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映画と日常

週刊映画鑑賞記(2023.5/8~2023.5/14)

トガジンです。
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

20230514 TOP
今週はこの3作品。



5/10(水)
『アルキメデスの大戦』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)
『アルキメデスの大戦』ポスター画像(大和メイン)
現在の私にとって5月10日は特別な意味を持つ日となっています。
なぜならば・・・。
昨年、長野県岡谷市で行われた山崎貴監督の「新作ゴジラ映画」の撮影にエキストラとして参加してきた思い出深い日だからです。

>「一期一会の戦友たち」(2022/5/12)

だからこの日は、山崎貴監督の作品を見ようと決めておりました。
それでチョイスしたのがこの『アルキメデスの大戦』です。

劇場公開時には見に行く気満々でしたが、あの年の夏は猛暑日が長く続いたため体調を崩しがちになって集中して映画を観ることが困難になっていて、気が付いたら公開は終わっていました。
その後WOWOWで放映されたとき「そのうち見よう」と思って録画しておいたんですが・・・すっかり忘れておりました(笑)。

『アルキメデスの大戦』櫂直
ストーリー(原作)が良かったこともありますが、主演の菅田将暉さんが想像していた以上にサイコパス数学バカになりきっていてなかなか面白かったです。
実は私、菅田さんのことを「イケメンというだけでチヤホヤされて思いあがってる勘違い野郎」と誤解して、彼の出演作品をまともに見ようとしていませんでした。
m(__)m
スミマセン、私が間違っておりました。

『アルキメデスの大戦』美しいものは測らずにいられない
役柄に対して見た目が若すぎるように感じたことと、天衣無縫なキャラクターだと思っていたら「僕は帝大出だ」と学歴(権威)を振りかざすセリフに若干の違和感がありましたが、「美しいものは計測せずにいられない。そして数学的に証明したい。」という奇人ぶりは十分に表現していたと思います。
そんな彼を、上官の山本五十六(演:舘ひろし)や部下の田中正二郎(演:柄本佑)の視点で、あるときは驚きあるときは呆れそして最後には痛快さを感じながら見ておりました。

『アルキメデスの大戦』浜辺美波
その櫂によって顔の美しさを数学的に証明された財閥ご令嬢:尾崎鏡子を演じたのは、『シン・仮面ライダー』のルリルリこと浜辺美波さんでした。
櫂が言うには、鏡子の顔は日本人女性の顔の比率として最も美しいとされる白銀比(5:√7)なのだそうです。

『シン・仮面ライダー』ルリ子
なるほど!。
『シン・仮面ライダー』で特撮ファンのハートを鷲掴みにした緑川ルリ子の可愛さは数学的に実証されたものだったのですね(笑)。

『アルキメデスの大戦』田中
あと、櫂と常に行動を共にする田中正二郎少尉は、『シン・仮面ライダー』の一文字隼人(2号ライダー)こと柄本祐さんが演じています。
大阪のシーンでは浜辺さんとの共演シーンもあって、思わず一文字隼人の覚醒と赤いマフラーを巻いてもらう場面を思い出してしまいました。

スミマセン・・・話が横道(特撮方面)に逸れてしまいました(汗)。

『アルキメデスの大戦』大会議
この映画のキャッチコピーは「数学によって戦争を止めようとした男の話」です。
櫂たちは、その言葉通りクライマックスの大会議において巨大戦艦建造プロジェクトを阻止することに成功します。

『アルキメデスの大戦』轟沈寸前の大和
しかし、史実では戦争は起きましたし戦艦大和も建造されました。
そして昭和20年4月、大和は沖縄への特攻航海の途上で撃沈されました。
これでは櫂や田中たちの苦労は全て無駄だったことになります。

しかし、この映画の真の意図は全く別のところにありました。

『アルキメデスの大戦』平山
この映画のクライマックスで一度は櫂の理論に敗れ去った平山海軍造船中将。
しかし、彼もまた決して感情に流されることなく理論に裏打ちされた行動をとる男でした。
その平山がどうして「無駄」と分かっている巨大戦艦を建造することに執着したのか?。

『アルキメデスの大戦』平山と大和
まだ見ていない人のために明記することは控えますが、ラストで平山が語った彼の真の目的に私は思わず鳥肌が立ちました。

日本という国を象徴する巨大戦艦はどうして作られるべきだったのか?
どうしてその艦は沈まなければならなかったのか?。
そして・・・。
その艦名が「大和」であるべき理由とは?。

平山役の田中泯さんが醸し出す威圧感と相まって凄まじい説得力がありました。

『アルキメデスの大戦』計算
自分が根っからの文系人間と自負しているせいか、私は理系の人が「夢中になると空気が読めなくなる」ところにかなり奇異なものを感じることが多いです。
この映画の櫂の行動がどこかコミカルに見えてしまうのも多分そのせいだと思います。
櫂を筆頭にこの映画に登場する理系人間たちは「数の定理ではアメリカに絶対勝てない」「命中率がゼロに近い巨大戦艦など無用の長物」といった正論をかざして、無駄に国力を消耗しやがては国そのものを滅ぼしかねない米中戦争を阻止しようとします。
しかし、そんな彼らの理論は、感情論や精神論に酔いしれる文系の帝国軍人たちの勢いに押し流されてしまいました。
かつて日本を戦争という悲劇の道へ追い込んだのは、実は私みたいな文系の人間たちだったのかも知れません。

ところで。
山崎ゴジラ ロゴ
何かと評価が分かれることが多い山崎貴監督ですが、今回の『アルキメデスの大戦』は若干「美しくない部分」はあったもののかなり面白かったです。
次回作『ゴジラ(仮)』はどうなるんでしょ?。
今から楽しみです。



5/12(金)
『富野由悠季の暗号 ~The secret lesson of TOMINO directing in G~』🈠
(ホームシアター:WOWOW録画)
「富野由悠季の暗号」
富野由悠季監督の最新作『Gのレコンギスタ』劇場版最終作公開に合わせてブルーレイで発売されたドキュメンタリー作品です。
先月末にWOWOWで劇場版『ターンAガンダム』と『Gのレコンギスタ』の劇場版を一挙放映されたとき、このドキュメンタリーも一緒に放映されました。

『Gのレコンギスタ』はTVシリーズ版放映時に最初の3話くらいまで見ましたが、その難解さに着いていけず早々にリタイアした作品です。
今さら『Gレコ』本編を見るつもりはないですが、このドキュメンタリーだけは気になって録画しておりました。

k『冨野由悠季の暗号』冨野監督
本作には富野監督ご本人のインタビューなどは全くありません。
富野監督自身が画面に出る場面すらごく僅かです。

『冨野由悠季の暗号』富野作品に関わった人たち
このドキュメンタリーは、これまで富野監督作品に関わったアニメーター/デザイナー/音響監督/声優など富野監督作品に関わった人たちの言葉から、富野由悠季監督の人物像とその演出論を浮かび上がらせるという形式で作られています。

『冨野由悠季の暗号』荒木哲郎
興味深かったのは、TV版『Gのレコンギスタ』に参加した演出スタッフの一人で、後にアニメ版『進撃の巨人』の監督を務めることになる荒木哲郎氏の話です。

富野監督は食事やお風呂など普段当たり前に行われる生活行為や会話の中にその世界ならではの特殊な行動や言葉を自然に盛り込むことで、視聴者に異世界を身近なものとして感じさせる演出を得意としています。
そのことに気付いた荒木氏は、TV版『Gのレコンギスタ』のある回でそういった芝居を意識して画コンテを描いたところ、いつもなら他者の絵コンテはほとんど手直ししてしまう富野監督がそのシーンだけはそのまま採用してくれたそうです。

具体的に「ああしろこうしろ」と教えるのではなく、師匠の仕事を理解し盗むことで弟子が成長していく。
育つのに時間はかかりますがこれはこれで理想的な師弟関係と感じました。

『冨野由悠季の暗号』吉田x安彦 対談
あと、かつて『勇者ライディーン』『1stガンダム』を共に手掛けた安彦良和さんと『Gレコ』チーフアニメーターとの対談で安彦さんが語った驚きの事実が判明しました。
「演出業はTVアニメ一本仕上げても10万円ほどにしかならないが、アニメーターは半パート(約12分間)の原画を描けば20万円になる。」と、富野さんに羨ましがられたことがあったそうです。

『冨野由悠季の暗号』安彦良和
昔は「アニメーターは単価が安過ぎて一日の収入で靴下一足も買えない」などと言われていましたが、安彦さんくらい描くのが早くて上手ならかなり稼げる仕事なのかも知れません。
でも、そこまで才能ある人はアニメ界でもごく一握りでしょうし、今はCGが多用されているため昭和の時代と同じようにはいかないと思いますが・・・。



『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ シーズン6』🈠
(ホームシアター:ディズニープラス)
『クローン・ウォーズ/ザ・ロスト・ミッション』
『クローン・ウォーズ シーズン6』は先週第4話まで見ていますが、今週も空いた時間に1~2話づつ見て残り9話をコンプリートしました。

『クローン・ウォーズ6』諍うアナキンとパドメ
シーズン5でアソーカが去ってしまったせいか、アナキンは感情の抑えが利かなくなりつつあるようです。
パドメに言い寄る男を殺しかけたりパドメに対しても逆上したりと幼児化が目立ちます。
アソーカというやんちゃな弟子、つまり師として責任を負うべき対象がいなくなったためアナキンの中で一つの歯止めが壊れてしまったのかも知れません。
そう考えると、後にアナキンがダークサイドに堕ちていく下地を作った張本人は、シーズン5のラストエピソードでアソーカの無実を信じようとしなかったジェダイ評議会だったと言えそうです。

『クローン・ウォーズ』<ファイナル・シーズン>?
ところで、アマゾンで『クローン・ウォーズ』を検索すると、何故か市販ブルーレイではこのシーズン6を「ファイナル・シーズン」と銘打って発売されています。

『クローン・ウォーズ』シーズン7
ところが、何故かディズニープラスにはシーズン7(全12話)が配信されていて、こちらがファイナル・シーズンとされています。
内容は(見るのはこれからですが)どうやら映画版『シスの復讐』ラストのオーダー66発動時の裏側まで描かれているようです。
『クローン・ウォーズ』はルーカスフィルムがディズニーに買収されたことで一旦終了したものの、ファンの熱望により本当のファイナル・シーズン(7)が作られたということかも知れません。

あと、ディズニーはもう円盤で商売するのは止めにして今後は配信に完全シフトするつもりなのでしょうか?。
『クローン・ウォーズ』シーズン7はブルーレイ未発売のままですし、あれほどSWファンから好評だった『マンダロリアン』も未だブルーレイ化されていません。
LDの時代からパッケージソフトにロマンを感じてきた者としては寂しい限りです。


m(__)m
今週もお付き合いいただきありがとうございました。
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COMMENTS

2 Comments

There are no comments yet.

へろん  

『アルキメデスの大戦』、以前うちでも取り上げましたけど、一本の映画としてよくできていましたね。原作の漫画が荒唐無稽な要素が目についたのに対して、そういうところを削ってうまく史実に寄せていたと思います。主人公も原作では異常なまでに切れ者すぎてかえって人間味が少ないように感じますが、この映画のように天才肌の変わり者、という方がまだ親しみがわくように思います。

ただ映画の中では平山中将の言葉に櫂が固まってしまったことろまでは良かったのですが、パンフレットで山崎監督が、櫂を平山中将側に転ばせたかった、と書いていたので、そこがほとんど唯一の残念ポイントでした。
(固まってしまうまでは「明確に結論が出せないこと」として分かるのですが、転んでしまってはダメではないかと…)

>夢中になると空気が読めなくなる
これ、理系もさることながら、文系、というよりは俗にいう体育会系のノリでも強いと思います。理系は割と個人レベルで主張しますが、体育会系は「皆でつるんで」押し通す、というか…たぶん日本は「皆でつるんで」高度成長期はそれが良い方向にいき、悪い方向になっても「皆でつるんで」戦争突入やバブル崩壊を繰り返しているような。
そんな中では櫂のような存在も一層貴重なように感じます。

2023/05/21 (Sun) 07:13 | EDIT | REPLY |   

トガジン  

酔い痴れ易く醒めにくいのが日本人?

へろんさん、コメントありがとうございます。

私は原作漫画は読んだことないのですが、この映画の櫂というキャラクターは理系人間の良い部分・面白い部分を上手く抽出していて、重くなりがちな太平洋戦争の話でありながらも2時間10分があっという間に過ぎ去りました。
時間を忘れて見入ってしまうというのは良質な映画である証拠だと思います。
あの主人公のキャラクターを作り上げたのが山崎監督の演出なのか菅田将暉さんの役者としての本能なのかは分かりませんが、映画版『アルキメデスの大戦』においてはあのキャラ性で正解だったと思います。

>櫂を平山中将側に転ばせたかった

私は(劇場では見ていなかったので)パンフレットのその一文は読んでいませんが「確かにそれは違う」と思います。
それでは櫂に協力してくれた田中、鏡子、大阪の鶴瓶さん(役名忘れました^^;)の努力を全て無にしてしまうことになります。
櫂がどんなに理屈優先の男であっても、そこは映画の主人公として仁義を通させるべきでしょう。
私は平山が櫂よりも数歩先を読んで行動していたことと山本五十六以上に日本の行く末を案じていたと分かった時点で終わらせて正解だったと思います。

山崎監督の作品って、せっかく良い映画に仕上がっているのに時々「余計な一言」や「余計な1カット」が出てきて「え?」となることがあるんですよね。
例えば『永遠のゼロ』のラストで、全編に渡って特攻を拒み続けた主人公が自ら特攻するとき一瞬ニヤリと笑うんですが、「なんで笑う?」と奇異に感じました。
あのニヤリに何の意味があったのか?。
監督が「そうしたほうがカッコ良い」と考えたから?。
それとも単に岡田準一さんのアドリブか?。
もう一度見返したら答えが見つかるかも知れませんが、前述したように負け戦である日本の太平洋戦争映画(しかもテーマが特攻)ってもう一回見るには体力と気力を要するので今もモヤモヤしたままです(笑)。

>文系、というよりは俗にいう体育会系のノリ

あ?、確かに当時の日本帝国軍は体育会系ですね(汗)。
「先輩(上官)の言う事は絶対」みたいな。

でも、当時の文官や一般市民も軍人たちの熱い言葉に踊らされて日本全体を戦争一色に染めていったのは確かです。
その危険性に気付いていたのは、理想論や感情に酔いしれることなく理論を重んじる理系の人たちだったと思います。
でも、当時の日本で正論を言ったら「勝てるわけない」にしかならないので、平山は「正攻法では黙殺されるだけだ」と考えてヤマト・・・じゃなくて大和の建造を提案した、と。

そういえば、バブル期にも「このままではいつか経済破綻する」と警告した経済学者が何人かいたように思います。
当時その人たちの言葉は「そんなこと起こるわけないだろ」と一笑に付されましたが、その数年後には・・・。
そう考えると、確かに現代の日本人の感覚も軍国時代とたいして変わりないのかも知れないですね。
左脳で考える理系人間と右脳で感じる文系人間が同じ数だけ存在する国や組織がベストなのかも知れませんが、それはかなり難しそうです。

2023/05/21 (Sun) 13:36 | EDIT | REPLY |   

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