FC2ブログ

映画と日常

週刊映画鑑賞記(2022.3/14~2022.3/20)

トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

20220320 「週刊映画鑑賞記」トップ画像
今週は反核・反戦をテーマにした映画2本となりました。

『草原の実験』はロシア映画です。
心ある人たちが作った素晴らしい作品でした。

『世界大戦争』は14日にお亡くなりになった宝田明さんを偲んで観賞しました。



3/15(火)
『草原の実験』🈠
(ホームシアター:アマゾンプライム)
『草原の実験』ポスター画像
セリフが一切無い映画です。
映画に詳しい人であれば新藤兼人監督の『裸の島』を思い出されることと思います。

『草原の実験』父娘
草原に住む父と娘。
父は毎日トラックで職場に向かい、娘は自宅でお留守番。
他人といえばたまに訪ねてくる父の知り合いと、毎日馬で彼女の元を訪れる幼馴染(多分)の青年くらい。
ある日、たまたま水をもらいに家を訪ねてきた金髪の青年に心を惹かれ彼女の生活に初めて潤いが生まれます。

『草原の実験』境界線
セリフによる状況説明は皆無なため、観ていて疑問と想像が膨らむばかりです。

父親はどこへ働きに行っているのか?。
冒頭の羊はどこから手に入れたのか?。
父親のオンボロトラックはどこで給油しているのか?。
父親は職場から何を持ち出したのか?。
そもそも父親の職場とは?。

点でしか示されない状況を自分なりに線で結んでいって全体像を考えるのはとても刺激的な映画体験でした。
しかしその反面、最初の観賞時にはいくつかミスリードしてしまった部分もありました。

『草原の実験』手紙
例えば、家に届いた手紙です。
何が書かれているのか全く分からないため、私はてっきり別居している母親からの手紙だろうと思ってました。
でも2周目では、あれが当局からの立ち退き勧告だったのだと分かります。

『草原の実験』実験開始
全編セリフの無い映画ですが、ラストは観ているこちらが言葉を失います。
そして2回目を見たときは、冒頭から既にとんでもないことがこの親子の身に起きていたことが分かって2度愕然とさせられます。
あまりのことに頭がついていけず、この一週間で計3回も繰り返し見てしまいました。

『草原の実験』主演
娘を演じるエレーナ・アンさん(当時14歳)が可愛い過ぎる!!。
セリフを喋らず、表情と目線と仕草だけで全てを表現するという難しい役をこなしています。
ロシア人と韓国人とのハーフだそうですが、どちらも美人が多い国なので「なるほどな~」って感じです。

気になるのは、現在の彼女の国籍はどちらなのか?ということです。
ロシアだと今後の活動への悪影響や世界的な偏見に晒されたりしないかが心配です。

アレクサンドル・コット監督
監督はロシア人のアレクサンドル・コット監督。
現在世界中でウクライナ侵攻を進めるロシア(というよりプーチン政権)への制裁と締め出しが行われていますが、一部のスポーツ界やエンタメ界でもヒステリックにロシア人を差別したり排除する動きがあるようです。

プーチン政権とロシア軍に対して義憤にかられる気持ちは私も同じです。
しかし、コット監督のように心と才能ある人のクリエーター生命まで奪うような愚行は避けていただきたいと思います。



【訃報】
宝田明さん
今月14日。
映画『ゴジラ』に主演したことで知られる俳優の宝田明さんがお亡くなりになりました。
87歳でした。

満州生まれの宝田さんは11歳の時、満州に侵攻してきたソ連兵に右腹を撃たれるという経験をされています。
そんなご自身の戦争体験から常に反戦を訴え続けてこられました。



3/18(土)
『世界大戦争』
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)
『世界大戦争』ポスター画像
これまで私は二度、この『世界大戦争』に描かれているような終末を覚悟したことがありました。

一度目は11年前のちょうど今頃。
東日本大震災によって福島第一原子力発電所ぼ原子炉三つがメルトダウンを引き起こしたときです。
この時は同じ原発立地県に住む者として「ああ、ツケを払うときが来たんだな」と妙に冷静だったことを覚えています。

二度目はつい2週間ほど前。
ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が「ロシアは核保有国だぞ」と脅しをかけてきたときです。
核のスイッチが卑劣な独裁者の手に握られていると分かったとき、福島のときと違って激しい怒りと恐怖を感じました。

『世界大戦争』タカノとサエコ
宝田明さんへの追悼としてこの作品を選びました。
宝田さんといえばなんといっても『ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』などゴジラシリーズの顔ですが、私はなぜかこの映画の宝田さんと星由里子さんとのコミカルな掛け合い(それがかえってラストの悲劇性を際立たせるのですが)が無性に見たくなったのです。

『世界大戦争』宝田明さんと星由里子さん
「世界の戦争の歴史で火薬というものを初めて使ったのはモンゴルの軍隊なんだ。ほら、元寇の役で。だから日本は火薬の洗礼を最初に受けた国なんだ。」

「原爆の洗礼も最初に受けた。広島、長崎でね。」

「水爆の洗礼も最初に受けた。ビキニの灰で。」

「そういう国に生まれた僕たち若い者は再び人類の上に戦争の不幸を招いちゃいけないんだ。」
「今度戦争になって誰か一人の人間が間違って、あるいは慌ててボタンを押したら、もうこの地球は取り返しのつかないことになるんだ。」


この長い長いセリフを一言一言噛みしめるように語って聞かせてくれた宝田明さん。
まさに現在の人類全てに語りかけている言葉に聞こえます。

『世界大戦争』船上にて
また一人、大好きな俳優さんが世を去ってしまいました。
宝田明さんのご冥福をお祈りいたします。


<(_ _)>
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
スポンサーサイト



COMMENTS

2 Comments

There are no comments yet.

へろん  

『世界大戦争』、直接は観ていないのですが、当時はこうした映画がいくつか撮られていましたね。それだけ第三次世界大戦が肌で感じられる状況だったんだろうと思います。この作品の連邦国と同盟国って手塚治虫『来るべき世界』のスター国とウラン連邦を思い出しますが、『来るべき世界』に比べて希望が無いのが悲し過ぎますね。

私も1980年代には第三次世界大戦の可能性を感じていて、聞きかじりから何となくヨーロッパで始まりそうな、なんて思ってました。それが心から「やばい」と感じたのは1990年のイラクによるクウェート侵攻で、本当に第三次世界大戦につながるんじゃないか、と暗い気持ちになりました。
それがまさか30年以上も経ってまた同じ気持ちになるとは、恐ろしいものです。真偽のほどは分かりませんが、先日週刊誌が書きたてていたロシアの自動報復装置って、小松左京『復活の日』で描かれてるんですよね。本当にあるとすれば20世紀の負の遺産そのものですが、いいかげん20世紀の亡霊は断ち切れる世の中になってほしいものです。

2022/03/22 (Tue) 07:26 | EDIT | REPLY |   

トガジン  

へろんさん、コメントありがとうございます。

優れたSF作品って、実は科学や化学の面はもちろん政治経済に関しても徹底した取材の元に作られていて、そのため非常に優れた未来予測になり得ています。
SFに書かれた内容が数年後現実になったりすると、TVのバラエティ番組や週刊誌が「●年前に予言されていた!」とか騒ぎ立てますがそんな軽薄なものではないんですよね。

『世界大戦争』お薦めです。
機会があったら是非見てみてください。
宝田さんと星さんの最後のモールス信号と、ラストのフランキー堺さんのどこにもぶつけようのない怒りと悲しみは、今の情勢下でこそ必見かと思います。

2022/03/22 (Tue) 21:25 | EDIT | REPLY |   

REPLY

Leave a reply