週刊映画鑑賞記(2022.1/3~2022.1/9)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週はロバート・ワイズ監督作品2本でした。
1/3(月)
『ウェストサイド物語』
(ホームシアター:BS4K録画)

映画史に残るミュージカル映画の名作。
観たのは今回で3度目です。
最初は中学3年のときのテレビ初放送時、2度目は最初期の「午前十時の映画祭」でした。

テレビ初放送は昭和54年の大みそか、TBSが「紅白歌合戦」にぶつけた特別番組でした。
当時我が家にはテレビが2台あって、居間の大きいほうでは祖母と妹と父が「紅白」を、台所にある小型テレビで私が『ウェストサイド物語』を見ていました。
また、この日は夕方から『マジンガーZ劇場版2本』と『ゴジラ対ガイガン』という私の大好物(笑)も放送されていたため、夕食以外はほとんど家族と別行動をとっておりました。
ところが、『ウェスト・サイド物語』が始まるとすぐ、『紅白』を見ていると思っていた母が私の横に来て一緒に見始めたのです。
母が映画を見たがるなんて珍しいと思って理由を訊いてみると、「結婚前に(父とは別の人と)デートで一緒に観た映画だった」からだそうです。
母は歌のシーンになると「♪トゥナ~イト、トゥナイト~」とサビの部分を一緒に口ずさんだりして懐かしそうに見ておりました。
そんなわけで初見時の感想としては映画の内容ではなく、初めて聞いた母の青春物語のほうが強く記憶に残ってます(笑)。

初めて見るずっと前から、ポスターに使われているジョージ・チャキリスのあのポーズだけはよく知っておりました。

それは石森章太郎先生の漫画『サイボーグ009』の002(ジェット・リンク)初登場の場面です。
いざこざで人を殺してしまったニューヨークの不良ジェット・リンクは、逃亡中にブラック・ゴーストに捕まってサイボーグにされてしまうという設定でした。
『ウェストサイド物語』を見たとき、あれが映画の1シーンを模したものだったということを初めて知りました。
石森先生はとても映画がお好きな方で、こんな風に映画の場面や設定を自分の漫画に取り入れることが多かったそうです。

実は私、ドラマの進行中に登場人物たちが突然歌い踊り始めるミュージカル映画は苦手です。
といっても全てのミュージカル映画がダメということではありません。
コメディタッチの『雨を唄えば』やファンタジーの『オズの魔法使』あたりなら全然平気ですし、ミュージカルシーンだけを抽出した『ザッツ・エンターティメント』は何度見ても飽きないくらいです。
しかし『ウェスト・サイド物語』のように人の死が絡むシリアスなストーリーの場合は、ミュージカル映画最大の見せ場である歌と踊りが物語と融合することが難しく、むしろ邪魔に感じることのほうが多いです。
そのため、ミュージカル映画の歌やダンスは、意識的に切り離してミュージック・クリップとして見ることにしています。
そう割り切ってしまえば『ウェストサイド物語』のミュージカルシーンは極上中の極上クォリティです。
プエルトリコからの移民者たち(シャーク団)が男女に分かれて口論する「アメリカ」。
この内容を普通の会話劇で描いた場合、どうしても険悪な雰囲気にならざるを得ません。
しかし、ミュージカルであれば歌と踊りを楽しみながら移民者が受けている差別の数々を垣間見せることが可能です。
そして、恋人同士の甘ったるいささやきをそのまんま歌にしたような「トゥナイト」。
普通にセリフとして聞かされたら恥ずかしさで悶絶しそうになる歌詞ですが、こうして歌として聴くと何故か素直に入ってきます。
「トゥナイト」は後半でも印象的な形で歌われます。
互いに相手を罵り闘志をかきたてながら決闘へと向かうジェット団とシャーク団メンバーと、恋人の身を案じるアニタ。
そこにトニーとマリアが歌う「トゥナイト」も混じり合い、最後は全員が「今夜!(tonight!)」のフレーズで締めくくります。
それぞれの立場の「今夜(tonight)」が絡み合い悲劇のクライマックスに集約されていく演出があまりに見事で、普段ミュージカル映画に違和感を抱いていた私も背筋がゾクゾクして映画的興奮に浸っておりました。
仲間を殺された直後のジェット団が冷静になろうとして何故かカメラ目線で歌い踊る「クール」。
曲もダンスも確かに素晴らしいですが、この映画の中で最も違和感が強いシーンでもあります。
私は「コイツら、こんな時になにやってんだ?」と気持ちが醒めてしまうのです。

『ウェスト・サイド物語』の音楽シーンと本編との融合性が薄いのは、この映画に監督が二人いたことが理由ではないかと思われます。
ドラマ部分をロバート・ワイズ監督が、ミュージカル部分をジェローム・ロビンス監督がそれぞれ担当していたのです。
日本の怪獣映画の本編監督と特技監督の関係みたいなものでしょうか(笑)。

ジェローム・ロビンス監督は映画の元となった舞台版『ウェスト・サイド物語』の振付師でした。
映画版のダンスシーンにも並々ならぬ情熱を持って関わりましたが、あまりにも凝り過ぎてスケジュールと予算の超過を招き、さらには俳優・ダンサーに負傷者が続出したため途中でクビになってしまったそうです。
しかし、彼が心血を注いだミュージカルシーンは(本編との乖離はあるものの)歴史に残るクォリティの高さを持ち、『ウェスト・サイド物語』を歴史に残る傑作ミュージカル映画に昇華させました。
来月、スティーブン・スピルバーグ監督が『インディ・ジョーンズ5』を蹴って撮ったリメイク版が公開されます。
先日『モスラ』を観た劇場で流れていたこの予告編を見たとき不意に母の昔話を思い出しました。
実は、今回『ウェスト・サイド物語』(61年版)を無性に見たくなった理由はこれでした。
1/6(木)
『アンドロメダ・・・』
(ホームシアター:BSプレミアム録画)

3年ほど前に録画して以来、ずっと見ないままレコーダーの肥やしになっていた作品。
謎の宇宙細菌による感染病を扱った古いSF映画ですが、別に現在の567禍にちなんで見たわけではありません。
『ウェスト・サイド物語』からロバート・ワイズ監督つながりです。

『ウェスト・サイド物語』と『サウンド・オブ・ミュージック』の二本があまりにも有名で<ミュージカル映画の巨匠>と呼ばれることの多いワイズ監督。
しかし、実はそのキャリアの中では『キャット・ピープルの呪い』『地球の静止する日』『オードリー・ローズ』『スタートレック』などSFやホラーが多くを占めています。

その見せ方の巧さはとても50年以上前の映画とは思えないほどです。
人工衛星が落下した村から調査員の報告音声が入りますが、それが次第に異常な内容へ変化していく冒頭シーン。
緊迫感に一気に物語に引き込まれます。

室内劇が中心なのでてっきり低予算映画かと思いましたが実は70mm映画でした。
さすが『サウンド・オブ・ミュージック』の監督さん。
屋外ロケの画が強い!。

ただし、やはり1971年の作品ということで、少々間延びして見えるのも事実です。
舞台は外部から完全隔離された地下研究所。
主な登場人物は謎の宇宙細菌の謎を解明しようと奮闘する3人の科学者と1人の医師。
はっきり言っておぢさん・おばさんばっかりで華がありません(笑)。
生存者の世話をする黒人女性の看護婦と実験助手のスタッフ数名もいるようですが、看護婦以外はいるのかいないのか分からないような存在です。
また、研究所に着いてからは所内の説明に長い時間を割いているのですが、それが終盤の伏線であると分かっていてもかなり退屈でした。
それと、心地よく耳に残るBGMが無いということも没入感が持続しなかった原因の一つと思います。
ところで・・・

私、今回の視聴が初『アンドロメダ・・・』だと思っていたのですが、しばらく見ているうち「この映画、前に見たことあるぞ」と思えてきました。
記憶は無いですが、いくつかの場面やセリフに強いデジャブを感じたからです。
例えば・・・

研究所に到着した女性科学者が、赤橙の点滅を見て「娼婦時代を思い出す」というセリフ。
このセリフは前にも絶対に聞いたことがあります。
「元娼婦の科学者」などという奇異なイメージだけ覚えていた感じです。

また、彼女が培養テスト中に癲癇を起こして重要な変化を見落としてしまうシーン。
「このおばはんがここでちゃんと変化に気付いていたら、後半主人公がレーザー光線で焼かれることもなかったはずなのに」と、なぜか先の展開を知っている自分がいました。

間違いなく以前どこかで見ているはずなのですが、それがいつどこでだったかどうしても思い出せません。
映画館でお金払って見たなら絶対忘れることはないと思うのですがね。
テレビ放映で途中から見て、そのために映画全体としての記憶が希薄なのでしょうか?。
それとも似たような場面やセリフが他の映画にもあったのでしょうか?。
不思議です。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。