週刊映画鑑賞記(2023.8/21~2023.8/27)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

最近ゆっくり映画を観る時間が取りにくくなってきているため週一本ペースが続いています。
今週も唯一休みが取れたのは木曜日だけした。
その貴重な休みの日に以前から楽しみにしていたこの映画を劇場で観てきました。
8/24(木)
『地球防衛軍』
(劇場:鯖江アレックスシネマ)

人生初、ついに『地球防衛軍』を映画館の大スクリーンで見られるときがやってきました!。

「午前十時の映画祭」は様々な名作映画を劇場スクリーンで鑑賞する機会を与えてくれる素晴らしい企画ではありますが、一つだけ難点があります。
それは、その名の通り「午前十時から一日一回の上映のみ」ということです。
日中仕事をしているおぢさんが、午前中に映画を見に行く時間を確保することは現実的にかなり難しいです。
私もこの日を逃したら『地球防衛軍』を劇場スクリーンで見る体験を一生失うところでした。
出来れば同じプログラムを「午後十時の映画祭」とか銘打って一日2回上映してくれると有難いのですがね。

劇場はこのシネコンで一番小さい102席クラスのシアターでした。
観客は私も含めてわずか3人。
しかし、皆さん私と同じか年上のおぢさんばかりでした。
数は少ないながらも、お二人とも「こういうの大好物なんだよね~」という私と同族のオーラを放っておりました(笑)。
それにしてもたった3人とは・・・いくら平日の午前中とはいえ淋しい数字です。
福井の特撮ファンたちよ、鯖江アレックスシネマに集いたまえ!。
でないと来年から特撮枠が無くなってしまうかも知れないぞ!?。

残念だったのは、写真で分かる通りスクリーンがビスタサイズで、その中で上下に黒味を付けてシネマスコープサイズにして上映されることです。
つまり家庭の16:9テレビでシネスコ映画を観るのと同じ感覚です。
そのため、私は日本初のシネスコ特撮映画『地球防衛軍』を少しでも大迫力で味わうべく、いつもより2列分ほど前の席を確保しました。
若干スクリーンを見上げる形になりますが、そのおかげでこの映画のスケール感を存分に味わえました。
また、スピーカーにも近くなったせいか丁寧にレストアされた音声をしっかり聴きとることが出来て、細かな音の演出に改めて驚く結果にもなりました。

フィルムのレストアは今までの作品に劣らない素晴らしさです。
冒頭の夏祭りのシーンなど、「森永チョコレート」のタイアップ提灯が無かったら昔のNHK「新日本紀行」と見分けがつかないかも知れません(笑)。
こんなのどかな日常風景から一転して、地球の運命を左右する侵略戦争へとなだれ込んでいく構成が見事です。

メインの出演者は佐原健二さん・平田昭彦さん・白川由美さん・河内桃子さんという『ゴジラ』と『ラドン』の両主役コンビ!。
他にも志村喬さん・土屋嘉男さん・藤田進さん・村上冬樹さん等々、東宝特撮映画の常連俳優が顔を連ねていて、ここに宝田明さんや山本廉さんも加わればまさに東宝特撮オールスター映画であります。

また、『地球防衛軍』は東宝特撮にとって初めてづくしの映画でもあります。
まずは初のカラー・シネマスコープ特撮という点。
以前BSで放映されたときに書いた記事と重複しますが、とにかく画面作りに力が入っています。
それまでの4:3の狭い画面からビスタサイズをすっ飛ばして横幅が一気に2倍になったわけですが、本多猪四郎本編監督と円谷英二特技監督は戸惑うことなど一切なく、むしろ大喜びで画作りを楽しんでいるようで両監督の気合の入りようが画面の端々からビシバシ伝わってきます。
前方の列でスクリーンを仰ぎ見ていた私は、手元に用意していた水を飲むことも忘れて約90分間スクリーンに映し出される世界に魅入られておりました。

初の巨大ロボット兵器登場。
この作品以前の東宝怪獣映画は『ゴジラ』『ゴジラの逆襲』『空の大怪獣ラドン』の3作品だけです。
二足歩行のゴジラ・四つ足恐竜のアンギラス・翼竜のラドンに続く第4の巨大な敵として産み出されたのは、巨大生物ではなく異星人が操る巨大ロボット:モゲラでした。
ただしこのモゲラ、残念というか勿体ないというか自衛隊の作戦と現有戦力にあっさり敗北してしまいます。
『地球防衛軍』には自衛隊が全面強力していたため、自衛隊が敗退したり一般市民の犠牲者を出す描写は出来なかったのかも知れません。

その代わり、この映画に登場する自衛隊は流石本物だけあって全ての動きがキビキビしていて凄くカッコ良く撮れています。
この場面は後の東宝特撮映画の自衛隊(防衛隊)登場シーンに何度も流用されました。
終戦からわずか12年後の映画ですから、もしかすると指揮官クラスの中には軍隊上がりの人がいたのかも知れません。

東宝特撮でお馴染みのパラボラ型熱線兵器が本作で初登場します。
本作のマーカライト・ファープは運用方法がまだ試行錯誤状態なため「敵に迎撃されやすい」という弱点を抱えていましたが、これが『モスラ』の原子熱線砲や『サンダ対ガイラ』のメーサー殺獣光線になると大型トレーラーで移動出来るように機動性が進化します。

初代『ゴジラ』のヒロイン:河内桃子さんと『ラドン』のヒロイン:白川由美さんの最初で最後の共演作品です。
河内さんは『ゴジラ』と同じく平田昭彦さんの(元)婚約者役で悲しい別れを演じることになります。
しかも『獣人雪男』の時と同じく、孕ませ目的で獣人や宇宙人に拉致されてしまうという女性として耐えがたいほどの酷い扱われ方でした。
河内さんがその後特撮ものから距離を置くようになってしまったのはこのことが原因だったのかも知れません。

そして(多分)東宝特撮映画初の入浴シーン。
もちろん肩の上からしか映っていませんが、それだけでも白川さんのお身体の豊満さは十分感じ取ることが出来ます。
はっきり言って必然性は皆無ではありますが、この画が有ると無いでは映画の艶とか潤いがまるで違います。

音声もとても丁寧にレストアされていて、セリフや効果音が聞き取りやすくなっています。
そのおかげで、SF映画として深い音の演出が施されていたことに今回初めて気が付きました。
土屋嘉男さん演じるミステリアン最高指揮官が地球使節団と会話する場面で、片言の日本語に混じって何かモゴモゴとした奇妙な音声(言語)がノイズのようにうっすら重なって聞こえたのです。
今回の上映で、あのモゴモゴした声こそがミステリアンの母国語であり土屋さんの声で語られる片言の日本語はヘルメット内の翻訳装置で生成された人工音声だったことが分かりました。
66年も前の日本映画でこれほど深いSF設定が成されていたことと、それをさりげなく物語に盛り込んでいるセンスに改めて畏敬の気持ちを禁じ得ません。
さて・・。
来年の「午前十時の映画祭」日本特撮枠は『宇宙大戦争』でしょうか?。
それともゴジラ誕生70周年ということで初代『ゴジラ』?・・・な~んてのはありがち過ぎてつまんないですね(笑)。
(でも、初代『ゴジラ』再上映は「午前十時の映画祭」とは別枠で是非やっていただきたいです)

私は、現在の世界情勢を汲み取るという意味合いからも『世界大戦争』の4Kリマスター上映を熱望しています。
核戦争によって最期の日を迎えた一家族がいつもより豪華な食卓を囲むシーンには、世界の大局に対して庶民は何も出来ないという怒りと哀しさが滲み出ています。

そして何より、『世界大戦争』の星由里子さん(故人)の愛らしさは悶絶ものなのです。
その星さんと遠方にいる恋人(演:宝田明)がモールス通信で「コウフクダッタネ」と交信する場面と、フランキー堺さん演じる父親がもう叶うことのない夢と希望を夕陽に向かって叫ぶラストシーンは何度見ても涙を禁じ得ません。
「午前十時の映画祭」選考委員の皆さま方へ。
来年はどうか『世界大戦争』を劇場の大スクリーンで見せてください。
お願いします!。
m(__)m
今週もお付き合いいただきありがとうございました。