福井県限定『ザ・カゲスター』聖地巡礼ガイド

『ザ・カゲスター』は、姿影夫と風村鈴子が高圧電流を浴びたことで肉体と影が分離出来るようになり、二人の影がカゲスターとベルスターとなって悪と戦うという昭和51年制作の特撮ヒーロー番組です。
それまでのヒーローと違って「変身」ではなく「影が分離」するという珍しい設定ですが、影がカゲスター&ベルスター化している間の影夫と鈴子はまるで魂が抜けてしまったかのような無気力人間になってしまいます。
今回46年ぶりに見返して「カゲスターって実は生霊みたいなものなのか?」と思ってしまいました。
どうせなら影が分離するのではなく、悪に向かって放たれる正義の生霊ヒーローにしたほうが新しかった気がします(笑)。

その『ザ・カゲスター』が東映チャンネルで5月から週に2話づつ再放送されておりました。
今回は全34話の中から、第23話「怪人カニガブラー 首狩り作戦!」と第25話「ドクガルダー 人喰い作戦!」を紹介します。
実は『ザ・カゲスター』は22話から25話にかけて北陸地方へ遠征ロケに来ていて、そのうち23話と25話後半は我が福井県が舞台となっているのです。
しかも、ロケ現場は私も子供の頃よく遊びに行った地元の有名景勝地!。
当時の私(小学6年)は特撮ものから一時的に気持ちが離れていましたが、「地元で『ザ・カゲスター』の撮影をしていた」と知ってからは福井ロケの回とベルスターのパンチラを楽しみに毎週欠かさず見るようになりました。

今回はせっかく地元が舞台の作品なので、当時ロケが行われた場所へ行って現場の写真を撮ってきました。
例えば第23話の最後でカゲスターとベルスターが勝利ポーズを決めたこの場所は・・・。

現在はこんな感じです。
樹木の生え具合以外は当時と全く変わっていません。
46年前にカゲスターとベルスターが立った位置は中央部の赤っぽい樹木があるあたりだったと思われます。

そして、これが現場の岩場全体です。
よくもまあ、あんなヒラヒラした衣装を着てあの急な岸壁をよじ登ったものだと感心してしまいます。
他にも「ああ、この場所でカゲスターが戦ったのだな」とか「こんな危ないところで撮影してたのか、怖っ。」とか当時の撮影風景を想像しながら現地を見て歩きました。
こういう楽しみ方が出来るのは地元民の特権ですね。

まずは第23話「怪人カニガブラー 首狩り作戦!」から。
北陸ロケ編は第22話から始まっていますが、22話はお隣石川県の話だったので今回はスルーします。

ちなみに、この回の怪人:カニガブラーは福井名産の越前ガニをイメージしたものです。
ありがとうございます、東映さん。
福井県民の一人として厚く御礼申し上げます。

冒頭でカニガブラーの犠牲となった海女さんが打ち上げられた海岸。
息子の少年が母の遺体にすがりついて泣いているところに影夫と鈴子がやって来るシーンです。

実は良く知っている場所だったので、出来るだけ同じアングルとフレームサイズで撮ってみました。
笑ってしまうくらい全然変わっていません。

ここは私も子供の頃夏休みに友達や従兄弟たちと何度も遊びに行った越前松島の「長茶ケ浜」という遊泳場です。
砂地の海水浴場ではなく遠浅の岩場なので、普通に泳ぐだけでなく銛や網で魚を獲って遊ぶことも出来ます。
また、海が深いところでは岩の上から飛び込みして遊ぶことも出来るので砂地の海水浴場より好きでした。
私は奥にある怪獣の頭みたいな岩をゴジラ島と呼んで、あそこまで泳いで行って鼻先あたりから飛び込みして遊んでました。
ただ、浅瀬を裸足で歩くと指を岩にぶつけたり稀にウニを踏みつけて大ケガすることがあるため、ここで遊ぶときはビーチサンダル必須です。
それと、コンクリートで固められた通路は藻でヌルヌルしている部分が多いため滑って転ぶ人が多いです。
聖地巡礼の際にはくれぐれもケガにご注意ください(笑)。

「長茶ケ浜」を含めた越前松島は美しい柱状節理を持つ小島が点在する名勝で、それらの島々を橋を渡って見て歩けるようになっています。

番組内ではその橋の上でもカゲスターと戦闘員たちが戦いを繰り広げました。

その橋の現在の姿がこちら。
コンクリートの橋脚に岩が埋め込まれて自然に近い見た目になっており、橋のデザインも木目調の見た目に変わっています。
しかし・・・。

現在は老朽化のため通行禁止になっていました。
46年前にカゲスターと戦闘員が戦った同じ場所に自分も立ってみたいと思っていたのに残念です。

画面奥に雄島(25話の舞台)を望む小島での戦い。
位置関係から見て越前松島の島の一部で撮っていることは間違いありませんが、橋を渡れないためこれと同じ画角の写真は撮れませんでした。
無念・・・。

カニガブラーを追っているうち、ある洞穴を発見したカゲスターとベルスターは「サタンのアジトかも?」と二人で中へ攻め込んでいきます。

なんてバチ当たりな!。
この洞穴は越前松島三洞穴の1つ「観音洞」です。
昭和初期に人骨が多数出土したという場所で、その名の通り奥には観音様が祀られています。

カゲスターとベルスターが颯爽とポーズをとっているこの場所。
カメラがズームアウトすると・・・?。

実はここ、「飛び降り自●」が多いことで全国的にも有名な東尋坊の岩場の上です。
このショットは比較的安全な場所に立って撮影していますが・・・。

こんな端っこでベルスターがマントとスカートをひるがえしながら戦う場面も出てきます。
ベルスターは顔の下半分が見えているため、風村鈴子役の早川絵美さんが自らアクションシーンを演じています。
もし、足元が狂ってここからヒロイン女優が落ちたりしたら?と思うとゾッとします。

その場所はここ!。
落ちたら本当にヤバイところです。
早川さんをはじめスタントマンたちの度胸というか役者根性には脱帽します。

また、高所でカゲスターたちが戦っているこの場所もマジで危ないです。

この崖下は海ではなく岩場なので落ちたら一巻の終わりなのです。
視界が限られているカゲスターやカニガブラーの中の人はさぞ緊張しながら演じていたことでしょう。

よく見ると、崖にしがみついたまま動けなくなっている戦闘員がいます。
彼はあそこからよじ登ってカゲスターに挑みかかっていくはずだったのが、なんらかの手違いで身動きが取れなくなってしまったものと思われます。
このあとのアクションのことを考えるとおそらく彼は命綱なんか付けていないでしょう。
見た目はかなりお間抜けですが、この場所の危険性を知ったうえで見ると笑う気にはなれません。

また、こんな斜めで立ちにくい場所で戦う場面も!。
動き回る戦闘員の皆さんはさぞ大変だったことでしょう。

ただし、東尋坊の全ての場所が危険というわけではありません。
実は飛び込み遊びも出来る安全な場所も存在します。
(私も中学の頃そこでよく遊んでました)

それでも、こうして岩の上から海面を見下ろすとなんだか吸い込まれそうな気分になってしまうのが東尋坊という所です。

次の第24話は東京でのお話でしたが、第25話はまるで24話が無かったかのように舞台が再び北陸地方に戻ります。
放送順を間違えたのか?。
あるいは25話の完成が遅れたため、とりあえず先に出来上がった24話を放送したのか?。
どちらにせよ、いい加減・・・もとい、おおらかな時代だったのですね(笑)。

今回敵のサタン帝国が根城にしたのは、東尋坊の近くにある雄島という離島です。
島と本土の間に架けられた赤い欄干の橋が特徴です。

現在の橋は昭和56年に架け替えられたもので撮影当時のものと較べると幅がかなり広くなっています。
この日は補強工事中だったため見栄えが今一つだったのが残念です。
実はこの雄島、オカルト好きには結構有名な心霊スポットなのです。
潮の流れの関係で東尋坊で身投げした人のご遺体がこの島の裏側に漂着することが多いそうで、この近くに住んでいる中学時代の友人は「この島付近で何度か土左衛門を見たことがある」と言っておりました。
そしてこの島の裏側が霊の通り道になっていて、正面の階段を登ったところから左回りに島を一周すると様々な霊が憑いてくるという怖い言い伝えがあります。

また、夜中にこの赤い欄干近くで写真を撮ると、橋の下から延びてくる無数の白い手が写ることがあるそうです。
ただ、私は子供の頃この島周辺で何度も遊んだことがありますがそういった霊的体験は一度もしたことがありません。
私が単に霊感ゼロの鈍感だからか?。
それとも、本当はただのホラ話なのか?。
しかし、流石に「島を左回りに一周」だけは怖くてやったことはありません。
一度地元の友達を誘ってみたことはあるのですが、彼は真剣な顔で「それだけは絶対やったらアカン!」と怒り出しました。
つまりそういう場所です。

その神聖な島へと続く橋を派手なバイクで疾走するベルスター。
この後の敵との戦いよりも、島の祟りのほうがよっぽど心配だったりします(笑)。

こちらの建物は22話・23話・25話に出てくる山代温泉(石川県)の老舗旅館山下屋さんです。
影夫や鈴子たちはここに宿泊して越前松島や東尋坊へと行き来していることになってます。
スタッフとキャストはタイアップでここに宿泊し、石川県と福井県の話を撮影していたものと思われます。

ちなみにこちらが現在の山下屋さん。
さすがに山代温泉まで写真を撮りに行く時間は無かったので公式HPより拝借しました。

昭和46年当時と比べてずいぶん規模が大きくなっていますが、本館部分の建物は当時のままです。

23話と25話は地元の人間としてはこの上なく楽しい回ではありましたが、いくつか気になるところもありました。
まず、東京の子供たちと福井の漁師の子の服装の差です。
これでは昭和と江戸時代ではないですか!。
いくらなんでもこれはあんまりです。
「どんだけ田舎を馬鹿にしてるのか」と、ここだけはイラっとしてしまいました。
それと、山代温泉と福井の東尋坊がすぐ近くであるかのように描かれていて地元民としてはツッコミどころ満載でした(笑)。
この点は石川県の皆さんも同じ気持ちだったと思います。

『ザ・カゲスター』北陸ロケは、おそらく制作スタッフ&キャストの慰安旅行を兼ねて行われたものと思われます。
でも、残念!。
越前ガニの旬は11月初旬から翌年3月までなのです。
北陸ロケが行われたのは夏でしたから完全にシーズンオフだったわけで、スタッフさんも出演者さんも新鮮な越前カニは食べられなかったことになります(笑)。

『ザ・カゲスター』第23話と第25話は見知った場所が次々出てくるので見ていて嬉しくなってしまいました。
その代わり、ストーリーは全然頭に入ってきませんでしたが・・・(笑)。
ロケ地巡りも小規模ながらとても楽しかったです。
本当は25話放映後か最終回直後に写真を撮りに行くつもりだったんですが、その頃は連日36度越えの猛暑日が続いていたりあるいは豪雨に見舞われたりもしてとてもそんな呑気なことをしていられる状態ではなかったのです。
8月末になってようやく涼しくなってきたので、天気の良い休みの日にロケ地巡りをしてきました。
特撮ファンの皆様の『ザ・カゲスター』聖地巡礼の参考になれば幸いです(笑)。
ローカル話にお付き合いいただきありがとうございました。