週刊映画鑑賞記(2023.3/27~2023.4/2)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。
今週観た映画はこちらの2本。

今週は2本とも余命を限られることになった高齢者を描く作品になりました。
3/27(月)
『生きる』
(ホームシアター:日本映画+時代劇4K録画)

過去に映画館で2回、テレビ(WOWOW)で1回見ていて、今回が4回目の鑑賞とまります。

初めて見たのは29年前。
当時大阪の上本町にあったACTシネマテークという映画館でした。
そこが閉館間際に『夢』以外の黒澤監督作品を2~3ヶ月かけて上映してくれたのです。
このときに私は黒澤監督の旧作全てを映画館で体験することが出来ました。
そのうちの一本として『生きる』を見たのが最初です。

当時「凄い映画だ」と感じたのは確かですが、それはあくまで映画としての作りに対する感想でした。
主人公(演:志村喬)が自分が癌であることを悟ってしまう重要かつ重苦しくなりがちな場面を、病院で出会ったベテラン患者役の渡辺篤さんの軽妙な演技のおかげでまるでコメディのような見せ方をしていること。
そして、映画中盤で主人公が「生きる」目標を見つけた次の場面からいきなり本人の葬式の場面に時間が飛び、あとは過去形で彼が成し遂げたことを仕事仲間たちが語り合うという突飛な構成に目を見張りました。
普通に時間軸に沿って描写してしまうと「主人公が死んでいく様」を見せつけられる辛いだけの映画になるところですが、あの構成にしたことで「主人公が生きた証」を描く映画になっていました。
しかし、レーザーディスクやDVDを買って何度も見返そうとは思わなかったです。
なぜなら、当時私はまだ30歳になったばかりで身体も健康そのものでした。
そんな時期に「癌で余命半年となった老人が最後の生き甲斐を見つける話」を見たところで全然ピンと来なかったのです。
2回目は12年ほど前でした。
WOWOWが黒澤明特集として全作品を放送した時で、そのとき『生きる』も含めた全作品を見返して録画もしました。
そのときの録画BD-Rは今も残っていますが一度も見返したことはありません。
3度目は2016年の「午前十時の映画祭」での再上映でした。
このとき既に「4Kリマスター版」と謳っていましたから今回の放送は「午前十時の映画祭」と同じ素材を使ったものと思われます。

今回の鑑賞では、何故か主人公:渡邊勘治を取り巻く女性たちにばかり目が行きました。
自分が癌で余命いくばくもないことを悟った勘治。
しかし、彼の心の支えだった息子は、自分たち夫婦のことで頭がいっぱいで勘治のことなど全く気遣ってはくれません。
勘治は一人寂しく先立った妻の遺影をじっと見つめます。

ヤケになって飲めない酒を飲んでいたとき、彼に同情した小説家が「パーッと楽みましょう!」と勘治をストリップやキャバレーに連れ回して女遊びに誘います。
しかし、誰も彼の不安や心の傷を癒すことなど出来ません。

その翌日、勘治は彼の元部下で今は別の会社で生き生きと働いている小田切とよ(演:小田切みき)と再会します。
とよの若々しいエネルギーと屈託のない笑顔に惹かれた勘治は、彼女の明るさに救いを求めてついしつこく付きまとってしまいます。
勘治の病を知らない周囲の者たちからは「老いらくの恋」などと非難され、やがてはとよ本人からも迷惑がられるようになる勘治。

そして、とよとの最後の逢瀬。
彼女と話しているうち「自分にもまだ出来ることがある」と気付いた彼は、偶然その場で開催されていた別の人の誕生会で若い女性たちが歌う「ハッピーバースデー・トゥ・ユー」を背に受けて力強く歩み始めます。

その後、勘治は市民の願いだった小さな公園を作るため病を押して市役所内の根回しに奔走します。
現場に足を運んだ際に倒れてしまった彼を気遣い、そして彼の死に対して心から涙を流してくれたのは街のおばさんたちでした。
男が絶望に打ちひしがれたとき、逃げ込もうとしたのは女性でした。
そして、もう一度生き直すために背中を押してくれたのもまた女性。
生を全うした彼のために泣いてくれたのもやはり女性たちでした。

そして完成した公園で、雪が降る中ブランコに乗って一人楽し気に勘治が歌った「ゴンドラの唄」の歌詞。
♪
いのち短し 恋せよ乙女
朱き唇 あせぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の命はないものを
見終わって一階のリビングに降りると、妻が家計簿をつけながら「明日は何時に家を出るの?」といつものように声をかけてきました。
もし・・・私が余命幾ばくもないとなった時、この女は優しく包み込んでくれるだろうか?。
それとも「いつもの能天気ぶりはどうしたの!」とか言って叱咤するだろうか?。
3/29(水)
『PLAN75』
(ホームシアター:WOWOW録画)

昨年夏、用事で大阪へ行ったときにあちらの映画館で見てきた作品です。
先日WOWOWで放送されていたのでもう一度じっくり見返しました。
ちなみに、WOWOWはこの映画に出資していたらしいです。
この映画についての私の考察は、昨年劇場で鑑賞したとき書いた下記の記事をご覧ください。
>週刊映画鑑賞記(2022.6/20~2022.6/26)
ただ、前々日に『生きる』を見たばかりだったせいか今回は少し違った思いを持って観ておりました。
この映画で描かれた「自らの意志で人生を閉じる」年齢は75歳。
見ているうちに、ふと自分が75歳になったときのことを考えてしまいました。
私は現在58歳。
75歳まではあと17年しかありません。
「自分は生きてる間にあと何本映画を見られるだろう?。」
「あと何回エキストラ出演を楽しめるのだろう?。」
「学生時代のようにもう一度仲間を集めて映画作りは出来るだろうか?。」
そんな考えが頭から離れなくなりました。
残りの人生を17年と仮定してそれまでに見られる映画の本数を計算してみました。
私は週に平均2~3本の映画(ドラマやTVアニメ、ドキュメンタリー番組等は除外)を見ますから一年間で約130本。
この数字はここ数年の年間映画鑑賞数とほぼ一致します。
130本x17年=2,210本。
私が残りの人生で見られる映画の本数は2,210本ということになります。
そう考えると、今後は出来るだけ新しい作品との出会いを大事にしたいと思います。
また、2度目3度目の鑑賞となる作品については、時間を割くだけの価値がある作品か余程「好きだ」という強い気持ちを持てる作品に限られます。
そんな中、『PLAN75』はもう一度見るべき価値のある映画と考えて再見しました。
ただし、75歳までというのはあくまで仮の話です。
例えば、私の母方の祖父は88歳(米寿)までボケることなく生きて天寿を全うしました。
88歳までならあと30年。
3,900本の映画が観られます。
よっしゃ、がんばるぞー。
そして知り合いや子供たちから「最後まで無類の映画好きだった●●さん」「怪獣大好きおじいちゃん」などと親しまれつつ生涯を終えるのが理想です。
あと、男としても生涯現役で「スケベジジイ」とか言われながら逝くのも良いなあ(笑)。
【2つの『シン・仮面ライダー』特番】
『生きる』と『PLAN75』の記事のすぐ後にコレを書くのは少々忸怩たるものを感じますが・・・どうせ来週2回目を観に行くんだからまあいいや!(笑)。

28日深夜、MBS系列局(福井の場合はMRO)にて映画『シン・仮面ライダー』の冒頭20数分が放映されました。
TV版の第1話みたいな仕様になっていて、CM前に↑のアイキャッチイラスト(音楽もオリジナルと同じ)が入りましたが違いはそれだけです。
YouTUBEなどのネット動画で「映画冒頭●分公開」というのは今までも何度かありましたが、公開中の映画の冒頭部分のエピソードを地上波で丸ごと放送するのはこれが初めてではないでしょうか?。
放映発表がかなり急だったためあやうく見逃すところでした。
でも、見逃した人も大丈夫!。
4月16日まではTVerとMBS動画イズムにて何度でも見られます。

更に31日(金)には、NHK BSプレミアムで2年間の製作期間に密着したドキュメンタリー番組を放送していました。

庵野監督の後出しジャンケン的な演出法に対して現場の実写スタッフが混乱し、反感を抱いて現場のムードがどんどん悪くなっていく様子が容赦なく描かれます。
なにせ、スタッフが苦心惨憺して考えたアクション演出を「長い」「段取りに走ってる」と簡単に却下して、それでいて代案も具体的要望も何も言わないのですから当然といえば当然です。
これは以前エキストラ仲間から聞いた話ですが、『シン・ゴジラ』の時は庵野総監督と現場スタッフの間に人当たりの良い樋口真嗣監督が居てくれたことで人間関係がここまで荒れることはなかったらしいです。
でも、その後の『シン・ウルトラマン』の現場はなぜか樋口監督に一任されました。
その理由は「庵野氏が現場に介入すると現場が混乱することが多いから」というのが本当のところだったみたいです。
このドキュメンタリーを見て「なるほど、こういうことか!。」と腑に落ちました(笑)。

驚いたのは、映画本編ではオールCGで描写されていた対ショッカーライダー戦が最初はスタントマンを使ったアクションシーンとして撮影されていたということです。
しかし、庵野監督はせっかく撮影した画を使うことなく全部CGに置き換えてしまいました。
私は先週の感想記事の中で「スタントマンに対するリスペクトが感じられない」と書きましたが、「これは本当にスタントマンに対して失礼過ぎる」と感じました。

面目丸つぶれにされたアクション監督の苦悩と苛立ち。
そして生々しい戦い・・・というより殺し合いの演技を求められる俳優さんたち。

それでも主演の池松壮亮さんが「ベストは何だ?」と前向きに模索し続ける真摯な態度はとても立派だったと思います。
でも、こんな内容のメイキングビデオはブルーレイの特典には付けられないでしょうね(笑)。
ところで・・・。
こうしたテコ入れ的番組を急に差し込んでくるということは、もしかして『シン・仮面ライダー』はお客さんの入りが良くないのでしょうか?。
ふと、そんな考えが頭をよぎりました。
『シン』シリーズは今回の『シン・仮面ライダー』で終了とのことですが、本作の興行成績が悪いと今後の特撮映画全体の動向に悪影響を及ぼす可能性もあります。
だから私は来週2回目を観に行きます。
その目的は「内容をもっと咀嚼すること」だけにとどまらず、今後も継続して新作特撮映画が作られるためのお布施みたいな気持ちも含まれています(笑)。
今週もお付き合いいただきありがとうございました。