週刊映画鑑賞記(2022.8/29~2022.9/4)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週はこの3タイトルです。
ただし『戦国自衛隊』はピュア4K放送版と2Kダウンコンバート放送版の両方を見たので実質4本見たことになります。
8/29(月)
『戦国自衛隊(4Kリマスター)』(ピュア4K放送)
(ホームシアター:日本映画+時代劇4K録画)

角川さん、日本映画専門チャンネルさん、『犬神家の一族』に続き今回も素晴らしい4Kリマスターをありがとうございます!。
中学時代に劇場で観て以来、LD・DVD・ブルーレイと買い継いで何度も見返している映画ですが、今回は丁寧なフィルムレストアと4Kリマスター化により画面が隅々まで鮮明になっています。
この日は仕事で結構疲れていたはずなのに最後まで集中して見てしまいました。

今回の『戦国自衛隊』はなによりもまず岡田奈々さんがお美しい!。
まさに目と心の保養!。
このショットの4Kリマスター作業にかけたスタッフの熱量が場面からビンビン伝わってくるようです。

映像の綺麗さは当然として、5.1chサラウンドにリミックスされた音声も凄く良い出来でなんだか得した気分になりました。
特にタイムスリップする時の轟音や周囲を飛び回る海鳥たちの鳴き声が妙にリアルになってます。
しかも、AVアンプでドルビーアトモスにリミックスされたことでそれらの音が頭上からも聞こえてきて、まさにタイムスリップしているような感覚に包まれました。

夏木勲さんが演じた長尾景虎とは後に越後の国(現在の新潟県)を中心に北陸地方を支配した上杉謙信の若い頃の姿です。
しかし、初めてこの映画を観たとき、私は彼を織田信長をモデルにした架空の武将だと思い込んでいました。

というのは、景虎の部下の中に「猿」と呼ばれている武将(写真中央の人物)がいたからです。
その「猿」を演じていたのは『ミラーマン』の藤本隊員こと工藤堅太郎さんでした。
見覚えある俳優さんが「猿」とか「知恵が働く」と言われる武将を演じていたことから、私はこの武将を木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)だと思い込み、そこから景虎を信長に見立てていたのです。
これは約1年後にテレビ放映されたときも、ハナからそう思い込んで見ていたため修正されることはありませんでした。

自分の勘違いに初めて気付いたのは90年代に入ってレーザーディスクを買って見返したときです。
改めてよく見ると、景虎の主君(演:小池朝雄)の名前が小泉越後守行長となっているではないですか!。
信長なら尾張の武将である筈です。
それで改めて調べてみて、恥ずかしながら長尾景虎=上杉謙信であることを社会人になってから初めて知ったのでした。
しかし。
よくよく考えると、この最初の捉え方は案外間違ってはいなかったのかも知れません。

「歴史は俺たちに何をさせようとしているのか」
これが映画『戦国自衛隊』のキャッチコピーでした。
「風・林・火・山」の大軍を擁する武田騎馬軍に、少数ながらも近代兵器を駆使して立ち向かう伊庭三尉率いる戦国自衛隊。
この戦いは本当ならば景虎が戦うはずだった川中島の合戦でした。
その間に景虎自身は西に向かって浅井(滋賀)と朝倉(福井)を攻めることになります。

伊庭たちは(史実では)景虎が5回の川中島の戦いでも成し得なかった武田信玄を打ち取ることに成功します。
しかも息子の勝頼までも討ち取ったことで、武田家は史実より早く滅びることとなりました。
そして景虎は(川中島の戦果を自ら見に来ていたことから)無事に浅井・朝倉連合を打ち破ったことが分かります。
しかし、史実では浅井・朝倉連合を根絶やしにし、さらに桶狭間の戦いで武田を滅ぼしたのは織田信長だった筈です。
ところが、この映画には織田信長という人物は全く登場しません。
そればかりか織田家とか信長という名が語られることすらありません。
歴史が自衛隊員をタイムスリップさせてまで彼らにさせたこと、それは彼らに織田信長の代役をやらせて信長の存在そのものを無かったことにすることだったように思えます。

伊庭が信玄を討ち取った後、再びタイムスリップが起きる兆候(金星の位置が変わる)が現れます。
しかし、伊庭がこの時代で天下を取ることに固執したため、生き残った隊員たちは誰一人現代に帰ることは出来ませんでした。
もしあのあとすぐ元の浜辺に戻っていたら、彼らは「お役御免」で現代に帰還出来ていたのでしょうか?。
しかし、その場合彼らが戻る現代とは、織田信長が存在せず武田家と浅井・朝倉連合が史実より早く滅びたことで元とは違う歴史を歩んだ末の現代であって、元の世界とは全く変わってしまっている可能性が高いです。
それがどんな世界に変わっているかはあまりにも壮大過ぎて私程度の頭では想像もつきません。
彼らがあの時点で命を落としたことはむしろ幸せだったのかも知れません。
なぜなら、生きて元の時代に戻れたとしてもそれが自分たちが覚えている平和な昭和である保証は全く無いのですから。

この映画、主演は確かに千葉真一さんですが、最も魅力的だった人物は夏木勲さんが演じた長尾景虎でした。
初めて自衛隊の兵器に触れて無邪気にはしゃぐ姿から、敵将の首を跳ねて返り血を浴びて勝ち誇る戦国武将としての顔。
そして、伊庭の本性を「同族」と一目で見抜き、尊敬出来ない上司は「卑怯者。大たわけ。」と言い放って切り捨てる。
まさに男前!。
しかし。

川中島の戦いで全ての戦力を失った伊庭たちを「もはや用済み」と断じた将軍や関白たちは細川藤孝に彼らの処分を命じます。
それを聞いた景虎は「待たれよ!」と制し、自らの手で伊庭を葬ることを決意します。

男同士の友情と逆らえぬ時代の流れの間に挟まれて苦渋に歪む景虎の表情。
この場面の景虎は何度見ても胸が苦しくなります。
まさに名演!。
夏木さんが演じた長尾景虎という男の魅力こそが、この荒唐無稽な映画が40年以上経った今も大勢の人たちを惹き付けてやまない理由の一つです。
『戦国自衛隊』についてはまだまだ書きたいことがてんこ盛りなのですが、全部盛り込むと大変な長さになってしまうため今回はかなり割愛しています。

自衛隊きっての陸上ランナーだが、実は女子高生のブルマ姿に気を取られるようなスケベで決戦前夜には夜這いも楽しんだ森下役が実は『仮面ライダーX』の速水亮さんだったこと。
「忙しい忙しい」とボヤキながら1カットだけ登場する草刈正雄さんの謎。
桃太郎みたいな恰好をした薬師丸ひろ子さんの出オチシーン。
自らの意志で戦国時代に残ることを決めた根本(ムッシュかまやつさん)のこと。
冷静で部下思いだったはずの伊庭の変化(あるいは本性)。
そして映画中盤で描かれる矢野の反乱シーンの存在意義。
等々・・・
『戦国自衛隊』は本当に好きな作品なので、いつの日か単独レビュー記事として書き記したいと思っております。
あ、でも最後にひとつだけ。

越後の国(新潟県)が舞台の『戦国自衛隊』ですが、実は越前の国、つまり我が福井県で撮影されたシーンがあります。
景虎が伊庭三尉率いる自衛隊と結託して主君を裏切る場面です。
その主君の居城として撮影に使われたのが、我が福井県の丸岡城でした。
丸岡城と『戦国自衛隊』については、以前花見がてらに丸岡城をロケ地巡りしてきた記事がありますのでそのリンクを張っておきます。
>花と映画と母への手紙 (2018/4/3)
4年前の記事ですがこちらもご覧いただけましたら幸いです。
8/30(火)
『戦国自衛隊(4Kリマスター)』(2Kダウンコンバート放送)
(自室液晶テレビ:時代劇専門チャンネ録画)

翌日は時代劇専門チャンネルで放送された2Kダウンコンバート版を見てました。
今度はシアタールームではなく自分の部屋のビエラで再生しました。

途中、妻がコーヒーを入れてきてくれたんですが、そのタイミングがちょうどこの景虎と伊庭がふんどし一丁で熱く語り合う場面でした。
このとき、二人のふんどし姿を見ながら彼女が放った衝撃の一言。
「上杉謙信って、ほんとは男色家だったのよね~。」
忘れてた・・・そういえば妻は歴女だったのです。
劇場での初観賞以来43年。
男が男に惚れ合うこの名場面が、全く別の意味を持って見えるようになってしまいました(汗)。

妻のせいで妙な気分にさせられましたが、岡田奈々さんの憂いを帯びたお姿を愛でることでなんとか気持ちを入れ替えました(笑)。

しかし、一度そっち系に意識が向いたことから、この映画にもう一人Gな人が存在していることに気付いてしまいました。
それは鈴木ヒロミツさん演じる西沢一等陸士です。
愛する女性に会いたい一心で隊を抜け出した菊池一等陸士(演:にしきのあきら)に、何故か西沢は「俺も行くよ」と付いて行ってしまうのです。
西沢「女ってそんなにいいものか?」
菊池「お前だって誰かを好きになったことあるだろう?」
西沢「ないね、俺には。女を好きになったことなんて・・・。」
今までは単に非モテ男の僻みとしか聞こえなかったこのセリフが、今回だけは「ああ、なんて切ない西沢の片想い・・・」としみじみとしたものに聞こえてきました。
・・・って、何を考えて見ているのだ私は?。
この日は妻の下らない一言ですっかり調子が狂ってしまいました(汗)。

その後、再び岡田奈々さんを愛でて気持ちを切り替えたことは言うまでもありません(笑)。
8/31(水)
『バズ・ライトイヤー』🈠
(ホームシアター:ディズニープラス)

ここ2ヶ月ほど解約を前提にNETFLIXばかりを見ていたため、その間はディズニープラスは一本も見てませんでした。
月額980円の元を取り返すべく、当分の間毎週最低一本は何がしかディズニープラス作品を見ることにします。

『トイ・ストーリー』シリーズのスピン・オフということで軽い気持ちで観始めた作品でしたが、なかなかどうしてハードで切ない優れたSFアニメでした。
特に前半のウラシマ効果を扱ったSF要素が良かったです。
バズは自分の腕を過信した結果、仲間全員を未開の惑星から出られなくしてしまうという取り返しのつかない失敗を犯します。
責任を感じたバズは脱出のための光速飛行のテストパイロットを買ってでますが、ウラシマ効果でバズが4分間の光速テスト飛行をするたびに同年配の仲間たちが4年づつ歳をとっていきます。
バズの視点から見ると相棒だった女性レンジャーが4分毎に会うごとに結婚して子を産み育て最後には孫まで生まれて、バズが最後の光速飛行から帰ったときには既に世を去っていたというあまりにも無情な展開・・・。

後半では、未来の年老いたバズがザーグと名乗って光速航行を応用して作ったタイムマシンでやってきます。
ザーグ(未来のバズ)は自分自身が犯した過去の重大な失敗を無かったことにしようとしていました。

現在のバズ自身もあの時の失敗を悔やみ続けていたため一度はその話に乗りかけますが、歴史を変えてしまったら現在一緒に努力している仲間たちとは会えなくなることに気付きます。
過去の汚点を隠すことより今の仲間たちとの時間を選んだバズは、歪んだ考えに取りつかれた未来の自分と戦うことになります。
また、『トイストーリー2』でおもちゃのザーグが「自分はバズの父親だ」と名乗っていましたが、それを単なる『スター・ウォーズ』のパロディに終わらせることなく違った解釈で話を大きく広げて見せてくれました。

この作品には同性婚とその二人のキスシーンが描かれていて、それが問題となって最大市場である中国をはじめ14ヶ国で上映禁止にされてしまいました。
逆にそのことで注目を集めた作品でもあります。
それにしても、とうとうディズニーアニメにまでLGBTQが侵食してきましたか・・・。
これではノーマル男女とLGBTQのどっちがマイノリティなのか分からなくなりそうです(笑)。

『バズ・ライトイヤー』は、『トイ・ストーリー』のアンディが幼い頃に大好きだった映画という位置づけです。
だからこそアンディはクリスマスプレゼントにバズのオモチャを買ってもらえてとても喜んでいたわけです。
でも、アンディは幼い頃にこの映画を見たとき「同性婚」というものをちゃんと理解出来ていたのでしょうか?。
ディズニー映画で同性婚を描くこと自体には別に反対しませんが、元来子どもたちに向けて作られたアニメ『トイ・ストーリー』シリーズの関連作品に同性愛シークエンスを盛り込む必然性は無かったと思います。
ところで・・・。
期せずして、2本続けてタイムトラベルとLGBTQ系の話を選んでしまいました(笑)。
『バズ・ライトイヤー』は情報を全く知らずに観始めたのでこれは全くの偶然です。
9/1(木)
『かぐや姫(短縮版)』🈠
(ホームシアター:日本映画専門チャンネル録画)

当時30代だった円谷英二特技監督がカメラマンとして参加した作品です。
国内ではフィルムは全て失われてしまっていて長い間「幻の映画」とされていました。

ところが、7年前に33分に再編集されたフィルムがイギリスで発見されました。
これはロンドン日本協会から「イギリス人や現地邦人向けの上映会のために日本の伝説や童話を題材にした映画が欲しい」と要請されてオリジナル75分の『かぐや姫』を33分に短縮再編集したものがイギリスに渡ったものです。
このときカットされて完全に失われた残り42分のフィルムの中には日本のアニメーションの草分け的存在だった政岡憲三さんの人形アニメーションも含まれていたそうでその場面も見てみたかったです。
その短縮版フィルムが2015年にイギリスに現存していることが分かり、フィルム修復を経て東京のみで上映されました。
そして今回、日本映画専門チャンネルの「円谷英二特撮4Kの世界番外編」として(4K放送ではないですが)特別に放送されることとなったのです。

オリジナルから半分以下に短縮されてはいますが、それでも円谷監督の特撮技術の片鱗とカメラマンとしての画作りセンスが随所に現れています。
昔の街並みの俯瞰映像は『ゴジラ』や『ウルトラマン』でお馴染みのミニチュア撮影ですし、竹の中から幼いかぐや姫が誕生する場面は煌々と輝くかぐや姫に老夫婦の後ろ姿を合成(あるいはスクリーンプロセス)して作ることで、かぐや姫が異世界の人であることを表現しています。

しかし・・・。
この日は屋外仕事で結構疲れていたせいか、たった33分の映画なのに途中でどうしようもないほど睡魔に襲われて途中で寝てしましました。
どうやら元はミュージカル映画だったらしく、随所に「♪か~ぐ~や~ひ~め~」という合唱歌が流れてきて、セリフ回しもずいぶんまったりした感じでそれらがまるで子守唄のように眠気を誘うのです。
気が付いたらもう終わってしまっていて、慌ててもう一度覚えているところから再生して最後まで見なおしました。
ラストは皆が知ってる『かぐや姫』の物語とは全然違っていてビックリです。
かぐや姫には幼い頃から相思相愛の彼氏がいて、時の権力者が「自分の息子の嫁に」と無理強いしてきたとき「かぐやは実は月からやって来た女性で大人になったら月から迎えが来る」とウソをつき、権力者たちが月に警戒している間にかぐやと彼氏は幸せそうに歌いながら駆け落ちしていくという思わず唖然となるラストシーンでした。
なんちゅう思い切った原作改変!。
それじゃこの映画の竹から生まれたかぐや姫って何者だったのでしょうか?(笑)。
<(_ _)>
今週もお付き合いいただきありがとうございました。