週刊映画鑑賞記(2022.2/7~2022.2/13)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週観たのはこの4本。
なお、『ゴーストバスターズ』の記事は思いっきりネタバレしています。
未見の方はご注意願います。
2/7(月)
『ゴーストバスターズ/アフターライフ』🈠
(劇場:福井コロナシネマワールド)

『ゴーストバスターズ』『ゴーストバスターズ2』から続く正規の続編です。
監督はオリジナルを手掛けたアイヴァン・ライトマン監督の息子さん。
デビッド・リンチの娘とかリドリー・スコットの息子とか、ハリウッド監督も世襲制になったのですかね(笑)。

『ゴーストバスターズ』といえば5~6年前にもメンバーを全員女性に変えたリブート版がありました。
あれはゲスト出演のオリジナルキャストの扱いが酷すぎて(特にビル・マーレイの役柄は失礼としか言いようがない)、オリジナルに対する愛もなければ敬意も感じられませんでした。
アレに比べれば、今回のは至極まっとうな続編です。

新主人公:フィービーは旧作でハロルド・ライミスさん(故人)が演じたイゴン・スペングラーの孫娘という設定ですが、最初は男か女か性別がハッキリしない描写をされていて少し混乱しました。
(母親が「彼女」と言っていたことでようやく女の子と分かった)
これも昨今のポリティカル・コレクトネス(社会の特定のグループのメンバーに 不快感や不利益を与えないよう偏見・差別を含まない中立的な表現や用語を用いること)に配慮した結果なのでしょうかね?。

クライマックスでは冒頭で死んだイゴンがゴーストとなって現れて孫娘に加勢します。
今回のイゴンを演じているのがそっくりさん俳優であることは分かっていますが、それでもこの場面には思わず胸が熱くなりました。
ゴーストが当たり前に出てくる映画だからこそ自然に受け入れられたのかも知れません。

さらにはベンクマン(ビル・マーレイ)、レイ(ダン・エイクロイド)、ウィンストン(アーニー・ハドソン)のオリジナルメンバー3人も登場してパート2以来33年ぶりに4人揃ってプロトンビームを撃つ姿が描かれました。
実を言うとフィービーがレイに電話をかけた時点でこの展開は読めていましたが、本当にオリジナルメンバー4人が並ぶと思わず背筋がゾクゾクしてしまいます。
この映画に残念な点があるとすれば「笑いの要素が少なかった」ことでしょうか。
フィービーが笑いに鈍感な少女という設定なので仕方ないかも知れませんが、ユーモアを補うキャラクターがいないため少々余裕が無い感じがしました。

劇場は国道8号線沿いにあるシネコン:福井コロナシネマワールドさん。
その中の県内で唯一ドルビーアトモスに対応している10番シアターです。

ドルビーアトモスの360度立体音響はゴーストやプロトンビームが飛び交うシーンで効果的に使われていました。
観客数は私を入れて10人前後だったでしょうか。
平日の真昼間ですからこんなものでしょう。
『大怪獣のあとしまつ』🈠
(劇場:福井コロナシネマワールド)

『ゴーストバスターズ』終了から約1時間後、同じ福井コロナ内の別のシアターで『大怪獣のあとしまつ』をハシゴしました。
久し振りの国産怪獣映画ということで楽しみにしていた映画です。

このタイトルが発表されたとき、私は「ウルトラマン研究所説」という本を思い出していました。
これはウルトラマンと怪獣の戦いから発生する被害総額とか経済波及効果、民事における科特隊の賠償責任などを、本物の学者さんたちが真面目に考察した本です。

この本には「怪獣の死体の後処理」問題も取り上げられていて、こういう話を『ウルトラマン』などで映像化したら面白いんじゃないかと思っていました。
おそらく『怪獣のあとしまつ』はここから発想された企画ではないかと思います。
「もしかすると意外な傑作になるかも?」と期待が膨らみました。

ただ・・・期待と同時に「もし河崎実監督作品みたいなおふざけ系怪獣映画だったら?」という危惧もあったことは事実です。
そして・・・
その不安は的中しました。
この映画、ネットでは「令和のデビルマン」と酷評されているようですが、さすがにそこまで酷いとは思ってません(笑)。
主演は棒読み演技ではありませんし、一つのシーンで昼と夜がごっちゃになるといった素人ミスもありません。
特撮映像も(予算相応とはいえ)良く出来ていたと思います。
この映画の問題点は一つしかありません。
ただ、その一つが致命的過ぎました。
それは・・・

政治家の描き方があまりにもおバカ過ぎること
政府閣僚を無能な集団として描くことで特務隊を引き立てようとしたのでしょうが、それが小学生レベルの下らないギャグばかりなのです。
責任転嫁のため子供じみた言い争いばかりしている閣僚たち。
なんでもかんでも下ネタに絡めて煙に巻こうとする国務大臣。
明らかに「2位じゃだめなんでしょうか」のR議員をおちょくっている女性大臣。
怪獣の価値が変わるたびにコロコロと言い分を変えてくるK国。
こんな低能ギャグの連発がせっかくの好企画を台無しにしてしまいました。
全編を真面目に作り上げていたなら、もしかすると傑作になっていたかも知れないのにあまりにも勿体ないです。
外務大臣役で『シン・ゴジラ』にも出ていた嶋田久作さんが出演していましたが、どうせなら「この内容はひどしゅぎましゅ!」と怒鳴って欲しかったです。

劇場は福井コロナで最大の1番シアター。
映画館としては大入りを期待してこの大部屋を当てがったのでしょうが、この日の観客数は私を含めて10人ほどでした。
おそらく来週からはもっと小さな部屋に変えられそうな気がします。
この映画の悪評が、『シン・ウルトラマン』(5月公開)の興行と、今後の怪獣映画制作全般に悪影響を及ぼさないか心配です。
2/11(金)
『ウェスト・サイド・ストーリー』🈠
(劇場:福井コロナシネマワールド)

スティーブン・スピルバーグ監督が『インディ・ジョーンズ5』を蹴ってまで作り上げた超有名ミュージカルのリメイク作品です。

数々のダンスシーンはスピルバーグ監督ならではのカメラワークも手伝って凄い迫力でした。
旧作が舞台の上で踊るダンサーを見ている感じだったとすると、今度の映画は観客が踊りの輪の中に入り込み、ダンサーたちが自分の目の前で踊っているかのようです。
また、生身のダンサーたちがカメラの前で見せてくれた本物の芸であることも迫力に繋がっていたことは間違いありません。
今回、私はドラマ部分とミュージカルシーンとの繋がりがどれだけ自然かに注目して見ておりました。
ミュージカル映画は「普通のドラマから急に歌や踊りが始まるのが気持ち悪い」と揶揄されることが多いですが、オリジナル版『ウェスト・サイド物語』は特にその傾向が強かった気がします。
同じミュージカル映画でもコメディや恋愛系の作品では、普段から歌ってばかりいる能天気な主人公が多く、舞台もそれらしいファンタジックなデザインになっているので観る前から心の準備が整って自然にミュージカルシーンに入り込めます。
しかし、『ウェスト・サイド物語』は屋外ロケが多いうえに街の不良同士の抗争とその中での悲恋という重い話だったため、ストーリー途中で急に歌い踊り始められるとひどく珍奇に見えてしまうのです。

旧作で最も違和感が強かったのは、リフを喪ったジェッツのメンバーが高ぶる気持ちを静めようと歌い踊る「クール」でした。
曲とダンスは確かに素晴らしいものですが、このときの状況を考えると「お前ら、今は踊ってる場合ちゃうやろ!」と彼らがバカに見えてしまうのです。

スピルバーグ版の「クール」は、決闘前にトニーが血気にはやるリフをなだめようとする歌として使われていました。
これは上手い変更だと思います。
歌に対する違和感が少なくなっただけでなく、終盤の展開のテンポアップにも繋がっていました。
ただ、「クール」と歌いながら拳銃の奪い合いをするのは歌のイメージと違う気もしましたけど(笑)。

もう一つ上手いと思った変更点は、マリアを想うプエリトリコ人の青年チノにもスポットライトを当てていたことです。
チノは最後にトニーを撃ってしまう重要な役ですが、旧作では存在感が薄かったため終盤での行動がかなり唐突に見えました。
今回は、彼の実直さとトニーへの嫉妬心をしっかり描いたことでストーリー全体にもう一本の縦筋が通った気がします。

個人的には旧作よりも馴染みやすく迫力も増していて好きです。
ただ、ひとつだけ気になったのは、『ウェスト・サイド物語』を象徴するベルナルド(演:ジョージ・チャキリス)のあの足上げダンスが無かったことです。
なんか「アイルビーバック」を言わないシュワルツェネッガー映画みたいで物足りない気もします(笑)。

そういえば、スピルバーグ監督作品にジョン・ウィリアムズ以外の音楽が付くのは『激突!』『カラー・パープル』『ブリッジ・オブ・スパイ』と今作の4本だけです。
(映画『トワイライトゾーン』もありますが、あれはオムニバスの中の一本だったのでノーカウント。)
これまではスピルバーグが作った画にジョン・ウィリアムズが音楽をつけていましたが、今回は巨匠バーンスタインの名曲にスピルバーグが画をつけていく形ということです。

劇場は月曜に『ゴーストバスターズ』を観たのと同じ福井コロナシネマワールド10番シアターです。
そういえば今週は福井コロナさんで3本観ています。
ここは国道8号線沿いにあるため私にとっては最も行きやすい映画館であることと、県内で最も設備が整っているシネコンであるためここで観る機会が増えました。

この日は祝日(天皇誕生日)だったせいか日中にも関わらず観客数は多めでした。
はっきり数えたわけではないですが、退出時の様子では50人くらいは入っていたと思います。
年齢層はまさに老若男女といった感じで、オリジナル版をリアルタイムで見たであろう老夫婦から劇団四季の舞台で知ったと思しき若い女性まで様々でした。

あと、福井コロナシネマワールドは3月から大幅改装されるらしいです。
この日も通路や売店の一部が工事中でした。
昨年秋に福井で初めてドルビーアトモスを導入したこのシネコンが、さらにどのような進化を見せてくれるのか楽しみです。
2/12(土)
『長靴をはいた猫 』
(ホームシアター:東映チャンネル録画)

何度見ても好きなんですよね、このアニメ。
映画館ではまだ見たことがないため、昨年「午前十時の映画祭」のリクエスト募集があったときに特撮映画数本とこの『長靴をはいた猫』をリクエストしたくらいです。
初めて見たのは大学生になってからだったと思います。
当時はアニメ雑誌がまるで全部宮崎駿さんが作ったかのような偏った紹介をしていたため、このアニメの本質が見えていませんでした。

何度か見ているうち、宮崎さん原画の派手なアクションよりも主人公:ピエールの変化に目が行くようになりました。
最初は伏目がちで頼りなかったピエールが、ローザ姫救出を決意してからどんどん「男の顔」に変化していくのが分かります。
ラストでローザ姫を庇いながらドクロをかざし「朝日よー!」と叫ぶシーンは今見ても鳥肌が立つほど大好きです

あと、本作で最もアニメーターに愛されていたのは悪役の魔王ルシファーではないかと思います。
クライマックスのアクションはもちろんですがローザ姫を前にデレデレする表情も愛嬌たっぷりに描かれています。
主役のピエールやペロでさえあそこまで表情豊かには描かれていません。
もちろん小池朝雄さんの軽妙な演技も最高です。

東映チャンネルは3月に『どうぶつ宝島』も放送してくれるとか!?。
ここ最近何度も書いてる気がしますけど東映チャンネルを契約して本当に良かった!。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。