週刊映画鑑賞記(2022.8/1~2022.8/7)

今週は新旧『サイボーグ009』まつりでした。
『サイボーグ009』(白黒版TVシリーズ全26話)🈠
(自室:液晶テレビ)

毎週の記事には書いていませんでしたが、実は私、春から東映チャンネルで放送されていた白黒版『サイボーグ009』(全26話)を全話欠かさず見ておりました。
今週初めにようやく録画していた全話を見終わりましたが、さすがに26話全部をレビューするわけにもいかないので、特に印象に残った回のみ感想を書き記すことにしました。
この白黒版TVアニメを観たのは今回が初めてですが、実はエンディング曲「戦い終わって」だけは中学生の頃からよく知っておりました。
当時カラーの新作TVアニメ版が人気を博していたことから、あるFMラジオ番組で旧作のオープニングとエンディング曲を放送したことがあったのです。
私はたまたまその番組をラジカセで録音していて、何度も繰り返し聴いて記憶にしっかりと刻み込んでいました。
特に「戦いおわって」の豊かな抒情性とカッコ良さは思春期真っ只中のアニオタ魂にグサリと刺さり、リメイク版のオープニング「誰が為に」をも超えるインパクトを与えてくれました。
第1話「恐怖の怪人島」

記念すべき第1話ではありますが、なぜか009(島村ジョー)たちがサイボーグであるという基本設定の説明が全く無いままいきなり最初のエピソードが始まります。
また、002、004、005、008は登場すらしません。
まるで視聴者全員が原作や劇場版を熟知していることを前提としているかのような乱暴なシリーズ構成です。
1968年当時、このTV版だけを見た子供たちは作品全体について理解出来ていたのでしょうか?。
第2話「サイボーグXの挑戦」

白黒版『009』最初の衝撃作。
ギルモア博士をライバル視していたオメガ博士が009以上のサイボーグXを作って挑戦してきます。
その元となったのは事故死した少年ナック。
ナックの恋人ミッチーはナックが生きていた!と喜びますが、その姿は完全な戦闘用マシーンとなっていました。

機械の身体にされてしまったうえに自らの手で恋人を死なせてしまったナックが、『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)にぴったり重なって見えました。
最後ナックが命と引き換えに自分の運命を翻弄したオメガ博士を倒すところも、息子を庇って皇帝を葬ったアナキンを思い出させます。
第15話「悲劇の獣人」

核に汚染された未来からタイムマシンで現代に逃れてきたというノア。
実は彼はジョーとフランソワーズの遠い子孫でした。

フランソワーズは目と耳と脳を強化しているだけで女性としての部分はそのまなのかも知れません。
でも、ジョーは?。
子孫がいるということは、改造人間にされても男としての機能は残されていたということでしょうか。
良かったな!ジョー(笑)。

そういえば、原作ではジョーとフランソワーズのベッドシーンが描かれたことがありました。
(ただし、これは両方のファンから猛抗議を受けて無かったことにされたように思います)
第16話「太平洋の亡霊」

白黒版『サイボーグ009』は終戦からわずが22年後の昭和42年に制作されたアニメです。
ほとんどのスタッフは、戦争とその後の苦しい時代を経験していた人たちだったはず。
そのため、全編に渡って「戦争に対する様々な思い」が色濃く出ています。
ただし、それは「戦争はいけないことだ」という道徳的なものだけとは限りません。

「太平洋戦争をやり直したい」
「そして今度は勝ちたい」
戦時中は軍国主義教育を受けて育ったであろう制作者たちは、かつて自分が果たせなかった(参加すら出来なかった)少年時代の夢を無意識のうちに作品に封じ込めていたのかも知れません。
本作の旧日本軍兵器の過剰な活躍シーンを見てふとそんなことを考えてしまいました。
第24話「非情な挑戦者」

この回は特にストーリーが良いとかではありません。
なぜかこの回だけゲストキャラクターがちばてつや先生風になっているのが気になって、むしろストーリーは頭に入ってきませんでした(笑)。
おそらく担当した作画スタッフが当時ちば先生原作の作品も兼任していてごっちゃになってしまったのだろうと思います。

この回ではフランソワーズもしっとりした顔つきになっていて往年のアニオタ心をくすぐってくれます。
とは言え、昭和のアニメファンとしては、『宇宙戦艦ヤマト』一作目で古代やユキの顔が毎回違っていたのを見て慣れてますから特に驚きはしませんがね(笑)。
最終話「平和の戦士は死なず」

「太平洋の亡霊」からは反戦メッセージと同時に戦中派スタッフの「太平洋戦争のリベンジ」願望も感じ取れてしまいましたが、最終回は純粋に反戦テーマを凝縮させていました。

原作と違うのは、人々の心を戦争へと向かわせようとする敵の正体がブラックゴーストのような武器商人などではなく、人形に憑依した人間の悪意の塊というオカルト的な何かであることです。
原作の「ブラックゴーストは人間の醜い欲望が生み出したモンスター」という首領の言葉を、倒しても倒してもすぐ蘇ってくる人形に凝縮して見せたアニメ版スタッフのセンスにただただ感服するばかりです。
8/2(火)
『009 RE:CYBORG』
(ホームシアター:Blu-ray)

昭和時代の白黒版TVシリーズを全話見終えたことで、今度は最新の『009』作品を見返したくなりました。
まずは神山健治監督の2012年公開作品『009 RE:CYBORG』です。

この作品、009ファンには不評らしいですが私はこうしてブルーレイ(しかも3D版と特典映像ディスクも入ったBOX版)を買ってしまったくらい好きなのですよ。

特にジョーが記憶を取り戻すまでの冒頭の流れは、川井憲次さんの音楽とスカイウォーカーサウンドの音響演出の巧みさに乗せられて何度見ても飽きません。

この映画を最初に観たとき、激しく衝撃を受けた部分がありました。
それは、「1964年(原作発表の年)にサイボーグ化された00ナンバーサイボーグたちは、メンテナンスや記憶処理を繰り返すことで今でも初改造時の年齢と容姿を保っている」という点です。

つまり、この映画で描かれている2013年の時点で、彼らの実年齢は全員60歳以上ということになるのです(汗)。
フランソワーズが還暦超え・・・フランソワーズが還暦超え・・・。( ゚ ρ ゚ )ボー

00ナンバーサイボーグが外見上歳をとらないことは分かるとして、ではギルモア博士は?。
公式設定では1960年代にジョーたちを改造した時の彼の年齢は63歳となっています。
ということは、あれから50年以上経った現在は120歳に近いということです。
ギルモア博士も本当は自らをサイボーグ化しているに違いありません。
そうでなければ彼が今でも00ナンバーサイボーグ達をサポートし続けていられるはずはないですから。

あと、今回久し振りに見てふと思ったことがありました。
それは・・・

003最強じゃね?
なにせ、世界中の国家や軍隊にも容易にハッキング出来るうえ、兵器に内蔵されたコンピューターやミサイル発射システムもコントロール可能なのですから!。
アノニマスも裸足で逃げ出す世界最強のハッカーであります。
恐るべし、フランソワーズ姐さん!!。

ぶっちゃけ、「情報化社会の現代においては003以外のメンバーは必要無い」と言っても過言ではありません(汗)。
飛行能力も全身武器内蔵も怪力も火炎放射も水中活動も、どれも現在ではドローン兵器で代用可能です。
例外はテレポートやテレパシーが使える超能力ベビー001と、変身能力でスパイ活動に便利な007、そして超高速行動が可能な009くらいでしょうか。
8/3(水)~8/4(木)
『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

こちらも神山健治監督作品。
元は3部に分けて劇場公開時されたものを全12話のTVシリーズに再編成したものです。
最初は1日4話づつ3日に分けて視聴するつもりでしたが、予想外に面白かったため6話づつ2日で完走してしまいました。
視聴媒体は今月24日で契約期限が切れるNETFLIXです。

今度の敵は太古より人類の歴史を裏で操ってきたとされる謎の存在「ブラスド」。
おっ?。
それってブラックゴーストの復活とか、フリー●イソンとか、イル●ナティとか、ショッカー(違)とかみたいな謎の秘密結社ということでしょうか?。
都市伝説好きな私としてはこのあらすじを見た時点で「面白そう!」と食いつきました。

キャラクターデザインも声優も一新されていますが、内容的には『009 RE:CYBORG』の数年後の出来事ということになっています。
やはり彼らは冷戦時代に改造されたことになっていて、60年代に暗躍したことや『RE:CYBORG』でドバイ核攻撃に関与したことにも触れられています。
つまり、『009 RE CYBORG』と同じく実年齢は見た目とまるで違って全員還暦超えということです。

今回幼い顔立ちに変更されている003も、本当の年齢は古希に近いのです!。
しかし、サイボーグはボディやフェイスデザインを自在に変えられるので外見上の年齢に意味はありません。
現代における『サイボーグ009』の最大のSFポイントとは実はこの部分なのかも知れません。
そうと分かってはいても、私程度のSF脳ではついていくのが大変ですが・・・(汗)。

今回のラスボスの声を演じるのは、なんと昭和54年のTV版で009を演じた井上和彦さんでした。
かつては人類と世界を救おうと努力していた人物ですが、過ちを繰り返す人類に絶望して「人類の記憶をリセットする」ことを計画します。
見た目も009と同じ髪型をしていていかにも「裏009」といった感じになってます。
「全人類の記憶をリセットして最初からやり直す」という計画は、神山監督が手掛けた『009 RE:CYBORG』の「人類をやり直す」と同じもののように感じます。

なかなか面白かったですが、最後の最後に曖昧な部分を残していることだけが残念でなりません。
サイボーグ戦士9人のうち、004は宇宙ステーションと運命を共にして犠牲となり、002は激戦の末消息不明に。
そして009は加速装置の限界を超えて時空の彼方へと飛び去ってしまいます。

しかし、どういうわけかラストでは9人全員のシルエットが映って終わります。
009と002はともかく、004はあの状況からどうやって生還したのでしょうか?。

その意味で有名原作の映像化における限界のようなものも感じました。
主人公がそれまでにない超越した能力を手に入れたとしても、また主要人物の誰かが生命を落としたとしても、最後は必ず元の状態にリセットして9人揃って終わらなければならないのですから。
ここで再び、最初の白黒版TVアニメのエンディングの一節が思い出されます。
♪
いつの日か再び みんなでここに立とう
嗚呼、我らサイボーグ 平和の戦士
作詞は原作者の石森章太郎先生。
全ての『サイボーグ009』はこの歌に帰結するのです。
【豪雨災害】
今週に入り日本各地で豪雨災害が発生しましたが、我が福井県にも4日(木)から5日(金)にかけて線状降水帯が襲来しました。
私の住む地域では幸い大きな災害には至りませんでしたが、この大雨は奥越地方や丹南地区に多大な被害をもたらしました。

特に丹南の南越前町では例年の8月の総降水量の2倍の雨が降ったそうです。
そのため、南越前町の一部では床上浸水や土砂崩れで大変な状況になっていて、水道やガスなどの生活インフラも失われています。
JRの駅と線路は水没し、国道8号線と高速道路も今庄から敦賀の間で土砂崩れが起こって全ての交通手段が失われている状態(8月7日現在)になっています。

実は、つい先日まで福井県を舞台にした映画の撮影が行われており、私もエキストラの一人として何度か撮影に参加させていただきました。

そして、そのうちの先月23日(土)の撮影現場がまさに今回豪雨被害に遭った南越前町だったのです。

当日はこの河川敷で殺人事件の捜査が行われる場面を撮影しましたが、現在はこの地域もあの濁流で大変なことになっていることと思います。
エキストラ参加者の中には「家はすぐそこ」と笑いながら言っていた近所の人も何人かいらっしゃいました。
あの人たちが全員ご無事であることを祈るばかりです。
このエキストラ出演の記事は来週中にアップする予定でしたが、現状に鑑みて当分の間見合わせることにします。
今週もお付き合いいただきありがとううございました。
<8月8日20:20追記>
本日、現地へ取材に行ったマスコミ関係の友人に(仕事のついででいいので)あの現場近くを見てきてくれるよう頼んでみました。
その友人曰く、豪雨のために交通・電気・水道などが麻痺状態になっているのはもっと上流のほうだったそうで、この付近の川は水は確かに汚れてはいましたが周辺の村に被害は無かったそうです。
ということは、あのとき撮影でご一緒した地元の皆さんもご無事だったということです。
本当になによりでした。
そして、被災された地区の皆様に心よりお見舞い申し上げます。