合わせて楽しむことも考えています。
あと、NETFLIXでも最上位の「プレミアムプラン」に契約変更すればドルビーアトモスで見られる作品もかなりあるらしいです。
私も近いうちに1~2ヶ月間だけ限定でプレミアム契約に変えてみようかな?。
ホームシアターのアトモス再生環境を大きくアップグレードさせてから9日後。
昨日(10/27)、ディズニーの配信サービス「ディズニー・プラス」が大きく進化しました。

最初バージョンアップの話を聞いたときは正直それほど期待はしていなかったのですけど、「ものは試し」と最新バージョンにアップグレードしてみて驚きました。

なんと、『スター・ウォーズ』の劇場用全作品が4K/HDR/DOLBY ATOMOSになっているではありませんか!?。

ほら!

これまで『スター・ウォーズ』を4K&HDR&DOLBY ATOMOSで楽しもうと思ったら4万円以上もする9作品全部をセットにしたBD-BOXを買うしかありませんでした。
最近ようやくバラ売りが始まりましたが、それでも1枚約5千円と結構高価です。
それが月額990円のサブスクリプション配信で見放題になったのです!。

この日は帰宅が遅かったため全編を観ることは叶いませんでしたが、冒頭10分ほど(2体のドロイドがスタデストロイヤーから脱出するまで)をAPPLE TVを使って見てみました。
ファーストショットのスターデストロイヤーが頭の上を通り過ぎてい場面は、もともとそういう効果を期待して見ていたせいか特に感激は無かったです。
しかし、真にドルビーアトモスの3次元立体音響に鳥肌が立ったのはそのあとのタナヴィーIV艇内のシーンでした。
スターデストロイヤーの威嚇砲撃による振動や爆発音、そして拿捕されるときのガコーンという金属音が室内全体に響いて「ああっ、もう逃げられない!」という絶望感を与えてくれます。
44年も前に作られた最初のドルビーステレオ音声からアップリミックスしたサウンドですが、まるで違和感なく映画の世界に誘(いざな)ってくれました。
そして、もう一つ。
時を同じくして、福井の映画ファンに「音」にまつわる朗報が飛び込んできました!。

来月20日。
我が福井県にもDOLBY ATOMS上映館がお目見えすることになったのです!。
といっても新しい劇場が誕生したわけではなく、既存のシネコン・福井コロナシネマワールドのどれか一館を改装するとのことですがね。
それでも、こんなドド田舎の福井にようやく都会の風が吹き込んできたような気がします(笑)。
あとは近隣県のどこかにIMAX上映館が出来てくれたら最高なのですがね~。
今回の記事は、当初10/24の「週刊映画鑑賞記」の『007』記事の一部として書いたものですが、あまりにも長くなってしまったため一度はカットしたものです。
しかし、どうしても備忘録として書き残しておきたくて一部追加記事を加えて単独記事にしたものです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。