週刊映画鑑賞記(2022.11/21~2022.11/27)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
今週見たのはこの2本です。

11/23(水)
『夏への扉 キミのいる未来へ』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)

ロバート・A・ハインラインが1956年に発表した名作SF小説を現代の日本に置き換えて映画化した作品です。

原作を読んだのは中3のときです。
『宇宙の戦士』と同じ作者によるタイムトラベルものということで無性に読みたくなったものの、残念ながら学校の図書館には置かれていなかったため文庫本を買って読みました。
当時、マンガは絶対に買ってくれなかった母親も、「読みたい小説があるけど図書館になかった。」と言うと喜んで資金を出してくれたのです。
あと、この本を読んでいたとき、タイトルを覗き見た母親が何を勘違いしたのか「あら~、あんたもこういうの読むようになったんやね~。」とニヤニヤしながら言ってきたので「違う違う、これはSF小説や!。」と必死に弁明したことも今は懐かしい思い出です(笑)。
あまりに面白かったので、自分で時間軸の図を描いて時間の流れと主人公の動きを整理して2~3度読み返しました。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作をそれぞれ一回見ただけで内容(時間軸の流れと変化)を正確に理解出来たのは、中学時代に読んだ『夏への扉』と、幼少時から親しんでいた藤子不二雄先生の『ドラえもん』のおかげだと思ってます(笑)。
時代と舞台を現代日本に翻案して映画化すると知った時には主演がイケメン若手俳優ということに警戒心があったものの、原作が好きだったことと翻案部分にかなり興味があって見に行く気満々でおりました。
しかし、本当なら昨年2月に公開するはずだったのが例のウィルス感染の影響で公開延期になってしまい、その後情報が混乱したこともあって劇場公開時にはうっかり見逃してしまいました。

脚本は原作を現代日本にアレンジしただけでなく、更にオリジナル要素も加えていてよく出来ていたと思います。
原作を知っている私でも、主人公が未来世界で得た仲間たちの協力で逆転に成功する爽快さと伏線回収の心地よさが楽しめました。
(タイムパラドックス問題については元々原作が内包していたものなので不問に付します。)
三木孝浩監督は以前『僕は明日昨日の君とデートする』でも時間SFを手掛けていますが、「時間の可逆性」という難しい設定をうまく表現しきれずに作劇そのものも空中分解していました。
あの『僕は~』と同じ監督ということで内心不安はありましたが、今回は原作と脚本が良かったおかげでSF映画として成立しています。

この映画、何といっても猫のピートが最高です!。
特に主人公を助けるとか逆転のチャンスを作り出す存在というわけでもないのですが、夏への扉の存在を決して諦めないピートの行動がこの作品の根幹となっています。
猫のピートの遠い空を見上げる瞳が映画ならではの説得力をもたらしました。

そのご褒美なのか、ピートが主役のポスターも作られたみたいです(笑)。

映画オリジナルキャラクターの介護用アンドロイド:ピートも、「コミカルなターミネーター」といった感じでとても良いキャラでした。
原作に登場した30年後の職場仲間に相当するキャラクターだと思われますが、未来世界での相棒を高性能なアンドロイドに設定変更したことで映画的面白さが出たように思います。
演じたのは藤木直人さん。
以前はイケメン俳優&歌手として名を馳せた人ですが、今はこういう渋くてクセのある役もやるようになっていたのですね。

ピートの謎めいたセリフ「まだお気づきになりませんか?。」「私はあなた(主人公)の子供です。」の意味がまだ気になっていて、時間があればもう一回最初から見返したいと思っています。

そして、主人公を密かに想う血の繋がらない義理の妹(なんという魅惑的な存在!):莉子を演じる清原果耶さんが最高です!。
「この子を救ってあげてくれ!」と観客に思わせることがこの映画の第1のキモですが、彼女は完璧にその役割を果たしています。
(ネタバレになりますが)密かに想っている主人公からいつも子供扱いされていた莉子は、主人公が再度コールドスリープした10年後、彼との年齢差を埋めるため自分もコールドスリープに入ります。
原作のミッチー(莉子に相当する少女)も数年後にコールドスリープして主人公との年齢差を縮めていましたが、それは主人公の希望によるものでした。
しかし、この映画の莉子はあくまで彼女が自分の意志で決めていたのです。
その理由を「猫のピートと同じく諦めが悪い」としたことで、この映画に原作には無かった一本の縦筋が通ったように思います。
ラスト、主人公の前で目覚める莉子(清原果耶さん)の愛らしさは悶絶ものです。(#^.^#)

唯一残念だったのは、主人公を演じる山崎建人さん。
彼の演技に過不足はないですが、その出で立ちと行動に違和感があり過ぎなのです。
まず、アンドロイドだのプラズマ蓄電池だの凄いものを次々発明してしまう天才科学者の役なのに、服装がプリントシャツに派手な色使いの上着とズボンという、その辺にたむろしている普通の大学生と大して変わりありません。
別に「科学者なんだから白衣着てろ」とか「オシャレになんかに気を使わないだろうから地味な恰好であるべき」などと杓子定規的なことを言うつもりはありませんが、「こいつは若いけど実は凄い科学者なんだ」と一目で感じさせてくれる外観とか服飾デザインは必要だったと思います。
あの衣装のせいで主人公のリアリティが大きく削がれました。
「どうせ山崎健人目当てに若い女性客がメインだから、リアリティなんかどうでもいいからオシャレな恰好させたほうがいい。」というプロデューサーや配給会社の浅い思惑が見え隠れします。

あと、酔った勢いで自分を裏切った女に逆襲計画を洗いざらい喋ってしまうのはあまりにもおバカ過ぎます。
ここだけは見た目相応の知能レベルでした(笑)。
11/25(金)
『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』
(ホームシアター:AMAZON PRIME VIDEO)

先週から配信が始まった『シン・ウルトラマン』を観ようとプライムビデオを開いてみたら、何故かこっちが先に出てきました。
で、つい反射的にポチっと・・・(笑)。

最初に見たのは大学2回生の時でした。
秋の大学祭か五月祭(春の文化祭)のいずれかで自主映画上映会があって、その目玉作品として新作の『八岐之大蛇の逆襲』と一緒に上映されていました。
予備知識ゼロで見たため、ウルトラマンが人間の素顔のまま出てきた(しかも変身前とは別人)ときには、笑うことも忘れて唖然としたことを覚えています。
あの時は「技術的かあるいは予算的な理由でウルトラマンのマスクを作ることが出来なかったんだろう」と思っていたんですが、思い切った演出とジャージ姿で完全にウルトラマンになり切っていた先輩の姿に自然に引き込まれていきました。
でも、あとになって「あれは意図的にやっていた。というより、あれをやるのが目的だった。」と聞かされて、当時自分でも自主映画で特撮ものをやろうとしていた私は「自分がいかに固定観念に囚われていたか」と思い知らされました。
その先輩が後に『トップをねらえ!』『エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』を作ることになる庵野秀明監督だったことを知ったのはずいぶん後になってからのことです。
2度目を見たのは7~8年くらい前だったでしょうか。
画質が酷く悪いYouTUBEでした。
驚くべきことに今もまだ残っていたのでリンクしておきますが、これを見るよりアマゾンプライムで見ることをお薦めします(笑)。

今回のアマゾンプライム版はずいぶん綺麗にレストアされていて「8ミリフィルムにはこんなにも多くの情報が詰め込まれていたのか!?。」と驚かされました。
ミニチュア建物の作りこみがよく見えますし、怪獣の着ぐるみも(やや粗さはあるものの)しっかり作られていることが見て取れます。

怪獣やウルトラマンを撮るカメラアングルは基本的にローアングル。
つまり人間からの視点です。
プロが作る本家ウルトラマンやゴジラも晩年になると予算不足や時間に追われるようになって、人間が仰ぎ見る怪獣や巨人という画作りを忘れがちになり、平気で怪獣目線で場面を描くようになっていました。
それを思い起こさせてくれたのがアマチュアが作った自主制作作品だったというのも皮肉な話です。

メカ描写もカメラアングルと編集テクニックで見事に騙されました。
このマットアロー1号が紙製だなんて今見ても信じられません。

サブタイトルは『マットアロー1号発進命令』ですが、私としては個人的に一押しのウルトラメカ:マットジャイロが3機も出てきて大喜びです。
流石は庵野監督、分かってるなあ。
どんな動きをしてくるか分からない怪獣を相手にするには、直線移動しか出来ないジェット戦闘機より機動性が高くて武器搭載量も多いヘリコプターのほうが絶対に有効なのです。
(もしかすると、これは脚本の岡田斗司夫さんか特技監督の赤井孝美さんの案かも知れませんが・・・。)

ただ、MATと言いながら制服はウルトラ警備隊っぽいのはご愛敬ということで(笑)。
ストーリーは、強力な怪獣出現に対しMAT上層部から熱核攻撃命令が下されてしまうという結構シリアスなお話です。
本家『帰ってきたウルトラマン』の第5話/第6話(グドンとツインテールの回)をベースに『ウルトラセブン』のテイストも加えたような内容になっています。

『シン・ウルトラマン』ブルーレイ発売の際には、是非この『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』も収録していただきたいです。(もちろんメイキングもセットで!)
あと、どうせなら樋口真嗣監督が特撮を担当した『八岐大蛇の逆襲』も一緒に収録お願いします。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。