週刊映画鑑賞記(2021.1/31~2021.2/6)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週はこの5本です。
1/31(月)
『永遠の831』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)

WOWOW開局30周年を記念して制作されたオリジナル長編アニメ。
3月から全国で劇場公開も予定されています。

主人公は激しい怒りに駆られると無意識に時間を止めてしまう特異能力の持ち主。
ところがある日、自分以外にも時間を止める能力を持つ少女に出会いますが、それと同時に「831戦線」と名乗るテロリスト集団と接触するというお話です。

「831」という数字は、先行きの見えない世情に目を背けて今の状況が続くことをただ願うばかりの連中を「宿題が終わっていない子供が夏休み最後の日が永遠に続くことを願っているようだ」との皮肉を込めたものです。
このネーミングはうまいなあ。
さすがは『攻殻機動隊S.A.C.』の神山健治監督!。
未曾有の厄災のため経済も教育機関も全てストップしている時代の話です。
その厄災とは567禍を指していると思われますが、何故か詳細はぼかされているうえ登場人物も誰一人マスクをしていないため実感が沸きません。
また、数年前に東北で大地震があったという設定が出てきます。
東日本大震災を指していることは明らかですが、何故かこちらも名称を出すことは避けています。
スポンサー(WOWOW?)の意向のよるものだったのかも知れませんが、これらのハッキリしない描写がせっかくのテーマ性を空疎なものにしていたことは確かです。

手描きではなく3DCGモデルからの2D変換アニメです。
神山監督の作品でいえば、映画『009 Re:Cyborg』やNETFLIXの『ULTRAMAN』で使われた技法。
私はこの方式のアニメはあまり好きではありません。
普通に歩くときの腕の振り方や体重移動がなんか不自然なのです。
『009』はアニメーターがケレン味のある動きを付加していたので特に気になりませんでしたが、日常描写が多い本作では違和感ばかりが目立ってしまいます。

そもそも、この話がアニメでなければならない理由が見えません。
特殊効果といっても、時間が停止して人も物も動かない中を主人公だけが動き回る場面くらいです。
これは街の封鎖と大勢のエキストラを使って実写で撮るほうが、テーマ性は伝わりやすかったんじゃないかと思うのですがね。
2/2(水)
『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』🈠
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

朝鮮半島でアメリカの核兵器を積んだ輸送機の爆発事故が発生。
韓国と北朝鮮はアメリカを非難、中国は上空を飛ぶ外国民間機を撃墜して世界大戦の火蓋が切られた。
今の世界情勢を思うと笑えない話です。
特に60年代にあって北朝鮮や中国が戦争の口火を切るという設定の先見性には驚かされました。
最初は、東宝の『世界大戦争』に対抗して作った映画だろうとナメていたんですが、調べてみると実はこちらのほうが1年先でした。
しかも、実際に核戦争勃発直前までいったというキューバ危機が起きたのはこの映画公開の2年後です。
そんな「予言」と呼んで差支えないほどの先見性を持つ作品ですが、下記の3つの残念ポイントのせいでどうしても低評価にならざるを得ません。

残念ポイントその1は、感情移入を受け付けない主人公の性格です。
演じるのは若き日の梅宮辰夫さん(当時22歳)。
新聞記者の役ですが、その性格は主人公らしからぬ鼻持ちならない男です。
高校生の病室にズカズカと入り込み、上から目線でぶしつけな質問を投げかける今で言うところのマスゴミそのものです。
また、看護婦を天職と思っている恋人(演:当時19歳の三田佳子)に対しても、なかなか会える時間が無いからと「そんな仕事辞めてしまえ」と簡単に言うモラハラ野郎でもあります。
(これらはあくまで脚本や演出の問題であって、演じた梅宮さんに非はありません。)

残念ポイントその2は、この映画で描かれる日本人の民度が哀しいくらいに低いことです。
核戦争勃発にパニックを起こした民衆が他人を踏みつけにして我先に逃げるだけでなく、暴徒化して略奪・暴行する輩まで出てくる始末です。
東日本大震災のとき世界を驚嘆させた日本人の忍耐強さと秩序ある行動はどこへ行ってしまったのでしょうか?。

残念ポイントその3は、核兵器使用後の惨状表現がユルすぎることです。
映画冒頭では広島・長崎の原爆被害写真(人間の形のまま炭化したご遺体など)が紹介され、これを見た3人の高校生が原爆恐怖症に陥り外国へ逃げ出そうとする場面から始まります。
(ここでは黒澤明監督の『いきものの記録』(1955年)を連想しました。)

映画のラストで東京は水爆の直撃を受けて壊滅・・・いや、消滅します。
ある者は爆発で四散し、ある者は熱で蒸発。
そして郊外に逃れた人たちも放射能を含んだ死の灰を大量に浴びて余命幾ばくもなくなってしまいます。

ところが、水爆の直撃を受けた東京の瓦礫の中に何故か生前の美しい姿を保ったまま息絶えている三田佳子の遺体が・・・?。
おいおい、何のために冒頭で原爆被害者の写真を見せたんだよ?。
ここはケシズミみたいになった三田佳子を出さなきゃ何も伝わらないでしょ!。
2/3(木)
『海竜大決戦』
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

東映唯一の怪獣映画(多分)。
90年代初頭頃にレンタルビデオで見て以来2回目の鑑賞です。
およそ四半世紀ぶりとあって内容はきれいさっぱり忘れておりましたが、なかなかどうして面白かったです。

最初のお家乗っ取りは『大魔神』冒頭部分とそっくりです。
『大魔神』は’66年4月公開。
本作は同年12月公開。
これで「パクってない」とは言わせませんぞ、東映さん。

途中「勧進帳」みたいな展開を経て、後半は『スター・ウォーズ』そのまんま。
かつて同じ師匠に学んだ兄弟子が宿敵であるという点や、その宿敵に子供がいて親子の話が展開することまでそっくりです。
大蛇丸が我が子を仲間に引き入れようとするシーンはまるで『帝国の逆襲』のベイダーとルークのようでした。
そう!この映画には『スター・ウォーズ』を形作る要素がそっくりそのまま詰まっているのです。
これで「パクっていない」とは言わせませんぞ、ジョージ・ルーカス!。

ダース・ベイダーならぬ大蛇丸を演じた大友柳太郎さんの眼力が本当に凄いです。
どアップ&カメラ目線で睨まれると、それこそカエルみたいにすくみ上ってしまいそうでした。
問答無用に強くて憎々しい悪役を出せた時代の映画です。
2/4(金)
『ガンマー第3号 宇宙大作戦』
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

『怪竜大決戦』と同じほぼ四半世紀ぶりの鑑賞。
宇宙ステーション内部で無限増殖を続ける宇宙生物の恐怖や、クルー同士の対立などといった人間ドラマがバランスよく絡み合っている良作です。
初めて見たとき、この映画が『エイリアン』より11年も前に日本で作られたことが誇らしかったことを覚えています。

出演者は全員外国人ですが、『緯度0大作戦』のリチャード・ジャッケルさんと『宇宙大怪獣ドゴラ』のロバート・ダンハムさんが出ていて東宝特撮好きな私としては安心して観ていられました。

あと、BGMの曲調が『ウルトラQ』や『ウルトラマン』とそっくりだったので音楽は宮内国郎さんだとばかり思っていましたが、あとでクレジットを確認したら『仁義なき戦い』の♪チャララ~(⤴)チャララ~(⤵)を作った津島利章さんでした。
津島さんといえば昨年公開の『シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版』で『惑星大戦争』の楽曲が使われたことが記憶に新しいです。

この映画、当時は「東映まんがまつり」の前身「東映ちびっ子まつり」の中の一本として公開されました。

アニメ『ピノキオ』の同時上映でこれを見せつけられた子供たちの衝撃たるやいかに・・・?(汗)。
それは『ハム太郎』の同時上映『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の白目ゴジラを見せられた2002年の子供たちに匹敵する衝撃度だったに違いありません。
2/5(土)
『こねこのらくがき/こねこのスタジオ 4Kリマスター版』🈠
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

2月22日は「猫の日」だそうです。
それで東映チャンネルでは2月に『長靴をはいた猫』シリーズ3作を放映してくれますが、それに先立ち東映動画短編第一作『こねこのらくがき』とその続編『こねこのスタジオ』を放映してくれました。

デザインと作画は『長靴をはいた猫』『どうぶつ宝島』の森康二さん。
キャラクターはどれもシンプルなのに情感が豊かです。
描線がすごく柔らかくて、単に絵として見るとギザギザしているだけなのに動いた途端にフワフワの毛並みに見えるから不思議です。

2本目の「こねこのスタジオ」はカラー作品でした。
内容的にも含蓄があって面白かったです。

映画監督になったこねこは、手回しのポンコツカメラや思い通りに動かない俳優たちに見切りをつけ、全てロボットの俳優とリモートコントロールカメラで映画を撮ることに。
これはまるで現在のCG技術やドローン撮影を予見していたかのようです。
そして最後はロボット監督まで登場してA.I.が映画を作ることになっていく・・・。
怖っ。
人の持つクリエィティブな部分だけはA.I.に渡したくはないですね。

2本とも4Kリマスター化でとても綺麗でした。
東映のフィルム保存状態の良さが伺えます。
4Kリマスター技術は決して万能ではなく、フィルムの痛みや退色が酷ければ意味が無いのですから。

今月は東映動画の代名詞とも言える『長靴をはいた猫』シリーズ3作品も放映されます。
でも、何故か放映順が5日『80日間世界一周』(3作目)、7日『ながぐつ三銃士』(2作目)、12日『長靴をはいた猫』(1作目)と逆なんですよね。
お話はそれぞれ独立したものなので順番を気にする必要はないのでしょうけど、やはり一番出来の良い(ていうか大傑作!)一作目『長靴をはいた猫』の放送を待つことにします。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。