「第6回北陸オーディオショウ in 富山」見聞録
CATEGORYホームシアター
トガジンです。

先週土曜日(4/22)、富山県で開催された「第6回北陸オーディオショウ」を見に行ってきました。
「ショー」ではなく「ショウ」と呼ぶあたりに主催者もメインの客層も昭和世代であることを感じます(笑)。

会場は富山県民会館。
この建物の5階と6階を二日間借り切って開催していました。
私は開始時間の30分以上前に到着したので車の置き場所に困ることはなかったですが、昼食を食べに外へ出たときはこの通り広い駐車場が満杯になっていて、一部の車は隣の県庁の駐車場へ誘導されていたほどでした。
ただし、この日は「日展」など他の催しも行われていたため、これらの車全部が「オーディオショウ」の客のものというわけではありません。
ちなみに私が移動に要した時間は高速を使って約2時間。
大阪のAVショップ(アバックさんやシマムセンさん等)へ行くことを思えば全然苦になりません。

開場後すぐ入場しましたが、結構な数の人が来訪していました。
年齢は私と同じ50~60歳くらいの年配者が多かったですが、中には学生さんと思しき若い人も何人かグループで来ていました。
女性はご亭主の付き添いで来ている人がほとんどらしく、オーディオ機械にはあまり興味無さそうな方が何人もいらっしゃいました。
実は私も妻を誘ってみたのですが、妻はひどいメカ音痴なため「そういうのはパス、一人で楽しんできて。でも無駄使いは禁止!。」と厳しくも温かく送り出してくれました(笑)。
「オーディオショウ」と言うだけあって基本的にはピュアオーディオのプレゼンが主体の催事ですが、私はホームシアター関係に目的を絞って見てきました。
主催しているクリアーサウンドイマイさんは富山県の老舗オーディオショップでありながらホームシアターも精力的に扱っています。
今回はビクター/ソニーという2大プロジェクターメーカーとオーエス/キクチの国内スクリーンメーカー2社による合同出展もあるとのことで、私はそれ目当てに行くことを決めました。
・・・が、しかし!。
実は私、クリアーサウンドイマイさんに対しては少々忸怩たる気持ちを持っているのであります。
以前、我が家のスクリーンをオーエス社の張り込み式130インチシネスコタイプに買い替えたとき、取付作業をメーカーには頼まず自分の手で行いました。
その理由は、「設置作業は北陸の専門業者に依頼すると10万円かかる」と言われたからです。
そして、その取付作業に10万円もぼったくる費用を要する北陸地方の専門業者というのがクリアーサウンドイマイさんだったのです。
もちろん、そのことはオーエスやクリアーサウンドイマイの人の前では絶対口にしていません(笑)。

会場は富山県民会館の5階と6階を借り切っていましたが、出店社数が多過ぎたのか一つの部屋を複数の会社が約1時間交代で使うというややこしい方法になっていました。
そのため、お目当てのメーカーの部屋を見つけてもその時間は別のメーカーのデモが行われていて待たねばならないとか、ひどいときは「今隣の部屋でゲストの生演奏が行われているから」とドルビーアトモスの大音量再生を控えさせられていました。
また、会議室らしき小さな部屋がとても多く、そこに2社のスピーカーメーカーが機材を入れて交代でプレゼンするため、セッティングが非常に小規模でしかも万全ではないことがほとんどでした。
中には入れ替えの時間が少なくて慌ててセッティングしたせいか、左右のスピーカーが外向きになったままで音出ししていたところもありました。
また部屋が狭いため客とスピーカーとの距離も短く「うちの場合はこんな近くで聴かないけどなあ」と思いましたし、後方の席に座った人は前の客の身体に音が遮られてそのスピーカーの本当の実力を聴くことは出来なかったと思います。

そして、今回のイベントで最も残念だったのは、一回当たりの時間が短すぎるということでした。
この時間割表を見ると、一回のプレゼンに割り当てられている時間は各社一律50分づつ。
しかも、そのうちの10分間は同じ部屋を使う別のメーカーの準備時間(機材の入れ替え等)も含まれています。
そのため、視聴と解説の時間は実質40分から45分くらいしかありません。
45分なんて小学校の授業時間と同じです。
実際、新機能の説明や新型を作った意義の話に時間を割き過ぎて肝心の視聴パートが駆け足になってしまったり、逆に説明不足のまま映像を見せてひたすら自画自賛するだけというメーカーがほとんどでした。
また担当者にあれこれ質問したり「この装置で『●●』を見せて(聴かせて)欲しい」などと要望する時間もありませんでした。
全体的に「時間も場所も詰め込み過ぎ」という印象が強かったです。

到着後、最初に入ったのはマランツとデノンの共同ブースでした。
理由は単に「受付のすぐ横の部屋だったから」です(笑)。
デノンとマランツはある時期からAV系の機器を共同開発(あるいはどちらかのOEM)するようになっていて、兄弟会社みたいな関係になっています。
だからこそ、この2社は現在のオーディオ不況を乗り越えてこられたのでしょう。
オンキョーがパイオニアを子会社化したにもかかわらず双方の技術を融合しきれないまま業績向上に繋げられなかったことと対照的です。

デノンとマランツは、それぞれの新型AVアンプを使ってドルビーアトモスやDTS:Xといった新世代サラウンドのデモを中心に行っていました。
映像表示は有機ELテレビでしたが、音響関係機器はご覧の通り高級感が半端ないです。
スピーカーはB&W社のペア260万という802D4(だったと思う)をメインとする5.0chにハイトスピーカー4本を加えた5.0.4ch。

デノンのアンプは定価90万円のAVC-A1H-SPだったと思います。(途中から入ったため未確認)

そしてマランツがデモしていたアンプは最新のセパレート型:AV10+AMP10。
値段はなんとプリ部とパワー部合わせて220万円!。
「んなもん、買えるかっ!」と内心では思いつつも「ふむふむ、なかなか良いではないですか。」と、いかにも自分のシアタールームへの導入をイメージしているかのような顔つきで説明と音を聞いておりました(笑)。

デノンとマランツのデモでは、UHD-BD再生機としてパナソニックの最上級レコーダー:DMR-ZR1を使用していました。
レコーダーでありながらも再生画質は同社製UHD-BDプレーヤーのトップモデル:DP-UB9000を凌駕しており、さらにBS4Kの22.2ch音声を一般の5.1.4chに変換する新機能も加えた約33万円もする最新鋭機です。
実は私も、1月中旬頃まではDP-UB9000を手放してでもこのZR1を買うことを考えておりました。
しかし、ちょうどその頃例のパナソニックBD-R事業撤退のニュースが飛び込んできたのです。
そのため日本のレコーダー産業の将来性に不安を感じるようになり、色々あった挙句の果てに購入を見送ることにした機器です。
それでも、今回そのZR1のUHD-BD再生画質と22.2ch→5.1.4ch変換のサラウンドを直接体験出来たことは有意義でした。
UHD-BDの再生画質に関しては時間が限られていたことと画面が有機ELテレビで小さかったこともあってUB9000との差異はほとんど感じませんでしたが、22.2chのサラウンドは確かに部屋全体が音で埋め尽くされる感覚が確かにあって「これは欲しい!」と思わせてくれるものでした。
今はDP-UB9000の後継機にこの機能が付くことを願うのみです。

あと、このブースで面白かったのがドルビーアトモス用トップスピーカーの設置方法です。
借りている部屋なので天井にスピーカーを取り付けることは不可能ですから、部屋の前後の高い位置にエフェクトスピーカーをそれぞれ正面向きに置くことで視聴位置の真上にトップ用の音場を作るという方法を取っていました。
「これでは正確なアトモス再生は出来ないだろう」と思っていたんですが、220万円のアンプにはこの設置方法でも的確に音場補正する性能があるらしく不自然どころか音の密度が非常に濃かったのが意外でした。

お昼ご飯は、一度会場を出て富山駅前まで食べに行きました。
以前仕事で富山に行った時すごく美味しかったお好み焼き屋さんにどうしても行きたかったのです。
会場から駅前へは歩いて10分程度なので、天気も良かったことからてくてく歩いて向かいました。

そのお好み焼き店とは、駅前地下街にある「ぼてやん多奈加(たなか)」( 富山駅前店)さん。
有名なお店らしくてお昼時には1時間待ちも当たり前という人気店です。
この日は土曜日なので大丈夫だろうと思っていましたが、それでも40分近く店の前で待つことになりました。
この待ち時間で「オーディオショウ」の観覧時間一回分が削られてしまいますが、それでもどうしても食べたかったのでじっと待っておりました。

私が頼んだのはミックス焼き定食。
B5版サイズくらいの四角くて分厚い熱々のお好み焼きにご飯・味噌汁・お新香付きです。
値段はなんと1,560円!。
でもいいんです。
絶対に美味しいことは分かっているのですから。

以前仕事仲間と一緒に行った時はそれぞれ別の味のお好み焼きを注文して二人で半分づつシェアして違った味を楽しめましたが今回はミックス焼きのみなので途中で味に飽きてしまわないかが少し心配でした。
しかし、半熟の目玉焼きが付いているので後半戦は卵のトロ味を加味して最後まで美味しく完食しました。
福井県人の私が言うのも何ですが(笑)、富山に行かれる際にはお薦めのお好み焼き屋さんです。

食事から戻ると、ちょうどオーエススクリーンのHDR専用スクリーン「レイロドール」のデモが行われている最中でした。

私はつい最近スクリーンを買い替えたばかりなので当初はパスする予定でいましたが、レイロドールは先日購入したピュアマットⅢとどちらにするかと迷った生地でもあったので、場所取りも兼ねて前方の席でデモを拝見しておりました。
レイロドールは、HDR映像だと画面が暗くなりがちになるのをスクリーン側で補正する目的で作られた生地だと思われます。
しかし、ピュアマットⅢとの比較映写は無かったため担当者がどんなに丁寧に説明してくれてもレイロドールの良さも悪さも伝わってこなかったのが残念です。

続いてはソニーの最新型レーザー光源プロジェクター:VPL-XW7000とその下位機種のXW5000のデモンストレーションです。
私はこのデモから最前列中央の特等席に陣取って腰を据えて視聴しておりました。
スクリーンはそのままオーエスのレイロドールを使用するので解説者がオーエスの人からソニーの人に変わっただけです。
しかし、下位機種のXW5000は映写距離の問題でこの部屋では150インチスクリーンいっぱいに映像を映し出すことが出来ないと分かったため急遽XW7000のみの紹介に変更されていました。
こんなところからも開催までの経緯がいかにドタバタだったかが伺えます。
元々明るさが強いXW7000と反射率の高いレイロドールスクリーンとの組み合わせでは、まるでリビングで大きなテレビを見ているかのような明るさと鮮やかさを保っていました。
ただ、私はソニー製のプロジェクターには一切食指が動きません。
それはコントラスト比の稼ぎ方です。

私が現在愛用しているビクター:DLA-X990Rのネイティブコントラストは16万:1。
これは、同じビクター製の4K現行機種でも実現出来ていない民生用プロジェクター最高峰のスペックです。

一方のソニーは∞(無限):1というスペック値を発表していますが、これはカット毎に明部と暗部のバランスを調整するアクティブコントラスト方式を使ったスペックであってそれらの調整を行わないネイティブコントラストは一切公表していません。
カット毎に自動で明度を調整するということは、映画の場面が変わるたびに明るさや暗部のレベルが逐一変化するということです。
実際今回の数十分間のデモの間でも、明るい場面から暗い場面に切り替わった瞬間全体の明度がふわふわと変化するのが分かりました。
あれでは2時間の映画を落ち着いて見てはいられません。

続いて一番のお目当てだったビクター最上級プロジェクター:DLA-V90Rのデモンストレーションです。
ビクターのピュア4K(画素ずらしによる「なんちゃって4K」ではない)プロジェクターの第二世代機であり、8K映像の映写にも対応するという定価260万円の最上位機です。
また、スクリーンはレイロドールからキクチ製の150インチに交換されました。

ただ、私は最初からV90Rを買うつもりは毛頭ありません。
V90Rのネイティブコントラスト性能(10万:1)は現在私が愛用しているDLA-X990R(16万:1)の半分ほどしか無いからです。
真っ暗な部屋で映画を観る場合、黒がしっかり沈み込みながらも暗い部屋の中の様子なども潰れることなく描写出来るネイティブコントラスト性能は最重要ポイントなのです。
X990Rの暗部描画性能を越えるものが出ない限り私がプロジェクターを買い替えることはないでしょう。

しかし、今回のプレゼンテーションの環境ではV90Rの性能の良い部分を確認することは出来ませんでした。
投影中は部屋の明かりこそ消してはいましたが、スクリーン周り以外は白壁・白天井のままだったため反射した光がスクリーンに戻ってしまう迷光現象が起こってビクタープロジェクターの長所である黒表現がまるで生かされていなかったのです。
あれでは販促には繋がらず、むしろ知らない人が見たら「画面が暗い」という印象だけが残って逆効果だったと思います。

あと、(現場の写真を撮り損ねましたが)ビクターが使っていたUHD-BDプレーヤーは私も現在使っているパナソニックのDP-UB9000でした。
DP-UB9000にはビクターの現行プロジェクター:DLA-Vシリーズ専用の画質調整プログラムが搭載されています。
これはUHD-BDソフトによって設定値がまちまちなHDRを、ソフトのデータを読み取ってDLA-Vシリーズプロジェクターに最適な映像に調整してくれるというものです。
これはパナソニックとビクターが元は親子会社だったからこそ出来たコラボレーションです。
今回のデモではこの連携プログラムの効果をこの目で見られると期待していたのですが、残念ながらこの連携プログラムについて触れることはありませんでした。
これもやはり時間が足りなかったせいだったのだろうと思います。
お目当てのサラウンドとプロジェクター関係のデモを見終えた私は、最後にいくつかのブースを見聴きして回りました。

ピュアオーディオ関係で唯一「これは聴いておきたい」と思っていたのが、クリプトンの2ウェイ2スピーカー密閉方式ブックシェルフ型スピーカーの音です。
時間が無いなか大急ぎで撮ったため写真がピンボケで実にお恥ずかしいです・・・。
(だからiPhoneで写真撮るのは嫌なんだよぉ~)

クリプトンのスピーカーは私が好む密閉式にこだわっています。
しかも、上位機の各ユニットに微細な振動を可能にするアルニコマグネットを採用していて、これらは80年代後半に私も愛用したビクターのSXシリーズスピーカーと同じです。
(ちなみに’88年に発売されたSX-700は現在も私の自室で現役使用中です)
クリプトンは元ビクターのスピーカー部門の社員が集まって創立した会社とのことなので、私好みの音を聴かせてくれるのは当然といえば当然です。

女声も男声もボーカルがしっかりと中央に定位し、しかも前に出てくるイメージです。
左右スピーカーの正面中央で目を瞑って聴くとまるでボーカリストが目の前にいるようでした。
そして、男女混声のバックコーラスも一人一人の声を聴き分けられるくらい音の粒立ちが良いです。
これならABBAもキャンディーズも気持ちよく聴けますし、映画再生用に使った場合もセリフ・効果音・BGMの全てをバランスよく鳴らしてくれるに違いないと思います。
問題なのは、クリプトン社がサラウンドシステムに興味が無いらしいということです。
クリプトンはセンタースピーカーを作っていませんし、ブックシェルフスピーカーの一本売りもしてくれません。
そのことを担当者に質問&要望したかったのですが、何度も書いたように時間が無さすぎて個別に質問する時間は取れませんでした。
ピンボケ写真と相まって(笑)本当に心残りです。

あと、きちんと聴いたわけではないですが、部屋の入り口からチラリと見えたこの超弩級アナログレコードプレーヤーの威容が凄すぎて思わず写真を撮ってしまいました。
お値段なんと170万5千円!。
ピュアオーディオもホームシアターシステムも上には上がある天井知らずな世界です。
でも、上ばかり見ていたらキリがありません。
私みたいなビンボー人は手が届く範囲であれこれ工夫しながら楽しむことにいたしましょう。
<(_ _)>
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

先週土曜日(4/22)、富山県で開催された「第6回北陸オーディオショウ」を見に行ってきました。
「ショー」ではなく「ショウ」と呼ぶあたりに主催者もメインの客層も昭和世代であることを感じます(笑)。

会場は富山県民会館。
この建物の5階と6階を二日間借り切って開催していました。
私は開始時間の30分以上前に到着したので車の置き場所に困ることはなかったですが、昼食を食べに外へ出たときはこの通り広い駐車場が満杯になっていて、一部の車は隣の県庁の駐車場へ誘導されていたほどでした。
ただし、この日は「日展」など他の催しも行われていたため、これらの車全部が「オーディオショウ」の客のものというわけではありません。
ちなみに私が移動に要した時間は高速を使って約2時間。
大阪のAVショップ(アバックさんやシマムセンさん等)へ行くことを思えば全然苦になりません。

開場後すぐ入場しましたが、結構な数の人が来訪していました。
年齢は私と同じ50~60歳くらいの年配者が多かったですが、中には学生さんと思しき若い人も何人かグループで来ていました。
女性はご亭主の付き添いで来ている人がほとんどらしく、オーディオ機械にはあまり興味無さそうな方が何人もいらっしゃいました。
実は私も妻を誘ってみたのですが、妻はひどいメカ音痴なため「そういうのはパス、一人で楽しんできて。でも無駄使いは禁止!。」と厳しくも温かく送り出してくれました(笑)。

主催しているクリアーサウンドイマイさんは富山県の老舗オーディオショップでありながらホームシアターも精力的に扱っています。
今回はビクター/ソニーという2大プロジェクターメーカーとオーエス/キクチの国内スクリーンメーカー2社による合同出展もあるとのことで、私はそれ目当てに行くことを決めました。
・・・が、しかし!。
実は私、クリアーサウンドイマイさんに対しては少々忸怩たる気持ちを持っているのであります。
以前、我が家のスクリーンをオーエス社の張り込み式130インチシネスコタイプに買い替えたとき、取付作業をメーカーには頼まず自分の手で行いました。
その理由は、「設置作業は北陸の専門業者に依頼すると10万円かかる」と言われたからです。
そして、その取付作業に10万円も
もちろん、そのことはオーエスやクリアーサウンドイマイの人の前では絶対口にしていません(笑)。

会場は富山県民会館の5階と6階を借り切っていましたが、出店社数が多過ぎたのか一つの部屋を複数の会社が約1時間交代で使うというややこしい方法になっていました。
そのため、お目当てのメーカーの部屋を見つけてもその時間は別のメーカーのデモが行われていて待たねばならないとか、ひどいときは「今隣の部屋でゲストの生演奏が行われているから」とドルビーアトモスの大音量再生を控えさせられていました。
また、会議室らしき小さな部屋がとても多く、そこに2社のスピーカーメーカーが機材を入れて交代でプレゼンするため、セッティングが非常に小規模でしかも万全ではないことがほとんどでした。
中には入れ替えの時間が少なくて慌ててセッティングしたせいか、左右のスピーカーが外向きになったままで音出ししていたところもありました。
また部屋が狭いため客とスピーカーとの距離も短く「うちの場合はこんな近くで聴かないけどなあ」と思いましたし、後方の席に座った人は前の客の身体に音が遮られてそのスピーカーの本当の実力を聴くことは出来なかったと思います。

そして、今回のイベントで最も残念だったのは、一回当たりの時間が短すぎるということでした。
この時間割表を見ると、一回のプレゼンに割り当てられている時間は各社一律50分づつ。
しかも、そのうちの10分間は同じ部屋を使う別のメーカーの準備時間(機材の入れ替え等)も含まれています。
そのため、視聴と解説の時間は実質40分から45分くらいしかありません。
45分なんて小学校の授業時間と同じです。
実際、新機能の説明や新型を作った意義の話に時間を割き過ぎて肝心の視聴パートが駆け足になってしまったり、逆に説明不足のまま映像を見せてひたすら自画自賛するだけというメーカーがほとんどでした。
また担当者にあれこれ質問したり「この装置で『●●』を見せて(聴かせて)欲しい」などと要望する時間もありませんでした。
全体的に「時間も場所も詰め込み過ぎ」という印象が強かったです。

到着後、最初に入ったのはマランツとデノンの共同ブースでした。
理由は単に「受付のすぐ横の部屋だったから」です(笑)。
デノンとマランツはある時期からAV系の機器を共同開発(あるいはどちらかのOEM)するようになっていて、兄弟会社みたいな関係になっています。
だからこそ、この2社は現在のオーディオ不況を乗り越えてこられたのでしょう。
オンキョーがパイオニアを子会社化したにもかかわらず双方の技術を融合しきれないまま業績向上に繋げられなかったことと対照的です。

デノンとマランツは、それぞれの新型AVアンプを使ってドルビーアトモスやDTS:Xといった新世代サラウンドのデモを中心に行っていました。
映像表示は有機ELテレビでしたが、音響関係機器はご覧の通り高級感が半端ないです。
スピーカーはB&W社のペア260万という802D4(だったと思う)をメインとする5.0chにハイトスピーカー4本を加えた5.0.4ch。

デノンのアンプは定価90万円のAVC-A1H-SPだったと思います。(途中から入ったため未確認)

そしてマランツがデモしていたアンプは最新のセパレート型:AV10+AMP10。
値段はなんとプリ部とパワー部合わせて220万円!。
「んなもん、買えるかっ!」と内心では思いつつも「ふむふむ、なかなか良いではないですか。」と、いかにも自分のシアタールームへの導入をイメージしているかのような顔つきで説明と音を聞いておりました(笑)。

デノンとマランツのデモでは、UHD-BD再生機としてパナソニックの最上級レコーダー:DMR-ZR1を使用していました。
レコーダーでありながらも再生画質は同社製UHD-BDプレーヤーのトップモデル:DP-UB9000を凌駕しており、さらにBS4Kの22.2ch音声を一般の5.1.4chに変換する新機能も加えた約33万円もする最新鋭機です。
実は私も、1月中旬頃まではDP-UB9000を手放してでもこのZR1を買うことを考えておりました。
しかし、ちょうどその頃例のパナソニックBD-R事業撤退のニュースが飛び込んできたのです。
そのため日本のレコーダー産業の将来性に不安を感じるようになり、色々あった挙句の果てに購入を見送ることにした機器です。
それでも、今回そのZR1のUHD-BD再生画質と22.2ch→5.1.4ch変換のサラウンドを直接体験出来たことは有意義でした。
UHD-BDの再生画質に関しては時間が限られていたことと画面が有機ELテレビで小さかったこともあってUB9000との差異はほとんど感じませんでしたが、22.2chのサラウンドは確かに部屋全体が音で埋め尽くされる感覚が確かにあって「これは欲しい!」と思わせてくれるものでした。
今はDP-UB9000の後継機にこの機能が付くことを願うのみです。

あと、このブースで面白かったのがドルビーアトモス用トップスピーカーの設置方法です。
借りている部屋なので天井にスピーカーを取り付けることは不可能ですから、部屋の前後の高い位置にエフェクトスピーカーをそれぞれ正面向きに置くことで視聴位置の真上にトップ用の音場を作るという方法を取っていました。
「これでは正確なアトモス再生は出来ないだろう」と思っていたんですが、220万円のアンプにはこの設置方法でも的確に音場補正する性能があるらしく不自然どころか音の密度が非常に濃かったのが意外でした。

お昼ご飯は、一度会場を出て富山駅前まで食べに行きました。
以前仕事で富山に行った時すごく美味しかったお好み焼き屋さんにどうしても行きたかったのです。
会場から駅前へは歩いて10分程度なので、天気も良かったことからてくてく歩いて向かいました。

そのお好み焼き店とは、駅前地下街にある「ぼてやん多奈加(たなか)」( 富山駅前店)さん。
有名なお店らしくてお昼時には1時間待ちも当たり前という人気店です。
この日は土曜日なので大丈夫だろうと思っていましたが、それでも40分近く店の前で待つことになりました。
この待ち時間で「オーディオショウ」の観覧時間一回分が削られてしまいますが、それでもどうしても食べたかったのでじっと待っておりました。

私が頼んだのはミックス焼き定食。
B5版サイズくらいの四角くて分厚い熱々のお好み焼きにご飯・味噌汁・お新香付きです。
値段はなんと1,560円!。
でもいいんです。
絶対に美味しいことは分かっているのですから。

以前仕事仲間と一緒に行った時はそれぞれ別の味のお好み焼きを注文して二人で半分づつシェアして違った味を楽しめましたが今回はミックス焼きのみなので途中で味に飽きてしまわないかが少し心配でした。
しかし、半熟の目玉焼きが付いているので後半戦は卵のトロ味を加味して最後まで美味しく完食しました。
福井県人の私が言うのも何ですが(笑)、富山に行かれる際にはお薦めのお好み焼き屋さんです。

食事から戻ると、ちょうどオーエススクリーンのHDR専用スクリーン「レイロドール」のデモが行われている最中でした。

私はつい最近スクリーンを買い替えたばかりなので当初はパスする予定でいましたが、レイロドールは先日購入したピュアマットⅢとどちらにするかと迷った生地でもあったので、場所取りも兼ねて前方の席でデモを拝見しておりました。
レイロドールは、HDR映像だと画面が暗くなりがちになるのをスクリーン側で補正する目的で作られた生地だと思われます。
しかし、ピュアマットⅢとの比較映写は無かったため担当者がどんなに丁寧に説明してくれてもレイロドールの良さも悪さも伝わってこなかったのが残念です。

続いてはソニーの最新型レーザー光源プロジェクター:VPL-XW7000とその下位機種のXW5000のデモンストレーションです。
私はこのデモから最前列中央の特等席に陣取って腰を据えて視聴しておりました。
スクリーンはそのままオーエスのレイロドールを使用するので解説者がオーエスの人からソニーの人に変わっただけです。
しかし、下位機種のXW5000は映写距離の問題でこの部屋では150インチスクリーンいっぱいに映像を映し出すことが出来ないと分かったため急遽XW7000のみの紹介に変更されていました。
こんなところからも開催までの経緯がいかにドタバタだったかが伺えます。
元々明るさが強いXW7000と反射率の高いレイロドールスクリーンとの組み合わせでは、まるでリビングで大きなテレビを見ているかのような明るさと鮮やかさを保っていました。
ただ、私はソニー製のプロジェクターには一切食指が動きません。
それはコントラスト比の稼ぎ方です。

私が現在愛用しているビクター:DLA-X990Rのネイティブコントラストは16万:1。
これは、同じビクター製の4K現行機種でも実現出来ていない民生用プロジェクター最高峰のスペックです。

一方のソニーは∞(無限):1というスペック値を発表していますが、これはカット毎に明部と暗部のバランスを調整するアクティブコントラスト方式を使ったスペックであってそれらの調整を行わないネイティブコントラストは一切公表していません。
カット毎に自動で明度を調整するということは、映画の場面が変わるたびに明るさや暗部のレベルが逐一変化するということです。
実際今回の数十分間のデモの間でも、明るい場面から暗い場面に切り替わった瞬間全体の明度がふわふわと変化するのが分かりました。
あれでは2時間の映画を落ち着いて見てはいられません。

続いて一番のお目当てだったビクター最上級プロジェクター:DLA-V90Rのデモンストレーションです。
ビクターのピュア4K(画素ずらしによる「なんちゃって4K」ではない)プロジェクターの第二世代機であり、8K映像の映写にも対応するという定価260万円の最上位機です。
また、スクリーンはレイロドールからキクチ製の150インチに交換されました。

ただ、私は最初からV90Rを買うつもりは毛頭ありません。
V90Rのネイティブコントラスト性能(10万:1)は現在私が愛用しているDLA-X990R(16万:1)の半分ほどしか無いからです。
真っ暗な部屋で映画を観る場合、黒がしっかり沈み込みながらも暗い部屋の中の様子なども潰れることなく描写出来るネイティブコントラスト性能は最重要ポイントなのです。
X990Rの暗部描画性能を越えるものが出ない限り私がプロジェクターを買い替えることはないでしょう。

しかし、今回のプレゼンテーションの環境ではV90Rの性能の良い部分を確認することは出来ませんでした。
投影中は部屋の明かりこそ消してはいましたが、スクリーン周り以外は白壁・白天井のままだったため反射した光がスクリーンに戻ってしまう迷光現象が起こってビクタープロジェクターの長所である黒表現がまるで生かされていなかったのです。
あれでは販促には繋がらず、むしろ知らない人が見たら「画面が暗い」という印象だけが残って逆効果だったと思います。

あと、(現場の写真を撮り損ねましたが)ビクターが使っていたUHD-BDプレーヤーは私も現在使っているパナソニックのDP-UB9000でした。
DP-UB9000にはビクターの現行プロジェクター:DLA-Vシリーズ専用の画質調整プログラムが搭載されています。
これはUHD-BDソフトによって設定値がまちまちなHDRを、ソフトのデータを読み取ってDLA-Vシリーズプロジェクターに最適な映像に調整してくれるというものです。
これはパナソニックとビクターが元は親子会社だったからこそ出来たコラボレーションです。
今回のデモではこの連携プログラムの効果をこの目で見られると期待していたのですが、残念ながらこの連携プログラムについて触れることはありませんでした。
これもやはり時間が足りなかったせいだったのだろうと思います。
お目当てのサラウンドとプロジェクター関係のデモを見終えた私は、最後にいくつかのブースを見聴きして回りました。

ピュアオーディオ関係で唯一「これは聴いておきたい」と思っていたのが、クリプトンの2ウェイ2スピーカー密閉方式ブックシェルフ型スピーカーの音です。
時間が無いなか大急ぎで撮ったため写真がピンボケで実にお恥ずかしいです・・・。
(だからiPhoneで写真撮るのは嫌なんだよぉ~)

クリプトンのスピーカーは私が好む密閉式にこだわっています。
しかも、上位機の各ユニットに微細な振動を可能にするアルニコマグネットを採用していて、これらは80年代後半に私も愛用したビクターのSXシリーズスピーカーと同じです。
(ちなみに’88年に発売されたSX-700は現在も私の自室で現役使用中です)
クリプトンは元ビクターのスピーカー部門の社員が集まって創立した会社とのことなので、私好みの音を聴かせてくれるのは当然といえば当然です。

女声も男声もボーカルがしっかりと中央に定位し、しかも前に出てくるイメージです。
左右スピーカーの正面中央で目を瞑って聴くとまるでボーカリストが目の前にいるようでした。
そして、男女混声のバックコーラスも一人一人の声を聴き分けられるくらい音の粒立ちが良いです。
これならABBAもキャンディーズも気持ちよく聴けますし、映画再生用に使った場合もセリフ・効果音・BGMの全てをバランスよく鳴らしてくれるに違いないと思います。
問題なのは、クリプトン社がサラウンドシステムに興味が無いらしいということです。
クリプトンはセンタースピーカーを作っていませんし、ブックシェルフスピーカーの一本売りもしてくれません。
そのことを担当者に質問&要望したかったのですが、何度も書いたように時間が無さすぎて個別に質問する時間は取れませんでした。
ピンボケ写真と相まって(笑)本当に心残りです。

あと、きちんと聴いたわけではないですが、部屋の入り口からチラリと見えたこの超弩級アナログレコードプレーヤーの威容が凄すぎて思わず写真を撮ってしまいました。
お値段なんと170万5千円!。
ピュアオーディオもホームシアターシステムも上には上がある天井知らずな世界です。
でも、上ばかり見ていたらキリがありません。
私みたいなビンボー人は手が届く範囲であれこれ工夫しながら楽しむことにいたしましょう。
<(_ _)>
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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