週刊映画鑑賞記(2023.9/11~2023.9/17)
毎週日曜日はこの一週間に観た映像作品を日記代わりに書き留めています。

今週はNETFLIXオリジナルアニメ『GAMERA -Rebirth-』全6話を一気見しておりました。
かなり控えめに言って「大傑作です!」。
あまりにも面白かったため、この一週間に2周見てしまいました。
残念な点があるとすれば「これが実写特撮だったらなあ・・・」と思ってしまうことくらいです。
※今回の記事には重要な部分のネタバレが含まれます。未見の方はご注意願います。
9/11(月)~9/15(金)
『GAMERA -Rebirth-』🈠
(ホームシアター:NETFLIX)

劇場用アニメ版『ゴジラ』三部作の瀬下寛之監督のオリジナル作品ということで、実際に見るまで内心不安があったのは事実です。
・・・が、しかし!。
昭和ガメラシリーズの登場怪獣のほとんどを網羅しつつ、巧みに現代的スタイルに翻案したストーリーに感服です。
アニゴジ三部作が駄目だったのは怪獣愛が無い脚本家のせいだったのですね。

1989年、4人の小学生の夏休みの物語。
世界各地に人間(特に子供を好む)を捕食する怪獣が多数出現し、ボコ・ジョー・ジュンイチ・ブロディの4人が住む街にもギャオスが出現します。
あわやギャオスの餌に?というところにガメラが出現し助けてくれます。
4人は怪獣に襲われた経験を持つ子供たちを一ヶ所に集めて研究したいという謎の財団によってある島に連れ去られるが、その財団の真の目的は実にトンデモナイ計画だった。
最初は単に昭和シリーズの「ガメラは子供の味方」という設定を踏襲しただけだろうと思いながら見ていました。
大事なお金をカツアゲしたブロディがしれっと仲間になっていたり、怪獣が巣くっている地下水道に好奇心でのこのこ入っていくなど理解に苦しむ行動があり過ぎて「馬鹿かこのガキどもは?」と今一つ気持ちが乗れずにいたのです。
しかし、2話を見ているとき「この4人のキャラクター配置と行動原理は前にもどこかで見たような・・・?。」と思っていました。
そして、2話の終わりで「あ、これは怪獣版『スタンド・バイ・ミー』なんだ!。」と気付きました。

『スタンド・バイ・ミー』はそれぞれ性格の異なる4人の少年が森の中に放置されている死体を探す冒険に出る物語です。
『GAMERA -Rebirth-』には「森の中に秘密基地を作る」という『スタンド・バイ・ミー』と同じシーンがあったり、「本当の友達とはいつも自分と一緒にいてくれる(Stand by Me)人のこと」というセリフが出てきたことでその考えは確信に変わりました。
なるほど、ストーリーやキャラクターのベースが『スタンド・バイ・ミー』だと解れば納得です。
死体探しも怪獣探しも同じくらい変ですから(笑)。

あと『GAMERA -Rebirth-』に登場する子供たちの中に一人女の子が含まれています。
ニックネームが全然女の子っぽい名前じゃなかったのでちょっと驚きました。
これも「男女平等」「LGBTQ」に気配りする令和の作品ならではというところでしょうか。

画作りにおいては人間目線のアングルを多用していて怪獣の巨大さを十分に表現しています。
第2話の子供たちを喰おうと追いかけてくるジャイガーの怖さが半端ありません。
同じ瀬下監督作品でもアニゴジ三部作ではゴジラのサイズが大きすぎてこのような画作りが出来ていませんでした。
今回は襲われる人間(子供)の視点で画作りしているため、ごく自然に怪獣映画の画になっています。

子供たちが地下水道で怪獣(ジャイガー)を発見してしまう第2話のサブタイトルは「地下水道」。
ストーリー的な繋がりはないですが、アンジェイ・ワイダ監督の映画『地下水道』から引用したものと思われます。
そして、水生怪獣ジグラと潜水艦に乗って戦うことになる第3話のサブタイトルは「深く静かに潜航せよ」。
こちらはロバート・ワイズ監督の潜水艦映画のタイトルです。

「あれ?もしかして・・・?。」と4話以降のサブタイトルを眺めてみると「斬る」「月は無慈悲な夜の女王」「幼年期の終わり」と、昔の映画やSF小説のタイトルがズラリと並んでいるではありませんか!。
特にロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」とアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」はアニメの内容ともリンクしたチョイスになっていました。
小説「月は無慈悲な夜の女王」は月に移住した人たちが地球政府に対し独立戦争を挑むいうストーリーです。
『ガメラ・リバース』第5話は人類粛清を目論む協会上層部の一握りの人間たちは月面基地に居住して計画をコントロールしていたというお話ですから内容にピッタリです。
「幼年期の終わり」はあの『2001年宇宙の旅』の原案となったクラーク作品ですが、主人公の少年が幾多の困難を乗り越えて大きく成長する姿を現しています。
私としては、あの最終回には同じクラークの「守護天使」でも合うんじゃないか?と思いました。

ただ、第1話「東京上空」の元ネタ探しには時間を要しました。
まさか相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』ではないだろう(笑)と思いつつ「東京上空」で検索してみたところ「これじゃないか?」というアニメが見つかりました。

富野由悠季監督の1983年作品『聖戦士ダンバイン』第16話「東京上空」です。
異世界バイストン・ウェルから突如人間世界に送り込まれた無数のオーラ・バトラーが東京上空で死闘を繰り広げ、戦闘の流れ弾や墜落したオーラ・バトラーの爆発によって多数の犠牲者が出るという話です。
そのイメージは『GAMERA -Rebirth-』第1話のギャオスの群れが東京を襲うシーンの阿鼻叫喚と符号します。
・・・スミマセン。m(__)m
サブタイトルだけで往年のSF&アニメヲタクの血が騒いでしまいました(汗)。

敵怪獣のデザイン&設定リファインも秀逸です。
今回の怪獣は全て人間を捕食します。
しかも、特に子供を好みます。
そうすることでガメラは自動的に子供の味方という立ち位置になるわけです。
巧い!。

ガメラの宿敵ギャオス。
第1話と最終話に2回出番がありました。
平成3部作や50周年記念映像にも登場した常連怪獣ですが、今回は「人間を捕食する」という恐怖感が今まで以上に強調されています。
最初に怪獣(ギャオス)に食われる恐怖を見せつけることでストーリー全体の軸が構築されていきます。

第2話に登場するのはジャイガー。
原作映画ではガメラの体内に卵を産み付けてそのせいでガメラが透明化してしまうという、なんかよく分からない性質を持つ怪獣でした。
今回のジャイガーはそんな特技は封印して、ひたすら狂暴で自分の食欲に忠実な怪獣として描かれます。
このジャイガーを倒したガメラの技は『イリス覚醒』のときのアレでした。

旧作から大きく変わったのは水生怪獣ジグラ。
オリジナルはサメかカジキみたいなデザインで地上では二足歩行もしてましたが、今回は巨大なエイのようなイメージになっています。
今回の姿形で二足歩行は・・・無理でしょう(笑)。

第4話に登場したのは大悪獣ギロン。
まさかこいつを令和の時代に見ることになるとは思いませんでした(笑)。
オリジナルはでっかい包丁に眠そうな目がついた四つ足怪獣でその間抜けな感じがたまりません。
リバース版ギロンは切れ味鋭い包丁はそのままに狂暴さが加わって、あの手裏剣も健在です。
そして、ギロンを倒したガメラの切り札は昭和ガメラの代名詞だったアレでした。

一番変わった・・・というよりもはや別ものになっていたのがバイラス。
オリジナル版はつぶらな瞳とおちょぼ口がくっついた巨大イカというイメージでしたが、今回は金色のタコであります。
ここまで変えるなら、いっそ新怪獣として出したほうが清々しかったんじゃないかと思うくらいです(笑)。
原作映画では尖った頭でガメラを串刺しにしてましたが、リメイク版バイラスは触手をガメラの口に突っ込んでウィルスを注入し、一時的にガメラを捕食怪獣化してしまいます。

今回なぜかバルゴンだけが干されてましたがその理由は不明です。
泣くなバルゴン!。
2期にはきっと出番がある・・・かも?。

「浄化」と称して増え過ぎた人類の99%以上を怪獣の餌にして、残った者だけで地球を支配しようというユースタス財団。
これの元ネタは、フリー●イソンとかイル●ナティとかロッ●フェラーとかロス●ャイルドみたいに人類の政治経済を影で操っているいるといわれる秘密結社や大財閥でしょうか?。
怪獣云々はともかくとして、選民主義的な大富豪どもならやりかねない気もします(怖)。
イー●ン・マ●クやマー●・ザッ●ーバーグの異常な言動や行動は、この世界がリセットされることを見据えているようにも見えますから。

残念というか描写不足を感じたのは、前半では優しいお姉さんキャラとして子供たちと接していながらもその本性はユースタス財団の連中以上に冷酷非道な女だった恵美子についてです。
シリーズ全話を2回見ても後半のキャラ変は唐突に見えて仕方ありません。
4話までに「この人には何か裏があるんじゃないか?。」と思わせる伏線を張っておくべきだったと思います。
ラスト2話での彼女の行動は、何も知らずにこのアニメを見た子供にとってはトラウマレベルの恐怖ですから(汗)。
あと、音楽がなんだか『パシフィック・リム』っぽい感じで、それもまた怪獣好きのハートを熱くたぎらせてくれます。
そして最終話のエンドテーマはやはりあの曲!。
ただし、メロディだけはそのままに希望とノスタルジーと物語の余韻を感じせる優しい曲調にアレンジされていました。

SFとしても怪獣バトルものとしても素晴らしい出来でした。
日本怪獣の本質を何も分かっていない毛唐が作る「モンスター・バース」より何十倍も面白かったです。
本作の視聴回数が増えることで、いつかNETFLIX出資で実写映画版『ガメラ』が作られることを期待しています。
そして、返す返すも「これが実写特撮だったら・・・」と歯がゆく思えてなりません。
あと、せっかく昭和ガメラに準じて「ガメラ=子供の味方」にしたのなら、一度くらい子供たちを掌か甲羅の上に乗せる場面があって欲しかったです。
今週は映画鑑賞記というより『GAMERA -Rebirth-』大満足記でした(笑)。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
m(__)m