週刊映画鑑賞記(2022.1/17~2021.1/23)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

先日東映チャンネルで黎明期の長編アニメ4本を4Kリマスター素材で放送していました。
東映まんがまつりならぬ、東映チャンネルまつりです(笑)。
これを毎日一本づつ、制作年代順に妻と一緒に見てました。
一本あたり90分前後の作品ばかりなので仕事から帰って見ても疲れて寝落ちすることはありませんでしたが、作品によってはテンポがユル過ぎて途中欠伸が出たものもあったことは確かです。

今回は作品レビューの前にこのドラマの話を書いておく必要があります。
2019年前期のNHK朝ドラ『なつぞら』です。
日本のアニメーション黎明期を支えた女性アニメーターが主人公のドラマでした。
昔のアニメに超詳しい妻は「染谷将太が宮崎駿(に相当)で、ベレー帽のおじさんは大塚康生さん!。」「え~?、なんで奥山玲子さん(主人公のモデル)が高畑勲と結婚するの?」と毎朝実に楽しそうに見ておりました。
今回放送された4作品はまさにあのドラマで描かれた時代のアニメばかりで、妻の熱の入りようが半端なかったです(笑)。
1/18(火)
『白蛇伝』
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

まずは日本最初の長編アニメーション映画『白蛇伝』。
ずいぶん昔にレンタルビデオで見て以来ですが、ストーリーなんて完全に忘れてました。

主役の許仙(シュウ・セン)が状況に流されるばかりのナヨナヨした草食野郎で見ていてイライラしてきます。
途中何度も見るのを止めようかと思ったんですがなんとか完走。
結局は白娘(パイニャン)や動物たちが頑張ってくれたおかげで本人はほとんどなにもしていないという、なんとも他力本願なお話です。
冒頭に「少年向け」と書かれてましたが、こんなヘニャチン野郎が主役の映画など害悪でしかありません。
日本アニメ史における歴史的価値は理解しますが、映画として見るべきところは・・・(汗)。
1/19(水)
『少年猿飛佐助』🈠
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

こちらは私も妻も今回初鑑賞でした。
この時代のキャラクターデザインはまだデフォルメし切れていない感じです。
敵の山賊たちだけでなく女性キャラに至るまでとにかく全員顔つきが怖いです(笑)。
もしかして、これが日本最初の「不気味の谷」ってやつでしょうか?。

敵の夜叉姫が怖いのは分かりますけど、佐助に懐く童女まで顔が怖いのは困ります。
日本のアニメ界に「萌え」なる価値観が発生する遥か以前の作品です。
『漫画映画のできるまで』🈠
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

『少年猿飛佐助』のメイキングフィルムかと思っていましたが、実際はアニメーション制作の工程を丁寧に紹介する会社紹介ビデオみたいな感じでした。

この大勢の作画スタッフの中に『ルパン三世』の大塚康生さんや、『なつぞら』主人公のモデルとされる奥山玲子さんも映っているのかもしれません。

あと、声の録音の場面に意外な人が写ってました。
夜叉姫の声を担当された赤木春恵さん(左の女性)です。
赤木さんといえば『金八先生』の校長先生や『渡る世間は鬼ばかり』の姑役などお歳を召してからのイメージしかなかったのですが、お若い時は(失礼ながら)こんなふっくらして優しそうなお顔だったのですね。(本作は悪役でしたけど・・・)。
1/21(金)
『わんぱく王子の大蛇退治』
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

監督は実写畑出身の芹川有吾氏。
ここまでの作品はカット割りで見せるという工夫が無くて見ていて退屈な部分が多かったのですが、この作品はロングショットだけでなく無数のアップショットをたたみかけるなどしてサスペンスや高揚感を盛り上げています。

クライマックスのスサノオがヤマタノオロチに空中戦を挑むシーンは何度見ても見応えがあります。
「奥から手前へ」「手前から奥へ」と奥行きある動きを多用していて、観客としては戦闘の場の空間把握が容易で自然に手に汗握ってしまいます。

ここの作画担当は大塚康生さんと月岡貞夫さん。
新人の芹川監督が先輩に遠慮して「こんなカットを加えたい」と言い出せずにいると、大塚さんと月岡さんは「どんな画が欲しいんだ?。それはこの映画に必要なんだろ?。だったら描くよ。遠慮せずに言ってみろ!。」と、ただでさえ大変なところにさらにカット数を増やしてあの名場面を描き上げたそうです。
私はこの話が大好きです。

この作品は以前LDを買って何度も見返しました。
アニメ映像が凄いだけでなく、音楽担当が『ゴジラ』『大魔神』の伊福部昭先生だからです。
ブルーレイ買うことも検討したんですが、値段の高さがネックで手を出せずにいました。
4Kリマスター画質で放送してくれた東映チャンネルさんに感謝です。
あと、『わんぱく王子の大蛇退治』を見ていてひとつ思い出したことがありました。

本作の芹川有吾監督は後年TVアニメ『マジンガーZ』のチーフ・ディレクターを務めていますが、実は第1話のマジンガー暴走シーンに伊福部昭先生の楽曲が使われていたのです。
最初は渡辺宙明先生が伊福部音楽と似た曲を作ったのだろうと思っていたのですが、その後『マジンガーZ』番組内ではなぜか一度も使われていません。
「もしや?」と思って調べてみると、やはり『わんぱく王子~』で伊福部音楽に心酔した芹川監督が『マジンガーZ』第1話に『わんぱく王子~』の楽曲を使用したのだそうです。
同じ監督、同じ東映動画の作品だから出来た音楽使用法だったのですね。
1/22(土)
『ガリバーの宇宙旅行』🈠
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

『わんぱく王子の大蛇退治』の面白さに気を良くして、翌日は『ガリバーの宇宙旅行』を視聴。
全体の構成とラストは『オズの魔法使』がベースになっていると思います。
こちらは初めて見ましたが・・・あまりにもテンポが悪過ぎていて途中でウトウトしてしまいました。

主人公:テッド少年役は当時人気歌手だった坂本九さん。
ガリバー博士の声を『七人の侍』久蔵役の名優:宮口精二さんが担当しています。
実に豪華な声優陣ではありますが、いかんせん音響演出が下手糞でセリフ回しのテンポや音楽のチョイスが悪すぎます。
そればかりか、時々無音状態になる箇所すらありました。
坂本九さんが歌う挿入歌も途中から暗いトーンに変わり、妙に説教臭い内容になって一向に気分が盛り上がりません。

本作の(唯一と言っていい)見どころはラストで出てくるお姫様の素顔です。
普段はロボットのような全身スーツを着ている設定らしいのですが、最後に突然ぱかっと割れて中から(かなり唐突に)めっちゃ可愛い女の子が出てくるのです。
これは新人時代の宮崎駿さんが「ヒロインがロボットなんて嫌だ」と進言したのが認められたもので、作画も宮崎さん自身の手によるものだそうです。
後のコナンとラナ、ルパンとクラリス、パズーとシータを思わせる構図になっているのが分かります。
新人スタッフの意見も良いものであれば取り入れてくれていたわけで、当時の東映動画は物作りする人間にとってかなり良い環境だったんじゃないかとい思います。

東映チャンネル契約していて本当に良かった!。
しかも、来月は『長靴をはいた猫』を放送してくれるとのことです。
大好きなんですよね、このアニメ。
「朝日よー!」
今週もお付き合いいただきありがとうございました。